
トランプ政権との間で関税交渉が進む中、急浮上した話題が造船でした。ただ、アメリカのために何かするという方向には違和感を禁じえませんでした。そもそもチャンスにしなければならないと。そうした中で、党経済安保推進本部の事務局長を務める中曽根康隆代議士が党で本格的に議論をするべきだと主張。小林鷹之本部長の決断で海運造船対策特別委員会(石田真敏会長)と合同で緊急提言を出すこととなり、提言をまとめ(私は経済安保本部の幹事長を務めています)、本日総理に手交しました。
かつて日本は造船大国でしたが、景気変動の影響を受けやすい業種であるため、不景気になるたびにアセットを手放してきた結果、中韓勢に押されています。ではアメリカは何で困っているのか。日本と同様ですが日本より深刻なのが建造能力の衰退です。ご存じの通り、世界の船舶建造シェアは圧倒的に中国が握っており、韓国と日本がそれに続いています。中国の建造能力は、アメリカの400倍と指摘する意見もあります。
確かに先月訪米した際にも、何名かの政府やシンクタンク幹部から同様の指摘がありました。有事を見据えると、船舶建造の中国依存度を低下させなければならないと。ならばアメリカの調達先多様化は日本の需要増につながります。であれば、我が国の建造能力を、この機に抜本的に強化することは、まずは日本の安全保障を強化することになりますし、戦略的不可欠性にも繋がりえますから経済安全保障の強化にもつながり、加えて日本経済の根源的問題である供給力強化という経済対策にもなりますので、誠に理にかなったことです。結果的に造船クラスターを有する地方活力の創造にもつながる。
従って目的は、安全保障・経済安全保障・経済政策。ただ、それほど簡単ではありません。それは、あらゆる産業にも言えることですが、投資不足とヒト不足。今回の提言では、官民で1兆円規模の投資となるよう基金の創設を謳ったうえで、設備投資支援、金融支援のほか、人材育成ハブの創設を提言しています。設備は必ずしも国内のみを対象としているわけではなく、アセアンを中心に人材協力が可能なところに拠点を作り、同志国の修繕ドッグとしていくことも重要です。また軍民共用もポイントの一つとなります。
今秋までにロードマップを示すように政府に求めていますので、そのころまでには具体的措置も含めて戦略全体を皆様に共有できるよう努めてまいります。