インテリジェンス能力

何事も、決断には情報が必要です。決断しないという決断も同じです。そして国際秩序の劣化がこれほどまでに甚だしく、もはや国際秩序をシステムだけで維持強化できる時代ではなく、現実問題として各国の指導者の意思決定が極めて重要になっています。従って、我が国が独自に情報を収集し分析できる環境を整備しておくことは、これまでと全く異なるレベルで劇的に重要になっています。

もちろん、本来はシステムで安定化すべきは論を俟ちません。戦後直後、先人の努力によって国連を始め、NATO、IMF、世界銀行、GATT(WTO)などが設立されましたが、今はまさに再びこうした大きな枠組みを再構築すべき時代なのだと理解しています。そしてその努力は、日本こそが世界の先頭に立って行っていくべきです。しかし、そうだとしても、情報力を抜本的に高めなければ、おおよそ不可能なはずです。

2020年、自民党の経済安全保障推進本部(当時は新国際秩序創造戦略本部)では、国際経済秩序の劣化に対応するため、いわゆる経済安全保障の推進のために必要な、具体的な政策措置を公表しました。小林鷹之事務局長(当時)執筆のものですが、経済インテリジェンス強化の必要性が初めて謳われた公式文章です。爾来、2023年には、経済インテリジェンス能力強化に向けた具体的な取り組み方針を示し、2024年、そして2025年も進捗に応じて推進して参りました。

2020年提言
2020年提言
2023年提言
2023年提言
2024年提言
2024年提言
2025年提言
2025年提言
2025年提言2
2025年提言2

2023年提言は、「経済インテリジェンス」と謳ってはいますが、当然ながら伝統的領域も含めた国家インテリジェンス体制全体の強化を提言したもので、政府より適宜、進捗の報告を受けてきましたが、2026年には体制整備への着手を予定していたところ、丁度、奇しくも高市政権発足に伴って連立枠組みの変更があり、新たに迎え入れた維新との合意文章では、まさに国家インテリジェンス能力の向上が謳われ、極めて高い政治ムーブメントが生まれました。

第一に、司令塔機能の強化です。インテリジェンス強化は2023年提言でも触れましたが、組織を作ったから強化されるものではなく、情報の適切な要求や評価がなければ良質の情報が集約されるわけではありません。収集する側にとってみれば、使ってくれなければ遣り甲斐が生まれないのは当然で、政府全体でこうしたサイクルを生み出す文化を醸成しなければなりません。加えて種々の情報を集約して分析する機能や新領域情報対応のための情報基盤も強化する必要があります。そのために必要最低限必要なのが強力な司令塔です。

第二に、対外情報収集です。現行の国家安保戦略でも人的情報収集能力の強化が謳われていますが、これも単に組織を作って人を当てがっても強化されるわけではありません。人的活動を適切に実施するために必要な機能とともに、十分な政治によるガバナンスが求められます。

第三に、外国干渉防止です。外国主体のための影響工作を防止するために必要最低限の機能は、透明化です。外国主体のための活動を見える化するため、諸外国と同様の登録制度を設けることは既に共有されていますが、対象をどうするのかなど、論点は多岐にわたります。

重要なポイントは、政治によるガバナンスとインテリジェンス能力を同時に確保することです。論点は多岐にわたりますが、来年が極めて重要な時期となります。党本部に設置した国家インテリジェンス戦略本部の本部長代理兼幹事長として、職責を全うして参ります。

(写真出典:NHK)