イスラエルの農業はなぜ成功しているのか

イスラエルのハイテクを使った農業の成功が取りざたされることがあります。イスラエルの農業を担うのはほとんどがキブツであって、その農業を語るのにキブツの存在を忘れることはできません。キブツに所属する人口は総人口の3%。その3%の人がGDP比で15%の生産を担っている。日本と比べるとはるかに高い生産性を誇るイスラエルの農業はどのようなものか、今日は書いてみたいと思います。

キブツ。農業協同組合とか集産共同組合とか訳され、よくコルホーズと比較されますが、実態はいまいち分かりにくい。表面的に言えば、自治会以上、自治体以下の集落。1つのキブツの構成人口は約100人から1000人程度で、全国に約200のキブツがあると言われています。そして、大きいところでは、保育所あり学校あり集会所ありでもちろん農場や工場、会社などがあります。

一旦キブツに所属すると全ての私有物はキブツに没収されます。そしてキブツから給料をもらい、キブツに国税以外の税も納めます。職は最近では農業だけではなく、あらゆる産業形態に多角化しているとのこと。例えば死海の塩を使ったブランド化された化粧品も元々はキブツで作られ始めたとか。

そこまで書くと、おそらくこれをお読みになっている方は、それってコルホーズとかソフホーズとか人民公社じゃないの?と思うと思います。私もそうでした。しかし、それらと決定的に違うのが、労働と報酬が分離されていること。そしてそれぞれ人の能力や必要に応じてやりとりされるということです。がんばれる人は頑張るし、子供がたくさんいて必要な人には報酬も多く払われる。

ただ、資本主義社会に住む我々にとって、本当にそうした半社会主義的システムが機能するのか不思議に思うところです。おそらく一言で言ってしまえば、非常に高い帰属意識によって成り立っていて、それはユダヤ人らしい土地への強い愛着と共助精神に支えられているものだと思います。だからこそ、キブツの規模が明示的に定められていなくても100から1000程度になる。これは内田樹さんが何かで指摘していた、父性的なシステムは手の届く範囲でしか機能しない、というものと通じるものがあり、助ける人が助けられる人を全く知らなかったら相助け合おうとは思わないということになるのだと思います。(ちなみにキブツの人口比3%は海水の塩分濃度と同じなのだとか)。

私が訪問したガザ周辺のキブツ(※)でお目にかかった40代の女性は、「キブツは大好きだし出て行こうなんて全く思わない」とおっしゃっていました。

このガザ周辺のキブツを訪問した際のFB投稿を別の記事として再掲しておきます。

キブツの所属者は、キブツの発展のために働く。こうしたバックグラウンドがあって、そこに大学やら研究機関が開発したハイテクが持ち込まれた時に初めて、ハイテクを使った高生産性農業が可能になっているのかもしれません。

いずれにせよ、当たり前ですが、ハイテク農業だからハイテクを導入したら栄えるという単純な問題ではなく、結局は人の心がどのように動くのかに尽きるのだと思います。

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