医療と福祉の将来展望

国際医療福祉大学院の高橋泰教授によると、現在推定されている人口統計から計算すると、介護需要は2030年にピークを迎え、現在より49.7%増加する一方で、医療需要は2025年で11.1%増加とのこと(費用換算)。そして、地域によって病院や介護施設などのリソースや人口動態も違うので、需給バランスが地域によって当然違ってくることになります。

第一に、供給側の病院や介護施設などのリソースから見ると、それらの機能の戦略をどうするのかということです。どういうことかと言えば、75歳以上のご年配者が多くなり、75歳以下の人口が減少してくるので、急性期医療など治療目的の機能よりも、住介護などの地域包括ケア病院にシフトしていかなければなりません。そしてこれは実際に国の方針で示されている方向です。

第二に、日本全体として、需給のバランスそのものの戦略をどのように立てるかです。例えば75以上の高齢者人口の増加(1.5倍)を見越して、供給側も1.5倍にするのかどうかという問題です。また時間軸の議論も必要で、10〜20年に来るピークを越えればまた需要は下がってきます。人間誰しも老いるので、高齢者だけの問題ではありません。働く世代のやる気や死生観にも関係する問題です。真剣に慎重に考えていかなければなりません。

第三に、前述しましたが、地域によって病院や介護施設などの人口当たりのリソースや人口推移はかなり異なるので、医療介護の余力やその推移、そして需要ピークの時期や増加率は全く違う。したがって、地域ごとの機能やボリュームの戦略が必要なのと同時に、日本全体の戦略との摺合せが必要になってくるはずです。

第四に、ただし供給側の政策だけでは、どう考えても追いつかないので、需要側の調整が必要になります。何のことかと言えば、ご推察の通り、大都市から地方への人口移動です。

従って、供給側の機能とボリューム、需要側のボリューム、そしてそれらを勘案した地方ごとの医療介護戦略と日本全体の戦略が必要になってきます。

先の記事にも書きましたが、現在、地方版の総合戦略を地方が立案することになっています。その際、国は地域経済の分析ツールを提供することになっています。問題は、医療福祉関係やその他の分野の総合的な分析をどのように行うのか。どの程度国がその環境を提供するのかです。

なぜならば、現在は中小企業などの産業経済分析だけですが、地方創生の目的は、地方経済の活性化による経済好循環と併せて、人口減少問題に正面から取り組むことです。であるならば、産業政策だけではなく、医療福祉のみならず、雇用や農業も、総合分析できる環境が整っていなければなりません。どこまでできるか分かりませんが、努力はしていきたいと思っています。

 

 

中小企業・小規模事業者対策

地域の経済が好循環を生まなければ日本の衰退は止まりません。その好循環を生むためには本質的な地方の経済循環構造を改善していかなければなりません。改善するためには、何が起きているかを理解しなければなりません。何が起きているのかを分析した上で、これから1年かけて施策を創っていければと思いますが、そうは言っても少し時間はかかります。なのでそれまでの中継ぎと私が捉えている、国による中小企業小規模事業者の補助事業等の話に触れておきたいと思います。

詳細は、「ミラサポ」という中小企業小規模事業者応援のためのポータルサイトをご覧ください。一押しです。地方自治体の施策も網羅されています(協力してくれたところだけ)。(まだ審議中の27年度本予算も含まれますのでご注意ください)

1.書類作成が面倒くさいと思う方へ

利用者から不人気だった書類作成負担の軽減

基本的に3枚以内の原則を立てています(3枚以内でなかった場合は当方にお申し出ください)。なお、賃上げ・人材育成に力を注いでいる企業が優先となっています。

2.新しいことをやり始めようと思う方へ

ものづくり商業サービス革新補助金

要するに何でもいいので、ちょっとでも目新しいことをやり始めようとする方が対象です。新しいサービス、新商品・試作品の開発などです(上限1000万円、2/3補助)。仲間の企業と共同で設備投資したいと言った場合も今回対象に入っています(上限5000万円、一社500万円、更なる書類作成簡素化措置もあり)。

3.ものづくりで大学や公的研究機関と連携をご検討の方へ

革新的ものづくり産業創出連携促進事業

ものづくり技術を活用した研究開発(上限4500万円、2/3補助)。デザイン開発技術も可能になりました。

その他、サービス開発などで他企業や公的研究機関と連携をご検討の方に対しても、商業サービス競争力強化連携支援事業という名前の補助事業があります(上限3000万円、2/3補助)。

4.最新の省エネモデル設備の導入をご検討の方へ

地域工場中小企業等の省エネルギー設備導入補助金

申請手続きが簡素化されています(1/2補助)。

5.商店街の活性化に尽力されている方へ

地域商業自立促進事業

アンテナショップの設置、オリジナル商品の開発、子育て・高齢者支援サービスの提供、空き店舗への店舗誘致、まちなか交流スペースの設置など、商店街の魅力向上と、中長期的な発展に貢献する取り組みに対して、上限5億円、2/3補助の制度があります。

6.小規模な会社だけど販路開拓をしたいとお考えの方へ

小規模事業者の持続化支援

商工会や商工会議所と一体となって販路開拓に取り組む費用(チラシ作成、商談会参加のための運賃など)。(上限50万円、2/3補助)。複数共同は上限500万円。雇用対策などを積極的に取り組む事業者は上限100万円。

7.創業を目指す方へ

創業第二創業促進補助金

上限200万円、2/3補助で、創業費用の補助制度があります。今回から、事業承継を契機として既存事業を廃業し、業態転換する際にかかる費用【廃業コスト含む)に対しての補助制度も用意されました(上限1000万円、2/3補助)。

8.その他

ミラサポにて皆様のニーズにマッチした補助事業が検索できます。ふるさと名物応援事業や、海外展開戦略支援事業、JAPANブランド育成支援事業から、融資まで、多岐にわたる事業が用意されています。

ご活用ください。

ピケティとトリクルダウンと惣菜屋

国会の議論で、今話題のピケティがしばしば取り上げられることが多くなりました。ご承知かと思いますが、ピケティは、膨大な統計データを分析して、世界的に見て、資本の収益率が経済成長率を上回っていること、そして格差が広がっていることを実証し、世界的ベストセラーを書いたフランスの経済学者です。

確かに正しい。例えば今、日本では65歳以上の人が2/3の資産を保有しています。その2/3の人に回る社会保障費は毎年1兆円増えています(ざっくり言えばですが)。そしてこの1兆円は65歳未満の人が一生懸命払っている(これもざっくり言えばです)。とてもバランスが良いとは言えない。ではご年配が全員裕福かというと全くそんなことはない。だとすると、ものすごい格差がこの世代にはあるということです。

だからピケティの処方箋は極めてオーソドックスですが十分共感できるところがある。例えば、若者や将来への投資を推奨していること。世界的に見て財政余力の高い先進国はないもので、経済政策としては金融政策がはやっています。日本も大胆な金融政策を打ち出しましたが、それだけではなく機動的な財政も打ち出しています。ただプライマリーバランス(PB)の健全化をも目指しているので(15年中に半減、20年までに黒転)、今後継続して大胆な財政は打てなくなり、金融政策が中心になるのではないかという懸念がでてきます。ピケティは、金融政策オンリーは絶対間違いだとして財政政策の重要性を指摘しています。同感。

そもそも、少し余談になりますが、PBは名目の成長率が国債金利を上回れば改善するので、今は踏ん張りどころで機動的な財政政策を継続していくべきです。PBが十分改善すれば財政政策上の圧迫は改善される。雨中の登山で登り切ったら晴れた場所があるのに、雨がだんだんひどくなったねぇと言って、デフレという名の底なし沼に引き返すことはすべきじゃないと思っています。

本題に戻りますが、一方でピケティの主張を政治的に政権批判に使うことは全く的外れだと感じます。惣菜屋に入って、揚げ物が目に留まったからと言って、体に悪い揚げ物だけ売るとはけしからんと文句を言っているようなものに感じます。いやいや佃煮も売ってますよ、食はバランスですよっ、て言いたくなる。

例えばアベノミクスはトリクルダウンであり格差を広げるだけだという批判。現在の経済財政政策は、政官学金労言、と言われているように、労働者の賃上げという凡そこれまでの自民党政治らしからぬところまで手を付けたり、地方創生というミクロ政策をマクロ視点で本腰で実行しようとしていたり、あるいは中小企業政策ではかなりの事業が用意されています。どれもトップ政策課題です。十分重点です。

やっていないのは、単純バラマキという再配分。自尊心を擽らない再配分のことです。さらに言えば再配分の公平性が担保できないことも問題です。歴史的にこれは失策であることが分かっている。例えば子ども手当というのがありましたが、十分な収入があっても無くても貰える。つまり、本当は困ってないのに困ったふりをする人や、困ってない人が貰うから、本当に困っている人に十分に手を差し伸べられない。あるいは、生活保護の基準の議論がありましたが、困っているのだけど、そこに安住してしまって困らない努力を自分でしなくなる。だからそこへの給付がさらに他の本当に困った人に回らない。

先の記事「どうなる日本経済、どうする日本経済」でも書きましたが、今やるべき本丸は実質賃金の向上です。これをありとあらゆる規模のあらゆる産業で目指すべきであり、引き続き頑張って参りたいと思います。

日米韓国会議員会議

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日米韓国会議員会議が2日間にわたって開催され、昨年に引き続き参加いたしました。1日目は日米のバイラテラル。2日目は日米韓です。この会議は、我が親父も創設に関わったとのことで、26年目にもなります。年に2回の開催。1回はアメリカで、1回は東京かソウルで交互に行われるのですが、今回はソウルでした。私は議員としては2回目の参加です(秘書として過去に何度か参加したことはありますが、それを合わせれば5〜6回目かもしれません)。

議論の内容は詳述公開できませんが(チャタムハウスルール)、非常に多岐にわたる議論を行いました。1、米国も日本も選挙がありましたので、国内の政治情勢と国民の意識の変化について。2、それぞれの国と世界の経済情勢、そしてそれぞれの国にできることと協力できることについて。3、TPPやRCEPなどの経済連携と貿易について、4、安全保障と外交についてです。

冒頭、米韓両国から後藤健二さんがISILの非道な犠牲になったことについて深い悲しみとお悔やみが伝えられました。こんな時期にこの会議になったことをお詫びするという言葉も頂きました。世界で協力していかなければならない課題です。経済問題については、日本のアベノミクスの議論が中心で、他にアメリカのテーパリング、韓国の経済政策などが論じられました。安保問題では、主に普天間問題。貿易関係ではTPPやRCEP。外交問題については幅広い議論がありましたが、韓国側から歴史問題が取り上げられ、日韓間でかなり激しいやり取りともなりました。

通訳を介さない英語での会議ですので、当方も奥歯に物が挟まった表現もできるわけがなく、だからエキサイトするのかもしれませんが、改めて日韓関係の外交上の困難さを浮き彫りにした形となりました。

TPPとRCEPや東アジアの安保環境、世界経済情勢と原油価格動向、そして中東情勢や北朝鮮情勢を考えれば、この日米韓の関係は非常に重要にもかかわらず、いまいち日韓がギスギスしているのは大きな問題。困難でも粛々と根気よく努力し続けるしかありません

ただ、こうした議員外交の利点は、会議では言いたいことを言い合って、飯を食う時は冗談話で仲良くなる。こうしたことが、本当に大切だと思います(ちなみに、昨年末に参加した日中韓次世代フォーラムで出会った韓国の友人も駆けつけてくれました)。

 

地方版地方創生総合戦略と分析ツール

昨年末、地方創生法が成立しました。

http://www.cas.go.jp/jp/houan/140929_1/houan_riyu.pdf

それにともなって政府は地方創生総合戦略を発表しました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/souseikaigi/dai3/siryou1-2.pdf

目を通していただければわかる通り、大方針を策定したに過ぎませんが、非常に重要なことが書いてあります。今後、1年間かけて、地方自治体(県・市町村)も地方版の総合戦略を策定することになります。

地方に総合戦略策定の努力義務を課す法律になっているのですが、策定にあたっては国は地方の後方支援も行います。例えば要請に応じて国は人を派遣することもあります。財政的な支援も行います。私が一番注目しているのは、地方経済の分析ツールの提供です。

というのは、これは全く新しい視点に立った中小企業政策になりうると2年前から注目していたもので、中小企業庁が取り組んでいるプロジェクトでした。私自身、多少議論に参加してきましあが、当時はあくまで中小企業政策の一環として取り組んでいましたので、ここで使われることになるとは思いもしませんでした。

https://keitaro-ohno.com/?p=2281

地方創生についての党の方針にも明記されていますので、以下に添付しておきます。いずれにせよ、地方丸投げにならないようしっかりと私自身も取り組んでいきたいと思います。

地方創生がめざすものは何か?

・人口減少と地域経済縮小の悪循環というリスクを克服する観点から、東京一極集中を是正する、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、地域の特性に即して地域課題を解決するという基本的な視点の下、まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立により、国民の希望を実現して人口減少に歯止めをかけ、50年後に1億人の人口を確保し、活力ある日本社会の維持をめざしていきます。

地方創生は、これまでの地域活性化とは何が違うのか?

・国として、人口減少問題の克服に初めて本格的に取り組み、地方を主役に据え、各府省庁縦割りを排し、具体的な成果目標を示しつつ、政策評価を行う異次元の取組みです。
・地方に新しい価値を生み出し、「ひと」が「しごと」をよび、「しごと」が「ひと」をよぶ好循環を構築します。そのためには、これまでの地域活性化とは異なり、地方が主役となり、地域特性に応じた地方創生を展開することが必要となります。国は伴走型支援(情報支援、人材支援、財政支援)を行います。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のポイントとは何か?

・日本の人口の現状と将来の姿を示し、今後目指すべき将来の方向を提示する「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を実現するため、今後5か年の目標や施策の基本的な方向、具体的な施策を提示するものが、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)」です。
・「しごと」と「ひと」の好循環として、また併せて、この好循環を支える 「まち」の活性化として、次の目標に対応する施策を提示しています。
・2020年までの5年間で地方での若者雇用30万人分創出などにより、「地方における安定的な雇用を創出する」
・現状、東京圏に10万人の転入超過があるのに対して、これを2020年までに均衡させるための地方移住や企業の地方立地の促進などにより、「地方への新しいひとの流れをつくる」
・若い世代の経済的安定や、「働き方改革」、結婚・妊娠・出産・子育てについての切れ目のない支援などにより、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」
・中山間地域等、地方都市、大都市圏各々の地域の特性に応じた地域づくりなどにより、「時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する」

どうやって地方に若者の雇用を創出するのか?

・地域経済の特性や課題を抽出する地域経済分析システム(国が開発し、地方公共団体に提供)を活用し、地域の産官学金労言(産業界・行政・大学・金融機関・労働団体・言論界)が連携した体制の下、創業支援・事業再生、地域イノベーションなど業種横断的な取組みを推進します。
・地方大学等における地域ニーズに対応した人材を育成するとともに、都市圏から地方へのプロフェッショナル人材の還流を円滑にし、地域の中堅・中小企業の競争力強化や生産性向上を図り、地域雇用を促進します。
・サービス産業の生産性向上、農林水産業の成長産業化、観光地域づくりなど地域産業競争力の強化や、起業支援、中核的企業支援により、5年間で30万人分の若者の雇用を創出します。

地方への新しいひとの流れをどうやって創るのか?

・近年高まる地方への移住希望を現実のものとするため、地方での雇用創出や企業の地方拠点機能の強化を推進するほか、地方移住希望者のためのワンストップ相談体制を整備します。
・地域ニーズを踏まえた地方大学の活性化により地元への進学、地元での就職を推進することで、地方からの人口流出を低減させるとともに、都市部の学生の地方就職を促進します。
・これにより、5年後に東京圏への人口流入超過を解消します。

若い世代の結婚・子育ての希望を実現し、出生率を向上させるために、何をするのか?

・若い世代の結婚・子育ての希望が実現された場合の出生率は1.8程度に向上すると見込まれています。このため、若者の正社員化など若い世代の経済的安定、待機児童解消など子ども・子育て支援の充実、子育て世代包括支援センターの整備など妊娠・出産・子育ての切れ目ない支援、長時間労働の見直しなどワークライフバランスの実現などにより、若い世代の期待に応え、結婚や子育ての希望の実現を目指します。

時代に合った地域をどうやって創るのか?

・中山間地域等における「小さな拠点」(多世代交流・多機能型)の形成、都市のコンパクト化と周辺等のネットワーク形成、「連携中枢都市圏」の形成・安定自立圏の形成促進など、地域の実情に応じた「まちづくり」・地域連携を促進します。

どうなる日本経済、どうする日本経済

先の選挙で、我々は期限を切って日本経済再生を国民の皆様にお誓いしました。そこで私なりに今年の展望を書き残しておきたいと思います。

昨年から今年にかけての特徴は、地方の活力を取り戻さないとダメだということが、マクロ面から政策を論じる者の共通の認識になってきた、ということに尽きます。マクロとミクロの両面から取り組むことこそが、日本の経済を取り戻す唯一の方法だ、ということです。

まず現在の経済政策の基本方針について改めて簡単に書くと、雇用を始めとした規制改革を断行し、地方創生によるミクロ政策(第一弾は国により第二弾は地方による)によってサプライチェーンを再構築し(地方創生は本丸なので後日詳述します)、税制と社会保障制度の見直しによって公金の流れを純化させ、EPA・FTAによって外需拡大を図り、さらに地方創生と同じくらい重要なイノベーション戦略によって青色LEDのような成功事例をたくさん作り、あらゆる産業の賃金上昇を実現していかなければなりません。2年越し計画です。

今年のマクロ面の政策ポイントは、実質賃金の上昇です。名目賃金は上昇していますが、実質賃金は低下しています。消費税増税によるものです。物価上昇以上に賃金が伸びないと、消費も伸びません。だから設備投資に勢いがでない。好循環を生んでいる状況には未だありません。地方創生、消費拡大、中小企業対策を中心に、徹底的に政策を打たなければなりません。実質賃金上昇は十分実現可能な環境は整っています。少し説明しておきます。

財政金融のマクロ政策によってデフレマインドの脱却は順調で、全体基調としては悪くはありません。しかし成長率は完全に鈍化。消費税増税によるマイナスインパクトは予想以上に大きいものでした。第2四半期でー6.7%、第3四半期は大方の予想に反してー1.9%。2014年の政府経済成長見通しはー0.5%となっています。特に地方経済は、消費増税に加えて過度急激な円安によって負担が大きくなったため、回復が遅れています。

2015年の経済成長の政府見通しは、+1.5%(名目+2.7%)。前述しましたが2014年の設備投資・消費ともにぱっとしませんでしたが、今年は、本予算96兆円、補正3兆円を使って、地方創生・消費拡大・中小企業が重点政策になっています。

注目すべき指標は原油価格です。昨年夏から下落傾向で、1バレル100ドル程度であったものが、現在は45ドル程度。日本経済にとって(資源輸入国にとって)大きなプラスになります。先の政府見通しはIMF予測に従って1バレル70ドルで計算しているのですが、仮に50ドル水準が続けばGDP押し上げ効果は1%以上という試算もあり、原油価格は今後注目しておかなければなりません。そのほか、消費税のマイナス効果も緩和されつつあり、設備稼働率も高水準なことから、現状でも生産余力が十分なわけではなく、設備投資は増加すると見込めます。政府見通しでも設備投資増加率は5.3%を見込んでいます。

国際収支は、貿易収支でみると今年は過去最大のー12.7兆円の赤字ですが、月別にみれば、原油価格の下落によって、赤字幅は圧縮傾向にあります。だからと言って、外需が大きく望めるかと言えば、世界の経済で好調なのはアメリカ位。欧州はデフレ局面に入り量的金融緩和を開始予定。為替も下落しており、ギリシャ問題再燃で今後の動向がはっきりとは見通せない状況です。中国も7%以上の成長はあるとはいえ、鈍化。過剰労働力が解消したため(ルイスの転換点超え)、賃金上昇の局面にあり、過剰設備投資や金融不安など不安材料は払しょくできていません。可能性のあるのは、インド。日本と同じ資源輸入国であり、原油下落で強い経済成長を望める可能性はあります。

中小企業需要創生法案

頑張る人が報われる社会。使い古された表現ですが、やはりここは応援したくなる領域です。この国は実は新しく何かを始めようとする人にはまだまだ優しくない。それが実感です。スタートアップ企業の状況はいずれも厳しい。なぜかと言えば、当然ですが全部を相手にすることができないからです。ずぶずぶに補助金を投入することなんてできません。各府省庁が支援策を打ち出しておりますが、かゆい所にまで届いていない。

そしてもう1つ言えば、地方創生。これをやれば絶対に創生するというものはない。しかし、有効だと思われる政策を、その政策の玉は小さくても大きくても、一生懸命そういう玉を込めてたくさん打って行かないと、地方創生というのにはなかなか行き着かない。どれだけの玉を打てるのかというのが勝負だと思っています。

今日、資料を整理していて思い出したのですが、昨年、臨時国会に提出されたはいいものの、残念ながら廃案となった(衆議院は通過)、いわゆる中小企業需要創生法案。具体的には3つの法律の改正のことです。これもそうした類のものです。

何かと言えば1つは、官公需から見れば創業間もない中小企業は信用が十分でない場合があり、発注機会が限定されていることを解消しようとするもの。いわゆる箔付けの意味もあるため、意義は十分あると思います。(官公需中小企業受注確保法の改正)

また、個別企業の取り組みがメインだった、ふるさと名物(農産品や工業品)を活用した事業を、市町村が積極的に関与して地域ぐるみの活動に広げるためのもの。消費者との接点を創造できる。(中小企業地域資源活用促進法の改正)

そして、中小機構は官公需やふるさと名産の情報を提供したり融資をしたりすることができるようになる。(中小機構法の改正)

地方創生に繋がるローカルアベノミクスの政策の玉であったので残念ですが、これからも頑張る人が報われる社会を目指したいと思います。

寄付文化の醸成

学校法人に寄付をされた方もいらっしゃると思いますが、寄付をすれば所得税の特別控除を受けれます。ところが、これには条件があって(PST要件)、寄付金の収入額が学校法人の経常収入金額の20%以上か、または3000円以上の寄付者数が年平均100人以上の学校法人が対象の場合ということになっています。規模の小さな学校だと前者は難しい。後者も難しい。だから難しい。

このPST要件が昨年の税制改正要望で緩和され、先日閣議で決定されました(対象は学校法人・準学校法人・学校等を設置する社会福祉法人)。施行されることを強く望みます。

新しい要件は、20%要件は同じですが、人数制限が大幅に緩和され(本当は撤廃してほしいけど)、但し書きとして、収容人数が5000未満の場合には、定員÷5000×100人(最低10人)でかつ合計寄付額が30万円ということになりました。つまり、例えば小さい学校法人(500人以下)であれば寄付者10人寄付合計額30万で控除が受けられることになります。

幼稚園であれば全国の99%が500人以下、小学校では77%、中学で75%、高校では28%ですが、1000人以下は71%です。

現行制度の問題は何かと言えば、例えば幼稚園などは園児100人くらいのものが多いので、そこに100人毎年寄付があるとは思えないので、寄付はなかなか進まない。幼稚園など大規模法人しか寄付控除適用されない。また、なぜPSTなんかあるのかと思ったら、学校法人が寄付を募る努力もしないのに控除なんかできないというのが当局の理由であったそうな。

そもそも寄付集めに頑張るから控除するという発想自体に私は違和感を覚えます。寄付は個人の自発的行為に依拠するものであって、実態は別としても理念的には学校側からの依頼に基づくものではないはずです。寄付して頂けるほど子供にとって魅力的な学校にする努力は政策的に促すべきですが、そもそも寄付自体にハードルを課しておいて寄付が少ないとして魅力づくりの努力を阻害するのは違和感を感じます。魅力あるところは寄付がどんどん集まってより魅力ある学校法人になるのが理想ではないかと思います。

学校法人だけではありません。他にもたくさんあります。例えば大学。そして国立研究開発法人。そもそも認められていない。面白いのが、衛星のはやぶさが一世風靡をし映画もたくさん作られたのは記憶に新しいですが、寄付が結構集まっているそうです。また、iPS細胞のノーベル賞受賞者山中先生のところにも集まっているとのこと(それぞれの努力も当然あります)。

善意のお金を回していく。それを公共に集める。税ではない。寄付文化の醸成をしていかなければなりません。アメリカでは、そもそも大富豪が多額の寄付をする。私もお邪魔した大学にはビルゲイツホールというのがありました。ノーブレスオブリージュの発想にもつながります。古代ローマでも、個人が私費を投じてローマに通じる道を創りました。アッピア街道などです。イタリアでは、近代以降になっても、この文化は生きているのか、民間の銀行か投資会社だったと思いますが、社会貢献の一環として、フィレンツェからシエナに行くスーパーストラーダ(無料の高速道路)を建設しました。

地方創生の方程式

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地方創生・人口減少対策について、少しだけ大風呂敷に言えば、本予算で合計1兆7千億、補正予算で4200億円の予算を組み、合計で2兆円の対策を講じています。

この地方創生。理念的に地方分権に逆行するのではないか、との下らない指摘が一部でありますが、全くそうではないことを改めて申し上げておきたいと思います。

ちなみに、なぜ逆行などと騒いでいるのかというと、傾向として、財政運営が厳しく主要産業も少ない消滅可能性の高い地方の国への要望は、使途を限定しない交付金の創設や、公共インフラの充実、東京一極集中の解消などです。つまり、こうした伝統的な政策は、21世紀に入った頃から、地方への財源税源移譲や、規制緩和、公共事業削減という流れだったからという。

改めて、地方分権を正しく理解していれば以上のようなことは言わないと思うのですが、念のため、地方の全域に対して税源財源移譲と規制撤廃を突き付けたら、財政基盤の弱いところは一発で破たんするのは誰が考えてもわかる事です。規模の大きい成功都市はその方がありがたいと思うはず。だからシンプル分権が正しいと主張していました。しかし、正しい分権は、2段階分権、ということで纏まっていたはず。つまり、各地方が同じような財政構造になるよう国がしっかりと面倒をみるのが第一段階。第二段階は財源税源の移譲です。

そしてそもそもなぜ地方創生か。私の中では以下の通りです。

中長期課題という時間軸での国家戦略としての政策目的は人口減少対策です。その人口減少対策の柱は3本。最大の柱が地方創生、2番目が少子化対策、3番目が東京一極集中対策。地方創生の柱は、第一に地方経済の好循環創造と、第二にネーミングが定まっていませんが暖かい地方環境の創造です。

第一のポイントについて、地方経済に好循環をもたらし地方が経済的に豊かになっていくことは大前提で必須の課題です。そのためには農業や中小企業などあらゆる産業の政策が中心課題になります。あらゆる産業の底上げが大切です。農業は底上げ政策のなかでは一番大切です。農業については既にこの場で申し上げましたので省略します。しかしその上で、全体底上げではない、コア産業、コネクターハブ企業の存在が必要です。

例えば中小企業という切り口。勝ち組小規模地方の典型例である徳島などは、青色ダイオードで有名な日亜化学が居続けてくれた(だけかどうかは定かではありませんが大きな貢献)ために全産業で見ても毎年大きく成長しています。成功のロールモデルです。だからこそ地方創生のためにもイノベーション政策に私は注力しています。詳細はこれも何度も触れてきましたので省略しますが、ポイントは、アイディアを育ててくれる地方企業と投資してくれる地方金融のバインド、さらにはサプライチェーンの見える化を通じた戦略性のある中小企業政策です。もちろん、中小企業政策だけではなく、アイディアの種を生む科学技術政策なども重要です。

そして、インフラも戦略的なものは先述しましたが必要です。近視眼的な経済波及効果のみのためのものはもう投資すべきではありませんが、中長期的な意味のあるものは今こそ積極的に投資すべきです。地方に人がいないから投資しない、投資しないからいなくなる。人口減少スパイラルです。これに歯止めをかけれる戦略性と具体性が描ければ投資すればいい。無理無理と思ったらできるものもできないと思います。

結局どの程度地方という不合理に投資できるかという問題と、投資すべきかという問題です。だからこそは私は、資本と社会の在り方、バランスをここで真剣に議論しなければならないと考えています。ピケティというフランスの経済学者の本がバカ売れしているのも分からなく内でもありません(結論は賛同しませんが)。

いずれにせよ、全体として地方経済の好循環が生まれれば、若者の就職環境が整い、初めて住んでもらえる。

第二のポイントとして、暖かい地方環境の創造と書きましたが、これも何度も書いていますので多くは書きませんが、基本的に社会保障の在り方の問題です。第一のポイントがお金の好循環の話だとすれば、第二のポイントは地域や家族の心の好循環の話と言っても差し支えない。自助・共助を中心に、と言ったら薄っぺらく聞こえるかもしれませんが、実際には絶対に必要な取り組みです。

例えば、家族近居政策。フランスでは同居政策としてN分N乗という政策が導入されていますが、祖父母と孫と三世代で近居することを考えれば、育児ノイローゼや孤独死という悲し過ぎる言葉もなくなるでしょうし、自助共助によって国家的な財政も軽減される分だけ、それぞれの自助共助を補助した方がニーズにマッチすると私は思うのです。そしてさらに言えば、キーワードは自尊心ですが、困ってない人や困っているふりをする人まで保障してしまっているから本当に困っている人が困る。そうした、社会のセーフティーネットの少なさを見たら、働く世代が安心してリスクをとって働こうとはしない。どんどんと小さく生きようとしてしまう。そういう心と社会保障の悪循環を断ち切ることが地方創生の1つの柱になると考えています。

しっかりと取り組んでいきたいと思います。

なお、冒頭申し上げた予算について簡単にご紹介します。

1.地方財政:本予算として1兆円計上。地方自治体が自由に使えます。
2.個別政策(小さな玉シリーズ)に本予算として7225億円
  地方雇用環境創造に、1744億円
   (地方に若者雇用30万人新規創造目標)
  地方への人口移動に、644億円
   (東京:毎年転入を6万人減らし転出を4万人増やす目標)
  若い世代の結婚出産子育てに、1096億円
  インフラ・地域間連携に、3741億円
3.がんばる自治体への交付金
  UIJターン助成、創業支援、販路開拓、観光振興、多世代交流、少子化対策など、地方の総合戦略の先行的実施のため、補正予算として1700億円。
  経済対策(生活者・事業者への支援)として、例えばプレミアム商品券、ふるさと名物商品券、旅行券、低所得者向け灯油購入助成、低所得者向け商品券、多子世帯支援策として、2500億円。

  

ISIL。日本はどうすべきか。

年始早々、日本中、そして世界中をも震撼させるニュースが世界中を駆け巡りました。

昨日20日、ISILによって、拘束されていた日本人2名の人命を盾にとった脅迫動画が公開されました。日本に対する脅迫であると同時に国際社会に対する脅迫でもあります。

ここでは、今回何をすべきか、そしてその延長線上で今後国際テロに日本人が巻き込まれた場合に何をすべきか、外交戦略としてこうした国際テロ組織にどう対峙すべきかについて触れたいと思います。

まず今回何をすべきかについて。

第一に、これはテロであり、暴力による強制はいかなる事情があるとしても、国際社会から断固として非難されるべきであり、私自身も強い憤りを感じています。

第二に、人命を最重要視して判断しなければなりません。

第三に、しかし、安易に要求に応じることは、間違いなくテロを助長します。ですから、テロによる脅迫に屈することは絶対にできません。

そして今回も含め、今後の方針について。

第四に、戦略として最も重要なのは、イスラムとISILの分離です(後述しますがISILは単なる国際テロ組織。この行動はイスラムの敬虔な教義とは無関係)。ISILに対峙するに、イスラム教の諸国を始め国際社会と密接に連携協力しながら、事態収拾に努力すべきです。そして、あらゆるルートを通じてISILとの接触を図ることに尽きます。現在ヨルダンで中山泰秀外務副大臣が対応の陣頭指揮にあたっています。

第五に、最も重要なのは月並みですが情報です。情報の収集、管理、発信。2年前までどれ一つ真っ当に整っていなかった。やろうとすると、やれ右翼だ滅茶だと反対のオンパレード。しかし、生身の国民を守っていくためには絶対に必要な処置です。そして忘れてはならないのが、目的は平和であって紛争を絶対に回避すること。守るのは組織や法律ではない。守るべきは生身の血が通った人間なのです。

第六に、中東の国際テロ組織に対峙するに間違ってもやってはいけないのは軍事部門への直接関与です。日本は独自の外交方針で米国とも欧州とも違う路線を歩んできました。だからアラブ諸国からも多少は信頼がある。今回、安倍総理は2億ドルの資金協力をアラブの周辺国に行うことを発表しましたが、これは人道支援の非軍事部門に限定されたもので、実に正しい。ごちゃごちゃ言われる筋は無い。基本的に我々はこのまま人道支援最優先で突き進むべきです。

第七に、こうした国際テロ組織に対峙するに国際社会はどういう方針であるべきなのか。以前、シリアで発生したアサド大統領による化学兵器問題の時のアメリカ外交方針について、この場で述べたときも同じですが、こうしたテロ組織に対峙するに、もっと国際社会は強くでなければなりません。理由は人道的観点です。

https://keitaro-ohno.com/?p=1834 

アメリカのオバマ大統領は早速今日、ISIL打倒を一般教書演説で表明しました。空爆と同時に地上軍の投入のことかと思ったらそうではないらしい。いずれにせよ、空爆は続行されるはずです。なお、軍事作戦に参加している国は把握しているところでは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、トルコ、イタリア、ポーランド、デンマーク、イラン、サウジアラビア、UAE、ヨルダン、バーレーン、カタール、オランダ、ベルギーなどです。それぞれ支援の仕方は違います。戦闘機を出す国、シリア空爆は反対だけどイラク空爆はやる国。トルコは、国境でクルド人問題を抱えていますので難しい選択だったと思います。人道作戦を含めるともっと広がります。ハンガリー、ギリシャ、クウェイト、北欧、韓国、日本など、全部で42か国以上とされています。中国とロシアは空爆を批判しています。

次に少し苦言。

第八に、米国を中心に、ISILに対する空爆などの軍事作戦が展開されていますが、日本は、新しい自衛権発動三要件を適用すると(つまりそれに沿った新安保法制ができると)、自衛権発動としての自衛隊の参加の可能性はあるなどと、軽々に一部新聞社はしきりに喧伝して国民の恐怖心を煽っていますが、ありえません。発動要件を満たしません。新発動要件を良く読んで頂きたいと思います。絶対にありません。邦人輸送のための自衛隊派遣ならあります。これは現時点での法整備でも可能です。

第九に、少し付け足しですが、安倍総理が周辺国支援を表明したから拘束されたわけではなく、既に拘束されていました。因果分析を正確にしなければなりません。

ついでに、ISILのことについて、少し書き足しておきたいと思います。

まず、念のためですが、ISILは国家ではありません。もともとのルーツで言えばヨルダンあたりの過激派組織だと言われていますが、単純化すればアルカイダ系の国際テロ組織の分派で、本拠地はシリア。現在イラクとシリアをまたぐ地域で活動する、歴史上もっとも残忍で人権蹂躙甚だしい組織です。ここ数年で暴虐性は増し、勢力範囲は拡大。特に昨年、反アサド政権組織からの支援を受けて急速に勢力を拡大し、シリアだけでなくイラクの主要都市を次々に攻略しています。

先にも述べましたがイスラムの崇高な教義とは全く関係ない。主張は同派によるイスラム圏内の新秩序形成。つまり支配。そして拉致脅迫ビジネス。ですから、アラブの国も含めて国家承認をしている国はありません。シリアのアサド大統領も当然アンチです。そういう意味では、そしてアラブ連盟はアメリカを中心とするISIL包囲網に参加しています。そもそもアルカイダ自身もISILを非難していると聞きます。一方支持するグループはありますが、同じく国際テロ組織です。例えば昨年有名になった、人身売買組織のアフリカ・ナイジェリアのボコ・ハラムなどです。

シリアの臨時代理大使と

シリアのワリフ・ハラビ臨時代理大使と