アジアインフラ投資銀行(AIIB)に想う

一昨年初旬くらいから中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の話題を徐々に聴くようになり、現在、盛んに議論されています。アジアに対する融資機関にアジア開発銀行(ADB)というのがありますが、基本的には同じものです。なぜ中国がここ数年AIIBを言い出しているのかというと、アジアは今後インフラ需要が増えていくのにADBは投資基準が厳格すぎて使い勝手が悪いから、どんどん投融資できる機関をつくるのだ、と中国は言っています。

一昨年中国を訪問したときに中連部の某氏と議論になりました。私からは、否定はしないし協力できるところがあるならするけど、AIIBのコンセプトが不明瞭だ、ADBと相互補完になるのか、という投げかけをしました。当時、岸田大臣が何かの国際会議でAIIBについて少し否定的なコメントを出した直後だったので、大いに盛り上がりました(少し険悪にもなりましたが)。

このコンセプトの背景には、中国の一帯一路という戦略があります。今年の全人代でも話題になったキーワードですが、要はヨーロッパまで続く交易路の確保であって、陸路にあってはシルクロード経済ベルトと呼ばれるルート、海上にあっては21世紀海上シルクロードと呼ばれるルートを確保し、その経路の開発を中国主導で行い、東アジアとバルト海を結んで、東アジア・中央アジア・中東の経路を確保し、巨大市場を睨もうとするもの。

もっと言えば、細かくは言いませんが、中国にしてみれば、アフリカまでを睨める、という視点と、ロシアとしっかり手が組める、という視点と、昔中国が新しい大国関係(最近は新型国際関係と言っていますが)と言っていたように、こっちの大陸はこっちに任せなはれ、あんたら(米)はそっちの大陸だけ見ときなはれ、という構想の一端として見えるという視点、などを考え合わせる必要があります。これは、マッキンダーの地政学を彷彿とさせる超20世紀的な感じがします。逆に言えば、基準が高すぎるTPPには入れない分、西に向かうしかない中国という捉え方もできます。

で、日本としては、AIIBに入らないとインフラ輸出など商売にマイナスだよねという視点もありますが、逆に、ADBがあるのになんでやねん、ということと、意思決定機関はどんなものなのよ、というガバナンスの問題、ばんばん無秩序にとまでは言わないけど過剰な融資なんかしちゃったら借りた国が返済に困るし出資した方も苦しんでアジアぼろぼろになりませんかねぇ、というリスクの問題、そしてひと段落上で述べた戦略的な視点が中長期的に日本にとってどうなのか、たとえば中国の海洋進出が本格的になるため、尖閣が中国にとって極めて重要なものになるという具体的な安全保障問題にも直結する課題です。なので、基本的にアメリカとは同じ視点ですので、慎重にならざるを得ない。

欧州諸国にしてみれば、東アジアの市場が睨めるので魅力的。であれば、アメリカがどう言おうが日本が目を三角にしようが、入りたいと思うはず。で、日米の(というか米の)顔色を窺って欧州勢は様子を見てましたが、結局当たり前のごとく、イギリス・フランス・イタリア・スイス・ルクセンブルク・・・と参加を表明していきました。

そこにきて、急に政府内から、雪崩を打つように、あれ?入った方がいいんじゃないの?という声が聞こえてくるに至ってます。え?これって、国際会議の席上で昔からよく言われる冗談に聞こえませんか?「豪華客船が沈没しかかっている。船長は乗客を海に飛び込ませないといけない。何と言ったら飛び込んでくれるのか。アメリカ人には”飛び込んだらヒーローになれるぞ”、ドイツ人には”飛び込むのは規則です”、イタリア人には”美人が海にいるぞ”・・・日本人には”みんな飛び込んでいますよ”」と。

AIIBがADBと協調してアジアの発展に寄与できるとしたら、大いに喜ぶべきことです。でも協調できるのかどうかの判断材料を中国は示してはいません。何も中身を言わないで、入らないと知りませんよ、というのは少し乱暴な気がします。ADBとの覇権争いでは決してない。上記で述べた地政学的観点からの戦略を追求すると必ず戦争に、とは言いませんが、争いになります。新たな不安定要因をつくるべきではない。

決して入るべきではないとは言っていません。ちゃんと考えて入るか入らないかを決めなければならないと言っているだけです。何も考えずに単に、目先の商売のことを気にして入るべきだと軽々に発言するのは如何なものかということであって、戦略の思考停止(日本ではよくあるような気が・・・)になるべきでないということです。

日本は負けない事が重要で、アメリカは勝つ事が重要

観光収支が劇的に改善していることは皆様もご存知かと思います。日本の観光地はどこでも結構外国人がいらっしゃいます。現在訪日外国人は1400万人程度。落とすお金は平均15万円程度で、年間2兆円にもなっています。政府は2020年までに2000万人、その後は3000万人を睨んでいます。こうしたことは、以前、航空政策のところでも触れましたので、深入りしませんが、外国の方に、もっと日本のことを知ってもらうにこしたことはありません。

それがクールジャパンと呼ばれている取り組みです。先日も、党のクールジャパン戦略特命委員会にて、日本生まれのハリウッド俳優であるMasi Oka氏(本名岡政偉氏)にお越しいただき、日本のコンテンツビジネス(映画産業など)について意見交換をさせていただきました。

アメリカなどでは、ゴジラなど日本のコンテンツが流行っているのに収益が、それが日本にもたらされていないため、日本からは積極的にコンテンツを海外に輸出しようという動きが出てこない。マシオカさんは、もっともっと促進すべきだと訴えられました(ちなみに、なぜ日本のコンテンツ収益力が悪いのかというと、結局配給会社が牛耳っているから)。

その中で、最も印象に残った言葉。それは「日本は負けない事が重要で、アメリカは勝つ事が重要」。誠治はリスクをとった人のリスクをサポートすべきであるし、日本人はリスクをとった人を受け入れるべきだとおっしゃる。同感。映画産業だけではなく、リスクを取る人が市場を切り拓くという意味で非常に意味深い言葉です。

マシオカさんの名前を世に知らしめた映画は「ヒーローズ」という映画ですが、成功してから乗ってきた人が多い。成功する前に、リスクを承知でそれにかける姿勢を大切にしなければなりません。政治に何ができるか、しっかりと考えていきたいと思っています。

そうした基本的な問題を踏まえて、以下、マシオカさんがおっしゃったことを中心に、現実のコンテンツビジネスの日米の違いを考えてみたいと思います。

まず、日本だってマンガなど世界で放映されているから、がんばっているんじゃないの?と思いの方。実は、こうした成功例は、まだまだニッチビジネスでしかない。しかも、日本の戦略は、小さいところをコツコツとやっているイメージがあるとのことで保守的すぎる。結局リスクを取れない構造が災いしているという感覚があります。それでは本格的に参入できたというにはほど遠く、基本的にマスマーケットをとっていかないといけない。

例えば、中国は、ヒットする前に巨額の投資を映画に対して行って、中国の俳優を出させることもあるそうです。そして、こうした行いは日本人的感覚からすると、少し如何なものかと思いがちですが、アメリカ的感覚からすると、クールなのだそうな。日本の中だとこうした慎ましさは大切だけど、世界に出ていくと、世界に通じる感覚でいないと通用しないということでしょう。

また、映画の世界でのビッグチャンスというのは、なかなか訪れないわけですが、そうしたチャンスをしっかりつかめるかどうかも勝負です。アメリカも人脈社会なので世界中に人脈を作っていけるかも勝負です。もちろんこれはコンテンツビジネスだけの問題ではありませんが。

日本政府も、クールジャパン戦略には取り組んでいます。特に2020年のオリンピックを睨んだ戦略は重要です。また地方にとっても、産品の海外展開やコンテンツ発信にとって重要です。政府全体のクールジャパン関係予算も昨年より増やしていただいています。先ほどのリスクの話でいえば、海外需要開拓支援機構(通称クールジャパン機構)も立ち上がり、何件かの採択が進んでいます。北海道は同機構と業務提携をして連携していくことにしたのだそうです。

http://www.cj-fund.co.jp/files/press_150128-1.pdf

ちなみに日本が誇るアニメについてですが、実はアニメのスタジオの40%がカナダにあるのだそうです。理由は単純明快で税の優遇が半端ないとのこと。もちろん、だから日本でも、という単純な話ではないとは思いますが、コンテンツビジネス育成支援という意味での環境整備は考えなければなりません。

東日本大震災追悼式

日本に未曽有の災害をもたらした東日本大震災から今日で丁度4年を迎えました。改めてお亡くなりになった方々に心から追悼の誠を捧げますとともに、ご遺族の皆様にお悔やみ申し上げ、未だ困難な暮らしを余儀なくされている被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げる次第です。

今年も、天皇皇后両陛下、総理はじめ三権の長、海外の外交使節団の陪席のもと、東京の国立劇場で執り行われた追悼式に参加して参りました。

総理からは、高台移転など復興は新しい段階に入ったものの、未だに困難な生活を余儀なくされている多くの被災者がいらっしゃることの認識のもと、改めて復興に向けて集中的に全力を注ぐ意思が示されました。

陛下からは、とくに益々ご高齢となられている方々のご健康を心配する暖かいお気持、危険を顧みず防災活動に従事している人たちへの心配り、未だ困難な暮らしを余儀なくされている被災者の、国内外の多くの方々のご尽力により被災地の地場産業や防災設備が徐々に改善していることへの感謝が示され、被災者の方々の暮らし向きが依然厳しいとの認識のもと、国民全員が寄り添うことが大切であることをお説きになられました。また、14日に行われる国連防災会議で、この大震災で得た教訓が世界中で分かち合えることへの期待と、被災地に一日も早く安らかな環境が戻らんことを心から願うお気持ちが示されました。

ご遺族代表の方のお言葉は、余りに尊過ぎ、ここに書く気持ちにはなれませんが、恐らく筆舌に尽くしがたい永遠に消えることのない心の傷を前に、私自身無力である恐れを感じながら、陛下のお言葉にもあったとおり心から寄り添うことが大切なことを改めて認識しました。復興に向け全力で取り組まなければなりません。

予算委員会分科会にて地方創生の議論

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本日、予算委員会分科会にて石破大臣に対して地方創生の推進に関する質疑を行いました。地方創生の戦略立案にあたって、社会と資本のバランス、演繹と帰納のバランス、マクロとミクロのバランスを考える必要性をお訴え申し上げました。また、地方の総合戦略立案にあたって、地方間の連携を促進するような予算の使い方をご提案申しあげました。また、地域経済分析システムの重要性に触れ、今後とも、地方の見える化が促進され、地方の戦略作りにお役に立てるシステム作りをお願い申し上げました。

医療と福祉の将来展望

国際医療福祉大学院の高橋泰教授によると、現在推定されている人口統計から計算すると、介護需要は2030年にピークを迎え、現在より49.7%増加する一方で、医療需要は2025年で11.1%増加とのこと(費用換算)。そして、地域によって病院や介護施設などのリソースや人口動態も違うので、需給バランスが地域によって当然違ってくることになります。

第一に、供給側の病院や介護施設などのリソースから見ると、それらの機能の戦略をどうするのかということです。どういうことかと言えば、75歳以上のご年配者が多くなり、75歳以下の人口が減少してくるので、急性期医療など治療目的の機能よりも、住介護などの地域包括ケア病院にシフトしていかなければなりません。そしてこれは実際に国の方針で示されている方向です。

第二に、日本全体として、需給のバランスそのものの戦略をどのように立てるかです。例えば75以上の高齢者人口の増加(1.5倍)を見越して、供給側も1.5倍にするのかどうかという問題です。また時間軸の議論も必要で、10〜20年に来るピークを越えればまた需要は下がってきます。人間誰しも老いるので、高齢者だけの問題ではありません。働く世代のやる気や死生観にも関係する問題です。真剣に慎重に考えていかなければなりません。

第三に、前述しましたが、地域によって病院や介護施設などの人口当たりのリソースや人口推移はかなり異なるので、医療介護の余力やその推移、そして需要ピークの時期や増加率は全く違う。したがって、地域ごとの機能やボリュームの戦略が必要なのと同時に、日本全体の戦略との摺合せが必要になってくるはずです。

第四に、ただし供給側の政策だけでは、どう考えても追いつかないので、需要側の調整が必要になります。何のことかと言えば、ご推察の通り、大都市から地方への人口移動です。

従って、供給側の機能とボリューム、需要側のボリューム、そしてそれらを勘案した地方ごとの医療介護戦略と日本全体の戦略が必要になってきます。

先の記事にも書きましたが、現在、地方版の総合戦略を地方が立案することになっています。その際、国は地域経済の分析ツールを提供することになっています。問題は、医療福祉関係やその他の分野の総合的な分析をどのように行うのか。どの程度国がその環境を提供するのかです。

なぜならば、現在は中小企業などの産業経済分析だけですが、地方創生の目的は、地方経済の活性化による経済好循環と併せて、人口減少問題に正面から取り組むことです。であるならば、産業政策だけではなく、医療福祉のみならず、雇用や農業も、総合分析できる環境が整っていなければなりません。どこまでできるか分かりませんが、努力はしていきたいと思っています。

 

 

中小企業・小規模事業者対策

地域の経済が好循環を生まなければ日本の衰退は止まりません。その好循環を生むためには本質的な地方の経済循環構造を改善していかなければなりません。改善するためには、何が起きているかを理解しなければなりません。何が起きているのかを分析した上で、これから1年かけて施策を創っていければと思いますが、そうは言っても少し時間はかかります。なのでそれまでの中継ぎと私が捉えている、国による中小企業小規模事業者の補助事業等の話に触れておきたいと思います。

詳細は、「ミラサポ」という中小企業小規模事業者応援のためのポータルサイトをご覧ください。一押しです。地方自治体の施策も網羅されています(協力してくれたところだけ)。(まだ審議中の27年度本予算も含まれますのでご注意ください)

1.書類作成が面倒くさいと思う方へ

利用者から不人気だった書類作成負担の軽減

基本的に3枚以内の原則を立てています(3枚以内でなかった場合は当方にお申し出ください)。なお、賃上げ・人材育成に力を注いでいる企業が優先となっています。

2.新しいことをやり始めようと思う方へ

ものづくり商業サービス革新補助金

要するに何でもいいので、ちょっとでも目新しいことをやり始めようとする方が対象です。新しいサービス、新商品・試作品の開発などです(上限1000万円、2/3補助)。仲間の企業と共同で設備投資したいと言った場合も今回対象に入っています(上限5000万円、一社500万円、更なる書類作成簡素化措置もあり)。

3.ものづくりで大学や公的研究機関と連携をご検討の方へ

革新的ものづくり産業創出連携促進事業

ものづくり技術を活用した研究開発(上限4500万円、2/3補助)。デザイン開発技術も可能になりました。

その他、サービス開発などで他企業や公的研究機関と連携をご検討の方に対しても、商業サービス競争力強化連携支援事業という名前の補助事業があります(上限3000万円、2/3補助)。

4.最新の省エネモデル設備の導入をご検討の方へ

地域工場中小企業等の省エネルギー設備導入補助金

申請手続きが簡素化されています(1/2補助)。

5.商店街の活性化に尽力されている方へ

地域商業自立促進事業

アンテナショップの設置、オリジナル商品の開発、子育て・高齢者支援サービスの提供、空き店舗への店舗誘致、まちなか交流スペースの設置など、商店街の魅力向上と、中長期的な発展に貢献する取り組みに対して、上限5億円、2/3補助の制度があります。

6.小規模な会社だけど販路開拓をしたいとお考えの方へ

小規模事業者の持続化支援

商工会や商工会議所と一体となって販路開拓に取り組む費用(チラシ作成、商談会参加のための運賃など)。(上限50万円、2/3補助)。複数共同は上限500万円。雇用対策などを積極的に取り組む事業者は上限100万円。

7.創業を目指す方へ

創業第二創業促進補助金

上限200万円、2/3補助で、創業費用の補助制度があります。今回から、事業承継を契機として既存事業を廃業し、業態転換する際にかかる費用【廃業コスト含む)に対しての補助制度も用意されました(上限1000万円、2/3補助)。

8.その他

ミラサポにて皆様のニーズにマッチした補助事業が検索できます。ふるさと名物応援事業や、海外展開戦略支援事業、JAPANブランド育成支援事業から、融資まで、多岐にわたる事業が用意されています。

ご活用ください。

ピケティとトリクルダウンと惣菜屋

国会の議論で、今話題のピケティがしばしば取り上げられることが多くなりました。ご承知かと思いますが、ピケティは、膨大な統計データを分析して、世界的に見て、資本の収益率が経済成長率を上回っていること、そして格差が広がっていることを実証し、世界的ベストセラーを書いたフランスの経済学者です。

確かに正しい。例えば今、日本では65歳以上の人が2/3の資産を保有しています。その2/3の人に回る社会保障費は毎年1兆円増えています(ざっくり言えばですが)。そしてこの1兆円は65歳未満の人が一生懸命払っている(これもざっくり言えばです)。とてもバランスが良いとは言えない。ではご年配が全員裕福かというと全くそんなことはない。だとすると、ものすごい格差がこの世代にはあるということです。

だからピケティの処方箋は極めてオーソドックスですが十分共感できるところがある。例えば、若者や将来への投資を推奨していること。世界的に見て財政余力の高い先進国はないもので、経済政策としては金融政策がはやっています。日本も大胆な金融政策を打ち出しましたが、それだけではなく機動的な財政も打ち出しています。ただプライマリーバランス(PB)の健全化をも目指しているので(15年中に半減、20年までに黒転)、今後継続して大胆な財政は打てなくなり、金融政策が中心になるのではないかという懸念がでてきます。ピケティは、金融政策オンリーは絶対間違いだとして財政政策の重要性を指摘しています。同感。

そもそも、少し余談になりますが、PBは名目の成長率が国債金利を上回れば改善するので、今は踏ん張りどころで機動的な財政政策を継続していくべきです。PBが十分改善すれば財政政策上の圧迫は改善される。雨中の登山で登り切ったら晴れた場所があるのに、雨がだんだんひどくなったねぇと言って、デフレという名の底なし沼に引き返すことはすべきじゃないと思っています。

本題に戻りますが、一方でピケティの主張を政治的に政権批判に使うことは全く的外れだと感じます。惣菜屋に入って、揚げ物が目に留まったからと言って、体に悪い揚げ物だけ売るとはけしからんと文句を言っているようなものに感じます。いやいや佃煮も売ってますよ、食はバランスですよっ、て言いたくなる。

例えばアベノミクスはトリクルダウンであり格差を広げるだけだという批判。現在の経済財政政策は、政官学金労言、と言われているように、労働者の賃上げという凡そこれまでの自民党政治らしからぬところまで手を付けたり、地方創生というミクロ政策をマクロ視点で本腰で実行しようとしていたり、あるいは中小企業政策ではかなりの事業が用意されています。どれもトップ政策課題です。十分重点です。

やっていないのは、単純バラマキという再配分。自尊心を擽らない再配分のことです。さらに言えば再配分の公平性が担保できないことも問題です。歴史的にこれは失策であることが分かっている。例えば子ども手当というのがありましたが、十分な収入があっても無くても貰える。つまり、本当は困ってないのに困ったふりをする人や、困ってない人が貰うから、本当に困っている人に十分に手を差し伸べられない。あるいは、生活保護の基準の議論がありましたが、困っているのだけど、そこに安住してしまって困らない努力を自分でしなくなる。だからそこへの給付がさらに他の本当に困った人に回らない。

先の記事「どうなる日本経済、どうする日本経済」でも書きましたが、今やるべき本丸は実質賃金の向上です。これをありとあらゆる規模のあらゆる産業で目指すべきであり、引き続き頑張って参りたいと思います。

日米韓国会議員会議

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日米韓国会議員会議が2日間にわたって開催され、昨年に引き続き参加いたしました。1日目は日米のバイラテラル。2日目は日米韓です。この会議は、我が親父も創設に関わったとのことで、26年目にもなります。年に2回の開催。1回はアメリカで、1回は東京かソウルで交互に行われるのですが、今回はソウルでした。私は議員としては2回目の参加です(秘書として過去に何度か参加したことはありますが、それを合わせれば5〜6回目かもしれません)。

議論の内容は詳述公開できませんが(チャタムハウスルール)、非常に多岐にわたる議論を行いました。1、米国も日本も選挙がありましたので、国内の政治情勢と国民の意識の変化について。2、それぞれの国と世界の経済情勢、そしてそれぞれの国にできることと協力できることについて。3、TPPやRCEPなどの経済連携と貿易について、4、安全保障と外交についてです。

冒頭、米韓両国から後藤健二さんがISILの非道な犠牲になったことについて深い悲しみとお悔やみが伝えられました。こんな時期にこの会議になったことをお詫びするという言葉も頂きました。世界で協力していかなければならない課題です。経済問題については、日本のアベノミクスの議論が中心で、他にアメリカのテーパリング、韓国の経済政策などが論じられました。安保問題では、主に普天間問題。貿易関係ではTPPやRCEP。外交問題については幅広い議論がありましたが、韓国側から歴史問題が取り上げられ、日韓間でかなり激しいやり取りともなりました。

通訳を介さない英語での会議ですので、当方も奥歯に物が挟まった表現もできるわけがなく、だからエキサイトするのかもしれませんが、改めて日韓関係の外交上の困難さを浮き彫りにした形となりました。

TPPとRCEPや東アジアの安保環境、世界経済情勢と原油価格動向、そして中東情勢や北朝鮮情勢を考えれば、この日米韓の関係は非常に重要にもかかわらず、いまいち日韓がギスギスしているのは大きな問題。困難でも粛々と根気よく努力し続けるしかありません

ただ、こうした議員外交の利点は、会議では言いたいことを言い合って、飯を食う時は冗談話で仲良くなる。こうしたことが、本当に大切だと思います(ちなみに、昨年末に参加した日中韓次世代フォーラムで出会った韓国の友人も駆けつけてくれました)。

 

地方版地方創生総合戦略と分析ツール

昨年末、地方創生法が成立しました。

http://www.cas.go.jp/jp/houan/140929_1/houan_riyu.pdf

それにともなって政府は地方創生総合戦略を発表しました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/souseikaigi/dai3/siryou1-2.pdf

目を通していただければわかる通り、大方針を策定したに過ぎませんが、非常に重要なことが書いてあります。今後、1年間かけて、地方自治体(県・市町村)も地方版の総合戦略を策定することになります。

地方に総合戦略策定の努力義務を課す法律になっているのですが、策定にあたっては国は地方の後方支援も行います。例えば要請に応じて国は人を派遣することもあります。財政的な支援も行います。私が一番注目しているのは、地方経済の分析ツールの提供です。

というのは、これは全く新しい視点に立った中小企業政策になりうると2年前から注目していたもので、中小企業庁が取り組んでいるプロジェクトでした。私自身、多少議論に参加してきましあが、当時はあくまで中小企業政策の一環として取り組んでいましたので、ここで使われることになるとは思いもしませんでした。

https://keitaro-ohno.com/?p=2281

地方創生についての党の方針にも明記されていますので、以下に添付しておきます。いずれにせよ、地方丸投げにならないようしっかりと私自身も取り組んでいきたいと思います。

地方創生がめざすものは何か?

・人口減少と地域経済縮小の悪循環というリスクを克服する観点から、東京一極集中を是正する、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、地域の特性に即して地域課題を解決するという基本的な視点の下、まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立により、国民の希望を実現して人口減少に歯止めをかけ、50年後に1億人の人口を確保し、活力ある日本社会の維持をめざしていきます。

地方創生は、これまでの地域活性化とは何が違うのか?

・国として、人口減少問題の克服に初めて本格的に取り組み、地方を主役に据え、各府省庁縦割りを排し、具体的な成果目標を示しつつ、政策評価を行う異次元の取組みです。
・地方に新しい価値を生み出し、「ひと」が「しごと」をよび、「しごと」が「ひと」をよぶ好循環を構築します。そのためには、これまでの地域活性化とは異なり、地方が主役となり、地域特性に応じた地方創生を展開することが必要となります。国は伴走型支援(情報支援、人材支援、財政支援)を行います。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のポイントとは何か?

・日本の人口の現状と将来の姿を示し、今後目指すべき将来の方向を提示する「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を実現するため、今後5か年の目標や施策の基本的な方向、具体的な施策を提示するものが、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)」です。
・「しごと」と「ひと」の好循環として、また併せて、この好循環を支える 「まち」の活性化として、次の目標に対応する施策を提示しています。
・2020年までの5年間で地方での若者雇用30万人分創出などにより、「地方における安定的な雇用を創出する」
・現状、東京圏に10万人の転入超過があるのに対して、これを2020年までに均衡させるための地方移住や企業の地方立地の促進などにより、「地方への新しいひとの流れをつくる」
・若い世代の経済的安定や、「働き方改革」、結婚・妊娠・出産・子育てについての切れ目のない支援などにより、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」
・中山間地域等、地方都市、大都市圏各々の地域の特性に応じた地域づくりなどにより、「時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する」

どうやって地方に若者の雇用を創出するのか?

・地域経済の特性や課題を抽出する地域経済分析システム(国が開発し、地方公共団体に提供)を活用し、地域の産官学金労言(産業界・行政・大学・金融機関・労働団体・言論界)が連携した体制の下、創業支援・事業再生、地域イノベーションなど業種横断的な取組みを推進します。
・地方大学等における地域ニーズに対応した人材を育成するとともに、都市圏から地方へのプロフェッショナル人材の還流を円滑にし、地域の中堅・中小企業の競争力強化や生産性向上を図り、地域雇用を促進します。
・サービス産業の生産性向上、農林水産業の成長産業化、観光地域づくりなど地域産業競争力の強化や、起業支援、中核的企業支援により、5年間で30万人分の若者の雇用を創出します。

地方への新しいひとの流れをどうやって創るのか?

・近年高まる地方への移住希望を現実のものとするため、地方での雇用創出や企業の地方拠点機能の強化を推進するほか、地方移住希望者のためのワンストップ相談体制を整備します。
・地域ニーズを踏まえた地方大学の活性化により地元への進学、地元での就職を推進することで、地方からの人口流出を低減させるとともに、都市部の学生の地方就職を促進します。
・これにより、5年後に東京圏への人口流入超過を解消します。

若い世代の結婚・子育ての希望を実現し、出生率を向上させるために、何をするのか?

・若い世代の結婚・子育ての希望が実現された場合の出生率は1.8程度に向上すると見込まれています。このため、若者の正社員化など若い世代の経済的安定、待機児童解消など子ども・子育て支援の充実、子育て世代包括支援センターの整備など妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援、長時間労働の見直しなどワークライフバランスの実現などにより、若い世代の期待に応え、結婚や子育ての希望の実現を目指します。

時代に合った地域をどうやって創るのか?

・中山間地域等における「小さな拠点」(多世代交流・多機能型)の形成、都市のコンパクト化と周辺等のネットワーク形成、「連携中枢都市圏」の形成・安定自立圏の形成促進など、地域の実情に応じた「まちづくり」・地域連携を促進します。

どうなる日本経済、どうする日本経済

先の選挙で、我々は期限を切って日本経済再生を国民の皆様にお誓いしました。そこで私なりに今年の展望を書き残しておきたいと思います。

昨年から今年にかけての特徴は、地方の活力を取り戻さないとダメだということが、マクロ面から政策を論じる者の共通の認識になってきた、ということに尽きます。マクロとミクロの両面から取り組むことこそが、日本の経済を取り戻す唯一の方法だ、ということです。

まず現在の経済政策の基本方針について改めて簡単に書くと、雇用を始めとした規制改革を断行し、地方創生によるミクロ政策(第一弾は国により第二弾は地方による)によってサプライチェーンを再構築し(地方創生は本丸なので後日詳述します)、税制と社会保障制度の見直しによって公金の流れを純化させ、EPA・FTAによって外需拡大を図り、さらに地方創生と同じくらい重要なイノベーション戦略によって青色LEDのような成功事例をたくさん作り、あらゆる産業の賃金上昇を実現していかなければなりません。2年越し計画です。

今年のマクロ面の政策ポイントは、実質賃金の上昇です。名目賃金は上昇していますが、実質賃金は低下しています。消費税増税によるものです。物価上昇以上に賃金が伸びないと、消費も伸びません。だから設備投資に勢いがでない。好循環を生んでいる状況には未だありません。地方創生、消費拡大、中小企業対策を中心に、徹底的に政策を打たなければなりません。実質賃金上昇は十分実現可能な環境は整っています。少し説明しておきます。

財政金融のマクロ政策によってデフレマインドの脱却は順調で、全体基調としては悪くはありません。しかし成長率は完全に鈍化。消費税増税によるマイナスインパクトは予想以上に大きいものでした。第2四半期でー6.7%、第3四半期は大方の予想に反してー1.9%。2014年の政府経済成長見通しはー0.5%となっています。特に地方経済は、消費増税に加えて過度急激な円安によって負担が大きくなったため、回復が遅れています。

2015年の経済成長の政府見通しは、+1.5%(名目+2.7%)。前述しましたが2014年の設備投資・消費ともにぱっとしませんでしたが、今年は、本予算96兆円、補正3兆円を使って、地方創生・消費拡大・中小企業が重点政策になっています。

注目すべき指標は原油価格です。昨年夏から下落傾向で、1バレル100ドル程度であったものが、現在は45ドル程度。日本経済にとって(資源輸入国にとって)大きなプラスになります。先の政府見通しはIMF予測に従って1バレル70ドルで計算しているのですが、仮に50ドル水準が続けばGDP押し上げ効果は1%以上という試算もあり、原油価格は今後注目しておかなければなりません。そのほか、消費税のマイナス効果も緩和されつつあり、設備稼働率も高水準なことから、現状でも生産余力が十分なわけではなく、設備投資は増加すると見込めます。政府見通しでも設備投資増加率は5.3%を見込んでいます。

国際収支は、貿易収支でみると今年は過去最大のー12.7兆円の赤字ですが、月別にみれば、原油価格の下落によって、赤字幅は圧縮傾向にあります。だからと言って、外需が大きく望めるかと言えば、世界の経済で好調なのはアメリカ位。欧州はデフレ局面に入り量的金融緩和を開始予定。為替も下落しており、ギリシャ問題再燃で今後の動向がはっきりとは見通せない状況です。中国も7%以上の成長はあるとはいえ、鈍化。過剰労働力が解消したため(ルイスの転換点超え)、賃金上昇の局面にあり、過剰設備投資や金融不安など不安材料は払しょくできていません。可能性のあるのは、インド。日本と同じ資源輸入国であり、原油下落で強い経済成長を望める可能性はあります。