社会的事業の支援による地方創生の加速

例えば商店街活性化。たぶんどこの地方でも悩ましい問題です。こういった社会的課題に行政ではなくて民間が取り組むケースが結構でてきています。行政の補助金で運営?違います。なるほどと思うような仕組みを編み出して、運営し、成功させているケースが増えています。やりがいを感じるアクティブシニアや若者も増えています。先進国の潮流でもあります。今回は、そんな社会的事業(ソーシャルベンチャー・ソーシャルビジネス)を支援する枠組みについて触れたいと思います。(政府への提言書を取り纏め中です)

●社会的事業支援の動機
先般も報告しましたが、過去半年間、党本部政務調査会に設置された社会的事業特命委員会で事務局長として活動して参りました。と言ってもまだまだ道半ば。特命委員会設置に至った背景は何かと言えば、いわずもがな日本は社会的課題先進国であって、先ほどの商店街活性化なども含めて、少子化と人口減少がもたらす諸課題、つまり少子化対策自体も含め、高齢化による社会保障財源、農業や中小企業などの地方産業の活性化、雇用労働課題、など挙げればきりがないほどに課題が山積しています。

本質的には、これらの課題は社会的課題ですので、公的機関が直接解決に乗り出せばいいのですが、中には痒いところに手が届かない領域がある。そうした領域の社会的課題にビジネスシーズを見出し、積極果敢に事業を立ち上げて課題解決を目指す民間事業者がいるならば、その公益的性格の重要性に鑑み、支援をすべきとの動機に基づくものです。そうした支援を通じて、公益的性格を帯びた事業にやりがいを感じる若者やアクティブシニアの新しい職場の創出にもつながり、また地域の稼ぐ力の創出にもつながります。

これまで主に市町村など基礎的自治体が補助金を出すなどして支援をするケースがこれまでもあるにはありました。が、補助金を出すとたいていの事業はだめになる。これは補助金の悲しい性です。とにかく息の長い支援が必要になることが最大の課題でしょう。また補助金だけの問題だけではなく、地方行政の協力と理解が全くないとか、民間の理解が全くないとか、信頼を勝ち取るのは困難とか、多くの問題があります。

ではどうやって支援するのか。以下に課題を挙げてみたいと思います。

●社会的事業の支援に向けた課題

・社会的事業の対象範囲はどうするのか。事業体の理想像はどういうものなのか。 当然ながら一部を除いて会社というものは社会性を帯びています。なぜならば需要があるからです。従ってどのような事業を対象とするのか、その対象とする社会性と事業性の範囲をどうするのかが問題になります。そして社会的事業の社会性認定をどうやって行うのか、また社会的事業に求められるガバナンスやビジネスモデルをどのように定義するのかというもの問題となります。結果から言えば、それらは解決しようとする社会的課題や社会の認識によって変化するので、柔軟に判断すべきという結論が第一に来ます。では誰が判断するのかと言えば、1つはDARPA型のように行政から諮問された第三者機関によって認定判断するか、あるいはマーケットに判断を任せるのか、が考えられます。少なくとも制度自体は国若しくは自治体が作ることになると思いますが、運用は民間主導で行うべきでしょう。

・資金面の支援はどのように行うのか。 先に触れたSIB(Social Impact Bond)やTID(Tourism Improvement District)/BID(business Improvement District)、あるいはTIF(Tax Increment Financing)のように広く薄く集める仕組みや、クラウドファンドの活用と地銀との連携、あるいは寄付と投資の中間的性格の流れを促進する税制などが考えられます。それ以外にもワンオフの制度も十分考えられます。

・自治体や地域社会の理解醸成や連携をどのように行うのか。 まずは社会に認知してもらうことが一番大切です。その上で行政の理解と連携が得られるようにしなければなりません。いずれの社会的事業もこの理解の上に成り立つものであるためです。また、自治体の調達様式の改革、特に先に触れたSIBの手法の普及拡大がターゲットの一つになります。

・資金面と併せて現場での大きな課題の一つが人材 社会的事業を起こすにあたって最もハードルの高いのが人材調達です。地域地域に人材育成とプールの制度を構築することが望ましいと考えています。また自治体職員の主体的協力も望ましい。行政職員が事業に参画できるのか。人事交流の一環というのでも切り抜けられるのかもしれません。大企業の協力も必要です。主体的協力を人材面で頂けるような制度構築も必要かもしれません。また、兼業促進も必要でしょうし、働き改革など柔軟なノマド市場の拡大が必要になります。

・事業にとって障害となる規制をそうするのか 社会的事業が壁に当たるとしたら、多くの場合、規制です。建築基準法や社会福祉法人法、消防法、車両運送法など、種々の規制が社会的事業にとって障害となる可能性があります。既存の制度であれば国家戦略特区指定を行うという方法もありますが、将来的にはより抜本的な改革が必要になるものと思います。
いずれにせよ、こうした解決ツール、支援ツールについては、社会的事業の目的によって対応が異なるものと思います。目的論の整理もしっかりと行っておくことも重要です。

●党本部でのヒアリングにご協力いただいた皆様

事業支援を行っている団体、資金調達を行っている団体、そして事業そのものを行っている会社の皆様です。本当にお世話になりました。今後ともいい制度設計に向けてよろしくお願いします。

UMARI代表取締役の古田秘馬さん

宮崎健日南市の油津商店街テナントミックスサポートマネージャの木藤亮太さん

ETIC代表理事の宮城治男さん

株式会社坂ノ途中代表取締役の小野邦彦さん

株式会社ケアプロ取締役顧問弁護士の寺西省悟さん

一般社団法人ジャパンギビング代表理事の佐藤大吾さん

株式会社R.Project代表取締役の丹埜倫さん

一般社団法人ノオト代表理事の金野幸雄さん

READYFORの米良はるかさん

スペインのスローフードビスカヤ名誉会長のマリアーノ・ゴメスさん

株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング代表の中山亮太郎さん

株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣香奈さん

一般社団法人RCF代表で新公益連盟事務局長の藤沢烈さん

日本財団ソーシャルイノベーション本部社会的投資推進室の工藤七子さん

株式会社大田原ツーリズム代表取締役社長の藤井大介さん

株式会社Prima Pinguino代表取締役の藤岡慎二さん

NPO法人グローバルキャンパス理事長の大社充さん

株式会社まちづくり松山代表取締役社長の加戸慎太郎さん

ARUN合同会社代表の功能聡子さん

株式会社AsMama代表取締役CEOの甲田恵子さん

株式会社自遊人代表取締役の岩佐十良さん

株式会社LITALICO代表取締役社長の長谷川教弥さん

TABLE FOR TWO代表の小暮真久さん

株式会社オープンエー代表の馬場正尊さん

一般社団法人新経済連盟理事の井上高志さん