善然庵閑話:日食と婆ちゃんと敬太郎

私には普通に2人の婆ちゃんがいました。2人の婆ちゃんは全然違うタイプでしたが、どちらの婆ちゃんも私にとってはかけがえの無い婆ちゃんでした。

母方の婆ちゃんは私が物心ついたときにはほとんど東京で一人暮らしでした。私は香川にいましたのでめったに会えませんでしたが、話好きで、お袋とはとても仲が良く、会うと親子で延々と何時間も、世間のシキタリ、近所のこと、買い物のことから、時事問題などまで、いろんな話を深夜までしていたのを今でも覚えています。

私が大学に進学した後は、家が大学に近かったせいもあり、よく転がり込んで甘えていました。一緒にご飯を食べながらよく世間話をしました。私が背伸びをして偉そうに経済の解説をして見せても、ふんふん、と話を聞いてくれましたし、会話を楽しむようにいろいろ質問も出してくれました。

ある日、月食の話になりました。恐らく理屈は知っていたであろうに、不思議ねぇ、どうなっているのかねぇ、と言うので、得意になって真顔で解説している自分がそこにいました。今思えば風情の話をしているのに私は馬鹿だなと苦い思い出になっています。結局、太陽がなくなったら世の中暗くなって大変だから、あってよかったね、という話で終わりました。

先日の日食を見ていて、そんなとりとめも無い話をふと思い出しました。

婆ちゃんついでに、実は敬太郎という名前は嫁と姑の合作だとお袋から聞いています。今度は父方の婆ちゃんの話です。

父方の婆ちゃんは姓名判断に凝っていたようで、親父の名前も今時のパソコン版姓名判断に入力すると結構いい点数をはじき出します。そして、私が生まれたとき、名前は太郎にしないさいという提案が婆ちゃんからあったそうな。

ところがお袋が、太郎では市役所の書類の書き方見本みたいで余りに可哀想だ、と抵抗し、それでは太郎の前に何か一文字つけてもよろしい、ということで、敬太郎になったとか。お蔭で、私の名前もパソコンに入力すると、存外良い点がでるのです。

憲法記念日

昔、憲法の前文を初めて読んだとき、何だか海外向けに書かれたものにしか見えなかったのを今でも確かに記憶しています。

憲法は改正すべきです。我々日本と日本人向けに書き直さなければなりません。サンフランシスコ講和条約締結により日本が独立してから60年。干支で言えば一巡しておりますが、時代は大きく変わっています。時代にマッチした新しい家に作りなおさなければなりません。講和条約60年を機に是非憲法改正について国民的議論をしなければならないと考えています。そして憲法は改正されるべきです。衆院選の争点にするべきだと思っています。

・国民的議論を深めよう

そして改正すべき以上に国民的議論をしなければなりません。議論を深めることが改正自体以上に重要だと考えるのは、私の頭の中に歴史的観点での反省があるからです。具体的には帝国憲法の重大な欠陥が先の大戦を悪い方向に引っ張っていったこと。何の話か。帝国憲法は1890年に制定されましたが、その時には想定もしていなかった事態が1930年ごろに生じ、結果的に軍部独走の大きな要因になりました。いわゆる統帥権干犯の問題です。

当時、日米英の海軍大国は軍拡競争の真っ只中で各国の財政を圧迫していました。歯止めをかけるためにイギリスの提案によりロンドン軍縮会議が開かれた。日本政府は他国同様に財政難を背景に、軍部の希望に満たない条件で条約を締結しました。このことが一部の反発を買った。

その反発の理由に用いられたのが帝国憲法上の規定(天皇は陸海軍を統帥す)。つまり、軍事に関わることは天皇の専権事項だから、政府が勝手に軍事に関わる条約を結ぶのはけしからんという論理です。いきつくところ、政治が軍事を輔弼することが規定されていたにも関わらず、軍事に関わることは全て、軍令部やら参謀本部などが天皇大権の錦の御旗で決定することができるようになっていったわけです。そして政党政治の終焉に結びつきます。

だから議論は必要だと思っています。とんでもない落とし穴が潜んでいるかもしれない。それだけ慎重に慎重に議論を重ねなければならないと考えています。

前置きが長くなりましたが、内容について触れたいと思います。

・基本原則

私が憲法改正が必要だと考える中心課題は、自衛隊に関する問題と、地方分権・道州制の問題です。

平和主義は放棄されてはいけません。良き伝統と文化は継承されるべきです。しかし、国民が誇りと気概を持って自らの国は自らで守る意思を保つ憲法にしなければなりません。守るものは社会保障制度もしかりです。国民互いの共助の精神を重視すべきです。自由と権利の一方で義務と責任が明確にあることを全面に出すべきです。そして自衛隊を軍隊と位置づけ自衛権を明記すべきです。さらに地方分権推進のために地方自治に関する条項は大幅に加筆が必要です。そのほか多くのことを感じています。

・平和主義と安全保障

平和主義は絶対に踏襲されるべきは論を俟ちませんが、あまりに現実とかけ離れた自衛隊の位置づけは直ちに改めるべきです。国防軍と自衛権を明記し、国会で屁理屈の応酬をしなくても国際協調が可能な国となるべきです。自国と関連地域の平和と安定を自らの意思で守る決意が必要です。

・地方自治

これだけ複雑多様化した日本に活力を取り戻せるのは、中央集権システムの一部を改正して地方自立分散システムに作り変えなければなりません。なくならない無駄をなくすためにも地方分権は必要です。地方が要らないと思っても申請して当たればカネくれると思えば、とりあえず申請しなければもったいないと思うのは残念ながら否定できません。そんな時代錯誤な中央集権システムは憲法上でも明確に否定されるべきです。道州制を明記すべきです。財源は原則地方自主とするよう明記すべきです。その他沢山ありますが長くなるので止めておきます。

・その他

国家緊急条項)国家緊急事態条項を入れるべきです。本来戒厳令や国家緊急権は、余りに高度な非常事態が生じたときに憲法の枠を超えて憲法を停止してでも国家の安定を図る、国家が本質的に保持している権利だとされますが、詳細を明記して憲法下で緊急権をコントロールした方が国家は安定すると思っています。地方分権ともからみます。

行政権)行政権は内閣に存することになっていますが、内閣総理大臣の権能を強化明記すべきです。

国会運営)少し細かくなるのですが、大臣は国会から求めがあれば義務として出席しなければなりません。しかし、例えば重要な外交案件などがあったらどうでしょう。国会は重要ですが、問答無用で出席が義務化されている現行憲法は改めて、国会を優先する余り国益を損なう結果にならないよう改正すべきです。

玉串など)更に細かくなるのですが、地鎮祭などの訴訟が後を絶たないのは明らかに日本の国情に合っていません。例えば、年末年始に神社に行ったからと言って宗教行事だと思っている人はどれほどいるのでしょうか。ほとんど習慣的・習俗的なものです。十把一絡げに政教分離とするのを改め範囲を定めるべきです。

その他、改正要件の緩和や財政条項(予算の弾力的運用)などありますが、あんた長いわと言われるので、この辺でやめておきます。

参考まで自民党の新憲法草案をリンクします。

http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf

17草案よりも随分突っ込んだ内容になっています。残念なところが2〜3箇所あります。国旗や国家を敬う条項。こんなものまで憲法に規定しなければならなくなった日本を憂います。道州制が謳われていません。解散権についての考え(以前ブログに書いたもの)。などです。

何れにせよ、面倒でもご覧ください。議論は読むことから始まります。

善然庵閑話:副鼻腔炎

あまり公表するような話でもありませんが、一ヶ月前くらいに風邪を引き、一週間くらいで直ったと思ったら、その後一週間は鼻だけおかしくて、鼻がおかしいだけに花見のしすぎかと思っておりましたところ、過去に経験のない頭痛。

これは絶対に脳に来た。最近いろいろ気を遣ったり考え事をし過ぎて脳になにか起きたに違いない。そう思い、脳外科に行こうかとも思いましたが、脳外科に初診に来られる患者の95%は脳には関係ない病気だと、とあるお医者さんに伺ったことがある。ので、最初から行って恥ずかしいことになるのは御免蒙りたいので、とりあえず耳鼻科に行きました。

医師は我が豚児の同級生のお父さん。あまり恥ずかしいことにならないようにと祈っていましたところ、レントゲン⇒CTをとり、緊張の一瞬。

遠藤周作が昔、狐狸庵閑話(こりゃあかんわ)シリーズに、仕事のし過ぎか何かで目を痛め、臆病が故に目の重い病気だと疑い、癌だろうと疑い、でも眼の癌だとガンガンか、そんな変な名前がもし病名にあるなら医者はセンスがない、などと妙な心配をしつつも、真剣になればなるほど滑稽に写る事があると書いておられたことを事を思い出しながら、嗚呼、緊張するときには実にくだらないことしか思いつかないものだと悟ったところで、私の診断が下されました。

頭のど真ん中に膿がたまっています、副鼻腔炎です、と。意外な返事に拍子抜け。しかし、副鼻腔炎は、昔はものすごい大手術だったらしく、最近でも10日くらいは入院しないといけないと聞いたことがある。10日と言えば、今の私にはほぼ絶望的な日数。大変なことになりはしないかと案じておりましたところ、先生からは、薬で治りますよ〜、と、これまた意外な診断結果でした。

大学のころ、試験期間になると、大学の近くにあった祖母の家に転がり込んでは祖母に甘えていましたが、風邪を引くと近所の藤田耳鼻科という病院に行っていました。杉浦先生とおっしゃる方ですが、石原都知事の主治医らしく、石原慎太郎の巻頭言を頂く先生の著書が堂々と院内に山積みに売られていたのを記憶しています。

「生命のアナ」というタイトルですが、耳・鼻・咽喉などのアナは、病の玄関である、と。それこそアナだけにアナどるな、と書いてあった。で、ポイントは何かと言えば、それらのアナが詰まれば、頭の回転が悪くなり、仕事の能率が低くなり、体の反応も鈍くなるとのこと。

最近どうも頭の回転が悪くなってきたと思っていましたが、どうやら私の場合は副鼻腔炎が原因のようでした。今では薬も利き大分よくなってきました。なお、今回の文章が冴えないのは未だ完治していないからです。

日本のど真中にも膿が溜まっています。早く治療しないといけないと改めて思っています。

原発再稼動〜情と理

原発反対派の急先鋒のおっしゃることは分かります。原発運用の安全性に関する政治上経営上の不作為がもたらした問題、と一言では言い表せませんが、そういう問題に対する怒りであると思います。原発政策は、「失敗は許されない」ことがいつのまにか「失敗はそもそもない」ことにすり替わってしまったことが問題だと思っています。どなたかがおっしゃっていましたが、原発再稼動は安全かもしれないが安心じゃない、と。如何に説明できるかがポイントになるのだと思います。ただ情だけでなく理も国家運営には必要です。

1.原発を再稼動させた場合の、リスク・コストを具体的に提示すること。安全性だけでなく危険性の議論を、もしもの場合があったらどのように対処するのかも含めて徹底することが先決です。「失敗は許されない」ことを絶対に「失敗はない」ことにすりかえる失敗を絶対に犯してはなりません。

2.その上で、原発停止した際のリスク・コストを具体的に算出し提示すること。原油調達コストなどだけではなく、生活上の節電コスト、企業活動上の経済コスト、外交リスク、環境問題への影響、原油枯渇問題への対処なども含めたリスクとコストです。

再稼動しない場合の原油コストは全国で3兆円との試算があります。割り引いて考え3分の1としても1兆円。国民一人当たり1万円程度の負担。4人世帯で4万円。しかしその上に、上記のコストがのる。

再稼動するのしないのと言っているだけでも、電力供給の見通しが立たない中では、生産設備を持つ常識的な企業経営者は他所に移転する検討を始めていると言います。雇用が失われデフレが進行し景気は悪化します。節電で真夏に熱いのを我慢するくらいならできますが、給料は下がります。

経済への影響がGDPで最大2%の押し下げ効果があるとの試算があります。10兆円程度ですが、これも割り引いて3分の1としても3兆円。国民全員に3万円の負担。4人家族で12万円。

未来永劫原発でいくんだということは毛頭思っていませんし、原発立地県人でない人間が議論できる資格はないかもしれませんが、上で述べたことを考えたとき、上記の1と2を十分に議論尽くしたとすれば再稼動しないという選択はないと思います。

その上で、メタンハイドレートなど、次世代の新エネルギーをしっかりと研究開発しなければなりません。ちなみにこのメタンハイドレート。考えただけでも量産は難しい。しかし私はずっと注目しています。いつかこのことを書いてみたいと思っています。

マナーとルール/法と徳~小沢元代表

もし人が何らかの疑問を感じたときに、その人の頭の上に「?」が見えたとしたら、今回ほど世界中に「?」マークが見えたのではないでしょうか。

小沢民主党元代表の判決が下った日にあたって思ったこと。それは、司法判断としては無罪なんでしょうが、政治的道義的責任はどう考えたってあるんではないだろうかということ。ちまたに、ルールは違反していないけど、マナーは違反している、というケース、ありませんか?

人間は法に律せられるのは当然としても、その前に五常の徳に律せられなければなりません。法律上問題なければ何やってもいいと政治が許容してしまっては、日本はなくなります。ホリエモン事件や食品偽装事件の反省はここにあったのではないでしょうか。

少し旧聞に属しますが、昔、千代田区が禁煙の標語として「マナーからルールへ」を使いました。強烈な違和感でした。じゃあマナーはいらないのかと・・・。もう一つ。東京証券取引所が5〜6年前、夜間取引をめぐるホリエモン事件を受けて、取引規制強化に動いたこと。担当役員さんが、残念がっていました。昔は最低限のマナーはあったのでルールなんかいらなかったのにと。

何よりも一番恥ずかしいと思うことは、このニュースが海外を駆け巡っていることです。”Ozawa Ichiro”でNET検索すると、既に沢山でてきます。

法律以前の問題として、政治は襟を正さねばなりません。

尖閣:日本は外交メッセージ力強化を

1.何はともあれ国際世論に尖閣問題を訴えたのは賞賛に値する

私の息子は自衛艦隊司令官も勤められた某海将が名付け親と言っても過言ではありませんが、その方が退官後にアメリカに滞在しておられた3年ほど前、別件でお電話した際に、「日本では普天間問題で大騒ぎになっているが、親日派もしくは日本関係者が国防総省にも国務省にもシンクタンクにもいなくなりつつあるのが実は一番心配だ」との趣旨のことをおっしゃっていたことを思い出しました。実際にシンクタンクでも中国研究が盛んで日米関係を専門とする研究員が少なくなっていることを聞いてます。

先の北朝鮮ミサイル問題では、実はアメリカが一番面目を失ったのではないかと思っています。まだ失敗したからいいものの、あれで成功していたらとてつもない勢いでオバマ外交は弱腰外交と非難されるのは目に見えています。何れにせよアメリカは対北朝鮮強硬に動かざるを得ない。北朝鮮側はほとんどの対米外交カードを失ってしまいました。ロシア・中国も、もう知らんという感じになっている。そういう背景ですから、日本は韓国に次いで最も国際世論の中で当事者国としてその言動が関心を集めてもよかったはずでしたが、先に書いたように内政ボロボロ状態で、国際的メッセージを発出する元気もない状態です。北朝鮮事案で日本の存在感はほぼゼロです。とほほとはこのことです。しかし、これからどうするのか、次の一手を絶対に考えておかなければなりません。これについてはいつか書いてみたいと思います。

そして過日、強烈なインパクトのあるメッセージが発せられました。石原都知事による尖閣列島一部買取発言です。しかも周到にアメリカで発言をするという如何にもザ・政治家らしいやり方です。気持ち良い。アメリカで発信するというのは民主党ではおおよそ考えがたい発想です。こういうやりかたでも、しっかりと国際世論に訴えることが先ずは非常に大切です。

2.都知事が買わなくても日本固有の領土

実質的な話をします。都知事は随分前から購入意欲を示していました。売ってくれるところまで交渉したのはあっぱれだと思います。しかし、買っても買えなくても尖閣は日本の領土です。そして、既に日本政府が所有者からの借り上げの形で支配しています。だから国内的に土地所有権が移転したからといって実際に守るという意味では大した問題ではない。もちろん民間所有者が外国に売ってしまう可能性は否定できませんから、所有を担保しようとする意味では大きな前進であるとは思っています。ちなみに、国会でも昨年、超党派議連で、国有化と自衛隊基地建設などを議論しています。全く海外へのメッセージ性はなかったですが・・・。

3.ではどうやって実際に守るのか

中国は資源・エネルギ的な要素に加え、安全保障上の観点で外国籍船の動きを封じるために尖閣の所有を主張しています。そういう意味では、南西諸島全域の安全保障として問題を捉える必要があります。ですから、やるべきは、南西諸島全域の主要地に海上自衛隊の寄港地を整備し、先の震災対応で問題となった揚陸能力を改善し、そして定期的に大規模訓練を同地で実施することがまず先決だと思います。官房長官は「あくまで訓練です」をずっと連発するだけでいい。

寄港地。尖閣に自衛隊の基地を作れという議論もありますが、これはチキンレースをするだけです。南西諸島で周辺国が絶対に問題にできないポイントにつくってやればいい。

揚陸能力。6年ほど前、ノーラ・タイソンさんという方にやり手の女性の米海軍大佐だとの紹介でお会いしたことがあります。後に女性初の空母指揮官・艦長・将官(ジョージ・W・ブッシュ)に就任し大々的にマスコミに取り上げられていましたが、当時は、バターンという嫌な名前の強襲揚陸艦艦長でしたので記憶が強烈にあるのですが、その揚陸艦、強襲とあるからきな臭いのですが、実は内部は病院船にもなる構造になっていました。日本にこれが数隻あれば災害のときに随分違っていたと思っています。こうした揚陸艦をもっているかもっていないかでも、国際メッセージになります。

定期演習。尖閣を睨みかなりの演習が頻繁に行われていますが、これは隊員たちの訓練の色合いが強い。しかし規模的に政治メッセージになりません。場合によっては空母も「お招き」しての大規模演習が必要だと思います。あくまで演習です。

北朝鮮ミサイル

北朝鮮がミサイルを発射した事案について、それ自体、一連の安保理決議を無視し、国際社会情勢をないがしろにした、自国さえよければというわがまま勝手な、地域の安定と平和を著しく乱す行為であり、断じて容認できるものではありません。

しかし今回言いたいのはそういうことではありません。

1.政府批判も良いが海外へのメッセージを考えよ。

第一に国内の政治についてです。報道によると、発射事実を公表するタイミングがかなり遅れました。確かに政府の情報伝達体制はうまく構築できているとは言えない状況であることが分かりました。全く言語道断です。不意打ちだという言葉が閣僚から出てましたが、ずいぶん前から発射予告を期間も定めてしていましたのでそれはおかしい。ずいぶん準備期間があったはずであり、危機管理意識があるのかどうかさえ不安になります。しかし同時に、海外へのメッセージ性も考えなければならないのではないか。醜態は醜態を演じたほうに一義的な責任はあるが醜態だと意味もなく騒ぎ立てることは控えたい。同じ日本です。それを追求するがあまり、誤ったメッセージを国外に発してしまっているようなことにならないように注意しなければなりません。

第二に北朝鮮自体の動向です。あまり報道されませんでしたのであえてつまらないことを書きますが、なぜ北朝鮮は大勢のマスコミを高級そうなプレスセンターまで作って呼んだのか。目的は、マスコミの言う金ジョンウン氏の威厳付けや金日成生誕100年前のけいきづけという意味ももちろんあるとは思いますが、私は外貨獲得のための最大の宣伝であったと思っています。それこそテレビコマーシャル。

北朝鮮は、海外に毎年1億ドル程度の武器輸出をし外貨を獲得しています。これは武器輸出では世界で10番目くらい、GDPの0.6%を占めています。日本で言えば消費税1〜2%分くらいを武器輸出だけで稼いでいるような感じです。

非公式な記録で言えば、シリア・イラン・イラク・イエメン等中東への輸出が中心ですが、正確には把握できていません。各国の国際空港で北朝鮮貨物から種々の武器が押収されています。小分けにどんどんと売っているのでしょう。

日本はこれまで北朝鮮に対しては拉致核ミサイルの三拍子を目標に対応してきましたが、手段は経済制裁と外交(米・6者協議・国連)でした。そろそろこうした武器輸出ルートの解明と武器取引の国際市場からの締め出しに本格的に取り掛かる必要があるのではないかと思っています。

ガレキ処理について

東日本大震災の爪あとはまだまだ激しく残っています。ガレキ。一般処理能力の10年分とか20年分とか言われる量のガレキがまだ被災地には残っています。宮城で1820万トン、岩手で435万トン、福島を入れると全部で2300万トンになるそうです。しかし、処理できたのは、現在、全体の10%にも満たない。

全国でガレキの受け入れについて議論がされていますが、政府の計画だと、福島は県内で処理していただき、宮城・岩手の2割を全国分散処理する計画を立てています。しかし、なかなか前に進んでいません。

なぜか

それは単純に当局から発表される情報が信用できないからです。政治が信用を失っているからです。

私は放射能の問題がクリアできたら受け入れて頂かないと困る問題だと思っています。決して現地で処理できる量ではありません。現地に処理施設を作るべしという議論もありますが、コストが莫大になります。ですから、各自治体への受け入れ要請について国が音頭をとっているのは正しいと思います。しかし、もっと国民に説明をすべきです。放射能を中心に受入基準を明確にし、検査装置概要、測定方法、処理可能量など、細かいこと全てを計画も含めて公開し、説明を尽くすことだと思っています。

どなたがおっしゃっていたか忘れましたが、基準が何ベクレルというのは安全であっても安心ではない、のは良く理解できます。例えば環境省は、受入時、1キロ当たり240ベクレル以下であれば焼却後も8000ベクレルは超えない、ので問題ない、という指針を発表しており、科学的には十分であると言われています。しかし住民側からすれば、0ベクレルでなければだめだ、ということになって、そういう問題ではなくなってしまいます。

データを隠す=国民を信用していない=>国民から信用されない、という循環に政治が早く気づき、とにかくオープンな議論をするしかありません。しかも時間はかけられません。難しい仕事ですが遣り通さなければなりません。それから、ガレキを一刻も早く処理するためには、先に申し上げたリフレ政策を断行し財源確保して集中的に処理をすべきだと思っています。

日本はまず何をすべきか〜安定経済成長

結論から先に申し上げれば、道州制導入など大胆な地方分権と規制改革を推進断行することで明日の活力を生むためのシステムをつくりあげ、また将来価値を生む領域への積極投資を行い、過去にとらわれない大胆な財政金融政策でデフレを脱却し、外需獲得のための戦略外交を展開する、ことによって、まずはなによりも長い長い不景気をあと5年で脱却しなければならない、と思っています。

今の日本は、現状の問題に受動的な対応しかできていないのではないでしょうか。つまりより具体的に言えば、社会保障や財政問題など現状の問題に対応しているだけで、将来の日本の原動力となることへの投資にはポイントが置かれていないように見えます。

例えは悪いかもしれませんが、家庭から見ればそれは、一家でご主人が失業したとして、職探しもせずに、どんな公的給付がもらえるかだけを一生懸命探しているようなものです。

社会保障や財政は大事な問題ですしそこを否定するわけではありません。それらは将来への不安を払拭するものでもあります。しかし、将来への投資を止めてしまった国は衰退することは歴史が証明しています。人的やソフト面の政策も含め、将来価値を生む領域に産業戦略に基づいた積極投資を行うべきです。このあたりについては先日、「まずは景気対策ではないか」で触れました。

将来価値を生む科学技術政策に重点的に投資すべきは論を俟ちません。本当に必要かどうか不明な社会保障を一刻も改め(個人の自尊心を擽らない直接給付など)、もっと生きたおカネの使い方をするべきです。

https://keitaro-ohno.com/?cat=67

短期的には、さらに同時平行してリフレ政策を断行すべきです。過去に例の無いほどの、荻生徂徠や高橋是清も驚くほどの大胆な財政金融政策を行わなければなりなせん。インフレ目標は歓迎です。デフレの脱却を早くしなければ日本のエンジンはかかりません。政府しかエンジンをかけることはできないのが現状です。

そして中期的に見れば活力を生むシステムを作らねばなりません。地方分権改革です。東京霞ヶ関だけで複雑多様化した日本の活力を効率よく生み出せるわけはありません。地方独自の発想をそれぞれ効率的に引き出し活用するシステムは地方分権しかありません。ここを大胆に進めていくべきです。もちろん、早急な財源税源委譲は地方によっては衰退しか見えません。道州で財政構造がほぼ同一になる手前くらいまでは国がしっかりと面倒を見るべきです。そのためには必要な地域にはソフト面含めた基盤整備を早急に実施する必要があります。そしてそれらは常に地域の将来を見据えた戦略的な投資であるべきです。規制のかけかたも緩め方も将来価値を生む方向で議論するべきです。

最後に外需です。日本の産業戦略に基づいた個別的経済連携を断固推進し、外需を獲得していかなければなりません。農業などの一次産業分野も含めて積極推進すべきです。