宇宙政策は岐路に立たされている

久しぶりに宇宙政策について考えてみたいと思います。宇宙政策は、5年ほど前に大きな方針転換をしました。これまで宇宙というと、科学技術、つまり夢の分野でしたが、夢だけではどうにもならなくなった。だから、科学技術のみならず、産業応用につながる事と、安全保障(もちろん専守防衛)の3本の矢を宇宙政策の基本柱にしました。基本方針である宇宙基本法ができ、宇宙政策基本計画ができ、内閣官房に宇宙開発戦略本部(閣僚会議)ができ、事務方としての司令塔として、内閣府に宇宙戦略室ができた。とても素晴らしいことで、先輩代議士の努力のおかげであると感謝しています。

問題はこれからです。前提は予算に制約があるというところです。

まず第一に、産業応用というけれど、視点はナイスですが、何やるの、というのが明確にない。一つは準天頂衛星。GPSが超高精度化される衛星です。とても意味がある。でもそれを打ち上げたから、宇宙政策は産業応用と必ずしも言えるのかという問題。また、防災衛星という案も一時期浮上しました。とりあえず感が満載です。だからこの部分のレイヤー。つまり、科学技術と産業応用を別物と捉えるのではなく、ここの溝をどのようにして埋めて橋渡しをするのかという戦略を立てなければならないと思っています。そして、産業応用に比重を置くといっても科学技術を疎かにしては絶対になりません。具体的には宇宙科学、国際協調宇宙政策、宇宙探査。全部重要政策です。

第二に、安全保障というけれど、これも視点はナイスですが、どうやるのという問題。昨年すったもんだの議論で国家安全保障局ができて、本当の意味での安全保障の戦略文書が、国家安全保障千戦略という形で発効した。で、それに基づいて、防衛計画の大綱ができ、中期防ができた。でも、宇宙を安全保障の切り口でどうするの、という戦略がない。国家安全保障戦略ができたのだから、宇宙の切り口での国家安全保障宇宙戦略が作られるべきだと考えています。恐らくこれは、宇宙基本計画を更新することで成就されることになりそうです。私は、科学技術と産業応用と安全保障が三位一体となっていくべきだと思うので、宇宙基本計画にこの三位一体戦略を書いて、国家安全保障宇宙戦略文書をつくって、安全保障からみた宇宙政策を書くべきだと思うのですが、どうもそうはなりそうもない。もちろんだからと言って、必ずしも駄目なことはないので、後はどのように運用していくかだと思っています。

第三に予算。中長期の宇宙開発計画があって予算も中長期展望がなければ、民間の会社はそれに投資はできない。技術者も維持はできない。だから、絶対に少なくとも5年、できれば10年の予算計画を策定するべきです。前々回の宇宙基本計画には5年でいくらという規模を目標とすることが書かれてあったのですが、新しい計画には絶対に盛り込むべきです。

第四に、一番重要なことですが、国民に納得できる説明ができること。政策担当者と話していると、ものすごく感じるのが、実は宇宙開発を推進していかなければならないという意味では私とものすごく一致しているのですが、予算をとってきて、前に進めなければいう思いの方が強い。私も宇宙関係の技術者だったのでよくわかるのですが、思いが強いと、分かってくれない人にであったときに、こいつ分かってない、で切り捨ててしまう。政治家になって、それでは駄目だということを肌で実感しているので、このギャップを一生懸命埋めなければならないと思っています。

いずれにせよ、分かってくれない人に分かってもらえるように説明できるようにしておかなければなりません。