日韓慰安婦合意と韓国出張

自民党国際局の命で韓国ソウルに出張に行って参りました。

日韓関係はご存じのとおり近年悪化の一途を辿っておりました。安全保障上重要な隣国であるにも関わらず、日本人の心が届いてないことに、私自身忸怩たる思いを持っていました。少し過去を振り返れば、例えば、これまで韓国の国会議員と議論をすることが何度かありましたが、普段は全く気さくで人情味溢れる彼らも、公式会議では、全く別の課題が議論されているときでさえも、唐突に靖国神社・慰安婦などの歴史問題に関する独自の主張を繰り返し、全く聞く耳を持たないところに辟易とする場面が何度もありました。立場というものもあるのかもしれませんが、政治家であれば、特にクローズドな場面であればなおさら、大局的な観点での議論ができないものかと案じていたところでした。

状況が一転したのは昨年末、日韓国交正常化50周年・戦後70年を迎えた年の年末でした。日韓外相会談による慰安婦問題の合意です(この合意については既にブログに書き留めているのでご興味の向きはご参照ください)。これ以降、韓国側が公然と不満を口にすることは極めて少なくなったと感じています。

https://keitaro-ohno.com/?p=3005

この合意のポイントは、日本政府による改めての元慰安婦への謝罪、韓国政府による慰安婦財団の設立と日本による財政支援10億、日韓双方が国際社会で非難合戦をしないこと、韓国政府は在韓国日本大使館前の少女像の撤去の努力、韓国政府は第三国での慰安婦像設置支援をしない、ということです。

そうした状況下での今回の韓国訪問の私自身の目的は、この合意の誠実かつ確実な履行の重要性を訴えることにあり、同国政府要人並びに国会議員にお訴えを申し上げました。基本的な事項は確認できましたし、非常に友好的な雰囲気に終始した出張でした。

一方で、出張期間中に、この合意にある慰安婦財団が設置され、式典が行われました。我々はこの式典には当然参加はしておりませんが、設置に反対する学生運動家が式典ステージを占拠したり、同財団理事長が反対派に防犯スプレー用液体をかけられたり、またかけた容疑者が逮捕されたり、などといった騒動があったようです。また、日本の政界を始め各方面には、韓国側による少女像撤去の努力が見られない状態で日本が10億円の拠出をすることに不満もあります。

お互いに言いたいことは山ほどある、というのが現状ではなかろうかと思います。しかし、我が国家の安泰を考えれば、冒頭申し上げたように安全保障上重要な隣国であることは間違いありません。

であれば、我が国としてはこの合意を確実に誠実に履行することで、国際社会にアピールすることが最も肝要であるはずです。どこまで行っても、日本は約束を守ってますよ、と言えることが、長い目で見れば国益に叶うというものです。

【善然庵閑話】参議院選挙と例えば憲法改正と朱子学と陽明学

参議院選挙が終わりました。お世話になりました皆さまには心から感謝申し上げます。

○参議院選挙やら都知事選などに想う

ところで、参議院選挙前後に東京都知事問題が噴出しましたが、どうも一部の立候補予定者の発言が気になってしかたありません。安倍総理は暴走しているから都知事選に出るとか、安保法案に反対だから出る、という発言の論理も日本語としても理解できません。

参議院選挙でも、政策を競争するのではなく、相手の議席を取らさないことが目的だという政党が現れるわ、自民党が勝ったら戦争になるよと高校生や大学生に触れ込んで回る政党も現れるわ、理解に苦しみます。かつて自民党も相当劣化していましたが、さすがに選挙の看板政策が日本語を成さないものはなかったような気がします(といっても今回の選挙で我が自民党の広報の在り方は大いに反省する必要があると思いますが)。

○参議院選挙や都知事選と朱子学と陽明学

だからといって、儒学衰退によって政党が劣化したなどと言うつもりは毛頭ありません。ただ単に、前段の理解に苦しむ多くの有名人による発言を聞いていて、いろいろな先人先達たちの儒教に関する言葉、特に、朱子学と陽明学の違いを思い出したにすぎません。と言ってもそれらを自分は理解しているかどうかは甚だ疑問なので、ここは善然庵閑話シリーズにしておきたいと思います。

儒教は、広義の宗教であって人間を律する教えであり原理原則と捉えられますが、国家の在り方に大きく影響を与えた考え方であったことも多くの歴史家が指摘しているところです。

○朱子学

儒教と言っても朱子学が国家権力によるコントロールに使われることが多かったはずです。朱子学とは、孔子の教えを再解釈し理論統合した朱子という思想家の教えで、それまで論語の解釈が複雑怪奇になりすぎて訳が分からなくなっていた11世紀ごろの南宋にでてきたものです。これ自体はルターの宗教改革ほどの大事業だったと思いますし大天才だったと思います。

私にその意を解説する知識はありませんが、誤解を恐れず本稿趣旨に沿った部分だけをざっくり言えば、修身・誠意を行って徳目を積み、学び己を修めた人が、人を治めるというものであって、つまり学問を積んで物事を分析できるに足る人が政治を行うべきだということになり、逆に言えばそうした権威には絶対従えということにつながり、東大出てれば権力もてる、知識さえあればえらい、そういう人は絶対だ、式の考えにつながり、支配者にとっては極めて都合のよい教えになります。

日本でも江戸時代に、幕府の命で林羅山が朱子学を導入したことは、徳川幕府が長く続く理由の一つだと考えられます。

○陽明学

一方で、明治に入って陽明学に影響を受けた幕末の志士が、明治維新を起こします。陽明学は15世紀頃の王陽明が、当時、国家公認の教えとされ硬直化していた権威主義的朱子学体系に異を唱えて、いわば、従うのは権威ではなく、自らの信じるところだという説を唱えたもの。朱子学が知識や学問を重視するかわりに実践や物事を正すことを重視する考えです。

朱子学は先知後行と言って、考えることと行動することは別であって、思ってもやらないのが秩序だとしたのに対し、陽明学は知行一致と言って、考えることと行動することは常に同じであって、思ってもやらないのは思わないのと同じだと考えるものです。

陽明学はよっぽど朱子学よりイノベーティブであって、薄っぺらい解釈をすれば、時代に対処しやすい考え方です。日本には大塩平八郎やら吉田松陰・西郷隆盛などに伝播していきます。

○例えば憲法改正と朱子学と陽明学

ここまで来たら、何を言いたいのか分かっていただいたかと思いますが、例えば憲法改正に関する薄っぺらい議論を聞いてて思うことは、朱子学ど真ん中で行けば憲法は改正してはいけないものですし、陽明学の表面的な部分だけで言えば、憲法は改正しなければなりません。

でも憲法変えないのであれば、変えないなりに日本が安定成長を維持でき平和を享受できる方策を示さなければなりませんし、憲法を変えるのであれば、それにそって何が必要でどうやるのかを(憲法以外で)示さなければなりません。

憲法を変えなかっただけでバラ色の日本が待っているわけでもありませんし、憲法を変えるだけでバラ色の日本が待っているわけでもないのです。そういう意味においての陽明学を我々は勉強しなければならないのだと思います。

なお当然ですが私は憲法改正した上で日本を築いていく必要があると思っています。そう主張すると、9条や安保の事をおっしゃる人ばかりですが、そういう薄っぺらいことでは全くありません。

オバマ大統領の広島訪問に想う

先月末の5月27日、伊勢志摩サミットを終えた米国オバマ大統領は安倍総理と共に広島を訪れ、原爆慰霊碑の前にそろって立ち、在天の英霊に献花し、追悼の誠を捧げました。米国大統領の広島訪問はもちろん初めてでした。オバマ大統領の演説も安倍総理の演説も、別々に、そして総合して、とても感動的なスピーチでした。2012年に安倍総理が政権について、大きな歴史の一幕を政治家として、立て続けに迎えられることに、恐れ入っております。

98%以上の日本人が大統領の広島訪問を好意的に評価をしているという報道がありました。驚くべき数字であると同時に安堵しました。来訪に先立ち、大統領は謝罪しませんよ、とわざわざ米国報道官が表明していたので、余計なことをするなと思ったものですが、こういう事があっても98%の高評価というのは、日本人は確かに今でも日本人らしい心を持ち合わせているものだと思ったものです。

原爆投下の判断を下した国の大統領が、原爆投下された地を訪問する意味を、98%の人間が十二分に理解している。来るだけで分かる。謝罪をわざわざ求めるという気質も日本人には馴染まない。謝れと言って謝られても謝られた気は余りしない。さらに言えば、謝罪を求めようという意識などよりも、訪問による鎮魂に感謝する意識の方が遥かに強いように思います。

いずれにせよ、オバマ大統領の訪問の決断には大いなる敬意を表したいと思います。

なぜなら、先般5月初旬のGWに訪米した際に議会スタッフと議論になったのは、世論調査では、原爆投下は正当化されると考えるアメリカ人は56%であること(同様に考える日本人は14%)。アメリカは日本に謝罪する必要はないと考えるアメリカ人は73%であること。また、訪問が日本の右翼層を刺激する可能性があるか否か。中国や北朝鮮問題に対応するためには日米韓の関係が重要であるにもかかわらず歴史問題で日韓関係が望ましい状態になく、そうした状況下で韓国や中国を刺激する可能性があるか否か。アメリカの退役軍人を刺激する可能性があるか否か。一方で、トランプ候補が日本や韓国の核武装に触れているが、そうしたことを打ち消して核不拡散推進に実質的に寄与するか否か。日米同盟深化に寄与するか否か、など。果たして政権側がそんなことを考えたのかは分かりませんが、諸々総合的に判断した結果なのだと思います。

余談ですが、後日、5月中旬にケネディー大使とお目にかかる機会がありました。私からは、日本人は謝罪を求めるような精神構造にはなく大統領訪問が実現したら大多数の日本人は歓迎すると思うから是非大統領にはお越し頂きたい旨、お伝えしておきました。実は日程上訪問の可能性のある5月末には、5月29日というケネディー大使のお父さんであるケネディー大統領の誕生日があります。そんな日に訪問になれば、より歴史的に意味があるなと思っていたのですが、これは本当に余計なことなので申し上げることはしませんでした。

いずれにせよ、新たな歴史の一幕が明けました。日米同盟は間違いなく深化しました。地域の安定と平和はより確固となりました。よりよき世界を築く努力をして参りたいと決意した瞬間になりました。

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学校の先生が忙しすぎる件

地元で学校の先生にお目にかかる機会が少なからずありますが、それは自治会の行事であったり、コミュニティーの行事であったり、もちろん運動会などの学校行事やスポーツ団体の行事などで、です。
 
忙しいですね、と聞く方も聞く方ですが、先生方は、帰宅は夜の10時を超えることがほとんどで、朝はこれまた早い。聞くと、部活動やペーパワークに忙殺される毎日だそうな。
 
教育に求められる課題は社会の多様化やグローバル化によって多角化しており、教員は、通常の科目以外に、部活動から、英語・知財・プログラミングなどの基礎的教育から、いじめ対策、給食費徴収、住民対応、主権者教育など、カバーすべき質と量が格段に増えており、更に言えば、責任を行政という上流から現場という下流に転嫁するバイアスがかかるため、ペーパワークがどんどん増えてくる。ありとあらゆることが求められています。そうした多忙を極める教員の労働時間の問題が長年議論されてきましたが、もはや教員の能力の問題だなどと、逃げ込める問題ではなくなりつつあります。
 
更に財政上の問題から、生徒の数が減っているのだから教員数も減らすべきだとの問いかけがなされており、到底教育現場が機能するような俯瞰的戦略的行政がなされているとは思えません。
 
本質的には、教育現場の裁量や権限を増やし、教育現場に責任をしっかり持ってもらう方向に回帰するか、もしくは予算を費やし改善していくか、の2つの方向しかありません。
 
教員が忙しすぎて、本来業務、つまり子供の教育に専念できないという、ゆゆしき問題を一刻も早く改善するため、先般、自民党に議員連盟が立ち上がりましたが(塩谷立会長)、今般、その中間報告を馳浩文部科学大臣に提出しました。
 
今回の中間報告では、抜本的対策を継続的に議論していくこと、まずは18時までに退校できる環境整備を目指す事(かなりハードで高い目標ですが)、土日の部活負担を大胆に減らす事、付随業務のための事務職員配置や外部化の促進、などを骨子としています。
 
 
未来の為に!

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一億層活躍プラン〜再び保育問題を考える

ニッポン一億層活躍プランの草案が出来上がりました。そこで改めて、このプランも含めて、保育の問題について考えたいと思います。

忙しくて全部読んでられないと思う保育士の方には●印だけを、事業者の方には●と▲をご覧頂ければと思います。

●まず一億層活躍プランの保育の柱は、保育の受け皿整備(プラス50万人)、保育士の処遇改善(安倍政権以降既に7%、平均で年額約25万の改善がなされていますが、更に2%と徐々にコツコツとやる)、多様な人材の確保と育成(資格取得月額5万を2年、再就職20万、補助員支援+αなど)、生産性の向上を通じた労働負担の軽減(補助員雇用支援年額200万強、ICT導入100万+αなど)を柱として9万人の保育人材の確保にあります。順を追って触れていきたいと思います。念のためですが、目的はドライな言い方をして申し訳ありませんが、希望出生率1.8の実現です。目標は2025年です。

具体的な話をする前に、念のため、理解の前提となるH27年の4月から始まった子ども子育て新制度について触れておきます(今年からの話ではありません)。

この制度のポイントの1つ目は、認定こども園や幼稚園、保育所など、従来は別々の省庁の財布から出ていた支援金を内閣府に統一し、統合運用ができるようになった。行政の効率化や利用者申請の簡素化、戦略策定、多様なニーズへの対応が目的です。

2つ目は、認定こども園制度の改善。特に幼保連携型認定こども園。従前は省庁バラバラの監督指導だったものが一本化されたことです。幼保連携型以外でも一部要件が緩和されてます。

3つ目は、小規模保育への財政支援。20人以下でも支援制度があります。家庭的保育でも要件さえ合致すれば公的支援を受けられます。

4つ目は、地域実情に応じた子ども子育て支援で、市町村の判断で実施できる延長保育や病児保育、放課後児童クラブなどのニーズに応じた13の支援事業を法制化していること。

5つ目は、保育の必要性要件の緩和。例えば祖父母と同居してたら駄目だったものが可能になったりしています。

6つ目は、と書き続けると、いくらでもあるので書きませんが、この制度で、認定こども園制度改善によって、地方では子どもが減少しても同制度によって一定規模の子どもを確保してサービスを提供できますし、小規模保育への財政支援では、地方でも子どもが確保できなかったとしても支援受けられ、地域の実情に応じた制度拡充では、地方でも、在宅の子育て家庭に対する支援が提供できるというわけです。

1.保育の受け皿整備

▲今年の目玉は、企業主導型保育事業の創設です(800億円・約5万人)。内閣府直轄の事業で、国が運営主体を公募し(つい先日主体が決まりました)、その運営主体にそれぞれの事業者が応募するもので、会社でも大学でも介護施設でもいいのですが、施設整備や運営費の支援を受けれる制度です。

保育サービスを受ける児童の数はH27年で233万人です。一方需要はと言うと、保育利用申請者数はここ数年、毎年5〜6万人ずつ増加していて、特に前出の子ども子育て新制度導入以降急激に申請者が増えてH27年は急に13万人も増えています。如何に潜在的希望者が多いかを示すデータです。

では受け皿の拡大はどうなっているのかというと、安倍政権発足以降、5年で45万人の受け皿拡大を計画していて、昨年度までに33万人増加させています。つまり、33万人増やしてきたけど、前出の需要がそれだけ増えているので、そのギャップであるところの待機児童は、毎年2万人強残っているのが現状です。

そこで今年は前出の国直轄(市町村関与なし)の企業主導型新制度の5万人を新たに増やすことにしました。つまり、これから市町村には各種の国の支援制度を利用してもらってあと45-33=12万人分伸ばしてもらい(逆に言えば伸びるような支援制度を国が用意し)、5万人を企業主導型で伸ばし、合計50万人にするという計画です。

ところで、気になるのが地域差です。待機児童は東京で7814人、香川で129人(※)です。0人の地方もある。従って待機児童は短期的には大都市が中心の課題とも言えます。直近の大都市の待機児童問題を解消しようとして大都市に施設受け皿を殊更用意すると、中長期的には東京一極集中を加速させます。本質的には地方に移住を促していかなければならないので、制度設計自体の改善の余地はまだまだあると思います。これはとりもなおさず、地方の実情にマッチさせようと権限を地方に分散させたがために、地方移住という視点での最適化が国家権限でできなくなっていることが問題です。ここは今後の地方創生と一億層活躍のすり合わせが必要な部分であると感じています。

▲その他、今年から、保育所の保育配置の特例導入を行います。朝夕は児童が少なくなりますが、その時は保育士2名という要件のうち、1名は支援員研修を修了したものでも可としたほか、幼稚園教諭や小学校教諭でも保育士に替えて活用可能としたり、保育所設置の要件である配置人数を超えて必要となる保育士数(8時間を超えて開所するところはローテーションが必要になるので要件以上の人数が必要になる)については、研修修了者で代替可能になるなどです。

設置基準などで言えば、これまでも、子ども子育て新制度で新しいサービス類型を創設したり(小規模・事業所内・家庭的・居宅訪問型・認定こども園など)、一時預かりサービスを拡充したり(H26年公布決定ベースで延べ440万人なのをH31年に延べ1134万人にする目標)、人員配置を弾力化したり、主体規制の緩和をしたり、に取り組んでいますが更に今後拡充が必要です。

●具体的な今後の計画は、1歳児の職員配置を6:1から5:1に、4・5歳児の職員配置を30:1から25:1に、施設長や栄養士などの職員配置の緩和や延長保育の拡充を行い、後述の保育士待遇改善も併せ、3000億円の予算確保を消費税以外から行わなければなりません。職員配置基準は莫大な財政を伴います。楽になるのが良いのか、処遇が良くなるのがいいのか、と言われれば、最終的には両方だ、ということになりますが、改善のプロセスとして、財政の制約の中でのバランスも考えていかなければなりません。

2.保育士の処遇改善

まず全体像から。全国で何人の保育士がいるかというと、保育所勤務でH25年で37.8万人。これがH29年までに新たに9万人必要となるという試算があります。その内、約7万人(受け皿児童+40万人ベース計算)を給与という処遇改善と従来の資格取得や再就職支援で実現し、残りの2万人は、新たな人材確保制度で実現しようというのが現在の計画です。

保育士の給与はどのように決まっているかというと、まずは公定価格という国が公務員の為に定めた基準価格(A)があって、これに連動して決まる保育士の基準額(B)があって、このBを単価として市町村は事業者に補助金を交付しています。事業者は、Bを払うのではなく、そのBを基準に、自分の財政状況に合わせて支給額を決めます(C)。Aは国全体の景気が良くなり物価や給与が上がれば上がります。そうするとBも上がります。しかしBが上がってもCが上がるかは事業者の財政状況や経営方針によります。

Aは触ることはできないので、Cを上げるには、事業者にがんばってもらうか、Bを上げる必要があります。

●安倍政権になってから、Bは、H26年度に+2.0%。H27年には+1.9%。さらに新制度として処遇改善等加算といって、3%を加算しています(条件によっては10年選手以上は4%)。従って、結局安倍政権以降は+7%程度(もしくは8%)上昇しています。年額にして平均して大体25万円になります。

●今後は更に直近で2%をまずは伸ばす計画です。冒頭書きましたが、コツコツやるしかありません。2%と言うと小さいと思われるかもしれませんが、平均モデルケースの年額にすると約+4万円なので、少なくとも女性の平均給与には到達します(先日の予算委員会で、某党の政調会長が、女性の平均給与を目標にするのは男尊女卑と言ってましたが、ここは全く意味不明でした)。

3.●多様な人材の確保と育成及び負担軽減

人材確保としては以下のものがあります(ほとんどの場合、実施主体は地方自治体でその負担1割なので、自治体が手を上げてくれなければできませんが)。

保育士資格を新規に取得しようという人には、学校入学時に20万、卒業時に20万、月額5万を貸付け、資格取得後に5年間以上保育士として勤めたら返済不要とする制度。

保育士の資格は持ってるけど、まだ働いておらず、働きたいけどどうしようと悩んでいる人には、就職準備金を20万円貸付ける(2年以上勤務したら返済不要)制度

働こうかとは思っているけど自分も子どを育てなくちゃならないからと悩んでいる人には、月額54000円を上限に保育料の半額を貸付ける(2年以上勤めれば返済不要)制度

その他、キャリアアップのための研修制度(受ければ処遇が対象変わる)、短時間制社員制度、保育士試験の年2回実施(H28から)など多種多様な支援メニューを用意しています。

▲また、事業者目線では、保育士の職場は書類作成などの負担も多く忙しすぎるから、と人材確保がなかなかできないと悩む事業者には、事業者へ保育補助員雇用支援として年額295.3万円(3年上限)、ICT機材導入補助をシステムは100万円、カメラは10万円、を支給する制度

4.結局は財源だが、自助・共助もしっかりと考えないといけない

既に書きましたが、これからやろうとする1と2のそれぞれ最後に書いた計画には、更に消費税以外で0.3兆円必要となります(その他の制度は実施が決まっていて消費税分0.7兆円は確保済です)。もちろん財源を確保できたからといって少子化に歯止めがかかるかということとは別問題ですが、とにかくこれだけはやり遂げる必要があると感じています。

しかし、そもそも古来の牧歌的な時代は自助・共助がしっかりと機能していたわけで、3世代近居などの政策をしっかりと進め、何でも公助に頼る社会からは脱却していかなければなりません。この部分は先ほど触れた一億層活躍と地方創生のバランスと同時に、真剣に取り組むべき課題です。

※待機児童の定義はH12年以前と、H13〜H26年と、H27年以降で徐々に変わってきています。最大のものは、休職中や育休中のお母さんがH26年以前は市町村の判断に委ねていました。H27年から休職中の場合はカウントすることになりました。しかし育休中の場合はまだ委ねられています。

参考:一億層活躍プラン(案)保育部分

農林産品の輸出は無限の可能性がある

農林水産業が力強い産業として、そして地域を守る守り神として、しっかりとした足場を築くために、党の農林部会(部会長小泉進次郎代議士)で骨太方針策定のための議論を行っています。先般、これまでの議論の論点整理が行われました。

骨太方針策定PTは3つのチーム、すなわち、資材流通チーム、原料原産地表示+人材チーム、輸出チームに分かれて議論しています。私は輸出チームに属しています。輸出チームは福田達夫副委員長が取りまとめています。

農林水産品の輸出額は過去には大体5000億円前後で推移していましたが、第二次安倍政権が始まった2012年から本格的に取り組みはじめてから急激に伸びつつあり、現在7000億を超えるまでになっています。目標は2020年までに1兆円ということになっていますが、関係者によると目標設定をしたときには到底不可能だと言われたらしいのですが、現実味を帯びています。むしろ、前倒し目標達成を目指す方向で議論されています。

まず輸出先のニーズ把握、マーケティングをどうするのかを考えなければなりません。どこに・どれだけ・どのような商品が売れる可能性があるのか、その把握から始めないといけません。現在、誰も俯瞰的に把握できているとは言えない状況だと認識しています。

その次に、流通経路・サプライチェーンの問題があります。全くそこを握らずにごり押ししていくと、当然のごとく国内の食品産業構造と同じことが起きてしまいます。つまり、安く買いたたかれる。海外に組織を作るのか、既存の組織をコントロールするのか、方向性はいろいろ考えられます。いずれにせよ、コールドチェーンは必要不可欠でしょうし、高濃度窒素ガスによる鮮度維持など最先端のことを真剣に考えるべきかもしれません。

国内の卸売市場に輸出の拠点を構築すべきとの論もでています。良いアイディアだと思っています。農家に輸出もできますよという感覚を持ってもらうことも必要です。ただし、ついでに輸出では輸出先のニーズに合致しないことを前提にしなければなりません。輸出用と国内用は最初から別々にすべきです。さらには、現地での市場開拓をありとあらゆる日本食文化普及活動で行い、見えていない可能性を追求する必要もあります。

輸出入に関わる現地の規制などの非関税障壁も外交交渉で取り除いていかなければなりません。検疫やHACCPなどの問題です。原産地表示もフル活用しブランドを構築する必要もあります。さらに言えば、GNI的な発想としては、日本型農業システムごと海外に持っていくという手もあります。

部会長が何度も口にしているように、農業輸出は発展途上段階。誰も本気で考えてこなかったことを、黙々粛々とやっていかなければなりません。

日本の未来に投資しなければジリ貧の三流国になる

ありとあらゆる事柄について見ても、何かを始めなければ何も生まれません。会社でも農家でも、将来の先行投資をしなければ現在価値を生み出すことはできません。逆に言えば、全ての現在価値は、過去の先行投資の上に成り立っています。福利厚生や社会保障などの分配は現在価値を生み出した上に成り立つものです。そして分配は安心を生み、生産活動を通じで現在価値を生み出します。

今、科学技術イノベーション予算は必要とされる投資額に到達していません。何が起きるかというとジリ貧になるということです。要はバランスが狂っているということです。GDPの1%は過去の経験から言えば先行投資するべきなのです。そして諸外国が軒並み予算を伸ばしている中、日本は停滞が続いています。人口減少や地方創生の為にも必ず必要なプロセスです。

本日、党科学技術イノベーション戦略調査会にて、稲田政調会長、渡海科技イノベ調査会長のもと、馳文科大臣・松本内閣府副大臣・富岡文科副大臣や、学術界・財界などの有識者一同が参集し、党としての予算拡充の決議案を議論しました。本日は午後の本会議で、以前から長らく党内で議論されてきた特定研究開発法人法案が衆議院を通過した記念すべき日であったので、より意義深い日であると感じました。

ご参集頂いた方々は以下の通りです。

尾身幸次 元財務大臣・STSフォーラム理事長
有馬朗人 元文科大臣・元東大総長
安西祐一郎 日本学術振興会理事長
小林喜光 経済同友会代表幹事、産業競争力懇談会理事長
野依良治 科学技術振興機構研究開発戦略センター長
谷口功 国立高等専門学校機構理事長
松本紘 理化学研究所理事長・元京都大学総長
橋本和仁 物質・材料研究機構理事長
中鉢良治 産業技術総合研究所理事長
宮本昭彦 新エネルギー産業技術総合開発機構副理事長

その上で言えば、科学技術予算を増やしたとしても産業構造が変わらない限り宝の持ち腐れになります。産業界にはしっかりとオープンイノベーションという自己改革を行って頂きたいと強く思っています。それには産学官共創の一層の深化が必要です。産学官連携2.0をやらなければなりません。

 

知的財産戦略の提言

昨年末から党内で議論を進めてまいりました知的財産戦略に関する党の提言を取りまとめ、政府に申し入れに参りました。地方創生の中心的課題である中小企業が力強く活性化するには何が必要なのか、なぜ日本のリーディング企業がグローバル市場で衰退するのか、日本はAIやIoTなどの技術動向にどのように対処し、あるいはどのようにグローバル市場を牽引していくべきなのか、などを中心とする内容で、知財戦略調査会の産業活性化小委員会の事務局として、コンテンツ小委員会などと共に、作業を進めてきたものです。

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島尻担当大臣に対する申し入れの様子

知的財産戦略調査会 提言

平成28年4月20日
自由民主党 政務調査会
知的財産戦略調査会

知的財産戦略調査会では、これまで取りまとめた提言を踏まえ、有識者等の意見や政府の取り組み状況等を聴取し、産業活性化に関する小委員会、コンテンツに関する小委員会等において議論を行ってきたが、この度、今後知的財産戦略として取り組むべき施策を明示するため、この提言を取りまとめるものである。

 知的財産に関する政策決定は、経済のグローバル化が進む中で、知的財産を活用していかに経済発展を図り、国富を増大するかという視点からなされなければならない。IoT、ビッグデータ、人工知能といった技術革新により進展しつつある第4次産業革命という新しい経済社会の変革と、TPPを契機にさらに加速するグローバル化の中で、ダイナミックなイノベーション創出のための成長戦略と、地域の中小企業、大学等の力を発揮できる地方創生戦略を、知財戦略の観点から推進していくことが必要である。本提言は、そうした基本的な立場に立って、必要な施策を取りまとめたものである。

本提言を取りまとめるに当たって、今後、知財戦略を推進するうえで着目すべき視点を強調しておきたい。
 
まず、知財戦略の重層的な取り組みの重要性である。知財戦略は、国全体で、知的財産の創造、活用及び保護のそれぞれの局面が有機的かつ密接に関連したものであり、かつ、個別企業、産業界、大学から国全体におよぶ様々なレベルで、多様な知的財産や標準化に関わる競争と協調によって高めていくものである。特に、第4次産業革命時代に対応した知財戦略を推進するためには、企業レベルのオープン&クローズ戦略を発展させていくだけでなく、社会システムの国際標準化のための体制整備を国が主導するなど、官民が連携して取り組むことが必要である。

第2に、地方創生につながる知財活用の促進である。知的財産の活用により地方の中小企業も含めグローバルな市場を獲得し、日本全体の競争力向上を図るためには、大都市圏や大企業のみならず地方や中小企業、農業分野においても知財マネジメントの重要性が理解され、実践されることが重要であり、TPP協定の締結に向けた動きも踏まえ、海外展開を含めたその普及拡大を図っていくことが必要である。また、地方の資源活用も含めたコンテンツと非コンテンツ分野の連携などを通じて日本の魅力あるコンテンツを海外に積極的に発信することが重要である。

第3に、デジタル・ネットワーク化に対応した知財システムの構築である。大量に情報が生成され、情報の利活用方法が多様化する中、従来の知的財産に加えて、イノベーションの新たな源泉としてデータが大きな価値を持つようになっている。このような中で、我々の経済的・社会的活動において知的財産をより広くとらえ、多様な手法を駆使した知財マネジメントが必要となる。また、情報の中には著作権のある情報が含まれることも考えられるが、情報を利活用するイノベーション促進の観点から、保護と利用のバランスに留意しつつ、柔軟な解決が図られる制度の具体化が求められる。

第4に、知財教育と知財活用のための人材育成の重要性である。新たな時代に対応した知的財産の創造・活用・保護の一連の強化や国際標準化の推進のためには、研究機関や企業、公的機関における知財マネジメントに精通した人材や国際社会での交渉力ある知財人材の育成が必須である。加えて、社会のより広い分野に知的財産が関わりを生じ、その創出が国際競争力のコアとなる時代には、将来のイノベーションの源泉となる青少年の創造性の涵養とそれによって作り出された知的財産活用の重要性を認識した知財を担う人材の裾野拡大が重要である。

第5に、審査体制等の充実や知財紛争処理システムの機能強化など知財システム基盤整備である。知的財産の活用を通じたイノベーション創出を推進していくためには、知財保護を担保するための審査官の確保等の特許審査体制等の整備・強化や知的財産の保護に必要となる制度・ルールの構築などの環境整備を図っていくことも必要であり、これはグローバルな動向を把握しつつ国際社会をリードする形で取り組んでいかなければならない。
また、紛争処理システム分野では経済成長の原動力であるイノベーションが絶え間なく生まれるよう、特許権を十分に保護する体制構築が必要である。高度な技術が絡む特許紛争における刑事罰の実効性の問題等を勘案し、特に悪質な侵害の場合に損害賠償を充実させるべきとの意見がある一方、我が国の全体的な法体系等の観点から慎重な検討を求める声もあることを踏まえ、損害賠償制度の充実・適正化については様々な論点を引き続き検討していくべきである。

最後に、以上に加えて民間の知財啓発活動の支援も重要である。我が国の企業等が知財を巧みに活用し、企業価値、大学等の価値を高めることが国富の増大に結びつく。企業トップや経営幹部らが、紛争処理システムを含め、知財制度の国際的な進展状況を十分に理解し、知財の管理手法、訴訟ノウハウ、弁護士・弁理士の選定・活用などに関するグローバル企業等の先進事例を学ぶことは極めて重要である。

 イノベーション創出における国際競争が加速していく中で、党と政府が一体となり、世界最先端の知財立国として我が国の産業を活性化し、国民の生活と文化を豊かにしていくことが最大の責務である。政府においては、本提言を受け止め、知的財産推進計画はもとより、日本再興戦略や経済財政運営の基本方針、科学技術・イノベーション総合戦略に反映するとともに、国家戦略としての観点から積極的かつ強力に諸施策を実施していくことを期待する。

1.地方創生のための知財活用の促進

(広い関係者との連携による知財活用の普及)
・中小企業団体、金融機関等と連携し、知的財産を活用した事業の適正な評価の推進をはじめ、知財を中小企業等の経営につなぐための全国キャンペーン等の普及活動を実施する。
・金融機関における企業の事業性評価に基づく融資への理解を助けるための「知財ビジネス評価書」の作成支援の強化や、中小企業、地方自治体、金融機関等幅広い関係者の知財に対する意識啓発のための「知的財産管理技能検定」等の普及を促進する。

(知財活用の裾野拡大)
・中小企業の知財活動の裾野の拡大のため、知財総合支援窓口における相談・支援機能を強化し、デザイン・ブランドの活用を推進する。
・地域の技術ニーズとシーズを掘り起し、地域のネットワークを構築・活用して事業を生み出す事業プロデューサーの派遣、地域の技術ニーズと全国の大学発シーズを結び付け、共同研究から事業化までを支援するマッチングプランナーの派遣など、地域中小企業と大企業・大学・公的研究機関との知財連携を強化する。
・中小企業等に対する特許等の出願の拡大を図るべく、手続の簡素化等の支援策や特許料等についての検討を行う。
・地方における特許の面接審査等による特許等の取得についての利便性向上を図る。

(中小企業の海外展開支援)
・TPPを契機とした中小企業の海外展開に向けて、中小企業の保有する知財の権利取得から権利行使・権利活用まで一気通貫の支援を強化し、また、海外認証取得に向けた情報提供や相談への対応を充実させる。

(農林水産分野における知財戦略の推進)
・地理的表示(GI)保護制度の活用の促進のため、迅速な登録審査のための審査体制の整備を図り、全都道府県が最低1品目登録するという目標を早期に達成するとともに、登録GIの品質管理の指導・監督や地理的表示の不正使用に対する監視など地理的表示の適正保護のための体制を整備する。
・我が国のGI産品の海外での保護を通じた農林水産物の輸出促進を図るため、諸外国と相互にGIを保護できる制度の整備を実施する。
・我が国で開発された品種の海外への登録出願を促進する等により、種苗産業の海外展開を図る。

2.産学連携と大学・ベンチャーの知財戦略

(産学連携の橋渡し・事業化支援機能の強化)
 ・国立研究開発法人や公的研究機関等を活用した産学連携の橋渡し・事業化支援機能を整備し、橋渡し・事業化支援人材の育成・連携を強化する。
・産学連携活動評価に基づく産学連携機能を強化するとともに、大学の知財マネジメント強化に向けた支援や産学の共同研究契約における知財の取扱いに関する柔軟な対応の働きかけを行う。

(大学における知財活用の推進)
・大学発の研究・技術の成果等について、国内外における知的財産権の取得・活用・戦略立案及びそのための体制構築を促進するための支援・優遇措置等を充実する。

3.戦略的な標準化の推進

(官民一体となった国際標準化の推進)
・国際標準化の推進のための国立研究開発法人との連携をはじめ、社会システム及び先端分野において、官民一体となった国際標準化を推進する。
・適切な知財マネジメント及びオープン&クローズ戦略の下で中堅・中小企業等の競争力ある優れた技術・製品の標準化を推進するため、自治体、産業支援機関、金融機関、認証機関等との連携の下で支援体制を強化する。

(標準化をリードできる高度人材の育成)
・各企業における最高標準化責任者(CSO)の設置の促進をはじめ、経営戦略の一環として標準化戦略を描ける人材の育成を支援する。
・国際幹事・議長を担える国際人材を含めた標準化を担う人材を戦略的に育成し、量的・質的拡充を図る。

4.世界をリードする審査の実現によるグローバル事業展開支援の強化等

(特許審査の迅速化及び品質の向上等)
・「世界最速・最高品質」の審査の実現に向け、審査官の確保等の特許審査体制の更なる整備・強化、特許審査の迅速化及び品質の向上を推進する。
・産業構造や企業等の知財マネジメントの変化を踏まえた特許制度等の在り方を検討する。
・職務発明制度・営業秘密保護制度改正の普及及び適切な運用を図る。

(国際連携の推進)
・日米の特許審査官が協働した調査結果を踏まえてそれぞれ審査を行う日米協働調査試行プログラムや、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願における海外知財庁との連携や米国をはじめとする海外知財庁との特許審査の国際連携を推進する。
・今後、経済的な発展が期待される新興国における法制度及び知財制度の整備支援や知財司法人材の育成とともに、他国への審査協力を推進する。その際には、双方向での人材交流を充実する。

5.デジタル・ネットワーク化に対応した知財システムの構築

(新たな著作権システムの構築)
・デジタル・ネットワーク化の進展などの環境変化に対応した著作物の利活用を促進する観点から、権利の適切な保護とのバランスを考慮しつつ、柔軟な権利制限規定を導入する。柔軟な権利制限規定としては、例えば、「報道、批評、研究、教育、福祉、イノベーションの創出」などの目的を限定的に列挙することにより明確性を確保するとともに、「著作物の種類、用途及び利用形態に照らし著作権者の利益を不当に害さない」ことを明記する。
・柔軟な権利制限規定について予見可能性を高めるため、国や関係機関が連携しつつ、ガイドラインの策定など法の適切な運用のための方策を講じる。
・契約による利活用促進に向け、集中管理制度の拡充を図る。このため、集中管理団体のない分野における組織化を支援する。
・孤児著作物の利活用促進に向け、文化庁裁定制度の改革に取り組む。また、拡大集中許諾制度を柔軟な権利制限規定を妨げることなく、団体への権力集中等の懸念点に留意し、導入する。その際、権利者不明著作物については使用料後払いとする。
・拡大集中許諾を含め集中管理団体との契約による利活用が広がるにつれて、使用料に関する紛争が増えてくると考えられるため、文化庁の使用料裁定に関する委員会の格上げ、裁定を行う委員の属性を明確にするなど、紛争処理制度の拡充に取り組む。
・著作物の利用が個々の消費者まで広がっていることに鑑み、「消費者利益への配慮」という視点を明確にする。

(新たな情報財の創出に対応した知財システムの構築)
・人工知能による創作物等の取り扱い、3Dデータの利活用と保護、ビッグデータ時代のデータベースの取り扱い等について検討し、必要な対応を図る。

(デジタル・ネットワーク自体の知財侵害対策)
 ・権利保護と表現の自由のバランスに留意したリーチサイトに関する対応や悪質な知財侵害サイトに対するオンライン広告への対応を検討し、インターネット上の知財侵害対策の実効性を高めるため、情報流通に関わるプラットフォーマーとの連携を図る。

6.コンテンツ産業の成長基盤の強化

(コンテンツと非コンテンツ産業との連携強化)
 ・我が国のコンテンツと非コンテンツ産業とが一体となって海外展開することで、地域経済の活性化や訪日観光旅客の増加などの波及効果を最大化していくため、「クールジャパン官民連携プラットフォーム」を通じた官民や異業種間の連携を促進する。また、様々な資源を組み合わせたクールジャパンの情報集積・発信拠点を整備する。
 ・地域の魅力発信やインバウンド観光促進の観点から、地域の観光資源の取材をする海外メディアの招へいや地方自治体等のロケ支援に関する取り組みを促進する。

(海外展開のための環境整備)
・我が国コンテンツの海外展開、コンテンツ産業と非コンテンツ産業が連携した海外展開を促進し、効果的な浸透を図るため、現地メディアにおける放送枠の確保、海外メディアとの放送コンテンツの共同制作、コンテンツへの字幕付けや吹き替えなどのローカライズに対する支援、国際見本市への出展、広告出稿などのプロモーション支援を継続的に実施する。また、映画の製作や海外展開を活性化していくため、映画の国際共同制作や海外展開を活性化していくため、海外市場のニーズ把握等に努めるとともに規制への対応など、振興のための仕組みについて検討を行う。

(コンテンツ産業基盤強化に向けた取組)
・国際的に通用するプロデューサーや若手アニメーターなどコンテンツ産業の基盤となる人材育成に引き続き取り組む。また、国際共同制作を促進するため、海外の放送局等における制作人材への研修等を実施する。
・コンテンツ産業を中長期的に発展させていくために、資金調達における課題や製作委員会方式に係る課題等について検討し、改善策の具体化を図る。

(模倣品・海賊版対策の強化)
・海外における正規版コンテンツの流通拡大のための取り組みを促進し、政府間協議や官民一体となった相手国政府への働きかけ、海外の取締機関の人材育成支援、現地の著作権法制面での権利執行の強化支援等により、模倣品・海賊版対策を強化する。
・二国間・多国間協定交渉において、知的財産の保護強化、模倣品・海賊版対策を積極的に取り上げるとともに、偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)やTPP協定等の高いレベルの国際協定を規律強化の基礎として有効に活用する。

7.アーカイブの利活用の促進

(アーカイブの利活用促進に向けた整備加速化)
・利活用を前提としたコンテンツのアーカイブ化に向け、デジタルアーカイブの連携に関する関係府省等連絡会及び実務者協議会を通じた課題の共有と取組推進策の検討を行う。
・デジタルアーカイブに関する分野横断型ポータル構築のため、国立国会図書館サーチと文化遺産オンラインを始めとする各分野の主要アーカイブ間との間での連携を進める。
・書籍、文化財、アニメをはじめとしたメディア芸術などの主要分野ごとに、収集対象の選定やメタデータ形式の標準化、分野内のアーカイブ機関における収蔵資料のデジタル化への協力などを進める。

8.知財教育、知財人材育成の充実

(小中高等学校における知財教育の推進)
・小中高等学校において、次期学習指導要領の改訂も視野に入れつつ、各学校において知的財産に関する資質・能力を育む中核的な教科を明確にする等した上で、創造性の涵養及び知的財産の保護・活用とその意義の理解の増進に向けた教科横断的なカリキュラム・マネジメントの実現を支援する。
・先進的な理数教育を実施する高等学校等に対し、大学や企業等の知見を活用し、「創造性の発展」や将来的な知財の積極的活用・事業化へとつながる取組を実施する。また、起業家教育に熱心に取り組む大学や企業等が、当該教育に関心を有し取組を進める高等学校等に協力することを推進する。
・地域・社会との協働のための学習支援体制の構築のため、官民の知見を集め、知財教育向けの教材の充実・普及を推進するとともに、官民連携によるコンソーシアムの構築を推進する。

(大学、高等専門学校等における知財教育・標準化教育の強化)
・大学、高等専門学校等において、知財科目の必修化の取組等の事例を参考にしつつ学生に対する知財教育を推進する。
・大学においては、文科系・理科系を問わず、オープン&クローズ戦略を含めた知財・標準化に係る講座の学期を通じた導入を推進する。特に、知財戦略が経営の一環を担うことに鑑み、ロースクールやMBA等の大学院教育と知財戦略教育の連携を充実させる。
・国際的な素養を身につけるため、英語による知財関係科目の提供を図るとともに、留学生の派遣・受け入れ双方向の交流を推進する。

(知財人材の裾野拡大と厚みある人材層の形成)
・商業高校や大学・大学院課程の生徒から社会人(中小企業の経営者・従業員のみならず中小企業支援に関わる中小企業診断士、地方公共団体職員等)までを対象として、「知的財産管理技能検定」等の普及・拡充を推進し、知財人材を育成する。

(民間の知財啓発活動の支援)
・我が国の経営トップが知財分野で強く戦う力を持つべく、知財経営、知財訴訟に関する啓発活動を強化する。経済団体等においてトップセミナー等の開催が積極展開されることを期待するとともに、こうした民間の知財啓発活動を支援する。

9.知財紛争処理システムの機能強化

(知財紛争処理システムの機能強化)
・侵害行為の立証に必要な証拠収集のための適切かつ公平な証拠収集手続の実現、ビジネスの実態やニーズを反映した適切な損害賠償額の実現、権利付与から紛争プロセスを通じての権利の安定性の向上のための方策等、知財紛争処理システムの機能強化のための検討を更に進める。特に悪質な侵害に対する方策については、法体系全体も視野に入れて多面的な検討を進める。

(法廷での議論の活発化)
・法廷における真剣勝負である弁論及び証人尋問こそが、最も迅速、的確に真の争点を浮き彫りにし、裁判官の心証形成に資することから、文書に偏重することなく、営業秘密の保護にも十分配慮した証拠開示手続を実現しつつ、公開の法廷での議論を活性化する。

(司法アクセスの改善)
・知財紛争に対応する情報と人材が不足している中小企業の訴訟遂行を支援するため、大企業等との関係での知財保護・紛争未然防止・訴訟対応等に関する相談対応体制を強化するとともに、中小企業等の裁判に関する経費への対応策を検討する。また、地方における実質的な知財司法アクセス確保を実現するために、訴訟の各段階においてテレビ会議システム等 IT の活用を積極的に進める。

(情報公開・海外発信の拡充)
・我が国の知財紛争処理システムの情報公開・海外発信について、公開することによる弊害とのバランスを考慮した上で、国内外への情報発信を一層強化する。

以上

ため池小委員会初会合

二階俊博先生が会長をおつとめになる農村基盤議員連盟の下に、ため池小委員会が設置され、日頃何かとお世話になっている宮腰先生が小委員長に就任されました。議連の事務局は西村康稔先生。一番ため池の多い兵庫県選出です。因みに2位は広島、3位は香川です。さらに因みに面積あたりのため池の数は日本一です。

ため池。土地改良事業であって、農家にとって見れば非常にバイタルな問題です。これから良い議論ができますよう裏方でがんばって行きたいと思います。

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財務金融委員会~日銀質疑

財務金融委員会にて日銀の黒田総裁に対して質疑を行いました。内容は、世界経済や日本経済情勢に関する日銀の認識、マイナス金利の導入タイミングや現時点での効果の認識、G20コミュニケでのマイナス金利に関する議論、通貨安競争回避の意味と更なる金融緩和の意志について質疑を行いました。

報道ぶり

日銀総裁 マイナス金利「経済や物価に好ましい影響もたらす」 衆院財金委

~日本経済新聞社~

 日銀の黒田東彦総裁は20日、衆院財務金融委員会で、マイナス金利の効果について「今後、実体経済や物価上昇に好ましい影響をもたらす」と述べた。自民党の大野敬太郎氏の質問に答えた。

 黒田総裁はマイナス金利導入によって「貸出金利や住宅ローン金利も低下している」と企業や家計への好影響を強調。マイナス金利で金融機関の収益が圧迫されているとの指摘については「(景気回復を受けて)金融機関の貸し倒れなどの信用リスクは後退しており、きわめて高い収益水準を保っている」とし、影響は限定的との考えを示した。日銀の当座預金でマイナス金利の適用部分を一部にとどめていることにも言及し、十分に配慮していることを説明した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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