戦後70年談話に想う

戦後70年という節目の年にあたり、先日、安倍総理から談話が発表されました。50年目には村山談話が、60年目には小泉談話が発表され、今回はその延長線上にある70年目にあたっての政府の先の大戦に対する考え方を改めて発表するものとなります。私自身も議員外交の現場にでれば必ず問われた話題であって注目をされていた談話です。

この談話について各国の反応は全体的に好意的ですが、厳しい反応が予想された中国韓国からは、予想よりは比較的温和な反応であったと理解しています。

米国:「安倍首相が痛切な反省を表明したことを歓迎する」「70年にわたり日本は平和や民主主義、法の支配を実証してきた」「世界の国々の模範となるものだ」。

英国:「70年以上にわたる日本の平和への貢献が継続することは喜ばしい」「日本と近隣諸国の和解にプラスとなることを希望する」

オーストラリア:「第2次大戦での豪州や他の国々の苦しみを認めている」「よりよい未来への日本の関与を他の国々が受け入れやすくし、日本との友情をより強くすべきものだ」。

フィリピン:「平和に寄与するという安倍総理の談話を支持する」「戦争の惨禍を繰り返さないとする日本に同意する」。

インドネシア:「安倍総理が歴代内閣と同じように2次世界大戦関連談話を発表したことは肯定的」「平和に寄与するという安倍総理の談話を支持する」。

中国:「戦争責任に対して明確に釈明をし、被害国の国民に誠意ある謝罪をすべきだ」としましたが、これは外交筋を通じて日本側に伝えたもので、直接的批判を避けて立場を伝えるポーズであって関係改善と立場の中間をとったとされています。

韓国:「残念な部分が少なくなかった」と記者会見上表明しましたが、「歴代内閣の立場は今後も揺るぎないと表明したことに注目している」「新しい未来に共に進むべき時だ」とも言及して日本に一部理解を示したともされています。

一方各メディアの反応はより幅が広い。例えば、もっとも激しいのは韓国主要紙で、「直接のお詫びがない」としながら対日政策について今後の韓国政府の対応に注文を付ける形になっています。朝日新聞は、「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」などの注目された文言は盛り込まれたが間接的引用が多かったと批判。WSJも「率直な謝罪は避けた」。タイムズも「日本の罪にきちんと向き合わなかった」などとしている。

一方、ワシントンポストは「融和的な内容」。AP通信は、周辺国に計り知れない損害と苦痛を与えたこととそれに対する深い悔悟を総理が表明したこと、将来の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないとしたことを紹介するなどニュートラルな報道。

よその評価はおいておいて、私が思うのは、過去の村山談話や小泉談話と比較してみて明らかに違うのは表現の魂の入り方。是非比べてみて欲しいと思います。官邸に内閣府参与の肩書をもつ総理の補佐役でスピーチライターもされている谷口さんによると(実は香川県出身)、この談話は総理自ら延々と推敲を重ねたものだとか。

もちろん文言について最後には関係国や関係者との調整があったものとは思いますが、日本国総理として、現在の日本を歴史軸と外交軸で見つめた時に発信すべき内容がバランスよく入っていると思います。米議会での演説に次いで良かったと思っています。感情論ではなく理性で考えて最高の内容だと思います。外交上の配慮、海外諸国民に対するメッセージ、自国民に対するメッセージとして、国際的平和への貢献、過去の反省などがバランスよく入っているという意味です。特に思うのが過去の反省に立った上で未来に繋いでいかなければならないとする部分。

少し前、未来永劫日本は周辺諸国に謝り続けるべきだと某政党のとある議員さんは仰っておられる現場に居合わせたことがありました。もちろん、戦争の反省と悔悟の念は持ち続けるべきですが、将来の世代に永遠と謝罪を続ける宿命を負わせ続けるのは政治じゃないわけで、歴史を正面から捉えて反省し、その上でプラスの循環を作っていくのが政治な訳ですから、それを明確に発信したことは私は大いに共感するものです。