(自民党宇宙海洋開発特別委員会での作業の様子)
数年前から株式市場で急速に注目されているのが宇宙ビジネスです。四半世紀前に宇宙に携わったときには、全く想像もつかなかった事態です。想像もつかなかった理由はたった一つ。宇宙にモノを持っていって出来ることがコスト的に割に合わないから。しかし、とうとうその損益分岐点を超える時代になったのだということを、株式市場の動きから実感しています。
東京海上アセットマネジメントやニッセイアセットマネジメントという株式運用会社が数年前から宇宙関連株式ファンドを運用しています。例えば前者は2018年9月のスタートで、当時の純資産総額が10億円。それから現在まで取引ボリュームの拡大で資産ピークは320億円に達しています。政策投資銀行もそうした宇宙ビジネス市場の動向に注目しレポートも出しています。
主だった動きはアメリカ。でも日本も負けていません。日本の宇宙ベンチャーで月面開発産業を計画しているispaceという会社がありますが、100億円を超える資金の調達に成功しています。人口流れ星を計画しているALEというベンチャーも単発で数十億を調達しています。宇宙空間で問題が顕在化しつつある宇宙デブリ(宇宙ゴミ)除去を計画しているAstroScaleも100億円以上調達しています。
まだまだ他に沢山ありますが、これら成功した例では、シリーズC以上のラウンドを回して、国内外多くの投資家から調達に成功しています。
こうした宇宙ベンチャーが多く育ち、宇宙ビジネス市場のすそ野を拡大していけば、当然調達コストも安くできるため、激変する安全保障環境や気候変動などの地球規模課題や科学技術ニーズに対処するための政府によるアセット調達の自由度が増します。
問題は、ほっとけば市場が拡大し続けるのか、ということです。今は日本の宇宙ビジネス市場が拡大するのかしないのかの瀬戸際に立たされているのだと認識しています。であれば、政治としても全力で市場のすそ野を拡大する努力を今行わない手はありません。政府だけでコトを成し遂げることも困難です。官民力を合わせて裾野拡大に邁進しなければなりません。
今年は丁度、政府の宇宙基本計画改定時期にあたります。この計画は、宇宙基本法の理念を具体的な戦略的政策に落とし込むことが目的です。そして現在、その作業が佳境に入りつつあります。
自民党でも、宇宙海洋開発特別委員会(河村建夫委員長)で議論を進めており、政府への提言をまとめる時期に差し掛かっています。私自身は、まさに宇宙利用産業のすそ野を拡大し、安全保障、産業、科学技術の3つの政策軸の相乗効果が表れるような、宇宙産業エコシステムを構築していくことが、この基本計画改定の最重要課題であると認識しています。
宇宙ベンチャーが市場から資金を調達しやすい環境を整えること。そこではシリーズシードレベルから全力で政府調達支援(アンカテナンシー)を行っていくこと。同時に、国際市場マーケティングで並走すること。また、標準化やオープンクローズ戦略といった知的財産戦略の立案で伴奏すること。もちろん政府的には輸出管理やクリアランスといった環境整備を行って、富と人材流出に備えることも重要です。
政府の調達では、宇宙基盤にしっかりと予算を充当すること。同時に、各省庁ニーズしか見ずに作りたいものを作って、成功したら海外に売ろうという負けパターンの発想は止めて、当初から国際市場をマーケットインの発想で睨んでおくこと。また、産業競争力強化のためにも、オープンイノベーション促進の工夫をすること。FFRDCやXPRIZEといったスキームが大いに参考になるのではないかと思っています。
そして何よりも、宇宙ビッグデータにしっかりとスポットを当てていくことで宇宙利用産業を拡大することだと思います。日本は課題先進国だと言われていますが、ビッグデータが解決の糸口となる可能性は大です。問題は、課題に直面している担い手の発掘、そしてそうした宇宙とは恐らく関係がない担い手に宇宙ビッグデータのポテンシャルをマッチングしていくこと。その為に、政府は全力で保有するデータアセットを解放すること。
これらはもちろん地方の課題解決に結びつく可能性の高い事業です。既にそうした取り組みに積極的な自治体もあります。
書き尽くせぬ思いはありますが、少なくとも、何事でも未来を明るくするのは人間だ、ということだけは申し上げておきたいと思います。