イスラエルとハマス

中東でのイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの武力衝突が激化、近年で最も深刻な武力衝突にいたっており、大きな懸念をもっています。即時の武力の停止を求めたいと思います。

直接の端緒は、東エルサレムでのパレスチナ人とイスラエル警察の衝突。4月中旬から始まったラマダンの集会を治安維持の理由で阻止するためにイスラエル警察がバリケードを設置して封鎖。緊張が高まっていた中で、東エルサレムで暮らすパレスチナ人の立ち退きを求めるユダヤ人の民事訴訟の勝訴判決で、旧市街各地で散発的に衝突が拡大。この状況に、イスラム武装組織ハマスが、ロケット弾による攻撃を示唆して警告しはじめ、実際に実行。それに対する自衛措置として、イスラエル側がハマスの拠点をピンポイント攻撃を開始し、範囲を拡大。この事態によって、イスラエル国内でも住民同士の衝突が激化しています。

東エルサレムはご存じの通り宗教上の困難を内包するイスラエルが実効支配する地域で、国際法上はイスラエルによって違法に占拠された地とされています。パレスチナから見れば、名目上首都と位置付けているものの不法に奪取され、民事訴訟を起こされ、退去を命じられたことになります。日本で言えば浅野内匠頭だったのかもしれません。極めて複雑な地域で、軽々に断罪することは困難ですが、しかしそうだとしても、少なくとも平和裏に解決することが望まれますし、対抗措置としての民衆に向けたロケット弾攻撃というのは、事前警告の有無にかかわらず、日本人には全く理解できない事です。即時停止を求めたいと思います。

ロイター通信社は、ハマスのロケット弾攻撃は、イスラエル国内政局の混乱に乗じ、アッバス議長を窮地に追いやるためであった可能性を指摘しています。パレスチナ自治政府は、ファタハ(政党)のアッバスを大統領としておりますが、議会はガザ地区を実効支配する勢力であるハマスが過半を占めており、連立しつつも緊張関係にあります。こうした背景から、民事訴訟をきっかけにロケット弾攻撃という過激な行動に至ったという可能性は否定できないのだと思います。しかし一方で、そうだとしても均衡性を大きく逸脱する反撃には同意できるものではありません。イスラエルにも攻撃の停止を求めたいと思います。

周辺地区に暮らす日本人から状況を知らせるメッセージが届いています。住民目線でみた目の前で起きていることと報道がかなり異なると。いちいちはここでは挙げませんが、遠い国で起きている関係ないこととして見過ごすべきではなく、少なくともちまたに拡散される情報をうのみにすることなく、歴史的背景や政治関係を十分に把握し理解することが重要なのだと思います。一刻も早い事態収束を願いつつ、邦人の安全確保を最優先事項とし、秩序の安定に向けてもできることを模索していきたいと思います。