中国訪問

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先週の話になりますが、24日から27日にかけて若手議員6名で中国北京を訪問しました。中国共産党中央委員会直属の中央対外連絡部(略称中連部で自民党国際局に相等)の楊燕怡・部長補佐(次官級)、唐家璇・中日友好協会会長(元外務大臣)、武大偉・朝鮮半島特別代表、劉江永・精華大学国際関係研究所副院長、中央政策研究室経済局などの大物幹部のほか、趙世通・中連部二局副局長、沈建国・日本処処長といった若手幹部の方々と会談をこなして参りました。ハードなスケジュールでしたが有意義な訪問となりました。

中国との種々の困難な課題について、当然理論武装は済ませて訪問するわけですが、理論をぶつけているだけでは解決しないのは当初から分かっているわけで、もちろん言いたいことは言って参りましたが、一方で若手であることを武器に、未来志向の関係を築かなければならないことを訴えて参りました。

会談内容の詳細はこの場では触れませんが、概して言えば、中国も未来永劫このまま突っ走ることは考えていないことは肌で感じました。

 

 

原発の行方〜柏崎刈羽原発視察

新潟県の柏崎刈羽原発にお邪魔しました。世界最大の発電能力をもつこの原発も中越地震から一部が止まり、東日本大震災後に全炉停止となっています。原発問題を考える上で、一度は現地に赴いて地元の皆様のご意見を伺わなければ議論もできまいと思い、10時間かけて参りました。

驚いたのが地元のご意見。原発再稼動について、地元の経済状況や放射能漏れの恐怖など、肯定否定種々の思いが交錯しているのであろうと想像しておりましたが、もちろんそれもあるけど、そもそも日本国家としてのエネルギー政策のあり方を真剣に考えているんだ、とおっしゃった方がいらっしゃったことに、驚きさえ感じました。

さて、原発施設内は、時間の制約がありながら東電から真摯な態度で細部まで見せて頂きご説明賜りました。例えば防潮堤。高さ15mに設定したそうですが、考えてみれば何を根拠に15mというのは難しい。通常日本海側では5m程度と言われているそうですが、それを施設のエンジニアリングジャッジとして15mとしたとのこと。積極的であると感じました。防潮堤だけで200億円とのこと。

防潮堤内部の施設では、給排気口にもわざわざ浸水防止壁を設けて二重三重の対策を講じ、福島で話題になったベント装置は通常電磁弁による開閉が行われていますがそれを手動でも開閉できるように工夫がなされていたり、また、電源喪失に対しては電源車を20台規模、一部はガスタービン発電車まで用意し、その燃料である経由は高台の地下タンクに貯蔵するという念の入れよう。冷却水も高台に貯水タンクを設け、更に海水から冷却水を製造する特殊車両も設置し、ここも幾重にも安全対策がとられていることをこの目で見ました。これらはごく一部ですが、福島の問題がフィードバックされている箇所が随所に現れています。この柏崎刈羽ではこれまで3200億円の対策となっているようで、それに留まらずこれからも考えられることは行っていくそうです。

問題は1つ。このブログでも以前から指摘をしておりましたが、パッシブセーフティの概念。シビアアクシデント発生時にはどうしても、起きてしまった際の対策をとらなければなりません。工学的にはどんなことでも完璧はありえない。起きてしまったときの安全確保をもって、トータルで完璧に仕上げなければなりません。

その一つが関連自治体との避難誘導や情報伝達方法などの具体策の協議。細部は分かりませんでしたが、東電側の説明と柏崎市長、刈羽村長両者のご意見を伺って思ったのは、この部分、未だ未完成ではないかということです。詳細を良く拝聴できませんでしたので、厳密に言えば既に整っているのかもしれませんが、精査して、不備があるなら早急に整備する必要があると思っています。

柏崎刈羽視察

台湾出張

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青年局の活動の一環で、我が党ホープの小泉進次郎団長の下、台湾に出張して参りました。実は社会人になって欧米への出張ばかりであったので、政治家としての1期目はアジア圏の人脈を築きたいという思いと、我が祖父は台湾総督府に勤務、親父も台湾育ちという意味で特別な思いがあるということ、、そしてまた近隣諸国との困難な外交課題がある中で台湾は重要だという思いなどが織り交ざって、新人の厳しい懐事情もありましたが、思い切って行って参りました。

私にとって短期間に二度の訪台となります。今回は、李登輝元総統講演会(リーダシップのあり方と日本が向うべき方向性などご意見拝聴)、馬英九総統との会談(大震災支援に対する謝意伝達と今後の新しい日台関係についての議論)、立法院議員との議論(漁業協定など)、外務次官との懇親、プロ野球始球式(台湾一般人への謝意伝達のため)、1999年に台中地区で発生した大地震の被災地訪問(青年局のチーム11としての活動の側面と311大震災を忘れないために日本がするべき課題を考えるため)、忠烈祠国立墓地献花(表敬)、李鴻源内務大臣陪席のもと東日本被災者救助隊の皆様との面談(謝意伝達)、八田興一記念館・烏山頭ダム視察など、短時間で相当過密なスケジュールでした。

台湾の歴史を考えた時に蒋介石という人物は欠かせませんが、その蒋介石を考えた時に欠かせないのが鄭成功(ていせいいこう)です。時に17世紀。明が清に駆逐されつつあった時代です。

鄭成功は福建省出身の父と長崎県平戸市出身の日本人母をもつ、平戸生まれので、清の勢力に徹底交戦し、止む無く勢力挽回のために当時オランダが支配していた台湾にオランダ人を駆逐して逃れ移った人。特に台湾人からは英雄視される逸話の多い人物で、父が清に投降した際に成功は泣いて止め今生の別を告げたとか、日本式の甲冑をつけた鉄砲隊を配備したとかなどが残っています。

清の時代には中国本土から大勢の人が台湾に移住しますが、清にとって台湾はそれほど重要な位置づけではなく統治も厳密ではなかったそうです。そしてそののちに日清戦争が起こり、下関条約を経て、台湾は日本に割譲されることになります。

そこから半世紀に渡る日本の統治が行われますが、終焉はご存知の通りサンフランシスコ平和条約。そして直後に日本は台湾と日華平和条約を締結、そして72年の日中平和友好条約によって断交となります。この間に蒋介石率いる国民党は、奇しくも鄭成功と同じような運命を辿ることになります。

この二人に共通することは本土から来たということです。そしてその後の台湾は、蒋介石の息子の蒋経国(しょうけいこく)(「民主化しなければ国際社会の中では生きられない」として国民選挙によって総統になった人)により民主化され、さらに「私は台湾人であり台湾人の台湾を築かなければならない」として台湾のメンタリティを的確に掴み選挙で総統になり、台湾成長の礎となった李登輝先生(今回の訪問で会談に立ち会う栄に浴しました)、独立を唱えた民進党の陳水扁を経て、現在は国民党の馬英九が総統になっています。

つまり、台湾は台湾であるべきだという考え方から、徐々に独立だということになって、今のままでいいじゃないのという変遷を経ていることになります。そして最近では、台湾は中国本土とECFAという貿易協定を結び、サービスや商品の貿易協定を結ぼうとしており、過去にない台中関係を作り上げています。ついでに言えば、馬相当は、日本統治時代の呼称を日治から日拠にすることを表明しています。明らかなる中国シフトに見えます。

こうした歴史を踏まえたうえで、忠烈祠国立墓地(辛亥革命や抗日戦争などで戦没した英霊を祭る施設)での献花に陪席し、李登輝元総統や馬英九総統との会談を終え、最近の台湾の動向が北東アジアの安全保障にどのように影響するのか、特に日本として今後どのように中国と向き合っていくべきなのか、また、冷え込んでいる日韓関係を考えたときに、同じ日本統治時代を経た台湾となぜ全く違う事態に陥っているのかも、非常に考えさせられました。

また与野党立法委員(国会議員)との意見交換会を終えたのちには、先に締結した日台漁業協定について、確かに尖閣をめぐる領有権の主張のぶつかり合いに新しい一石を投じましたが、一方で沖縄などの漁業者の間で新たな問題を提起してしまっていることを今後どのように収拾していくのかも考えさせられました。

それ以外にも、今回の訪台ではここで書ききれないくらいの多くのことを考えさせられました。

いずれにせよ日台関係は非常に重要ですが、特に今回の自民党青年局の訪問は過去最大規模の訪台事業であり、新しい日台関係を築いていくきっかけにしなければならないと強く感じています。

秘密保全と情報公開について

新聞紙上などで政府が検討を進めている秘密保全法の是非をめぐって時々議論が起きています。国家秘密の取り扱いについては、何回か取り上げてきましたが、私もその必要性を実感していますし、党内の会議で何度か必要性について発言をさせていただきました。議員初めての国会質問でも予算委員会で質問させていただきました(リンク)

まず第一に、反論があるのは政治に対する不信感であろうかと認識しております。かねがねお訴え申し上げていますが、政治が何かをするにあたって信頼が無ければ何もできません。であるならば、政治は謙虚さ真摯さを失ってはなりません。ここは絶対に自らの肝に銘じておかなければならないと思っています。

第二に、テクニカルな問題としては、国家秘密とは何か、その定義です。たとえば原発をめぐる情報を国家機密指定されてしまったら、国に都合の悪い情報が隠される可能性があるなどの危惧です。

第三に、しかし考えなければならないのは、国際間の信用です。例えば、外国が日本に対して機密事項を提供し、それが日本国内で公知されたとします。いったい次は情報提供をしてもらえるのか、日本という国は信用してもらえるのか、そういう問題です。

第一の問題はさておき、第二の問題は基本的には情報公開とセットで進めるべき課題であると認識しています。米国にはFOIA(Freedom of Information Act)という情報公開法の中で情報保全を謳っています。つまり、秘密にするけど、それは何年程度秘密にする事項であって、その期間が過ぎたら、こういうルールで公開しますよ。そして秘密指定に問題があれば歴史が断罪しますよ、という立て付けになっています。

2010年の当ブログの記事「『密約に想う』に想う」でも触れましたが、FOIAにならって尚一段と情報公開のルール作りを議論する必要があると思います。

第三の問題については一例を挙げたいと思います。以前、外国籍潜水艦が日本近海で火災を起こして浮上し、母港に帰還したという事実と言われる記事が新聞に掲載されました。当時、戦後初の防衛機密の漏洩と言われましたが、なぜそうなるのか。

もう一度前出の文章をお読み頂ければと思います。ぴんと来た人は鋭い。普通は、へー日本近海に潜水艦がきているのねぇ、怖いわねぇ程度だと思いますが、ポイントは、なぜ火災と分かったのか、という問題です。もしかしたら、暗号通信傍受であったかもしれませんし、もしかしたら、米国からの情報提供であったかもしれませんし、いずれにせよ、平然と公知されてしまったら、今まで脈々と築いてきた情報収集手段をその外国に知られ、もはやその手段は使えなくなっているのかもしれません。これはあくまで勝手な想像ですが、可能性は否定できません。これこそ国家予算の壮大な無駄遣いではないかと思います。

憲法改正の議論でも、単独の法律案の議論でも、これからしっかりと議論していきたいと思います。

日台関係の重要性

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先週の話ですので少し旧聞に属する話になってしまいますが、台湾に出張に行ってま
いりました。使った英文名刺は100枚近くと、非常に大勢の台湾の皆様にお会いす
ることができ、貴重かつ有意義な意見交換ができたと思っています。また台湾の皆様
の日本に対する友情というものを非常に感じた出張となりました。

第一に、東日本大震災の際には、台湾は1か月で100億円(もちろんトップで米国
を抜く)、最終的には200億円以上となりましたが、その謝意を台湾の皆様に直接
お伝えできました。

第二に、経済産業省事務次官に相当する梁国新政務次長、台湾銀行の李紀珠総裁、亜
東関係協会の李嘉進会長をはじめ、主要なポリシーメイカーと経済に関する意見交換
をしましたが、具体的に日本の経済政策や原発問題をどのように感じていらっしゃる
のかを直接知る貴重な機会となりました。

第三に、亜東関係協会科技交流委員会主催で日台関係について講演をさせて頂きまし
た。と言っても、実は先方がお付けになったタイトルは日本の経済政策であったので
すが、アベノミクスの金融財政政策については山本幸三先生や木原誠二先生がお述べ
になると思いましたので(実際にそう)、私からは日台関係、として科学技術政策に
ついて、特に科学技術外交について、私見愚見をご披露申し上げてまいりました。

台湾は日本にとって非常に重要です。とくに現状の馬英九相当の外交方針はともする
と日本離反に映るかもしれませんが、逆に日本にとってはこれ以上進まなければ丁度
良い頃合いではなかろうかと思っています。

少し与太話、善然庵閑話シリーズ

ちなみに、私の祖父は台湾に努めており、その関係で我が親父も子供のころは台湾で
育っています。子供のころは食べ物に苦労したそうで、片言の中国語をフレーズで覚
え、空腹を補ったそうです。例えば、「これとあれはどっちが良い?」「これを一個
頂戴!」「これあげる!」などです。実に物々交換に適する言葉ばかりですが、文法
は全く知りませんので、多少のアレンジしか効かない。

しかし、忘れたくないのかセンチメンタルなのか、私が子供のころに親父は家で何度
もその台湾で覚えた言葉を口ずさむので、私もそのまま覚えてしまいました。

ただ、不思議なことがあるのです。それは、なぜ幼少の頃の親父がそんな言葉を覚え
なければならなかったのか?

「に〜たいたいほいらいら」。

これを言えばほとんどの方が笑って下さる。意味は?「貴方の奥さん帰ってきた
か?」だそうな。なので、会議や演説の冒頭のIceBreakには重宝しています。いずれ
にせよ台湾にはそういった特別な思いもあったりします。

善然庵閑話:太宰治と眉山

眉山。私の知人で私より年下ですが私の文学の師から、数年前にお勧め頂いたのが太宰治でした。私は文学の素養は皆無なのですが、手に取ったその短編集に収録されていたのが眉山。掛け合い漫才のような形で始まるその物語も、最後のくだりには、頭を強く揺さぶられるような、そんな衝撃を受けたのを今でもよく覚えています。

「そうですか。・・・いい子でしたがね」

この言葉が脳裏に焼きついて離れません。人間わがままな存在です。だから人間くさいのかもしれません。しかしそれに気付いていたい。そしてこの短編はぜひ趣旨を変えずに書き直して子供達に読ませてあげたい。

中東の安定は我が国の国益

本日、米上院外交委員会でシリア攻撃を認める決議案が可決しました。今後、本会議を経て、更に下院での審議に入ります。報道によると、ケリー国務長官は化学兵器を使用したと判断した国が31、軍事行動参加表明が10カ国以上という状況だと語ったそうです。そしてG20で安倍総理はプーチン大統領、続いてオバマ大統領と会談を行っています。日本もこのシリア問題の対応(支持すべきか否かの議論)を急ぐ必要があります。

半年前、米国の外交関係での最大の関心はイランの核開発問題だという声をよく聞きました。一方で、オバマ大統領は2011年にリバランスを表明したことでもわかるように、世界戦略を見直しアジア太平洋地域を最優先事項の一つと捉える戦略転換を行っています。実際に今年度のアジア太平洋外交関係予算の増額がリバランス戦略の具体化だということが指摘されています(注1)。

(注1)国際開発庁(USAID)の予算要求の中で、アジア太平洋地域への要求は昨年度に比べ7%増となっているが、これはリバランス戦略を支えるものだ、ということをアミ・ベラ下院議員が下院外交委員会アジア太平洋小委員会で指摘しています。

1979年に起きたイランアメリカ大使館人質事件以降、イランとは断交しているアメリカですが、そのイランが核開発を背景に中東での影響力を格段に向上させているのはアメリカにとって非常に痛い話だと想像できます。逆に、イラクやアフガンで満足な状態を作れなかったこと、また、2010年以降、アメリカの中東和平への直接交渉は中断したままであること、ケリー国務長官が頻繁に中東地域を訪問していますが芳しい成果は表れていないこと、などから、米国の中東への影響力に疑問が残るのは否定できません。

そこに来てリバランス。リバランス発言は本来、中東もアジア太平洋も両方見ますよという意味だったと理解していますが、これがアジアシフトのメッセージになり、結果的に中東への影響力低下に拍車をかけてしまっているように見えます。実際にイスラエル情報機関の幹部もアメリカの影響力の低下について指摘しています(注2)。

(注2)
Israel Green, “荒れる中東と向き合うイスラエル,” Myrtos, No.129, Aug., 2013.

アメリカの中東への影響力低下は何を意味するのかと言えば、明らかに中東の混乱を増長する結果になる。アラブの春という地域によって全く異なる背景の紛争暴動がほぼ同時に起きると言う不思議な現象以降、中東情勢は多様化多次元化して非常に混沌としているためです。だからこそ、混乱を収拾しようと、前述の通り、軍事行動に参加を表明した国が多いと考えます。サウジ・UAE・カタール・トルコ・フランスなどです。

そして今、アメリカで最大の外交上の関心はシリアです。シリア内戦はアラブの春の中でも最も激化しているものです。死者は10万人、難民200万人という報道もあります。そして他の地区のアラブの春よりも遥かに複雑な状況に見えます。アサド大統領に対して擁護的立場をとっているのがロシア・中国・イラン。一方、強硬姿勢なのが、アメリカ・イギリス・フランス。更にカタールやサウジ等の湾岸諸国が続きます。前者は親シーア派のアラウィ派。後者はスンニ派です。そして反体制派組織は1つだけではなく多くの組織があり、一応シリア国民連合の下に組織化されつつあると言われていますが、結束が強いようには見えません。

アメリカは反体制派に多額の支援を行ってきましたが、非致死性であり、軍事支援には否定的。ただ、化学兵器を使ったら大変なことになりますよというメッセージは随分前から送っていました。

そして、これ以上、国際社会がシリア問題を放置することは人道的にも国際政治学上もできない状況になっています。放置すれば内戦が激化し、犠牲者が更に増え、さらにシーア派とスンニ派の宗教対立など新しい対立軸が生まれてしまう可能性もある。まさに待ったなしの状況ですが、これだけ死者がでている内戦に対して、なぜこれまで国際社会がなにもできなかったかというと、前述のとおり国連安保理のパワーバランスの問題があるためです。

では国連での対応が困難だから国際社会が放置しておいても良いのかという問題が生じます。そういう背景のもと、化学兵器の使用が明らかだとされ、シリアへの米英仏中心とした軍事介入が話題となりました。Foot Printのない限定攻撃を仕掛けるというものです。軍事による国際社会の介入なしに内戦激化に歯止めがかけられない状況であるという認識です。もし軍事介入しなければ、前述した「化学兵器を使ったら大変なことになるぞ」というメッセージが単なる口だけの脅しに終わってしまい、冷徹に見ればアメリカにとっての中東に対する影響力が更に低下してしまう。そういうロジックだと考えています。

ただ、軍事介入をやりすぎて政権が転覆したら余計に混乱するという状況も考えられます。例えば後述しますが、反政府組織はテロ集団も含め非常に多岐に亘っていますので、政権転覆は反政府組織同士の内紛に発展したり、アルカイダ系のシリアへの流入はロシアにとって第二のチェチェン紛争をもたらす危険性もあることが指摘されています。だからこそ、限定的な軍事介入というのが答えとしてでてきたものなのだろうと考えます。

いずれにせよ日本としても対応すべき課題です。まず明らかなのは、軍事介入の是非以前の問題として、シリア内戦収拾とアメリカの中東影響力強化は中東安定を介して日本の国益であり人道上の理由からは世界の利益であるということです。

問題は以下の点です。

第一に、手段ですが、軍事介入に頼らざるを得ないのかという指摘です。私は人道的な観点からそうせざるを得ないと考えています。

第二に、大儀ですが、化学兵器が体制派によって使われた証拠とか、反体制派によって使われなかった証拠とか、は大変重要な問題です。私自身は種々の情報から、体制派によって使われたのだろうと考えていますが、アサドの指示によるのかどうかということも問題です。しかし、最大のポイントは化学兵器使用は国際社会が絶対に許さないというメッセージが必要なのです。

第三に、目的ですが、一応シリア国民連合の下に組織されつつあるといっても反体制組織が複数存在する状況で、仮に軍事介入してアサド政権が崩壊したとして、余計に混乱したりしないのか。出口戦略は明確なのかということです。つまり、あくまで政権転覆が目的ではなく、化学兵器使用に対する制裁が目的の限定的軍事介入でなければなりません。

第四に、イランの核開発の問題。シリアへの軍事介入は、ともすると折角ロハニ大統領という穏健な大統領になって交渉が少し前進しつつあるイラン核問題を、また暗黒の世界に押し込めてしまう可能性も否定できないという指摘があります。私は逆に交渉力が強化されると考えます。これまでの米国主導のイランへの経済制裁によってイランがよりアサド擁護を強め、それがイランを利していると言う、国際社会にとってのジレンマというか負の互恵関係の連鎖を断ち切れる可能性があると思います。

さらに日本としては、独自に考えなければならないのは、日本にとって軍事介入支持表明は、アサド政権を擁護するロシアとの関係を悪化させる可能性があるとの指摘です。ロシアとは北方領土や資源外交について重要な時期を迎えようとしている時期です。慎重に考えなければなりません。

いずれにせよ判断の失敗は絶対に許されません。

確かな安全保障制度を構築し心豊かな国家の創造を

(とある機関紙に寄せた原稿を一部加筆訂正して掲載します)

 私が政治の道に飛び込んだのは、米国で同時多発テロが発生した数年後、丁度世界の安全保障環境が大きく変わろうとしていた時代でした。それまでは、いわゆる理科系ド真ん中の人生を歩んでおり、それはそれで充実した時間を過ごしていましたが、私の心の中に何か消し去ることができない靄のようなものを感じていました。大学生のころ湾岸戦争が起き、国家そのものの意味、つまり国とは国民にとってどういう存在であるべきなのか、ということを明確に意識してからのことでした。そんな折に、機会があり防衛庁長官の秘書官となりました。まさに私にとっては天命であったのではないかという錯覚さえ覚えました。

 そして昨年の八月は、私にとって重要な意味を持つものとなりました。政治家としての志を表に出した瞬間です。自民党による香川3区衆議院候補者公募があり、選考会では、所信表明に続き、教育問題や領土問題、国会改革などに関する質疑応答を行い、二〇〇名以上の委員による投票の結果、自民党公認を得て衆議院選挙に臨みました。今、政治家として第一歩を踏み出しましたが、それも多くの方々のご指導ご鞭撻ならびにご厚情の賜物であり、心から感謝しております。

 現在、わが国を取り巻く国際情勢や経済・外交、社会状況は混沌とし、確かな将来が見えない状況にあります。その閉塞感を取り除くことが先決です。そのために必要なのは、まずは政策の芯を確立することであり、その芯とは経済の安定成長が当面の国家の主是であることを再確認することです。新しい成長モデルを創造するために大胆に地方分権を推進し、さらに明確な産業戦略に基づいた将来価値を生む領域への投資を積極的に行い、同時におぎゅう荻生そらい徂徠や高橋是清も驚くほどのリフレ政策(インフレの発生を避けながら金利の引き下げや財政支出の拡大などで景気を刺激し景気回復を図る)を断行することです。これは公募が行われた時点でお訴え申し上げたことでもあります。

 しかし、それ以上に重要なのは、日本人の心の芯を確立すること、つまり日本人とは何かを再確認することではないでしょうか。今、日本を見渡すと、核家族化や終身雇用制の崩壊などによる労働意識の変化により帰属意識が失われ、自分さえ良ければという義務や責任の伴わない不健全な自由主義が横行しており、日本の美徳とされてきた伝統文化や道徳的アイデンティティが大きく問われています。日本は目指すべき方向を見失った漂流船のように私には見えます。

 戦後、日本人とは何かということについて、多くの論が著されていますが、『日本辺境論』を著した内田樹氏も言うように、日本というのは、有史以前から何となくそこにあったものですから、そこで生まれ育った日本人の意識の中には日本というものが築かれた原点というものがありません。人間、困ったら原点に戻ることを試みますが、日本人はその原点すら持ち合わせていません。ですから困難が生じたときには、相対的な同時代の空間軸の中で、世界各国との比較や他社の動向などでしか物事を考えられません。しかし政治の果たす役割は、その空間軸の中だけでなく、過去から未来へ進む歴史という時間軸の中で原点を探すことであり、それによって先人たちの思いを知り、次代を担う子どもたちへの未来図を描くことが重要です。

 例えば議員になった今年四月二三日、私は多くの同僚議員と共に靖国神社に昇殿参拝し、戦没者へ深甚なる哀悼の誠を捧げると同時に恒久平和への努力をお誓い申し上げました。それに対して一部の海外メディアは右傾化と評しています。しかし真実は異なります。我々は閉塞感を払拭すべく、歴史という時間軸の中で日本人とは何かという原点を探し求めているのです。

■日本を取り巻く国際情勢に対応できる法整備を

 日本の安全保障法制はここ十年で劇的に進化しましたが、依然不足はあります。平成二二年九月に生じた中国漁船衝突事件以降、東シナ海海域には数多くの中国船が押し寄せ、最近では連日のように中国公船が領海侵犯を繰り返しています。もっとも重要なことは冷静に判断することであり、挑発に軽々に乗らず、世界に現状を訴え国際世論を形成することです。しかし、侵犯が繰り返され既成事実化されれば、日本は極めて不利な立場に置かれることになります。ではなぜ平然と繰り返すのかと言えば、日本が当該行為に有効な対処を持ち合わせていないことを中国は知っているからに他なりません。

 現在、水際では海上保安庁の巡視艇が対処していますが、これは市中の警官と同じ警察権を根拠とした行動です。つまり出て行って頂けませんか、と口で言うことですが、簡単に聞いてくれることはありません。海上警備行動という自衛隊出動も可能ですがこれも警察権の範疇を超えません。唯一の実力対処は防衛出動と呼ばれる自衛権発動ですが、自衛権を発動できる要件は定められており、当該行為には適用できません。つまり、警察権と自衛権のギャップが大き過ぎるのです。

 家の玄関を開けっ放しにしておいて、泥棒に入られたと嘆くのではなく、鍵を三個も四個も付けて、事前に泥棒に諦めてもらうことが必要なのです。そのために、この自衛権と警察権の溝を生める新たな法整備が必要なのです。

 また、鍵を急に多くつけると、ご近所様に訝しげに見られがちになります。なぜ多くの鍵を付けたのかという理由を丁寧に説明して回らなければなりません。つまり、なぜ日本が安全保障関連法制の整備に注力するのかを、詳細に国際社会に発信していく必要があるのです。

 さらに、泥棒が鍵を見た時に「これでは太刀打ちできない」と感じさせなければなりません。安全保障に資する科学技術政策を進めていくべき時代なのです。

 日本の安全保障法制の不足はそれ以外にも存在します。例えば今年一月に発生したアルジェリア人質拘束事件のように、多くの在外邦人がテロの犠牲になっています。現在の法体系では、邦人救出はできません。自衛隊は国際協力活動ができるようになりましたが、現場では際どい判断を余儀なくされる法律になっています。仮に法整備を進めたとしても限界はあります。なぜならば憲法上の制約があるためです。

 日本国憲法は昭和二二年に施行され、その四年後、わが国はサンフランシスコ講和条約締結により独立を果たしました。それから六〇年以上が経った現在、世界情勢は大きく変わりました。新しい時代の新しい憲法に改める必要があります。

■国家の最重要課題・人材育成に向け、知の集積と継承に努める

 古代ローマの時代、カイロに次ぐエジプト第二の都市・アレキサンドリアは、何世紀もの間、文明世界の知的都市であり続けました。それは数多くの著名人が輩出されたからですが、理由は世界最大の図書館があったからに他なりません。当事、優秀な人材はアレキサンドリアを目指しました。驚くべき史実が残っています。それは戦禍により何十万冊の蔵書が消失したとき、クレオパトラがわざわざ巨費を投じてまでベルガモン(現トルコ)から図書館を移築させたというものです。当事の為政者が、図書館という知の集積と継承の意味を十分に理解していたことを示すものです。

 国の発展には知の集積と継承と、それによる人材育成が最重要課題です。決して図書館をつくろうと言っているのではありません。例えば科学技術の分野では、二番ではだめなのか、ということではなく、一番を目指す人材が必要なのです。すぐに成果を求めて無駄か無駄じゃないかという議論も大切ですが、知の集積と継承が可能な施策を講じ、人材を育成することの方が本質的に遥かに重要なのです。

 「先憂後楽」―。中国の北宋時代の政治家・范仲淹が政争に明け暮れる国家にあって、為政者の心得として『岳陽楼記』に残した言葉です。この意味は、「天下の憂えに先んじて憂え、天下の楽しみに後れて楽しむ」ということから、「国家の安危については人より先に心配し、楽しむのは人より遅れて楽しむこと」と、国政への心構えを述べた言葉です。

 私も常に「先憂後楽」の心を持ち、心豊かな国家の創造に努めてまいりますので、変わらぬご支援をお願い申し上げます。

消費税と景気について

消費税を増税するのか、それとも景気の本格的回復を待つのか、いよいよ判断の時期が近づいております。参考までに私は選挙の際には、景気の回復を待つべきだとの趣旨で慎重な立場でした。年末からのリフレ政策の断行で状況は変り、マクロ経済指標は概ね良い数字になっています。

しかし、指標が良いから増税だとか、景気回復が本格的でないから反対だという単純な問題ではありません。増税問題は、意外と複雑な問題です。主に、景気・財源・社会保障制度・オリンピック招致という別個の政策に関係し、それと共に時間の関数、つまり、いつするのかが大きな問題です。

問題を整理します。

増税すべきという論に関係する意見としては、

・日本の財政状況を見れば増税は不可避である。
・社会保障関係費の自然増に対応した財源が必要である。
・増税延期は海外の対内投資を引揚げさせるため景気減速に繋がる。
・マクロ経済指標を見れば増税の環境は整っている。
・オリンピック招致は景気浮揚効果があるので誘致できれば増税環境は整う。

慎重であるべきという論に関係する意見としては、

・増税は景気減速に繋がる。
・特に地方経済の状況は増税による景気減速を許容できる状況にない。
・給与が上がらないなど景気回復が実感できていない状況である。
・消費税がもつ逆進性により格差の拡大に繋がる。

中長期的に見れば、財政や社会保障の観点で、増税は不可避です。世論調査でも本質的に増税に反対する意見は比較少数です。問題は増税時期で、それは景気に直結した問題です。賛否が分かれるのは事実で、ここは高度な政治判断が必要な部分です。

そこで景気との関係に絞って議論したいと思います。景気という観点から言えば、上記の通り、増税してもしなくても景気減速の可能性はあります。増税による消費の低迷を通じた景気減速と、増税延期による外国人投資の減少を通じた景気減速です。

アベノミクスの最初の2本の矢はリフレ政策で、景気の回復傾向のきっかけは何によるものだったのかと言えば、海外マネーの国内株式市場への流入です。世界から見れば、当初の日本株は買いでした。先般も、欧州の公的年金ファンドが日本株に流入してきているという報道がありました。欧州が買ってくるというのは意味があります。通常、外国人といっても、欧州系は堅実的、米国系は投機的、アジアはより投機的という傾向があることが知られていますが、欧州勢の投資がかなり多い(一般的なイメージは米国系)。したがって安定した成長株との見方をされている査証です。

もちろん最近になって米国系やアジア系、つまり投機系もかなり多くなって来ましたが、投資対象として適格のハンコを押されていることには変りません。ただ、問題は、ごくごく最近の市場の動向です。米国の金融緩和幅の縮減や日本の増税判断の動向など不透明な課題が多く、市場も動きが鈍っています。日本が増税しなければ、国債格付けの低下など多くの金融商品が投資不適格レッテルを貼られるとの見方があります。

更に言えば、国内の機関投資家の動きが鈍いとの話も聞きます。外国人投資家は日本株を買えば国内の機関投資家が乗ってくるだろうという思惑があったものの、意外に国内投資家の動きが鈍かったので、一旦利益確定売りを行ったのが先般の株価乱高下です。拍車をかけたのが、外国人による日本株売買のリスクヘッジのための為替の先物買いです。

通常、外国人が日本株を買うと、当たり前ですが為替は円高になる。ところが最近は円安になる。不思議だなと思っていると、背景にこの為替リスクヘッジがありました。外国人が株を売ると円高になる。すると輸出企業は業績が低下する。そういうプロセスの中で、国内投資かと外国人投資家が、にらめっこをしている状態が続いている状況だと感じています。

以上の環境を考えれば、外国人投資家の日本経済に与えるインパクトは、不確実性が高く、それだけアンコントローラブルリスクであると感じます。であれば、消費低迷による景気減速というコントローラブル&エクスペクタブルリスクよりも、回避しなければならない問題だと感じます。

もちろん、こうした近視眼的かつ重要な判断もさることながら、本質的課題の成長戦略をしっかりと議論しスピード感をもって断行しなければなりませんし、また財政問題の本質であるところの税と社会保障制度の抜本的改革を断行しなければならないのは明らかです。