G7閣僚会合で感じた世界の現状

戦時下にあってこれほどの時間軸でものごとを考えられるものなのか、私にとりましては初めての閣僚級国際会議でしたが、G7閣僚会合の冒頭のウクライナ教育研究大臣の言葉が未だに頭から離れません。今回は、そのことに触れた上で、ドイツ・チェコ出張の報告をしたいと思います。

なお、ドイツ出張の目的はG7科学大臣会合ですが、そのミッションは、国際的な研究環境をどのように整備していくのかをG7諸国で協議し声明として結果を残すこと。具体的にはロシアの取り扱い、技術研究開発の健全性(技術流出や乱用対処)、気候変動やコロナの研究開発の進め方に関するものです。

また、チェコ出張の目的は来月からEU議長国となるチェコ主催のEUとインド太平洋諸国との協力に関するインド太平洋ハイレベル会議ですが、具体的には日本の経済安保の考え方を示し国際的な環境醸成を図ることです。

いずれも本来は小林大臣が企図した出張でしたが、どうしても国会の都合で叶わず敢え無く私が代理を務めたものです。(余談ながら、この点では国会の在り方についても、我が国は大きな問題を抱えており、このことは最後に触れたいと思います。)

●G7)ウクライナ教育担当大臣

G7担当閣僚会議の冒頭、議長国ドイツのシュタク・ヴァツィンガー教育研究大臣のお取り計らいで、ウクライナのシュカーレット教育科学イノベーション大臣からリモートでしたが現状報告がありました。記憶に残っている限りでお伝えすれば、趣旨は次のようなものでした。(誤りもあるかと思いますがその場で書いた手書きメモを頼りに誠実に記憶をたどりました)

「数百万の国民が避難しているが、この状況に慣れてはいけない。この国の戦後に希望をもたらしたいと考えている。多くの国から支援を頂いている。各国の支援に感謝したい。戦争が始まって110日以上経ったが、ロシアによる一方的な侵略で、多くのウクライナ人研究者が故郷を追われている。多くの教育研究機関が破壊され、その数は2000以上、全体の15%にあたる。多くの子供たちから教育が奪われている。とてつもない国力の喪失だ。世界食糧危機や環境にも深刻な影響をもたらしている。教育研究機関は国力の源泉だ。

それでも我々は前進する。戦争が終わったら教育インフラを回復していきたい。戦中であっても回復の努力を続ける。今でも授業は続けている。G7の支援のお陰であり感謝する。ただ、例えばスクールバスや教科書など不足しているものがある。ウクライナを追われ海外に逃れた人々にも支援の手を差し伸べたい。国の将来の為、産業やイノベーションに力を入れている。EUの支援によりスタートアップ支援が可能となった。国が再度立ち上がるためには教育研究は不可欠だ。どんな支援でも構わない。支援をお願いしたい。

改めてウクライナの大臣として、一市民として、そして子供を持つ親として、G7各国の支援に感謝する。私はもともと田舎の教員だった。世界の支援があるから今がある。教育インフラを立て直せなければ、戦いの意味もない。侵略者に対峙していく。」

戦禍の中に立ち国の未来を見据えている大臣の言葉に政治家の在り方としての刺激を受けました。冒頭発言後、私からも日本としての支援を申し上げましたが、各国からも改めて支援の申し出がありました。共同コミュニケでは、G7各国が「ロシア政府が関与する政府支出の研究プロジェクトとプログラムを必要に応じて制限する」ことが確認されました。

●G7)その他のアジェンダについて

昨年、英国で開かれたG7会合で、技術研究開発の健全性(技術流出や乱用対処に関する方針のことで研究インテグリティ・セキュリティと言います)に関する基本的方針が示されました。世界的に経済安全保障の重要性が叫ばれる中で技術流出や乱用に要る負の影響にも大きな関心が寄せられていたためで、閣僚級会合として基本方針を示すのは初めてのことでした。ただ、中身は「可能な限りオープンで、必要に応じてクローズ」という大原則だけでした。今回のG7会合では、ウクライナ事案を受けて改めて最優先事項に指定され、その具体的な中身を協議。その他、気候変動については、二酸化炭素除去技術の開発の進め方、気候変動に深く関係する海洋状況の観測研究の進め方が協議された他、コロナについては新たな感染症に対峙するための研究情報の共有やそのプラットフォーム開発について協議。いずれもコミュニケとして発出することができました。

●インド太平洋ハイレベル会議

ラウンドテーブル形式で開かれた会議の冒頭、15分ほど時間を頂き、自由で開かれたインド太平洋を念頭に、日本の経済安全保障の取組と展望をお話ししました。参加したパネリストは主催国のチェコ担当大臣の他、IORA(環インド洋連合)事務局長、EUやインド太平洋諸国から大使や局長、またその他は各国外交関係者、アカデミア、産業界など100人程度でした。つたない英語にも関わらず熱心にメモを取られる各国代表の姿に、各国の経済安全保障への関心の高さを感じました。

特にコロナやウクライナ問題もあってサプライチェーン強靭化は共通する課題ですが、それを超える共通認識を共有するには至っておらず、各国がおかれた事情や環境によって様々な認識があります。重要なポイントは、価値観を共有する国での強調した取り組みであって、その重要性を強調しました。日本の経済安全保障の取組は、世界の中でも際立って進んでいることを改めて認識しましたが、そもそも我々が企図したとおり、国際社会のルール作りが極めて重要なため、包摂的なアプローチで環境醸成に努めていきたいと考えています。

なお、チェコはドイツの後背国としての産業が盛んで、自動車産業が特に有名ですが、日本からも200社を超える企業が進出しています。そうした日本企業の代表者数名と意見交換を行う機会を頂きました。物価上昇と供給不足により大変厳しい状況に置かれているが、可能な範囲でウクライナ難民を受け入れていることなど、世界の厳しい現状を目の当たりにしました。