経済安保政策の立案活動と自己評価

自由民主党政務調査会経済安全保障推進本部(前身の新国際秩序創造戦略本部を含む)が取りまとめてきた提言のうち、基本文書である「わが国が目指すべき経済安全保障の全体像について」(2022年9月)と、その一部を取り上げて詳細を検討した個別提言、及び次のステップとしての新たな提言の全体について、

① 我々がこれまで何に取り組んできたのか(提言の系譜と体系)
② そのうち何が実現できたのか(公開資料に基づく実現状況の評価)
③ 何が実現できていないのか(残された課題)

を一覧できるよう整理しました。評価は基本的に、法律の成立・公布・施行、閣議決定、制度の運用開始、政府文書の公表といった公開情報を根拠とし、その時点を明記しました。

■総括

(1)8つの戦略的アプローチ

2022年9月の基本文書は、経済安全保障の理念・定義を示したうえで、8つの戦略的アプローチ(①経済成長の強化・持続化、②自律性の向上、③優位性・不可欠性の獲得、④公正な競争環境の整備、⑤対外発信・広報、⑥インテリジェンスの強化、⑦体制の整備、⑧人材育成)を提示したものでした。この枠組みは、その後4年間の提言活動を通じて一貫して維持され、個別提言はいずれもこの8戦略のいずれかを深掘りするものとして位置づけられています。

(2)7本の提言書、71項目の具体策、5本の関連提言書

上記の提言以降、8戦略を総合的に実装するため、7本の提言書、71項目の具体策、5本の関連提言書を政府に提出し、その実装を求めてきました。

〇経済安全保障推進本部による提言(7本)

日付内容
2022.09 わが国が目指すべき経済安全保障の全体像について【基本文書】
8戦略。経済安全保障の理念・定義を示し、8つの戦略(全体像)を提示。新たな国家安全保障戦略に反映すべき事項を列挙した、以降の全提言の土台。
2023.10 経済的威圧など経済安全保障上の重要政策に関する提言【戦略4の深掘り】
戦略4(公正な競争環境の整備)のうち経済的威圧への対処を、平時/被威圧時/第三国被威圧時に分けて具体化。あわせてリスク点検(RA)と研究セキュリティ・インテグリティ(RS/RI)を提起。
2024.09 技術流出防止など経済安全保障上の重要政策に関する提言【戦略3の深掘り】
戦略3(優位性・不可欠性)の裏面である「守り」を、ヒト・モノ・カネ・サイバーの4経路に整理して体系化。「育てることで守る」(Run faster型)の考え方を提示。
2025.05 有事を見据えた経済安全保障の確保及び骨太方針に関する提言【戦略2・6の深掘り】
平時中心の議論から明示的に有事を見据えた議論へ転換。リスク点検の高度化と経済インテリジェンス(総合シンクタンク構想)を柱に、推進法3年後見直しの論点を提示。
2025.06 我が国造船業再生のための緊急提言【個別産業への適用】
8つの戦略を特定産業に当てはめた実装例。海運・造船対策特別委員会との合同会議として、生産能力・人材・脱炭素・同志国連携・需要確保の5分野で緊急提言。
2025.12 新たな安全保障環境において求められる経済的措置に関する提言【次のステップ】
推進法改正の具体的な設計図を提示。シンクタンク、官民協議会、海外事業支援、医療分野追加、データセキュリティ、日本版CFIUS、競争政策等を網羅。
2026.04 国家安全保障戦略など三文書見直し及び骨太方針に向けた提言【次のステップ】
3つの基本認識(新国際秩序の形成/安全保障と経済合理性の両立/有事前提の強靱化)を提示し、集団的自律性、生産力こそ抑止力、AI・データ時代の安全保障といった新概念を提起。

〇関連会議による提言(5本)

日付内容
2026.05 国家安全保障戦略等改定や日本成長戦略策定に向けた提言【関連提言】
国家安全保障戦略等改定や日本成長戦略策定に向けた提言のうち、国家サイバーセキュリティ戦略本部に関連する経済安全保障・サイバー分野の提言。
2026.06 国家安全保障戦略等改定や日本成長戦略策定に向けた提言【関連提言】
国家安全保障戦略等改定や日本成長戦略策定に向けた提言のうち、科学技術イノベーション戦略調査会に関連する技術・イノベーション分野の提言。
2026.06 新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言【関連提言】
新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言のうち、宇宙開発特別委員会に関連する宇宙分野の安全保障・経済安全保障に関する提言。
2026.06 新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言【関連提言】
新たな国家安全保障戦略の策定に向けた安保調査会による主軸の総合的な安全保障・経済安全保障に関する提言。
2026.08 我が国の『情報防衛力』の強化に向けて【関連提言】
我が国の情報防衛力の強化に向け、国家インテリジェンス戦略本部による情報力強化にむけた制度・体制整備に関する提言。

(3)71項目の評価(着手含めて62%を実現)

今回抽出した71の施策項目のうち、法律・制度・予算として措置され運用が開始されているもの(◎)は28項目(39%)、制度的な手当てや着手はなされたが提言の水準への到達が途上のもの(○)を含めると44項目(62%)に達します。特に、①経済安全保障推進法の制定とその3年後見直し、②セキュリティ・クリアランス制度の創設、③能動的サイバー防御の法整備、④対内直接投資審査の強化と日本版CFIUSの創設、⑤造船業再生に係る官民投資とロードマップ策定 の5つは、提言から立法・予算措置までが明確に跡づけられる成果です。

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