所有者不明土地

(写真は本文とは直接関係はありません)

初当選したころ、地元のとある方が、先祖代々ため池を維持管理しているけど高齢のため行政に移管しようとしたら登記上の所有者が4代前なので移転登記にハンコが100個くらいいる、ということになり、なんとかならんのか、というご相談を頂いたことがありました。所有者は不明ではないのですが、土地の有効利用が阻害されている現状の好例です。しかし移転登記が義務化されていない日本では、放置され、最悪、所有者不明となっている土地はかなりあるといわれています。

土地とは、所有する個人の安心の担保であるとともに、需給バランスに伴う価値の変動で、関心の変化がおきるものです。つまり、人口増加のとき(もしくは地価上昇)は、争って権利確定したいと思うし、人口減少の時は、放置しとこうと思うものです。しかし権利確定したい人が増えれば争いも増えるのは当然です。そこに国家が権限行使すれば憲法違反だという反論がでる。しかし無理して大反論にあいながら国家が交通整理をしなくても、そもそも有効利用したい人が多いはずなので、社会構造としては問題は少ない。

一方で、人口減少時代の土地の放置は、所有者もしくは管理者の土地への無関心を助長し、前述のように特にそれが所有者不明の土地にでもなれば、虫食い的散発的に利用できない土地が増え、新しい価値を生もうともがいている人たちの参入を阻む大きな阻害になることは必定です。従って、人口減少時代には移転登記を義務化することが望ましいと考えます。しかも土地の価格が上昇しつつある現在、それほど悠長にことを構えていたのでは、実現困難になることが簡単に想像でいます。

そもそも憲法は何と言っているかというと、第12条で、「この憲法が国民の保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とあります。不断の努力は当然としても、それが何を意味するのかを国民全員が考えていかなければならないのだと思います。(そもそも義務化などしなくても、この趣旨に沿えば、全員が適切な移転登記を済ませているはずだからです)。

現在、所有者不明土地は、410万ヘクタール。北海道本島の6割に相当し、2040年には720万ヘクタール、おおよそ北海道本島の面積に相当します。その経済損失は、2040年までの累積推定で6兆円という試算があります。

今日、自民党政調の所有者不明土地等に関する特命委員会が開催され、方向性が見えてきました。ただ義務化については、決定されているわけでも方向性が示されている訳でもありません。しかし、今年度末までには、土地所有に関する基本制度の見直し(国交)・登記制度と土地所有権の在り方に関する検討(法務)・土地所有者情報把握の仕組み検討(各省)など、本質的な土地制度に関する検討が行われる方向ですので、引き続き注視して参りたいと思います。

今通常国会には、具体的な課題への対処としての法律改正が行われる予定です。国交からは所有者不明土地の収用の合理化など、法務からは法定相続人リスト整備や登記を促す仕組み、他人に害悪を及ぼすような土地の管理など、長期間相続登記していない土地を解消する仕組みを徐々に乗り出す方向ですし、農水や林野からは、既存制度の拡充・要件緩和などを進めることなります。

大学等研究機関と運営資金

(写真は本文と一切関係ありません。出典はここ)

昨年のことになりますが、いわゆるSNSで見た若手研究者のとても印象的なコメントが未だに頭から離れません。曰く、日本では年金が数百円下がっただけで日本中が大騒ぎしているのに、日本最高の研究機関で研究する若手研究者が、数年で終わる任期切れに怯えながら15万円の月給が下がっても文句も言わず漠然とした不安を抱えながら研究に没頭している、と。

念のためですが、私自身は年金は若者の将来の安心の担保になるものですので重要だと思っていますが、このコメントは深く心に突き刺さるものを感じました。年金は政治叩きにもってこいの課題です。年寄りを虐めるな、というのは極めて主張しやすい。昨年も年金制度改革の最終詰めを行う微修正でしたが(賃金物価の増減に合わせて年金支給額を増減させる仕組みの詰め)、この際も野党マスコミ大騒ぎでした。理性で考えれば当然の改革でした。しかし、若手研究者の窮状をマスコミは騒ぐことをしません。

日本の科学技術研究開発力が相当に危機的な状況にあります。

なぜこうなったのか。

第一に、研究機関の運営費を削ってきたからです。運営費交付金と呼ばれるものです。なぜ削ったかというと、例えば大学は無駄ばかりするから、競争させて成功しそうなものにお金を使うべきだとなったからです。いわゆる競争的資金というやつです。その側面は正しいのですが、バランスが全くとれていません。そもそも、理想となるバランスがどこにあるのかを示さないまま、基盤的な運営費交付金を減らし続け、競争的資金を増やしてきた。どこまでという哲学が全くないままにです。

第二に、入学するであろう18歳の人口が、例えば私が学生であったときは200万人いたのに、今は140万人くらいしかいない。でも定員は5%くらいしか減っていない。つまりとても広き門になってきたことが挙げられます。つまり、大学進学率が高くなってきたとも言えます。

以降、この2点について議論したいと思います。

基盤的経費と競争的経費のバランスの哲学を示せ

研究者がボールペンを買うのも躊躇する、という話をよく聞きます。ボールペンとは少し比喩的表現だと思いますが、実態としては雰囲気は伝わります。競争的資金が多くなると資金調達に努力をしなければなりません。もちろんそれは当然だとしても、仕事の時間のうち、研究資金調達に削ぐエネルギーが8割で2割が研究だとしたら、これは本末転倒の話なはずです。しかも、研究ですから成果があるわけではない。営業であれば、自慢できる商品が目の前にあって、どのように売るかが勝負です。しかし、研究はほとんど政治と同じで未来を語るものです。そして、実現する可能性は分からない。

運営費交付金は人間に投資すると考えなければなりません。であれば、どの程度の投資を人間に対して行うのかを決めなければなりません。競争的資金の拡充は分かりやすい。私も賛成ですが、競争的資金を増やせば増やすほど、具体的に信ぴょう性の高い分野、成果や結果が出やすい研究が増えてくるのも必然です。そして、当たり前ですがそうした分野は民間企業が担うべき領域に近づきます。結果を設定して、その結果が出るように研究を行う領域です。必然的に、研究のすそ野が狭まり、基礎研究がおろそかになってきます。

基盤的経費と競争的経費のバランスの哲学をしっかりと議論して示し、一刻も早く今の流れを食い止めるべきです。

例えば大学の定数は過大なのか?

基盤的経費である運営費交付金が増やせればよいわけですが、現在の財政事情から簡単ではないので、人口バランスにマッチした大学改革を行うべきだという論があります。つまり、18歳〜22歳の人口が4割ほど減っているのだから、その分、大学も狭き門にしてダウンサイジングするべきだという論です。

私自身は、大手を振って賛成ということではありません。大学入学を狭き門にしてトップエリートだけを養成すれば質は下がらないということだと思いますが、高等教育をなるべく多くの人に提供することも、すそ野が広がると思うからです。問題は、やはり大学卒というラベルのために入学を希望する傾向が強い日本の文化を変えることにあると思います。

つまり、入学という入り口を狭くするのではなく、所定の学問を真面目に受けない場合には卒業という証書を出さないという方向です。この方向で議論が進まなければ、全く意味はありません。必然的に大学はダウンサイジングが行われ、質が保てる。問題はあります。全ての大学が、一斉に同じ改革を行わなければ、この改革に取り組んだ大学だけが損をする。あの大学は入学後が厳しいから卒業できないと就職に影響すると学生が思うからです。であるならば、行政が目標となる像を明確に示す必要があるし、そのインセンティブ制度も創設する必要があるし、大学自身も、自分の大学が卒業生に求める能力の哲学を明確に打ち出せないといけません。

もちろんこの方向にも問題がないわけではないと思います。多くの議論が必要になってくると思います。ただ、入学定数を絞る方向よりは百万倍正しいと思っているということをまずは申し上げたいと思います。

まだまだ改善の余地はあります。世の中全てが研究開発であるわけでは全くありませんが、少なくとも日本が生む価値の何割というレベルで影響がある問題であるとは思っています。

中小企業・小規模事業者の事業承継や投資促進について(税制)

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雑事に追われてご報告が遅れて恐縮ですが、今日は久しぶりに中小企業・小規模事業者政策に関する平成30年度の税制に関するご報告です。

年初の日経平均株価は予想以上の上昇となりました。地方の環境は、と言えば、地方のマクロデータを見ても悪いわけではありません。しかし、当然ですが、あらゆる業種が良いわけではありません。生産性向上、賃金の改善、設備投資促進を行っていかなければならないのは論を俟ちません。

人不足が徐々に深刻化していますし、廃業件数は増える一方です。衝撃的なデータがあります。今後10年間に、平均引退年齢である70才を超える中小企業・小規模事業者(以下中小)の経営者は245万人になりますが、その半数の127万が後継者を決めておらず、その数は全企業数の3分の1に相当するというものです。

企業に社会的意義がなくなりつつあって魅力がなく後継者が見つからないというのであれば、異なる分野への人材シフトによって新しい価値が創造されていくと考えられなくもありませんが、数を見れば、そういうことでは決してなく、制度的問題もあると考えるのが普通です。

今回、かなり大胆な事業承継支援対策が行われることになりました。新しい減免制度の創設、猶予対象株式数の上限撤廃、雇用要件の抜本的見直し、対象者の拡大などです。また、所得拡大促進税制、少額減価償却資産の特例などの中小企業関連税制も整備されました。

ポイントを添付させていただきます。是非ご高覧いただければと思います。

ガレット・デ・ロワとサトゥルヌスと日仏関係

今年、2018年は、日仏関係160周年の重要な節目を迎えます。日本がフランスと記録上初めて接触したのは、先にも触れた伊達政宗命による支倉常長の慶長遣欧使節団訪欧の時ですが、幕末の1858年、日仏修好通商条約が調印されたのが正式な外交関係の始まりです。

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そして今日、フランス大使館でガレット・デ・ロワ ( galette des rois ) がローラン・ピック新任駐日フランス大使からふるまわれました。フランスのお菓子です。この歴史は、古代ローマのサトゥルヌスの祭典の時代にまでさかのぼるそうですが、そんな長い歴史をもつお菓子を大使自らがシェフの恰好をして振舞っていらっしゃる姿がとても印象的な新年会でした。

というのも、サトゥルヌスというのは英語ではサターンのことで、私自身はこの神には良いイメージはないのですが(以下参照)、もともとは農耕の神であって、昔のサトゥルヌスの祭典というのは豊穣を祈ったのでしょう。年末年始に人々が集まって御馳走を食べるような楽しい祭典であって、くじ引きで当たった人が祭典の王になって、主従逆転して楽しむようなこともあったのだとか。

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フランスは、日本にとって文化・経済・科学技術などあらゆる側面において重要な国の一つですが、自由で開かれたインド太平洋戦略を推進しようとする日本としては、外交・安全保障上においても重要な国です。外務防衛両閣僚同士の閣僚会議である2+2を長年行ってきたのはアメリカとですが、その後、オーストラリア、ロシアに続いて4か国目となったのは、フランスで、第二次安倍政権発足後に初めて開催されました。

爾来、フランスとは防衛装備品協力協定の締結を始め、昨年はフランス海軍のミストラルが佐世保に入港、合わせて史上初の日仏英米共同訓練を実施しました。自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった価値観を共有するこの主要国の合同演習は、航行の自由や自由で開かれた海洋秩序についての4か国の支持を世界に示す重要なものとなったのだと思います。

そして今年、いよいよ日仏2+2が開催される予定です。国際海洋秩序の維持にとって大変に重要な欧州との協力をこれからも推進していく必要があります。

謹賀新年ー戌年の新しい年を迎えて

戌年の新しい年を迎えました。謹んで新春のお慶びを申し上げます。昨年も多くの出会いと気づきの機会を賜りました。これまでご縁を賜っております全ての方と、新しくご縁を頂いた皆様に、心から感謝申し上げる次第です。

戌(イヌ)と言えば、ご存知の通り昔から人間との関わりが強く、古事記には人を導くために登場、花咲爺でも飼い主の善良なお爺さんに豊かな富をもたらし、桃太郎では飼い主とともに鬼を退治して活躍しました。皆様にとって、今年一年が、そうした年の巡り合わせに導かれるように、よい年であることをお祈り申し上げます。

一方で、イヌを念頭に政治の現場から世の中を見れば、一犬虚に吠ゆれば万犬実を云う、という言葉がどうしても頭に浮かびます。虚を云うも易し、実を云うも易し。しかし、その情報の受け手が健全な関心を持ち自ら調べる事が肝心で、世の中が良くなるための必須条件と言っても過言ではありません。そうあるためにも、政治が謙虚に真摯に事にあたり、諸事説明する努力を怠らず、中身の政策にまい進するべきは、論を待ちません。

昨年は総選挙がありました。その節には大変お世話になりました。心から御礼申し上げます。その時の争点の一つが消費税と社会保障です。日本はアメリカと違い社会保障は手厚いですが、北欧ほど負担が高いわけではなく、いわゆる中福祉中負担の国家です。私自身はこの路線は維持していくべきであると考えています。ただし、大きく分けて2つの視点で見直しが必要です。

1つは、高齢化に受動的に対処するための制度であるものを、加えて人口減少に歯止めをかけるための能動的なツールに変えていくことです。現代の若者は、何よりも将来不安に喘いでいます。例えば、年金制度は累次の改正が行われていて、財政的に破綻する可能性などないと断言できる状態であるにもかかわらず、ほぼ全員が破綻する可能性が高いと考えています。健全な関心と正しい認識を持って頂くことを切に望みますが、それでも若者の保障制度を構築していくべきは論を俟ちません。

もう1つが、国民の自尊心を擽る政策に組み替えていくこと、つまり、国民の皆さまから見て社会保障は使わなかったら損だと思うようなものから、使わなかったら得だと思うような制度に改善すべきは改善していくということです。例えば特定の薬用湿布薬の美容効果が極めて高いらしく、美容のために医師に処方してもらって安価に入手される方が多いとの報に接しました。これで何百億円の財政支出だそうです。極めて不健全なものだと感じています。

一方で、経済に目を向ければ、マクロ指標は概ね良好で、ゆるやかな景気回復が続いています。問題は、中小企業や小規模事業者です。景気の指標であるところの倒産件数は劇的に少なくなっている者の、後継者不足によって廃業件数が増加しています。おそらく向こう10年で本質的な対策を打たなければなりません。今年度の税制改正で、例えば承継時の相続税・贈与税の猶予対象が全株となりました。猶予比率も全額となります。こうした取り組みで、円滑な承継が行われることを期待しますが、環境だけで主体となる経営者の皆様の心が動くわけでもありません。わくわくするような、そういうエネルギーを創っていかなければならないものだと思っています。

北朝鮮による暴挙や劣化していく周辺安全保障環境にも、しっかりと対応する安全保障環境を整えていかなければなりません。まずは日本の防衛について抑止力と対処力を質と量の両面で財政制約の中でしっかりと改善していく努力を行わなければなりません。そして、同時に同盟の維持強化。かつて、とある政治家が同盟とは芝刈りだ、放置すると雑草が生える、と言いましたが、否、放っておいたとしても、青々しく綺麗に整った芝になる環境を整えていく努力の方が重要だと感じています。

最後になりましたが、皆様の益々のご隆盛とご活躍を心からご祈念申し上げます。

Final and irreversible deal?

(photo by MOFA)

I would never have come up with the idea of writing an article in English if this did not happen. Back in 2015, I clearly remember the day when I watched the news program, reporting that, the Foreign Minister of Japan Mr. Kishida announced Japan and South Korea reached a landmark agreement to resolve this decades-long dispute as a “final and irreversible deal”. That is the agreement regarding so-called comfort women issue.

I do not think I could represent all the Japanese sentiment about this issue, but we did then have some feelings of irritation in a way that what we have in mind is not well conveyed to the people of some neighboring countries. We know this is not just about the history issue but also, and should be, the human right one. We might have been able to see this only from the latter point of view if we shared the same recognition. But reality is harsh and it would be so difficult to establish a forward-looking relation.

Prime Minister Abe, in his speech in 2015, stated “feelings of deep remorse over the war. Our actions brought suffering to the peoples in Asian countries. We must not avert our eyes from that.” Yes, we have some deep feelings, not in an apologetical or hypocritical manner, about what we did during the world war II. Even the generation like me, born in 1968, far later than the end of war, has a deep feeling of apology about what we did to the neighboring countries.

Prime Minister Abe is not only the exception. Many Prime Ministers of Japan have expressed the feelings of deep remorse and apology for many times in the past. We are always facing the reality that our apology would always be put aside and this issue have been always kept on the diplomatic negotiation table every time, and will seemingly be forever. We have been experiencing the reality that those diplomatic goal are always moving and changing.

Let me back again about the 2015 agreement. At that time, among Japanese, there were some slight concerns that the diplomatic goal would again change as we have experienced in the past.

Reaching the end of this year, the President Moon Jae-in has established the government task force to review this 2015 agreement. And the conclusion of the task force, which has already been offered to the President, was that the former government had failed to represent the comfort women in the negotiation process of the agreement. (Some part of the negotiation process was unilaterally open to public by this task force report and was criticized by the major South Korea media, because negotiation processes are normally supposed to be treated as classified documents for certain years considering trust on diplomacy.)

Moon administration would then have the opportunity to revise or even scrap the agreement. Yesterday President Moon stated “this agreement is flawed and cannot resolve the issue”. He did not touch upon revise or scrap, but if he does, this is nothing but the revision of history and we can not manage the bilateral relation. If he does, we can not even go into further discussion nor no one could even start negotiating.

The Foreign Minister Kono has touched upon this agreement the other day, saying any attempt to revise it would be unacceptable and make the relations unmanageable. There would be no more reasonable statement at this moment.

We have a strong will to stop disputing in this way for the next generation on both sides. Besides, the ties between both countries is far more important in the history to provide the security and prosperity in the region.

History is harsh and we are living on such a history. And we have a strong will to carry our history on our back. We will never easily abandon any history we have traced, even though it has been done by the past administration, because what we have done is what we have done. We believe we can carry our future on our back only if we can carry our history on our back.

International agreements are not the exception. We know that it would be a big burden for us but we know that we could only establish mutual trust and forward looking relation though this way.

On this ground, I hope reasonable and forward looking action will be taken not only to provide the security and prosperity of the region but also for the next generation on both sides.

This is totally my personal opinion as a member of the House of Representatives.

年末のご挨拶

年末も残すところあと僅かとなりました。今年は本当に大勢の方々に大変お世話になり、改めて人間というものは生かされているということを実感する年となりました。

特に10月の総選挙。前回同様、突然の解散となりました。それにもかかわらず大勢の方々が、我が事のように各地を走り回って下さり、声をかけていただき、会場の段取りや封筒の段取りなどをしていただきました。一方の私は、在京とならざるを得ない日が半分もあり、そうした運動をして頂いている方には大変大変心苦しく、胸が張り裂けそうな思いでした。本当にありがとうございました。

今年を振り返ると、世情については年始にまたご報告するとして、個人的なことについて、私の一番の出来事は、2月に予算委員会で総理への質問の場に立つことになった事です。なぜそうなったのかは分かりませんが、今でこそ与党質問比率が多少増えましたが、2月時点で言えば、単純に予算委員会の質問に立てる確率は、少なくとも10年に1回もないものでしたので、思いもしないものでした。しかも、委員会テーマが、安倍総理が直前まで行かれていた日米首脳会談であったので、日米同盟と世界秩序についてという骨太の質問をさせていただくことができました。これも、関係者の皆様には感謝を申し上げたいと思います。

また、取り組んでいた社会的事業(ソーシャルベンチャー)の支援策について、日本経済新聞にも取り上げていただき、政府の年間基本方針である骨太方針や日本未来投資戦略にも書き込んで頂きました。地方創生には非常に重要な課題と認識して取り組んでいたので、ありがたい限りでした。もちろんその他にも、事務局長を仰せつかっていた知的財産戦略やイノベーション戦略・宇宙戦略、またオリパラ契機の地方活性化戦略・経済指標戦略なども、しっかりと盛り込んでもらえました。これも感謝したいと思います。

そして政務官を拝命したことです。思えば政治の世界に飛び込んできたときに通ったのが防衛省A棟11階。改めて実感するのが、国際社会の変化と安全保障環境の劣化です。今までの中で最も心に残っているのは、トランプ大統領のエルサレム発言の直後に中東を訪問することになったことです。中東はもともと関心の強い地域ですが、就任後2回も訪問することになり、しかも激動の中でしたので、世界の異なる部分の空気を吸うことになった年でもありました。

これらもすべて、人のご縁から生じることであります。ご縁の後ろ側に、おそらく直接見ることができない、いろいろなご迷惑やご配慮があるのだと思います。そうしたことをしっかりと想像力を豊かにして感じ、これからも全力を尽くしてまいりたいと思います。年末年始は、危機対応のため在京当番を預かっておりますので帰省できませんが、皆様のご健康ご多幸を心からご祈念申し上げます。来年もどうぞよろしくお願い致します。

【善然庵閑話】USSインディアナポリス

 

今の役職に就いて、善然庵閑話シリーズを書くのも気が引けるのですが、今日は午前最後の便で帰郷し、手前ども主催の会合に出て、その足で夜行列車に乗って上京していますので、この際、年末独特の雰囲気に飲まれて何かを書こうと思い立ちました。

最近気になっているのがUSSインディアナポリスの歴史。USSインディアナポリスは終戦直前に日本の伊号第58潜水艦に撃沈されたアメリカの重巡洋艦で、太平洋戦争最後の米側の被害でした。何がこの船を有名にしているかというと、この重巡、広島長崎に投下された原子爆弾を米本土からテニアン島に運ぶ密命を受けた船。対潜水艦能力があるわけもなく、通常は駆逐艦を伴っての作戦となるはずが、密命であったので単独で航行。テニアン島にたどり着く。

その後、別の命を帯びて再出港することになるUSSインディアナポリスですが、なぜかここでも駆逐艦を伴わず単独で行動、そこで日本の伊号潜水艦に捕捉され、沈没。大勢の犠牲者を出したとの記録が残っています。

戦後、生き残った艦長は、多大な犠牲を出したことを問われて軍法会議にかけられます。大戦中軍法会議にかけられた艦長は、唯一この艦長だけであったと言われています。そして、遺族に誹謗中傷されて精神を病み自害。

ところが、その時の伊号艦長であった橋本は、このUSSインディアナポリスの艦長であったマクベイ3世に何ら非がないことを知っていたので、戦後直後から名誉回復のために尽力する。そして長い年月が経ったのち、ハンター・スコットという人の名誉回復運動によって連邦議会に決議がだされ、当時のビル・クリントン大統領が署名をして、名誉回復にいたることになった。

ちなみに、なぜハンター・スコットという男がこの件に関心をもったのかも面白い。それは、映画ジョーズに登場する老漁師が、元USSインディアナポリス乗組員で生き残りであったという設定で登場するからだとか。

なぜ、この艦艇を思い出したのかと言えば、来年度予算の大臣折衝で、新型護衛艦2隻を建造することが決まったのですが、この護衛艦は掃海機能を付与されることになっています。歴史にもしを問うても意味はありませんが、もし伊号潜水艦がUSSインディアナポリスをもっと早く発見していたら、歴史は大きく変わったかもしれませんし、広島や長崎での被害者も出なかったのかもしれません。一方で、もしこの艦に対潜水艦能力があったなら、この艦はこれほど有名にはならなかったのだろうと思います。海上自衛隊の新型護衛艦が掃海機能を付与されたことによって、何かこの艦が将来善事で有名になるようなことがあるかもしれません。

平成30年度税制改正

今年も残すところあとわずかとなりましたが、年末恒例の税制と予算の審議が党内で行われ、税制は先日決着、そして本日、来年度予算が閣議決定されます。すべてをご報告することはできませんが、ここでは、報告が遅れましたが、先日決着した税についてご報告したいと思います。

https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/136400_1.pdf

総じていえば、現在の経済成長を確かなものにするため、引き続き生産性の改善を行うとともに、人生100年時代を見据えた誰もが生きがいを感じられる社会をつくる、ということに尽きます。働き方の多様化に合わせた所得税改正、デフレ脱却と賃上げや設備投資拡大のための税制改正、中小企業のための事業承継税制拡充、観光政策の拡充などです。

所得税は、給与所得控除が一律10万円縮減されるとともに控除が頭打ちになる収入が1000万円から850万円に引き下げられますが(子育て世帯・介護世帯は負担増なし)、そのかわり、基礎控除が一律38万円から10万円拡充され48万円となります。そして公的年金控除も収入制限をかけ(1000万円)るとともに年金以外の収入が多い方の控除額を引き下げます。その結果、ざっくりと言って収入が多い方(1000万円以上)は、負担が増えますが、ほとんどの会社員の方や年金受給者に負担増は発生せず、最近働き方の多様化で増えているフリーランス・個人事業主は負担が軽減されます。

次に主に事業者についてですが、引き続き賃上げ(対前年比3%以上、定期昇給含む)と投資(当期減価償却の9割以上)を達成した事業者は、賃上げ額の15%の税額控除を、更に教育訓練(人づくり投資が前2期平均の1.2倍)も達成すれば、20%が受けられます。さらに、情報関係への投資は投資額の3%の税額控除を、賃上げも同時達成すれば5%の控除を受けれます。一方で、今年の特徴ともなっているかと思いますが、研究開発税制について、賃上げもしなければ設備投資もしない事業者は、減税措置を適用しないとされました。

中小企業について、大きな社会課題ともなりつつある廃業率の上昇について、つまり事業承継の円滑な促進についてですが、10年という集中期間を設けて、大胆な施策が打ち出されています。1つは、承継時の猶予対象株式の制限(総数の2/3というやつ)が全廃され、納税猶予割合8割が全廃され、贈与・相続時に納税負担が発生しないようになりました。また承継後に譲渡や解散した場合に、相続税や贈与税は承継時の評価でしたが、譲渡や解散の時点での評価となりました。ある種当たり前ですが、承継時の不満と不安が解消されるものと思います。また事業再編について、自社株を対価とした買収を実施する場合、今までは対象会社の株主に課税していましたが、一定の計画に基づく事業再編について課税を繰り延べることとなりました。

その他、いわゆる出国税、内外無差別で一律1000円を徴収することになりました。観光施策の財源として扱われます。2020年訪日外国人4000万人達成にむけた国造りのためです。また、東京23区から本社を地方に移す際に減税措置が施されていたものの条件が緩和されたほか、外国人向け消費税免税措置の利便性向上やタバコ、また国際課税の見直し、外国人の出国後の相続税納税義務の見直し、電子申請など納税の円滑化環境整備などです。

所得税は、最終的にはもっと精力的なシェイピングになるべきものだと思います。少し時間がかかりますが、努力していきたいと思います。