先月末の5月27日、伊勢志摩サミットを終えた米国オバマ大統領は安倍総理と共に広島を訪れ、原爆慰霊碑の前にそろって立ち、在天の英霊に献花し、追悼の誠を捧げました。米国大統領の広島訪問はもちろん初めてでした。オバマ大統領の演説も安倍総理の演説も、別々に、そして総合して、とても感動的なスピーチでした。2012年に安倍総理が政権について、大きな歴史の一幕を政治家として、立て続けに迎えられることに、恐れ入っております。
98%以上の日本人が大統領の広島訪問を好意的に評価をしているという報道がありました。驚くべき数字であると同時に安堵しました。来訪に先立ち、大統領は謝罪しませんよ、とわざわざ米国報道官が表明していたので、余計なことをするなと思ったものですが、こういう事があっても98%の高評価というのは、日本人は確かに今でも日本人らしい心を持ち合わせているものだと思ったものです。
原爆投下の判断を下した国の大統領が、原爆投下された地を訪問する意味を、98%の人間が十二分に理解している。来るだけで分かる。謝罪をわざわざ求めるという気質も日本人には馴染まない。謝れと言って謝られても謝られた気は余りしない。さらに言えば、謝罪を求めようという意識などよりも、訪問による鎮魂に感謝する意識の方が遥かに強いように思います。
いずれにせよ、オバマ大統領の訪問の決断には大いなる敬意を表したいと思います。
なぜなら、先般5月初旬のGWに訪米した際に議会スタッフと議論になったのは、世論調査では、原爆投下は正当化されると考えるアメリカ人は56%であること(同様に考える日本人は14%)。アメリカは日本に謝罪する必要はないと考えるアメリカ人は73%であること。また、訪問が日本の右翼層を刺激する可能性があるか否か。中国や北朝鮮問題に対応するためには日米韓の関係が重要であるにもかかわらず歴史問題で日韓関係が望ましい状態になく、そうした状況下で韓国や中国を刺激する可能性があるか否か。アメリカの退役軍人を刺激する可能性があるか否か。一方で、トランプ候補が日本や韓国の核武装に触れているが、そうしたことを打ち消して核不拡散推進に実質的に寄与するか否か。日米同盟深化に寄与するか否か、など。果たして政権側がそんなことを考えたのかは分かりませんが、諸々総合的に判断した結果なのだと思います。
余談ですが、後日、5月中旬にケネディー大使とお目にかかる機会がありました。私からは、日本人は謝罪を求めるような精神構造にはなく大統領訪問が実現したら大多数の日本人は歓迎すると思うから是非大統領にはお越し頂きたい旨、お伝えしておきました。実は日程上訪問の可能性のある5月末には、5月29日というケネディー大使のお父さんであるケネディー大統領の誕生日があります。そんな日に訪問になれば、より歴史的に意味があるなと思っていたのですが、これは本当に余計なことなので申し上げることはしませんでした。
いずれにせよ、新たな歴史の一幕が明けました。日米同盟は間違いなく深化しました。地域の安定と平和はより確固となりました。よりよき世界を築く努力をして参りたいと決意した瞬間になりました。