ルックコリア?

かつて80年代初頭に当時のマハティール首相はマレーシアも日本や韓国の勤勉精神に学ぼうと種々の政策を打ち出しました。ルックイースト政策です。結果的に日本や韓国から企業進出が増えすぎて国内の批判を浴びることにもなりますが、しかしルックイースト政策は在任中続けられ、国力は見違えるほど強化されました。

現在の日本。震災発生直後から、急激な円高と電力供給の問題から、企業の海外移転に対する懸念が各方面から出されていましたが、ここにきて現実味を帯びてきました。先日、日経新聞が四半期ごとに発表している動向調査で、4割の経営者がこのままだと3年以内に移転せざるを得ないと回答しています。

理由は、1番が電力供給の将来見通しで約半数、後は法人税、TPP、具体的政調戦略と続く。さもありなん。政府は電力問題を節電や売電で対応しようとしておりますが、数値を積み上げるととてもではないが足りない。企業にしてみれば、山本五十六ではありませんが、1年や2年は節電やってみせましょうが、それ以上は難しいし、国際競争力なんて言葉もむなしい状況になる、というのが現状だと思います。

さらに国際競争環境は悪い。牽引役の産業分野では、現在の対抗馬は韓国。その韓国は戦略的にアメリカ・EU・インドなど主要国とEPA/FTA(平たく言えば貿易自由化交渉)を締結しています。日本もASEAN・メキシコ・チリ・スイスなど、頑張っていますが、市場規模は断然の違いがある。例えば車で言えば5倍は韓国の方が有利。

さらに円高。例えば造船分野では現在の為替だと同じ船を造っても3割は日本製の方が割高になるとの指摘もあります(日経)。

そして法人税実効税率の周辺国に較べたときの高さ。かなり昔から指摘されていた点ですが、結局先に成立した税制改正法には盛り込まれませんでした(平成23年度税制改正法)。

さらに留めが、悪魔のお誘いか天使のお誘いかは分かりませんが、韓国やアメリカからの日本企業への誘致運動。韓国は、電気料金は3分の1、法人税は5年間無料で結構とおっしゃっているそうです(自民党エネルギ政策合同会議より)。

これでは、日本が好きだぁ〜という社長でも考えざるを得ない。

そういう状況で、当面の原発政策について「再稼動しなくても電力は大丈夫」という政府の方針発表で、企業は計画さえも立てることができないのではないかと思います。

ここ最近の韓国の国家戦略には非常に感心させられます。産業戦略、教育戦略、農業戦略、どれも一つの筋が見えます。人によっては韓国はまだまだと言うかたもいらっしゃいます。例えば最近韓国勢に押されまくっているIT産業も中身は日本製だとする主張です。しかし中身も韓国勢に押されつつあるのが現状です。

不毛な競争意識は不要ですが、ルックコリアと主張しないといけない時代がいつかくるのかもしれません。