昨年末、政府はTPPの経済影響試算を公表しました。どう計算しているかというと、GTAPという数理モデルを使った計算で、いろいろな仮定に基づくものなので、絶対正しいということではありませんが、大まかな方向性は把握できるものです。
で、結果から言えば、実質GDPは2.6%増、だいたい14兆円程度の経済拡大効果、雇用は80万人増となるという試算結果です。14兆円ってどの程度の額かというと、例えば消費税にして7%分、あるいは貿易の輸出額が73兆円(輸入が86兆円)、旅行収支の収入が2兆円、などと比較できます。結構大きい数字です。
気になる農林水産物については、最終的に1300〜2100億円程度の生産額減少。どの位の数値かというと、農林水産物生産額が10兆円程度ですから2%程度の価格低下になります。この額は先般発表した「総合的なTPP関連政策大綱」で示された対策によって生産は維持されると見込まれています。
なお、食料自給率という言葉はあまり私は好きではありませんが、この自給率に対するインパクトはほとんどないという試算結果がでています。
一般論として、自由貿易が目指す目的は、輸出入の増大によって生産性が向上するというプロセスと、それによって実質賃金が上がり雇用が増えるというプロセスと、実質所得の増加によって貯蓄と投資が増し資本ストックが増えるために生産力が拡大する、という3つのプロセスを通じて、生産性と投資と労働の好循環を目指したものです。
日本という国は、ものすごく内需依存度が高い国で自分だけで食っているようなもの。TPPについて言えば、対内直接投資残高(GDP比)で言えば、米21%、加35%、豪41%、星252%、チリ67%などですが、日本は突出して低く3.8%です。投資開放度が上がれば経済へのプラスのインパクトが大きく、1%上がるとGDPは3%上がるという試算もあります。
つまり日本全体としては期待は大ということになります。
しかし忘れてはならないのは、これはマクロの話であって、国民の皆様が何を営んでいるのかの内容によって明暗が分かれる可能性があるということです。ですから、明暗を分けさせないために細かい対策をこれから考えなければなりません。
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki03.pdf
(参考:産出額)
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/nougyou_sansyutu/pdf/shotoku_zenkoku_14.pdf