経済の先行き見通し

経済の先行きについて不透明感が増してきたとする意見が多くなっています。日本全体でみたマクロの経済指標は決して悪くはありませんが、地域の生活者視点に立つと、漠然とした不安の声を聞かない日はありません。もちろん物価高や資源高騰に政治は直接答えを出していくべきは論を俟ちませんが、日本経済全体のフレームワークについて、私なりの見通しについて考えてみたいと思います。

まず短期的な視点での基本認識ですが、現在の為替相場は広く指摘されているように日米金利差からくるもので間違いないと思います。アメリカが景気過熱感(デマンドプル)によるインフレ懸念から金利を上げている一方で、日本は低金利政策を引き続き維持。日本も物価が上昇していますが、それは需要拡大による景気過熱が原因では全くなくて、資源高騰と為替下落のダブルパンチによるコストプッシュインフレです。従って、最も重要なのは、商取引上の価格転嫁が社会の中で適切に進むことであって、政治はそれを促すことが一番重要です。その上で、入口と出口の対策を打つ。原材料の急変対策・個人所得の拡大・政府調達の改革なのだと思います。

極端な円安を是正するために金利を上げるべきではないかとの主張がときどき見受けられますが、間違いです。そもそも為替操作のための金利政策というのは国際社会で受け入れられませんし、金利上昇によって企業業績は間違いなく低下する。現状すら維持できない経済状況となるのは目に見えています。因みに為替介入すべしという主張も僅かにありますが、政府が極超短期の急激な為替変動を嫌気しての牽制球を出すことはあっても、介入したところで本質的な問題解決にはならず、ましてや国際協調介入とならない介入は殆ど実効性がありません。米国にそれを受け入れる土壌は全くないと言ってもいいのではないかと思います。

日本の根本問題は需要不足です。これは個人も企業も将来不安からくるのかもしれません。少なくとも賃金が上がらなければ対処できない。従って、直接賃金を上昇させる取り組みをこれからも更に一層進めるべきですが、需要不足を補うための財政投入が基本的な処方となります。問題はワイズスペンディング。以前から同じですが将来価値を生み出す分野への投資、社会変革を生み出す分野への投資が必要です。

ただ、以上は短期的な話。少し中長期の話をすれば、世界中の企業が地球温暖化や経済安全保障など外部不経済を内部化せざるを得ない中で、過去10~20年かけて生産拠点を海外に移してきた日本企業は、今後しばらく続くであろう円安基調のなかで、同志国の中で比較優位な条件でサプライチェーンの最適化を実現し、結果的に持続可能な国際競争力を強めることになるのではないかと思います。従って、産業構造の早期転換を促すための取り組みも政治には求められているのだと思います。もちろん為替由来の話ですから、限界は当然でてくるのだと思いますが、現状先進国の中で一人負けの日本という状況は脱却できるのではないかと思っています。

振り返ると産業構造は紆余曲折を経て随分と変化してきました。約10年前であればまだ円安が輸出拡大とともに経済に好影響となるとの見方ができましたが、現在は様相も全く変わっています。民主党が政権を担っていた時代、世界経済も低迷している中で日本はデフレに喘ぎ、少子高齢化という構造問題を抱えて市場としての魅力が低下、そこに円高が加わり耐えられなくなった企業が生産拠点を海外に移しはじめた時代です。産業空洞化などと指摘されていた時代でしたが、経済界としては一定の経営合理性があったからそうなったのだと思います。

ところが国際秩序の地殻変動的な劣化、コロナ感染症の世界的蔓延、地球温暖化など地球規模の社会課題と持続可能性の追求、ウクライナ紛争などによって商取引における新たな脆弱性が顕在化、個社の経営判断にも大きく影響するようになり、世界的な産業構造やサプライチェーン構造の変化が起きようとしています。

こうした地殻変動がまさに起き始めている時期だからこそ、効率よく早急に最適と思われる状況に遷移していくことが望ましいのだと思います。従って、より具体的な将来予測、見える化ができるかどうかだと思っています。例えば脱炭素。私は脱炭素原理主義者ではないので、カーボンゼロを政策目標にしたくはないのですが、仮にカーボンゼロを目標にするならば、その時に見えてくる経済の状況、産業構造として取り得る幾つかの選択肢、というのが見えてくるはずです。こうした予測は当たるとか当たらないという類のものではなく、傾向を知るうえで必要なものだと思っています。