セキュリティ・クリアランス制度について、過日、有識者会議の最終提言がまとまり公表されました。法案提出も目前となりました。
今から凡そ5年前になりますが、それ以前から必要性を感じていたセキュリティ・クリアランス(SC)制度について、党の知的財産戦略調査会において同志の小林鷹之代議士らと内々で議論を始めた際、政府は相当に否定的であったのを思い出し、隔世の感を禁じえません。
SCというのは、安全保障上重要な情報を保全するためにアクセスを制限し、アクセスできる資格を個人や施設に付与する制度のことです。従って本質的には情報保全の制度ということになります。既に特定秘密保護法では伝統的な安全保障に係る「外交」「防衛」「テロ」「スパイ」の4分野の情報を特別に厳しく保全しており、アクセスするにはSCを取得する必要があり、その為には適格性評価を受ける必要があります。
既に制度が整備されているのになぜ新たに議論をしているのかというと、テクノロジーの進化と経済構造の高度化も相俟って、経済力や技術力などの経済領域を武器化する勢力が台頭し、そうした非伝統的な経済安全保障を確保する必要が生じているためです。すなわち伝統的な「外交」「防衛」「テロ」「スパイ」の領域では対処が困難になりつつあるためです。
制度や運用上の理想論で言えば特定秘密保護法の4領域を経済安全保障分野に拡大することが望ましいはずです。なぜならば経済分野の情報保全制度も伝統的安全保障の制度も、仕組みはほぼ同じになるはずだからです。ただ有識者会議でも示されている通り、別法として制度設計することは不可能ではないはずです。
ただ、ご記憶にある方もいらっしゃると思いますが、特定秘密保護法を議論した際、厳しい世論に晒され、運用にはかなりの制限が課されました。要するに一言で言えば、自国政府を怖がるのか、外国政府を怖がるのか、の目線の違いであって、当時のメディアや野党は一斉に前者の立場にたっていました。もちろんバランスというのは当然ですが、当時は制度上あり得もしない罵詈雑言に近い亀毛兎角が横行していました。
潜脱の助長とはしたくありませんので、何が運用の制限なのかは触れませんが、いずれにせよ別法にするにせよ特定秘密保護法を改正にするにせよ、今国会で審議を見込んでいる経済安全保障分野におけるSC制度が確立した後、将来のどこかの時点で、国外への技術流出防止及び有志国連携強化のために、更に情報保全制度をアップグレードしなければならないと感じています。