農政新時代について

農政については、ご存じのとおり、2年前に既に政策を地域政策と産業政策に明確に分け農政を刷新しました。地域政策のコンセプトは、農家一人ではできないことを国家が代わりにやる、であって、インフラの概念だと思っています。例えば用水路の工事をするとかです。なぜやらなければならないかと言えば、農地がもつ多面的機能の維持し地域を維持する為です。後者の産業政策は、農家が頑張れば収益がでるという当たり前の構造を作るためのものです。少し具体的に言えば、過去の自民も民主も供給サイドしか政策を打っていないかったのを(例えば種々の補助金、土地改良、戸別所得補償)、需要サイドや流通サイド(輸出・マーケティング・流通・販売営業力・6次産業など)もしっかりと光をあて、エコサイクルを作りましょうというもの。総じて方向は絶対に正しい。

そうした上で、TPPがでてきた。TPPは農家にとって短期的にはマイナス。しかしやりようによってはプラスにもできます。そうなるように、まさに農政新時代の到来と言えるような新たな振興策と産業構造の抜本的転換が必要だと感じています。今日はそのことを書いてみたいと思います。

まず、多少余談になりますがTPPについて触れたいと思います。私自身、交渉の結果は意外なものだったと認識しています。例えば農林水産品の関税非撤廃の割合。日本だけ突出していて19%。他の国は、例えば最後まで頑張ったカナダでも5・9%、ペルーは4%、メキシコ3・6%、米国1・2%、残りは1%未満となっています。また、関税の即時撤廃も他国平均は85%であるのに対し、これも日本だけ突出して低く51%。国際的に見れば日本は相当頑張ったと言えます。

しかし交渉を頑張ったことと農業が大丈夫かは別問題です。これについては影響が出ないための当面の振興策と同時に、影響が出ても対処できる振興策枠を用意すべきで、昨年末に第一弾として緊急対策を党として出しました。私自身は今後も香川型農業を念頭に振興策に力を注いで参りたいと思います。これは農地が大切だからです。農地は農家の収入や安心安全な食料の供給という面以外に、大和の心や子供の心を育み、環境対策、地域結束など、非常に多面的側面を持っています。だから絶対に守らなければいけない。

しかし守るだけでは全然だめです。本質的に農家が儲からないといけない。だからと言って決して単純な大規模化とか法人化ということではいけません。また従来と同じことをやっていても茹でガエルになるだけです。まずは見える化。何がどこでどれだけどんな手法でどれだけのコストでどのような流通路を経て消費者に届いているのか、産業構造を俯瞰的に見えるようにし、かつ時間軸で分析する必要があると思っています。

日本の食品市場は80兆円。原材料は生産者が作った10兆円(輸入も数兆円ありますが)。この差の内の10兆円でも生産者側が関与できたら、単純計算で農業収入は2倍になります、とは言いませんが、そうしたことを実現するためには、産業構造を変えなければできない。生産者が原材料を供給だけではなく、生産者が食品産業全般に関与できるような構造にしていかなければなりません。繋ぐにはやはり農協の協力が不可欠です。農協の需要サイドとの関与を強め、農協に儲けて頂き生産者に十分に配当して頂く為に国は何ができるか。そもそも論を考えなければなりません。場合によっては農林中金にお手伝い頂き、農協と、流通やリテールや輸出や海外市場構築などを得意とする企業、つまり食品産業との資本提携戦略も視野に入れておく必要があると思います。

生産者にはこれまで同様美味しい品物を作ることに専念頂くことに大きな変わりは有りません(これは大原則です)。ただ、生産者同士がどうやって協力し、その品物を誰がどのように買い、海外も含めて誰にどのように売るのかは変わる必要があります。大きなチャンスでもあります。他業種との連携による商流開拓や標準化なども進めなければなりません。多面的機能を無視したやり方では地域衰退に直結しますが、そうじゃないバランスの取れた政策を推進しつつ新農政の詰めをやらなければなりません。

輸出も真剣に拡大をしなければなりません。10年くらい前は4000億円くらいだった輸出がここ急激に伸びており7000億円くらいに増えています。目標の1兆円も達成できる勢いです。問題は、輸出したら農家が単純に儲けると言うことにはならないということ。つまり国内と同じ様な構図のままのことを海外市場でもやったらボリュームが増えるだけで同じ結果になるということ。だからバリューチェーンごと海外市場に作らなければならない。もちろんマーケティングが大前提になる。

海外市場開拓の場合、しがらみが無い分だけ国内産業構造の改革より簡単だと言えます。もちろん海外であるための困難(相手国独自の規制やら言葉やしきたり文化の違いなどのコスト)もあります。一方で、輸出量の拡大によって国内供給量が減り価格が上昇するということも一部起きているという報告も聞きます。相当いろんなことを考えながら政策を作り上げる必要があるはずです。

いずれにせよ、既に見えている輸出の障壁(相手国の規制や国内HACCP認定の推進など)の改善を徹底的に進めることは当然です。

良い政策、良いアイディアを出していきたいと思っています。

3万円は正しかったのかー社会保障制度と経済政策の視点から

低所得層高齢者に3万円を単発で給付する措置が話題になりましたが、それについて、結論から書くと、経済政策としては全然ありですが、社会保障政策としては全然なし、であって、今となれば、問題は、政治メッセージとして正しいアナウンスだったのか、のみが反省として残ると思っています。で、なぜ改めてこのことを書き始めたのかと言うと、3万円の臨時給付金の是非を論じたいわけではなく、中長期展望としての経済動向と社会保障制度を、消費と個人金融資産いう観点から、心配しているからであって、この臨時給付金をトリガーに書き残しておきたいと思ったからに他なりません。

まずは経済的側面:確かに高齢者無職世帯の消費は2014年は減ったが・・・。

経済は、ざっくり言えば消費と投資と政府支出と国際収支から成り立っています。で、消費のGDPに対する寄与度は全体の6割くらいですので、消費の景気への影響は太宗を占めることになります。つまり、今景気は悪くないものの力強くないのは消費が弱いからに他なりません。で、現在の消費は230兆円位ですが、その内、高齢者世帯の最終消費支出額は115兆円を超え、全世帯のそれの半分を占めるに至ってます。つまり、高齢者層の消費は景気の動向に大きく影響するということです。

で、当然ですが、その世帯の消費は年金の給付額に大きく影響します。少し詳しく言えば、まずどの位の世帯が年金に依存しているかというと、高齢者世帯が総世帯の半分であって、さらにその内7割が無職世帯。つまり全世帯の50%×70%=35%位が年金に依存しています。この世帯の消費は2014年は1.6%も減りました。勤労者世帯(全世帯の48%)の消費が0.1%増加したのに比べれた明らかな減少で、この高齢者無職世帯が全体の消費の1%くらいを押し下げている、つまり3兆円くらいは押し下げている計算です。とすれば、先ほど述べたように消費がGDPの6割くらいを担っているので、高齢者無職世帯の消費低下がGDPを0.6%くらい押し下げていることになります。

なぜこの世帯の消費が減ったかというと2014年は公的年金支給額が減ったから

なぜ支給額が減ったかと言えば、年金給付が2014年前後に限って言えば過去の水準との比較で減ったからに他なりません。少し詳しく述べると、デフレが続いていた日本では、物価の変動に合わせて年金支給額もどんどん減ってきたはずが、実は10年位に亘って、政治的配慮から下げずに来ました。ところが民主党政権時代、自民党と一緒にですが、このままでは年金制度は持たないということになり、本来の物価に合わせた支給額にするために、一気に給付額を下げたのが2014年あたりです。より具体的に言えば、たとえ2000年の支給額は月額67000円でしたが、デフレが続き、2013年の本来の支給額は63400円位に減額されていなければならなかったのが、政治配慮で65500円にキープされていた。本来の支給額と約2.5%のギャップがあったわけです。それを2012年の法改正で、スケジュール的には2013年10月に1%減額、翌2014年4月に更に1%、2015年4月から更に0.5%の減額で調整することになった。結果として2014年には64400円に減額されました。お気づきの通り、消費が1.6%減ったのはこのことによる。

一方、2015年はデフレ脱却傾向で65008円に増額されました。後述する特殊減額とマクロ経済スライドをかけてもです。本来の百年安心年金の給付額に戻ったわけです。

※参考までに年金給付額というのはどのように計算しているかというと、2015年を例にとれば、前年の消費者物価(2.7%)と賃金上昇率(2.3%)の低い方を基準にしてマクロ経済スライドのスライド調整率0.9%を減じ、2015年は先ほど申し上げた特殊運用で更に0.5%減額措置をとったので、結局、2.3-0.9-0.5=0.9%が増額分。仮に2015年の物価上昇率と賃金上昇率の低い方が1%だったとしたら、2016年の年金支給額は65008×(1+(0.01-0.009))=65073円となります。

経済政策としての3万円は妥当

以上みてきたように、2013年後半から2017年前半は高齢者無職世帯は年金の減額措置や消費税増税などで負担が増えています。具体的にどれだけ負担になっているかというと、負担の計算の仕方にもよりますが、前年比変化分を負担としてアバウトな計算をすれば、2013年は10月から2014年4月までは1%減額なので、負担は約3千円(65000×0.01×5)。2014年4月から2015年4月も1%なので、約8千円(65000×0.01×12)。2015年4月からは0.5%減額の上にマクロ経済スライドが導入されたのでスライド分0.9%減額されるので、約1万円(65000×(0.005+0.009)×12)になります。今年2016年は変化なしで、2017年は消費税増税分があるので(スライド調整率は変化なし)、負担は約1.5万円(65000×0.02×12)。その後は負担は変わらない。こう考えると、この年金調整措置がある特殊な期間の高齢者無職世帯の負担は約3.5万円(4年で)になるので、経済政策として3万円をこの高齢者無職世帯に給付するのは、消費下支え政策としては全く理にかなったものとも言えます(これはあくまで私個人の分析に基づくもので政府が理由にしているものではありません)。

つまり一言で言えば、3万円の臨時給付措置は、消費税増税とともにマクロ経済スライド導入を含めた年金調整過渡期において、高齢者世帯の一過性の年金収入減少による消費減少を緩和するための措置、という観点では全く正しいことになります。

ちなみに年金支給額は今後どうなるのか

ここで少し脱線しますが、この計算にお付き合いいただいた方であればお分かりの通り、デフレ脱却によってスライド調整率0.9%以上の物価上昇(もしくは賃金上昇率)となれば、支給額が増額されていきます。日銀目標の2%であれば約1%ずつ上昇ということになります。そしてさらに、このスライド調整率というのは5年ごとに見直されることになっていますが、何によって決定されるのかというと、現役の被保険者の減少分と平均余命の伸びに基いています。現行の0.9%というのは、現役が0.6%ずつ減っているのと余命が0.3%伸びているので0.9。今後は高齢者雇用が増加すればスライド調整率は低くできる可能性もありますが、当面同水準が続くものと思います。

ただ、年金支給額増加しても今後消費は必ずしも増えない

支給額が増えたからと言って必ずしもこの高齢者無職世帯の最終消費支出が増えるとは限りません。なぜならば、高齢者世帯の内、最も人口の多いのは団塊世代であって現在60歳後半。消費が多いのは60代の世帯であって、今後団塊世代が70代に突入すれば消費は減少していくと思われるからです。ですから、消費の動向は、より詳細な分析をしなければなりません。この点は他に譲るとして、消費の動向分析のためには年金支給額の他に金融資産も見るべきです。

社会保障政策としての3万円

ここで個人金融資産を見てみたいと思います。国民の個人金融資産は総額1600兆円とも言われていますが、60歳以上が68%以上を保有しているという統計があります。更に衝撃的なのが、この数値は負債を勘案しておらず、こうした住宅ローンや教育ローンなどの個人負債のほとんどは勤労世帯が背負っているので、それを勘案すると、純貯蓄の90%以上を60歳以上が保有しているという統計です。

つまり消費を僅かながらでも伸ばしている勤労世帯からも消費税を国が吸い上げ、純貯蓄の90%を保有する高齢者世帯に給付すると言う構図が浮かび上がってきます。3万円の臨時給付措置は低所得の高齢者世帯だから問題ないとは言えません。単純な例で言えば、1億円の金融資産を保有しながら6万円の年金暮らしの人がいないわけではないからです。もちろん逆に高齢者の相対的貧困率は18%ですので、必要とする人に届くのは間違いありませんが、必要ではない人にも届く。そして30歳未満の相対貧困率が28%であることも見逃せません。こう見れば社会保障政策として見てしまえば、お金に本当に困っている子育て世帯にもお届けしなければ理屈はあわず、正しい方策とは言えません。これは少子化対策や地方創生にも合致しない。

つまり、臨時給付金をやるのであれば、政治的メッセージとしては、政府が言っている子育て世帯を含む勤労世帯対策もやってますよというアピールが欠かせないのは論を俟ちませんが(これは政府もアナウンスしています)、金融資産をもつ比較的豊かな高齢者世帯に、その子供達である勤労世帯のために如何にお金を使ってもらうかという政策(リバースモーゲージや教育資金贈与税減税拡充などなど)をセットにすべきであったと思います。

念のために言えば、高齢者世帯に個人金融資産が偏ることが直ちに悪いわけではありません。それは、若いうちは養育や生活基盤確立の為に働き借金して懸命に生きるわけで、年を取ればそれを取り崩して生きる、という構図は宿命だからです。今の問題は、これがあまりにいびつになってしまったと言うことです。

総じていえば、何が起きているかと言えば、勤労者世帯、特に結婚出産適齢期は極端に負担が大きく、高齢者は老後20年以上を睨んで戦々恐々として消費できない。消費ができないから景気回復が遅延。すると勤労世帯の賃金が上昇しない。上昇しないから子供が増えない。増えないから、勤労世帯が減る一方で、景気が回らない、という構図です。

ここから脱却するには、働ける人はいつまででも働ける環境を創り負担の一部を担って頂き、さらにマイナンバー制度を昇華させ、社会保障の運用を適正化して、困ったふりをする人、本当は困っていない人には遠慮いただき、本当に困っている人に、より手を差し伸べられるような制度を改めて組み立てる必要があると考えます。

少し長くなりすぎましたが・・・。

新価値基軸による新しい世界秩序の創造について

北朝鮮による水爆実験が行われたという報が飛び込んできました。国連安保理決議を無視した行為に断固として抗議するものです。北朝鮮はこれで孤立化の道をたどることになります。日本として国際社会として対抗措置をとるべきであり、また単独でも更なるしかるべき措置をとるべきです。

■世界で起きていること

米国の相対的プレゼンスが低下している中、中東の混乱が増し、それにより欧州は分裂気味、米ロも対立、アジアで中国は台頭。中ロが共闘姿勢をとれば、世界のパワーバランスは一気に崩れ、混乱に拍車がかかる可能性もあります。そうした多極化した混沌が北朝鮮にこうした行為を許しているのかもしれません。つい先日、サウジがイランに対して国交断絶を宣言する報がありましたが、これもこうした混乱の一部であると見るのが正しいと思います。

全ては米国の行動しない主義が招いていることです。レッドラインを引いておいて、それを超えられても行動しないことが如何に米国のプレゼンスを低下させ世界の混乱を招いているのか。オバマ大統領は驚くことに2013年9月に世界の警察官を辞めた宣言をしています(辞めるにしても宣言しなくてもよかろうに)。

介入を避けることで目前の危機がなくなるのであればそれは理想主義としては正しいのですが、現実は全く逆の方向に流れており、米国のこうした行動しない主義が中東ではシリアの混乱を助長し、さらにウクライナのクリミア紛争を通じたロシアの介入で、更に問題が複雑化し、極めて解決が困難な問題になりつつあります。

かといって、これまでと同じような欧米風の自由と民主主義一辺倒の価値観押し付け外交や地政学的パワーバランスの価値観、軍事力だけのプレゼンスだけでは解決できる問題ではなくなってきています。

■世界が為すべきことは新しい価値に基づく戦略再考だ

北朝鮮については後日改めて書きたいと思いますが、今回はそうした世界全体の平和に向けた価値の創造と戦略立て直しについて書いてみたいと思います。端的に言えば、米国は、世界でのプレゼンスを増すべきだということですが、そうするためには、軍事的プレゼンスも増すべきです。残念ながら北朝鮮やISILなどの輩が跋扈する世界には軍事は欠かせません。日本で治安を守ってくれる警察官が棍棒と拳銃の所持を許されているのも同じです。

しかしながら、先ほど触れたように、それだけでは埒が明きません。自由と民主主義という価値観や地政学的パワーバランスの価値観、軍事力だけのプレゼンスから脱皮し、そうしたものに加え、新しい価値観を背景とした、より現実的な対応をしなければなりません。私は人道という価値基軸を追加して戦略の見直しを図るべきだと考えます。

■現在の中東の最大の対立軸がサウジとイラン

サウジとイランの話から始めたいと思います。これまで不穏当な状況が続いていた両国ですが、とうとう最悪の事態、非常に危険な状態になっています。アラブ諸国連合で外相会議が行われたり、アメリカのケリー国務長官が動いたりなど、関係国も事態収拾に向けて動き始めていますが、まずはこうした関係国には平和的解決に向けた外交努力を続けて頂きたいと強く願うものです。

もともとこの2つの国はペルシャ湾をはさんだ中東の2大国。サウジは世界最大の、そしてイランは4位の産油国です。そして、サウジはスンニ派が、イランはシーア派が多数を占める国です。そしてこの2国は中東の派遣を巡り長く緊張関係にあり、周辺国の内戦で代理戦争を行っている。

例えばイエメン(サウジの南端)。現在のハディ大統領はもともと民主化の波に乗って政権に就いたスンニ派の人ですが、憲法草案の議論のもつれからこれがさらにシーア派の反政府勢力と対立。想像どおり、サウジはハディ大統領の後ろ盾となり、反政府組織はイランが支援している。

シリアも元々は、イランがシーア派のアサド大統領を支援し、サウジがスンニ派を中心とした反体制派を支援していた。そうした代理戦争の間隙を縫って台頭してきたのがISILです。

イラクも、もともとスンニ派のサダム・フセイン政権が多数派のシーア派国民を統治していましたが、フセイン政権後はシーア派が国づくりを主導するようになり、対ISIL作戦では、イランの指揮のもとシーア派民兵が動員されていることが、スンニ派とサウジの反発を招いています。

■ISIL対策を現実路線で徹底的に行うことから始めるべき

そこで話をISILに移します。ISILは、難民発生を武器にEU首脳にプレッシャーをかけ続けており、それがもとでEUは分裂しています。昨年末、EU本部があるブリュッセルを訪問した際、EU本部の知人が、各国国境管理を強化していてEUがEUでなくなりつつある、という趣旨のことを仰っていました。ISILはEUの在り方をも変えようとしています。

であれば、やることは、まずはISILの徹底排除であって、これは空爆だけでは解決しない。ではなぜ米国世論調査で米国民の過半数がテロ対策として対ISIL作戦での地上軍派遣を支持しているのに米国政府にできないかと言えば、2つの理由があります。

第一は、ISILの支配範囲は中東4位の石油産出量を誇るイラクでも北部のみで、石油掘削は南部が中心となっています。だからアメリカは、ISILの南下を防ぐことが最低限の戦略になるため、そのあたりで徹底的に空爆を行っています。つまり最低限やってればいいんじゃないのというのが積極的理由。

第二は、米国のイラク・アフガンでの経験則によるものであって、地上軍派遣後に誰がどのように治安維持を行うかが問題となる。それはとりもなおさず、アサド政権をどうするかにかかっています。これが消極的理由。

後者は少し複雑です。本来、オバマ大統領が当初から明確なプレゼンスを中東に示していればそれほど困難ではなかったはずですが、今となっては、ロシアも介入しているので、単純な話ではなくなってきています。それは、ロシアはイランとともにアサド政権を支援しているからです。

■ロシアとは妥協点を見出すべきだ

ロシアはISIL掃討ができたとしてもアサド政権温存を主張するはずです。もちろんアサド政権は大量殺人の責任を取るべきであるし、自由民主主義価値観から見れば撤退して頂かなければならない存在です。ロシアが地上軍派遣を米国に持ちかけた際にアメリカは即座に否定しているのはそういう理由です。しかし、そうしている間にも難民が大量発生しており、これだけでも人道問題であるのに、この難民が更にEUに入り新たな人道問題を起こしています。

ロシアが目指しているのは、中東の権益拠点であるアサド政権を軸に、アメリカがしなかった中東秩序の構築を、ロシアが変わって実行することによって、世界におけるロシアのプレゼンスの向上を図るというものに見えます。そうなってしまっては中東の世界が塗り替えられ、世界情勢が大きく傾くことになる。

であれば、目の前に人道支援しなければならない人がいるのであれば、という価値軸で、アサド政権にもISIL掃討後にも一翼を担ってもらうような戦後処理が現実的にならざるを得ません。欧米はこうした現実主義に転換して、目前のISIL対策をしなければ、混乱は増すばかりです。

そういった意味で、昨年12月にシリア問題解決のために関係国17か国が集まり、解決に向けた工程表をまとめましたが、私自身は妥協点としては大いに賛同します。何の話かと言えば、アサド政権と反政府勢力が半年以内に移行政府を発足させて来年春までに憲法を制定し選挙によって新政権を樹立するというものです。

誤解があると困るので念のため書き添えておきますが、アサド政権を支援するということは間違いです。人道上の価値によって妥協を探るということです。

■日本は新しい価値創造を世界でリードしていくべきだ

世界は新しい秩序の形成をなしていかなければならないと述べましたが、日本も例外ではありません。ただ、こと軍事に関しては、日本は、やることも、やれることも、やるべきことも、全くありません。昨年通過した限定的集団的自衛権行使を含む平和安全法制をもってしても、日本の存立が脅かされる事態が生じない状態で、いくら演繹的戦略的理由を述べ立てたところで、自衛権を行使できる憲法上および法律上の理由は全く見当たりません(せいぜい掃海活動ですが存立危機事態に該当する掃海活動というものは、否定はしませんが極めて限定的なはずです)。もちろん憲法と法律が許容したところで、日本が軍事介入をすべきでもありません。

では何をすべきなのか。人によっては、こうした混乱や対立はもともとは貧困や飢餓や格差からくるものであって、軍事に軍事対抗では解決しないので、貧困や格差解消のための支援や当該国の自己解決能力支援、いわゆるキャパシティービルディングをやるべきだということをことさら主張する人がいます。もちろんそれはそれで正しいし、日本も既にやっています。

ただ、対立はそうしたことだけでは解決できません。そうしたことに取り組むべきは論を俟ちませんが、国際社会の中で、特に今回、国連安保理非常任理事国になったのだから、イスラムから見ても価値の押し付けとならないような新しい価値創造を日本は主導していくべきです。

TPP経済影響試算について

昨年末、政府はTPPの経済影響試算を公表しました。どう計算しているかというと、GTAPという数理モデルを使った計算で、いろいろな仮定に基づくものなので、絶対正しいということではありませんが、大まかな方向性は把握できるものです。

で、結果から言えば、実質GDPは2.6%増、だいたい14兆円程度の経済拡大効果、雇用は80万人増となるという試算結果です。14兆円ってどの程度の額かというと、例えば消費税にして7%分、あるいは貿易の輸出額が73兆円(輸入が86兆円)、旅行収支の収入が2兆円、などと比較できます。結構大きい数字です。

気になる農林水産物については、最終的に1300〜2100億円程度の生産額減少。どの位の数値かというと、農林水産物生産額が10兆円程度ですから2%程度の価格低下になります。この額は先般発表した「総合的なTPP関連政策大綱」で示された対策によって生産は維持されると見込まれています。

なお、食料自給率という言葉はあまり私は好きではありませんが、この自給率に対するインパクトはほとんどないという試算結果がでています。

一般論として、自由貿易が目指す目的は、輸出入の増大によって生産性が向上するというプロセスと、それによって実質賃金が上がり雇用が増えるというプロセスと、実質所得の増加によって貯蓄と投資が増し資本ストックが増えるために生産力が拡大する、という3つのプロセスを通じて、生産性と投資と労働の好循環を目指したものです。

日本という国は、ものすごく内需依存度が高い国で自分だけで食っているようなもの。TPPについて言えば、対内直接投資残高(GDP比)で言えば、米21%、加35%、豪41%、星252%、チリ67%などですが、日本は突出して低く3.8%です。投資開放度が上がれば経済へのプラスのインパクトが大きく、1%上がるとGDPは3%上がるという試算もあります。

つまり日本全体としては期待は大ということになります。

しかし忘れてはならないのは、これはマクロの話であって、国民の皆様が何を営んでいるのかの内容によって明暗が分かれる可能性があるということです。ですから、明暗を分けさせないために細かい対策をこれから考えなければなりません。

http://www.cas.go.jp/jp/tpp/kouka/pdf/151224/151224_tpp_keizaikoukabunnseki03.pdf

(参考:産出額)
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/nougyou_sansyutu/pdf/shotoku_zenkoku_14.pdf

理化学研究所の快挙

研究不正問題で荒れた2年間でしたが、理化学研究所は継続的に斬新かつ先端的な研究成果を着実に挙げていることが分かります。

http://www.riken.jp/pr/press

もちろんSTAP細胞問題以降、研究不正撲滅のためにこの2年間、様々な取り組みを自主的にし、また同時に自民党でも不正撲滅のための議論をしてきました。これからも、不断の努力をしていかなければならないのは論を俟ちません。(ちなみに、私は同問題は、もちろん理研の研究体制の問題でもありますが、むしろ一義的には学術雑誌の査読体制の劣化を大いに指摘しておきたいと思っていますし、そもそもの本質的としては、研究者の評価を論文数などの具体的成果に求めすぎて研究者が雑念を捨てじっくりと研究に没頭できない体制にこそ問題があると思っています。)

ただ、冒頭に触れたいように成果は成果として大いに歓迎したいと思います。

今般、日本は偉業を成し遂げたんだと、日本人として喜びたいと思います。原子番号113、自然界には存在しませんが、人工的に安定的な原子番号113の原子の存在を確認し、命名権をアジアで初めて取得しました。

すいへいりーべーぼくのふね。高校生のときに覚えた原子番号表の語呂合わせは未だにしっかりと頭にこびりついています。あの原子番号表に日本人が発見し命名する原子が登場することになるとは思いもよりませんでした。

世界一の研究開発拠点を目指すべき。目的は箱をつくることではなく、世界の優秀な人材がこぞって日本に集まって、価値の高い知的生産活動を行ってくれること、それによって日本はもちろん世界に貢献するような知のハブ・人材のハブになってくれることを望んでやみません。だからこそ、一時断念した、特定研究開発法人への指定を、他の主要研究所とともに、早急に実現しなければなりません。

以前も書きましたが、古代ローマの時代、エジプトのアレクサンドリアに当時世界最大を誇る図書館がありましたが、とある事件で焼失するということがありました。それをクレオパトラがみて、わざわざトルコのベルガモンから、当時世界第二位の規模を誇る図書館を巨費を投じてアレクサンドリアに無理やり移築させたのた何のためかというと、クレオパトラが図書館というものがあれば世界から優秀な人材が集まってくることを、そして集まってくると自然に地域が発展することを知っていたからに他なりません。

 

所属委員会のお知らせ

今期より、外務委員会、財務金融委員会、地方創生特別委員会に所属することになりました。よりよき地域、よりよき日本の創造を目指して参りたいと存じますので、関係者の皆様には引き続きご指導賜りますよう今後とも宜しくお願いします。

大野敬太郎

申年の新年を迎え謹んでお慶び申し上げます

申年の新年を迎えました。謹んでお慶び申し上げますと共に、本年、皆様にとりまして幸せな一年となりますよう、心からご祈念申し上げます。

 謙虚さと真摯さ。私が政治家を志したときから常に心に留めている言葉です。結局、政治というものは、個別具体的問題の集合体を、総合的俯瞰的に見て、了か否か判断し決断していくものです。そして、その結果を皆様がご覧になったときに、一見おや?と思う政策でも、時間が経ってそれが歴史になったときに、好評頂くこともあるでしょうし、やっぱり酷評されることもある。逆に一見素晴らしい!と思う政策でも、後に酷評頂くこともあるでしょうし、やっぱり好評頂くこともある。

 とどのつまり、政治は当然人間がやることであって、その政治家が何を思って時々刻々と迫る政策判断を行っているかをご理解頂くことが一番重要なのであって、だからこそ丁寧に説明すべきは論を俟ちません。しかしその判断基準は外形的には分かりにくいものなのかもしれません。そう思えばこそ、謙虚に真摯に膝を突き合わせてとことん話をし、政策も併せて人間としての評価を頂き、大胆に政策を実行して結果を出して、最終的に信頼を勝ち取らなければ、いつかは頓挫すると思うのです。

 香川でいろいろな方にお目にかかります。景気回復の波は香川にはまだまだ届いていませんよ、大企業だけじゃありませんか、というご指摘や、マイナンバーについてのご疑問やご不安、TPP大筋合意の報と相まって農業や漁業の将来を案じるお声、規制の過不足の問題提起、税と社会保障や外交安保政策の在り方についてのご疑問、行政の不効率や無駄についてのご指摘、教育の重要性など、昨年も多くのお声をお寄せ頂きました。

 こうしたお声全てにお応えしていきたいと思います。その中でも経済と地方創生は今年の最重要課題です。消費税増税を来年に控え、今年が本当に真剣勝負の年になります。そして中長期的に言えば人口減少対策に繋げていかなければなりません。

 今年は申(サル)年です。太宰治は、猿ヶ島という短編小説で、2匹のサルを登場させて、抗うか屈するかという人間の行動規範について書いていますが、抗い屈し葛藤の中で確かな結果を残していきたいと思います。特に申という文字は、果実が成熟して固まっていく状態を表すと言われています。確実に固い実にしていかなければなりません。

 改めて、謙虚に真摯に大胆に、がんばって参りますことをお誓い申し上げますとともに、皆様方には今後ともご指導賜りますよう、心よりお願い申し上げ、本日ご参会賜りました皆様に対する御礼のご挨拶にいたします。

日韓外相会談で合意された慰安婦問題について

戦後70年、日韓国交正常化50周年の年の、年末にあたり、大きなニュースが飛び込んできました。慰安婦問題合意の報です。慰安婦問題は、両国間の棘であるばかりか、東アジア安全保障戦略上も極めて暗く重い影を落とす問題の一つでした。

今回の合意は、一見意外であったものの、大いに評価できると思っています。その理由を含めて、思ったことを書き残しておきたいと思います。

 日韓外相会談は先日28日午後2時より行われ、続いて夕刻5時48分から15分間にわたり日韓首脳電話会談が行われました。その際に重要な発表がありました(余談ですが、私のところには29日午前3時10分に正式な連絡がありました。仕事納めであったはずのその日、その時間まで頑張っている外務省職員にはご慰労申し上げたいと思います。)

第一に、日本は外交に戦略がないと指摘されて久しいですが、ここ最近の戦略は目を見張るものがあるということを申し上げておきたいと思います。例えば今回の合意も本来大変な困難を伴うものであったはずです。なぜ可能だったのか。勝手な妄想ですが、第二次安倍政権が発足した当初の国際社会が懸念していた安倍総理の右イメージというのものを逆手にとって、米議会演説、日米関係強化、中韓軟化、70年談話での国内向メッセージ「子孫に謝罪させる運命を負わせない」をつくり、外から見ると一見大きく右に遠回りしてきたけど、結局原点に戻ってきただけで、気が付くと、いろいろなことが解決されている。戻れたのは途中のプロセスが全て一貫していて、「日本の誇りを取り戻す」ことと「現在の安保環境に対処する」であるからです。

ちなみに、2次政権発足以降、ご存じの通りNSSが発足していますが、それが有効に機能しているためにこれほど戦略的に事を進められているのだとしたら、それはそれで素晴らしい話です。もちろん安倍総理や岸田外相のリーダシップによるものではありますが、国家として外交戦略を今後どう担保するのかというのはそれとは異なる次元の重要な問題です。

第二に、では何故、日韓関係を早急に正常化しなければならないのかですが、ひと言でいえば東アジアの安保環境の変化に対処するためです。これまで日韓関係は完全にこう着状態。国会での対韓国外交に関する雰囲気について触れれば、安保戦略上あまりに重要な隣国の割に、あまり日本人の心が韓国人に届いていないのか、あまりに韓国側の感情的発言が多く、暫く放置しておいた方がよいのではないかという雰囲気でした。ただ、安保環境に鑑みれば日米韓関係というのは日米印・日米豪と合わせて非常に重要な3国関係ですので、放置しても前進しなければ意味はありません。いつかは前進しなければいけない。

第三に、では一見意外とはどういうことかについて触れたいと思います。まず、韓国とはこの問題については、国交正常化された1965年に締結された日韓基本条約で(正確にはそれに付随する日韓請求権協定で)、国や国民の間の請求権が「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」とされ、日本側の一貫した立場でした。つまり、韓国側が主張する日本軍の組織的計画的強制を示す客観的事実は明確に確認できないものの、何らかの関与は当然あるので道義的な責任は当然あって、戦時中にご迷惑をお掛けしたことは心からお詫び申し上げる、この部分は一切変わらないけれど、請求権となると、もう解決してますよ、というのがスタンスでした。

ですから、今回、最終的かつ不可逆的に解決される、という文言は、ほんじゃ前のものは何だったの、ということになるわけです。ここはおそらく誤解されやすいところだと思いますが、今回の電話会談でも総理から「日韓請求権協定で最終的かつ完全に解決済みとの我が国の立場に変わりないが、今回の合意により、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを歓迎」と伝えられています。今回の合意を私なりに解釈すれば、日韓請求権協定での日本の立場は何ら変わらないけど、その枠組みとは別に改めて両国で解決していきませんか?ということになる。ここは理屈の世界になるので少しわかりにくく、もう少し分かりやすく説明することが必要だと思います。
 
第四に、いずれにせよ、会談の内容の履行をどう担保するのか、が一番重要なのだと思います。改めてポイントだけ示しておきます。

○日本側表明
・改めて元慰安婦の方々への謝罪
・「元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる。韓国政府が財団を設立し、日本の予算で事業を行う。支援のための予算措置はおおむね10億円」
・「(上記措置を)着実に実施するとの前提で、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」
・「国際社会で本問題について互いに非難・批判することは控える」
・「韓国政府は、ユネスコでの記憶遺産登録申請に加わることがないと認識」
・「韓国政府は、旧民間人徴用工問題について、求権協定によって法的に解決済みだとする韓国政府の従来からの立場は変わっていないと認識」
○韓国側表明
・「日本政府による表明と発表に至るまでの取り組みを評価」
・「大使館前の少女像について適切に解決されるよう努力」
・「(日本政府が表明した上記措置を)着実に実施するとの前提で、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」
・「国際社会で本問題について互いに批判・批難することは控える」
・「韓国政府は、第三国での慰安婦の石碑・像の動きを支援することはない」

最後に、この問題の私自身の基本的な考えを書いておきたいと思います。最も重要なことは日本人の心が正しく韓国に伝わることです。現代的価値観でみれば、戦時中に発生した慰安婦問題は、いかなる経緯があったにせよ二度とあってはならぬことであって、強制があったかなかったかに関わらず、そうした現代の日本の価値観を韓国を含め国際社会に伝えなければなりません。仮に日本が何も語らずいきなり最初から強制はなかったなどと言えば感情論に発展するばかりです。そして仮に韓国が何も語らず謝罪が足りない強制はあったなどと言えば、これも感情論に発展するばかりです。であれば、過去に日本政府がそうしてきたように道義的責任のもと元慰安婦には心からのお詫びを申し上げるのは当然ですが、一方で、総理が70年談話で触れたように、未来永劫謝り続ける宿命を日本人の後代に課すことは絶対にさけなければなりません。かかる観点から、いたずらにお詫びを続けることにどのように終止符を打てるかが問題です。であるならば、お詫びが実行として担保されるためには、国際社会と協同して二度とこのようなことが無いよう未来志向で取り組む姿勢が望ましいのであって、日本も率先して取り組むべきと思います。

その上で、あくまでその上で、何が事実であったのかをこれからも引き続き検証していくべきです。”なかった”ことを”なかった”と立証するのは非常に困難ですが絶対に必要なことです。”なかった”ことを”あった”と言う人がいれば、”あった”と主張する側に立証責任があるのでしょうからそれを追求すべきです。立証できていないものに”あった”と言う人のことを又聞きして”あったあった”と騒ぐ人が現れれば、丁寧に逐一立証できていないことを説明していくべきです。すべては我々の子孫のために。

※初校から一部加筆訂正いたしました(2016年1月1日) 

税制大綱について

来年度の税制大綱が発表されました。少し遅れまして恐縮ですが、私の考えも併せてどうなったのかを書き留めておきたいと思います。

税制大綱
https://www.jimin.jp/news/policy/131067.html

・消費税

まず一番大物の消費税。2017年4月から10%になることは既定路線ですが、ご存じのように軽減税率が導入されることになりました。対象は外食・酒以外の食品と新聞です(8%に据え置き)。条件は詳細に現在議論中ですが大筋は決まっています。この軽減税率については、申し上げたいことも多くありますが、既に決まったことですので、決まったベースであるべき姿を今後とも議論していきたいと思います。

ただし絶対に避けなければならないのは、対象品目の無制限な拡大です。消費税率がもともと高い欧州のようなケースでは別ですが(日本もベース税率をそこまで高税率にする覚悟があるなら別ですが)、無制限に許すべきではありません。そもそも消費税は社会保障に使うものなのですから。本来低所得者対策をしなければならないのに、高所得者をより助けて?しまう軽減税率は結局は巡り巡って低所得者を助けられなくなるという逆進性の問題を抱えていることをよく考えなければなりません(そのほか問題はいくつかあります)。

なお対象品目として新聞が駆け込みで導入されました。一体どうなのかしらとは思います。宅配する週2回以上発行するものが対象になるのだそうです(つまり駅やコンビニで売っているものは対象外)。今後、雑誌・書籍も検討するとのことで、有害図書をどう排除するのかなどがポイントだとか。

また事業者納税額の把握について議論されているインボイス制(税額や税率などを記載する請求書)、6年後から導入することとなりました。それまでは簡素な方法となります。

・法人税

来年度から実効税率が20%台となり、ようやくドイツとほぼ同等の法人税となります。設備投資や賃金の更なる向上に充てていただければと思います。また財源については法人税を下げてその分まるまる個人からもらうということではいけないわけで、課税ベースの拡大も行うことになっています。

問題は、中小企業です。法人税減税を行っても赤字企業が多い中小企業の場合、現時点ですぐにメリットはありません(もともと優遇されている)。だいたい4割くらいの中小企業が経常収支マイナスです。なぜ赤字企業がこれほど多いのかというのは、細かくは書きませんが、個人の所得税の在り方と大きく関係します。そういったことを総合的に勘案して、今後も俯瞰的戦略的に議論を進めて行く必要があります。なにせ日本の9割以上が中小企業であって活力の宝庫ですから。

ちなみに中小企業が新規設備について固定資産税が3年間半分になる制度が導入されます。

・所得税

今回の目玉は三世帯住宅にリフォームする際の税額控除。重要な一歩になるのだと思います。理由は長くなりますから遠慮しますが、核家族の進展が日本に大きな悪影響を及ぼしているということに尽きます。フランスのような多世帯同居を促進する家族税制が必要だと考えていますが、技術的には種々問題がありました。リフォームに目を付けたという点では少し主軸からはずれますが、大いに賛同するものです。そのほか主要なポイントは以下の通りです。
・自宅を売却する際に3000万円の特例控除。
・医療控除について市販薬促進のため薬に限って控除を拡大。
・国立大学法人等への寄付について学生支援のために充当されるものについては税額控除制度を導入
・公益法人への寄付について控除を受けられる要件を緩和。

・所得税2

来年度に向けて抜本的な改正を目指しています。所得税制が時代にマッチしなくなってまいりました。働き方が多様化し、家族の平均的姿も変わってきました。成長期の平均的日本人の姿はサラリーマン世帯である給与所得者。時代が進んで一億総中流と言われ始めた時代、累進カーブを相当フラット化しました。が、少子高齢化に伴った社会保険料の増加で、低所得者の負担が増えた。この世帯の出生率を改善しなければ少子化には歯止めがかけられません。来年に向けて議論を尽くしたいと思います。

・その他

・企業版ふるさと納税が導入されます。地方自治体へ寄付すれば3割を法人税から控除される制度です。
・遊休農地は固定資産税が1.8倍になりますが、農地バンクを通じて貸し出すと半減されます。

以上、ご紹介したものは、ごくごく一部ですので、詳細は前掲の税制大綱をご覧いただければと思います。

ForumK新年会 in 香川を開催させていただきます

いつも大変お世話になっております。さて、掲題の通り、地元香川県にて恒例となりましたForumK新年会を下記のとおり開催させていただく運びとなりました。ご多忙のところ大変恐縮に存じますが、お誘いあわせの上、是非ご参会賜りますようご案内申し上げます。

日時:平成28年1月30日(土曜日)午後6時

場所:オークラホテル丸亀2階鳳凰の間

お問い合わせ先:大野敬太郎丸亀事務所 電話:0877-21-7711

ご案内文:

危機感の共有。これなくしては何も始まらない。危機感の共有こそが他人依存から脱却し自ら未来を切り拓く原動力となろう。大野敬太郎君はこのことを初当選以来ずっと言い続けている男だ。地方創生は今年で2年目を迎えるが、この危機感を脱力感や無力感に変えてはならない。国家存続のため、地域存続のため、政治が先頭となり全員で危機意識を共有し未来に向かって前進していかなければならない。

従来の延長線にはない大胆な政策と新しい価値観が必要だ。茹でガエルにならないために、恰好悪くても、政治家にはもがき苦しんでもらわなければ困る。大野敬太郎君は、恰好をつけない男だ。存分にもがき苦しんで新しい日本と新しい香川を創ってもらいたい。その思いを込めて、是非とも皆様のお力を彼にお与え頂きますよう心からお願い申し上げる次第である。 

フォーラムK発起人一同

※本催し物は政治資金規正法第8条の2に規定する政治資金パーティです。