厚労省の統計問題について

最近、誠にけしからんことが明るみになりました。統計問題。基幹統計ですから仮に単純ミスであったとしても大問題なわけで、それを遥かに超えて担当の意図的操作だとは、悪意はないと言っても、全く呆れて物が言えません。今日、厚生労働省の統計問題の監察結果が発表されました。平成の終わりまで、残すところ後3か月余り。平成のうちに、こうした問題は、作為であろうが不作為であろうが、糾弾し解消せねばなりません。

http://www.mhlw.go.jp/content/10108000/000472509.pdf

上記添付のように多くの問題がありました。一言でいえばガバナンス・統治能力の欠如です。正確な統計が得られていなかった期間は少なくとも1996年から。多くの問題をはらんでいますが、目立つのは2004年からのもの。従業員500人以上の事業所すべてを対象に勤労統計調査が行われるべきところ、全数調査は企業からの苦情が多く都道府県の担当者の要望に配慮する必要から、抽出調査に切り替えたのだとか。切り替えはいいとしても、切り替えが適正な組織プロセスで行われたわけでは全くないことが問題であり、その上、データ補正ミスもあった。担当者という現場の判断で運用方針が変わり、その上組織的な数値のチェックも行われないまま、今に至ったのだとか。結果論ですが東京都の職員の仕事が大変だから勘弁してやるために全国の社会保障受給者の給付額を減らしたことになります(抽出調査がダメだと言っているわけではありません)。まったく、証拠データに基づく政治(Evidence Based Policy Making:EBPM)を推進している最中なのに。

昨年に東京都のデータ補正(抽出調査なので補正が必要なのにしていなかった)を行ったとのことですが、この時幹部は現場の室長から全数調査していないとの報告を受け、しかるべき手続きを踏んで修正すべきと指示したとのことですが、結局現場に近い室長任せで放置され、公表されなかったとのこと。このことから、改善されるチャンスが恐らく何回もあったのだと思います。この統計は政府の基幹統計です。調査方法を変更するのであれば、当然、この幹部に言う通り、しかるべき手続きを踏まねばアウトです。そんなことも分からなかったのだとしたら愕然。敢えてスルーしていたのなら驚愕。

このことは、役所内の統治能力がないからつまらん、と言うだけではなく、なぜその問題を適切なプロセスですぐに政治に上げなかったのか、もしくは上げる必要も感じていなかったのか、上げにくかったのか、を考え、適正に処理されるよう徹底していかねばなりません。念のためですが、2004年の小泉政権からだけでも7つも異なる政権を跨いでの話ですので、様々な役所の幹部、様々な担当が知っていた筈ですし、様々な政治家が報告を受けて責任をとれる体制だったはず。そういう意味では、政局ネタにするものではないはずです。

厚労担当を血祭りに上げるのではなくて、なぜ斯様なことが起きてしまうのか、官僚組織分析をして、全省庁的に、問題があるなら直ぐに政治に上げる体制を早急に整備しなければなりません。政治が責任を取らなければならないのですから。そういうことを徹底しなければなりません。他に本当にないのか、そしてあるなら、直ぐに上げるのなら大目に見る、遅れて出てきたら厳罰に処す。このくらいの覚悟は必要なのだと思います。

ただ、その上で、ですが、統計セクションにこれまで国家がリソースを注いでいなかったのも事実です。EBPMなどという言葉は極最近になって言われ始めたものであることから分かるように、統計は極めて重要であるものの、雰囲気的にとでも言いましょうか、重要視はされていなかった。ここにも本質的問題が潜んでいます。2年前に、党内で統計の重要性や基盤構築に関する議論に関与し、政府に提言を行ったものとしては、無念でなりません。

https://www.jimin.jp/news/policy/134911.html

(初稿から何度か加筆修正しています)