日米同盟とミサイル阻止力

(写真:政府への提言後に首相官邸で小野寺会長の記者会見に同席)

ここ1カ月間、コロナ対策の特にオペレーション政策を担当する一方で、イージスアショア配備プロセス停止を受けた新たなミサイル防衛政策の検討に事務局として提言書作成の責任を担うことになり、どちらも重い課題でしたが、昨日、後者のミサイル防衛の提言が完成し過日政府に提言を行いました。検討会議の座長は小野寺五典安全保障調査会長。検討会議議員は、防衛大臣経験者や外交安保の部会長などが並ぶ会議でしたので、説明するにあたってはかなり緊張しました。同様の任にあたった同僚福田達夫代議士にはまたここでも助けて頂きました。この間、会議が重なっても体は1つしかなく、関係者の皆さまには大変ご迷惑をおかけしましたこと、改めてお詫び申し上げたいと思います。


(写真:小野寺会長に同行し岸田文雄政調会長に提言書を説明)

新たなミサイル防衛について、端緒となったのはイージスアショアの配備計画が事実上廃止されたことです。廃止されても直ちに脅威になるわけではなく、現在でもイージス艦やPAC3という地上配備のミサイル防衛機能でしっかり守っています。しかし、ただでさえイージス艦には多様なミッションが与えられるようになっているため、近海に張り付けておくわけにもいかず、張り付けておいたとしても過大な負担を強いることになります。つまり常時持続的に日本全体を防護するには、課題が残る状態にあります。

そこで、どうやって日本を守るのかについて検討することにしたわけですが、やはり常時持続的に日本を守るには、イージスアショアの代替機能が必要だということになったのが1つの結論です。同時に議論されたのが、そもそも周辺国の技術力の進歩で、将来的には既存のイージスアショア的機能では守りきることに課題が残る、ということです。技術力というのは、例えば変則的な軌道で飛んでくるミサイルや、極超音速で飛んでくるミサイルなどです。そこで、打たさないために何をすればよいのか、という話になり、当然これは日米同盟全体の抑止力を強化する必要があるという話になるのですが、この件は実は自民党は過去に3回も提言書を政府に出してきたので、この方向を抑止力強化のために継承することになりました。ミサイル阻止力です。

ミサイル阻止力とは、具体的には、相手領域内であっても弾道ミサイル等を阻止する能力のことですが、過去の提言では、能力機能のスコープが提言に盛り込まれていなかったため、先制攻撃の可能性など様々な憶測を呼ぶことになりました。そこで、今回は、「憲法の範囲内で、国際法を遵守しつつ、専守防衛の考え方の下」としたうえで、敢えて「性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有しないなど、自衛のための必要最小限度のものに限るとの従来からの方針を維持し」と付記して検討することを政府に求めることにしました。

ところが、ここまで書いても、メディアは「専守防衛の逸脱」などと、たぶんわざと喧伝しておりますが、風説の流布に近いものです。先制攻撃は求めてもいませんし、実際にできません。憲法違反であって国際法違反になります。あくまで自衛権の範疇でのミサイル阻止力です。従って、武力攻撃が発生してからでないと行使できません。そして法的解釈の限界は、専門的になって恐縮ながら、相手が武力攻撃に着手した時点、ということになり、武力攻撃のおそれがあるというだけでは行使はできません。よく着手の判断は困難ではないかという指摘がなされますが、困難であった場合は着手とは認定しません。しかし、能力を保有していること自体、相手に対する抑止になります。仮に1発目の着手認定ができなかったとしても、それ以降の認定は明らかなので、打たせないこと、躊躇わせることに繋がります。これが抑止力です。

あくまでこれは日米同盟全体での抑止力を向上させるための取り組みの一環ですので、米国からは歓迎するメッセージが届いていますが、敢えて拡大抑止の信頼性の更なる強化を含む日米同盟の一層の強化等に取り組むことを求めています。また、国民の理解あっての防衛政策ですので、丁寧な説明の努力も求めています。

最後にイージスアショアの話ですが、イージスアショアは、ミサイルによる脅威から防ぐために計画されたもので、高額だという印象があるかもしれませんが、仮にミサイル防衛装置が日割りのサブスクかレンタルであったとしたら、皆様どのくらい出しますか。こういう質問を続けていた時期がありました。北朝鮮がバンバンミサイルを打っていた時代でしたが、平均的に10円とのお答えが多かったのを鮮明に記憶しています。実際、運用費も含めて滅茶苦茶高く見積もったとして、仮に6000億だとしても、30年間運用を目指していたので、年間100億円。国民一人当たり年間100円。1日あたり1円もしない計算になります。しかし、いずれにせよ断念したわけですが、まずはその断念した正式な調査報告をまだ受け取っていませんので、同提言で提出を求めています。

というのも、ブースターが落下するから、という理由が政府から第一報として示されていますが、そもそも迎撃したら破片はどこかに落ちてくるわけで、破片の被害規模より遥かに弾道ミサイルが着弾する被害の方が大きいから迎撃するのであって、安全保障政策としての政府の正式回答としては受け止めきれるものではありません。一方で、安全保障政策を遂行する上では地元の理解というのが何より大切であるので、理解はしています。そこで、正式な調査報告を求めることにしました。同時に、破片を回避するためのシェルターの整備促進も求めることにしました。実際に、シェルター先進国では、地下鉄の駅を避難所に指定したりしています。そうした方向で検討が進むことを期待しております。