今の役職に就いて、善然庵閑話シリーズを書くのも気が引けるのですが、今日は午前最後の便で帰郷し、手前ども主催の会合に出て、その足で夜行列車に乗って上京していますので、この際、年末独特の雰囲気に飲まれて何かを書こうと思い立ちました。
最近気になっているのがUSSインディアナポリスの歴史。USSインディアナポリスは終戦直前に日本の伊号第58潜水艦に撃沈されたアメリカの重巡洋艦で、太平洋戦争最後の米側の被害でした。何がこの船を有名にしているかというと、この重巡、広島長崎に投下された原子爆弾を米本土からテニアン島に運ぶ密命を受けた船。対潜水艦能力があるわけもなく、通常は駆逐艦を伴っての作戦となるはずが、密命であったので単独で航行。テニアン島にたどり着く。
その後、別の命を帯びて再出港することになるUSSインディアナポリスですが、なぜかここでも駆逐艦を伴わず単独で行動、そこで日本の伊号潜水艦に捕捉され、沈没。大勢の犠牲者を出したとの記録が残っています。
戦後、生き残った艦長は、多大な犠牲を出したことを問われて軍法会議にかけられます。大戦中軍法会議にかけられた艦長は、唯一この艦長だけであったと言われています。そして、遺族に誹謗中傷されて精神を病み自害。
ところが、その時の伊号艦長であった橋本は、このUSSインディアナポリスの艦長であったマクベイ3世に何ら非がないことを知っていたので、戦後直後から名誉回復のために尽力する。そして長い年月が経ったのち、ハンター・スコットという人の名誉回復運動によって連邦議会に決議がだされ、当時のビル・クリントン大統領が署名をして、名誉回復にいたることになった。
ちなみに、なぜハンター・スコットという男がこの件に関心をもったのかも面白い。それは、映画ジョーズに登場する老漁師が、元USSインディアナポリス乗組員で生き残りであったという設定で登場するからだとか。
なぜ、この艦艇を思い出したのかと言えば、来年度予算の大臣折衝で、新型護衛艦2隻を建造することが決まったのですが、この護衛艦は掃海機能を付与されることになっています。歴史にもしを問うても意味はありませんが、もし伊号潜水艦がUSSインディアナポリスをもっと早く発見していたら、歴史は大きく変わったかもしれませんし、広島や長崎での被害者も出なかったのかもしれません。一方で、もしこの艦に対潜水艦能力があったなら、この艦はこれほど有名にはならなかったのだろうと思います。海上自衛隊の新型護衛艦が掃海機能を付与されたことによって、何かこの艦が将来善事で有名になるようなことがあるかもしれません。