新国際通貨制度と日本

国際社会の中で通貨制度の改革が取りざたされています。

日本も昨年、急激な円高に見舞われ、経済的にショックを受けましたが、この国際金融の世界で日本がいまどのような立場に立たされているのか、そして、どのような方向に向うのか、について今回は書いてみたいと思います。

○新しい基準通貨の誕生か?

昨年末、世界銀行のゼーリック総裁が金(gold)の価格を参照値とする新通貨制度を提案しました(このニュースは金本位制への復古を促すものと誤解されて世界を駆け巡りましたが、これは、あっと驚かせて議論を促すという作戦ではなかったのかと思っています)。

リーマンショック以降にできた新しい国際的な枠組みである金融サミット(G20)では、昨年末にも新しい通貨制度が話し合われました。次回の金融サミット(11月)では議長国フランスがどのようなことを提案するかを既に発表しております。

つまり、一言で言えば、リーマンショック以降、各国の財政問題や為替問題、投機的な資金の移動などで大きな被害を各国が受け、不安定な通貨体制のままでいいのか、ドル基軸のままでいいのか、金融取引は野放しでいいのか、もう一度お金というものを真剣に考え直そうよ、という本格的なムーブメントが起きているということです。ブレトンウッズ体制に匹敵する世界的潮流になるかもしれません。

フランスは、初回の金融サミットから、サルコジ大統領が、「ドル基軸の時代は終わった」と宣言し、ここにきて早速、1.通貨体制の改革、2.金融市場の改革、3.商品市場の安定化、などを提唱。今年の11月に行われる予定の金融サミットに向けて、主要国と調整を始めています。主導権争いも見え隠れしますが実に戦略的です。

以前、福田政権のときの洞爺湖サミットで、日本は議長国として環境問題を主題にしましたが、それはそれで結構だとしても、当時の国際情勢としては(原油等乱高下)、金融の規制を挙げるべきだ、と、このメールニュースでも書きました。金融大国でありながらなぜ日本はこうした主体的動きを出せないのでしょうか。自民か民主か、小沢か非小沢かという、ある意味ではかなりどうでもいいことで日本の国益は大きく損なわれているような気がします。

○ドル機軸

そもそもドル機軸のままでいいのかという問題提起ですが、ドル機軸が崩壊すれば間違いなくアメリカ経済は崩壊すると考えられます。世界も混乱する。ドル機軸だからアメリカは双子の赤字でもやっていける。だから新通貨制度としてやるならばIMFのSDRのように、ドルやユール、円や元も入った通貨バスケット方式の新通貨が具体的に考えられます。アメリカは当然これを拒んでいるはずです(アメリカの意向が強く反映されるはずのIMFが先の例のように少し軟化しているのは少し気になるところですが)。

○円高~単独介入と発言力の低下

一方、その日本は世界のなかで、最近はどうみられているのか。実は残念ながら、かなり冷ややかな見方をされています。昨年の急激な円高に対抗すべく、日本は6年ぶりの単独為替介入を行いました。世界は通貨という意味で中国を包囲しようとしている時代です(元レート切上問題)。つまり、みんな、勝手に為替に介入しないようにしようね、という流れになっています。そこで介入を行ったので、日本はかなり批判を浴びました。「国際協定破り」(ウォールストリートジャーナル)、「非常に政治的なパフォーマンス」(フィナンシャルタイムズ)などです。

批判が直ちに妥当だとは思いません。野田財務大臣の「断固として円高には対抗する」という発言は私は好きです。日本を守るという強いメッセージを感じます。国内の政治事情を優先する総理から「やれ」と言われ、野田大臣が世界各国に必死で理解を求めていた形跡が残されています。だから米議会筋は不快感を示しましたが、政府筋はコメントを控えた。

しかし、介入の2ヵ月後のソウルで行われた金融サミットでの主題が「いかに各国が勝手に単独介入をしないか」であったことを考えれば、如何にこの介入が世界から見て「ありえないタイミング」だったかが分かります。また、当時の官房長官が為替相場の防衛ラインを記者会見で「発表」してしまうという、これもありえないことをしてしまったこと(あぁ、そうか日本はそこまでいけるのね、と投機家は見るでしょう)が拍車をかけ、世界から非常に冷ややかな目線を浴びるにいたっています。

以上、長くなりましたが、日本は国際金融の世界ではかなり浮いています。浮いたために発言力がかなり低下しているのも事実のようです。国際社会の中で浮いてもいい場合というのは、浮いても生きていける場合しかないはずです。正直、単独介入がそれほど大きな効果をもたらさないと分かっている時代、今回の介入は対費用効果という意味では大きく考えさせられます(市場は単独介入はないと踏んでいたので、この2兆円の大規模介入で3円近くもどしましたが、結局3週間程度で介入前の水準に戻りました)。

○円高~それではどうすべきだったのか

本来、国内事情と世界の状況を併せて考えれば、総理自らが国際協調介入の方向で積極的に各国に働きかけをするべきでした。猛烈な攻勢を世界にしかけるべきでした。協調介入が功を奏するかどうかは、通貨安競争の時代でしたので微妙ですが、こういう動きが外交です。単に会って握手して笑顔を交わすだけが外交ではありません。海外要人とのパイプがなければ、パイプをもっているベテラン勢を使えばよかった。

外交交渉の条件として、新通貨制度も持ち出せばよかったと思います。同制度に対するアメリカのスタンスをきちんと把握できていれば、協調介入への協力の条件として、次回の金融サミットで明確な賛成はしませんよ、くらいは言えたかもしれません。

さらに、協調介入だけではなく、中国への働きかけも必要だったと思います。もともと中国がユーロから日本の国債へ資金をシフトしたために円高に拍車がかかった。と考えれば協力を要請するべきでした。やはり尖閣が尾を引いているのでしょうか。

国際交渉において、場合によっては(生きていけるなら)最終的に自国優先になっても私はい構わないと思います。が、そのプロセスとして十分に国際社会に訴える努力をしなければならないと思います。今回の場合は協調介入の打診と日本の窮状(日本だけが馬鹿を見ている)をしっかり訴えることです。

防衛計画の大綱

 

防衛大綱は、10年毎を目処に策定される日本の基本的中長期的防衛政策で、アメリカのNDR(National Defense Strategy)という文章に相当する非常に重要なものです。17年の改定から5年しか経っていないものの、国際情勢の変化に伴って昨年策定を予定していましたが、政権交代やら普天間事件で、先延ばしになっていました。

大きく変った点があります。それは「基盤的防衛力」から「動的防衛力」へのシフトを果たしたことです。大きく評価できます。基盤的防衛力というのは、まさに冷戦対応型で、全国各地に均等に防衛力を整備しておこうというもので、10年前くらいから議論がありました。冷戦が終わったのですからあたりまえです。そのかわりに、動的、つまり不測の事態に機動的に弾力的に対応できる即時展開能力のある防衛力となっています。この背景には、尖閣問題や北朝鮮による威嚇問題があります。

残念な点は、武器輸出三原則の問題です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この課題が大綱に盛り込まれる寸前まで行っておりましたが、最後になって社民協調のために断念したことです。
国際的な共同開発体制が組まれようとしているなかで、武器輸出三原則のためにこの一翼を担えないとすれば、第一に、体制不参加による安全保障上の不利益(共同開発国同志の関係強化)、第二に、海外からの調達コストの問題(参加していなければ高くつく)、などの問題が生じます。

なによりも残念なのが、現政権でも自民政権でも、国際情勢に鑑みて、現実路線としては三原則の一部を緩和すべきだという声が増してきているなかで、政策ではなく政局を優先(社民党を抱きかかえて来年の国会を乗り切るために)させたことです。

諫早問題と道州制

閉じられた水門が開かれようとしています。開いても閉じても関係者の利益は背反するわけで、開閉についての是非をここで言うつもりは全くありません。開くも一つの判断だとは思います。問題は、判断の仕方です。開門による被害認定を司法が下したからといって、単純にそれじゃ閉門ということには反対です。総理の発言は、「司法の判断を重く受け止めて、これから検討を始める」であるべきです。なぜなら、地元や関係者との改めての折衝が必要だからです(知事や関係市長、議会人や自治会、農業・漁業との意見交換も全くない)。

なぜ拙速な判断が必要だったのか、深い背景があるのかもしれません。が、地方分権の時代に中央トップが地元の調整もなく決めてしまうのは、少し乱暴な気がします。知事も怒るわけです。諫早湾は管轄的には国の問題ですが、基本的には地域の問題です。こうした問題は、地方の意見が重視されてしかるべきです。

道州制目指して、税財源を含む権限を早急に地方に委譲し、地域の元気を取り戻すことで、日本を元気にしていかなければなりません。

皆様はどのようにお感じになったでしょうか。

税制改正大綱と政治理念

政府が税制改正大綱を発表しました。民主党政権にとって初めての本格的な税制大綱ですが、結局財源のための税制になっており、平たく言えばとりやすい所からとったなという印象です。税制は、税金をどのくらい取るかという問題ももちろん大きいのですが、政策的にどのような日本にするかもかなり大きい問題です。税制の触り方によって、個人主義にも社会主義にも、競争社会にも平等社会にもなりますから、将来の日本のかたち作りの根幹部分の政策です。ですから、個別の税制について、どのように変えるのか(政策)、もさることながら、どうして変えるのか(理念)も大切になってきます。

例えば給与所得者の控除縮減。高額所得者は従来、所得に比例した額の控除が認められていましたが、今回、上限を定め、また削減しようというものです。国際的に言えば所得税の累進カーブは相当フラット化が進んでいるのですが、その流れに逆行するということは、何かのメッセージがあってしかるべきです。しかし、これが一体、「がんばれば報われる社会」自体の軌道修正なのか、「平等公平に安心して暮らせる社会」を追及しようというものなのか、果ては、消費税が政治的に困難なので、財源として「富めるものに負担をしてもらう」ものなのか、全然分かりません。メッセージが全く掲載されていないからです。

政治はメッセージです。メッセージとは理念です。そして理念を掲げないと、他の政策課題との整合性がつかなくなります。だから全体としてチグハグになってきます。(富めるものに相応の負担をしてもらうのであれば子供手当てには所得制限を加えるべきです)。

森田一先生が、「民主党は右から左までかなり幅広い思想の集団だから、政党として政策綱領をつくろうとしても、まとめられないから綱領がつくれない(だから理念がない)」という趣旨のことをおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思います。

ついでに、法人税です。法人税減税自体については、本質的には5%では国際競争力の回復には足りないのですが、財源の問題もあるので、異論はありません。これは”政治主導”で思い切られたのだと思います。これはいい例だと個人的には思っています。ただ、租税特別措置(業種毎の特別減税ルール)がかなり見直されていることを考えると、「民間企業に頑張ってもらって景気を牽引してもらおう」というものなのか、「企業優遇を見直して国民の生活第一」を目指すのか、理念的には分かりにくい。

環境税も導入されましたが、政策的には全く反対です。景気対策のために法人税減税をやっているのですから今じゃなくていいという理由と、一部に負担を強いることになるからです。第一、環境というと税制として創設しやすくとりやすい。タバコも同じです。基本的に環境問題は、遍く広く負担すべきものだと考えます。そして日本だけでなく、国際的に考えていくべき問題だと思っています。お隣の国でボカボカCO2を出しているのに、なぜ日本の、しかも一部の者だけが負担するのか。まずは気候変動枠組み条約締約国会議(COP)などで十分に議論をした上での導入でなければ論理的におかしくなります(鳩山総理の25%は問題外です)。

Wikileaks(ウィキリークス)とマスコミ政治

 アサンジなる男が不法に入手した外交資料を公開し話題になりました。曰く、「知る権利があり報道する自由がある。もしイラク戦争前に公開できていれば戦争は回避できていたかもしれない」。果たしてそうでしょうか。戦争が回避できた可能性も否定はしませんが、これからまた戦争になってしまう可能性の方がはるかに高いと思います。そうなってしまったら、一体この男はどのように責任を取るのでしょうか。明石元二郎の爪の垢でも煎じて飲ませたいとはこのことです。

 こうした情報を公開するかしないかは、選挙によって付託を受けた政治が判断し責任をとるべきです。マスコミは判断を促し批評をする機関であるべきで、判断自体をする機関であってはなりません。これは主要な新聞社や報道各社にも言えることです。
皆様はどのようにお感じになったでしょうか。

ウラジ・ヴォストーク(東方征服)

 明治維新の約100年前、大黒屋光太夫(だいこくや・こうだゆう)という船長が駿河沖で暴風雨にあい、カムチャッカ半島近くの島に漂着。数年の後にカムチャッカやシベリア、帝都ペテルスブルクを経て、晴れて帰国の許を得て日本に帰着しています(井上靖氏の「おろしや国酔夢譚(すいむたん)」に詳しい)。

 光太夫は、結局トップの女帝に直談判して初めて帰国を許されたのですが、シベリア総督をはじめ、なぜ地方官吏は光太夫を日本に返したくなかったかと言えば、その当時のロシア為政者の意識が既に「ウラジヴォストーク(東方征服)」にあったことが背景にあります。つまり、当時既にペテルスブルクをはじめ、イルクーツクなどには日本語養成学校があり、漂着日本人にはその講師となってもらうべく、帰化を求めていました。日本との交流が殆どなかったにも関わらず日本語学校維持に躍起であったということは、後の時代の不凍港を確保するためという動機以前の問題として、ロシアの東方への関心が如何に高かったかを物語っています。

 光太夫のころから遡ること80年前には既に、ペテルブルクにロシア初の日本語学校が勅令でできているのですが、その教師は大阪出身の漂着帰化者でした。ロシアで教えられた初めての日本語が大阪弁であったという冗談のような記録が残っています(司馬遼太郎氏:街道をゆく~モンゴル紀行)。
 そして現在、為政者メドベージェフ大統領がヴォストーク(東方)の北方四島に乗り込んでまいりました。ロシア語訛りの大阪弁の逆輸入くらいであればいいのですが、そんなわけはありません。

○ロシアが北方領土を欲しいわけ

 では何でそんなにロシアは北方四島が欲しいのか。ロシア政府自身がいろんなことを言っていたり、また種々の人が種々の分析をしていることから分かると思いますが、実は明々白々な理由は見当たりません。以前、ロシア大使経験者の日本人外交官に同趣旨の質問をしたら、要らなくはないから、という答えが返ってきました。つまり理由を挙げると、1.将来の対日交渉上の外交カードに使うため、が主目的であって、2.安全保障上の問題(4島とも日本だとしたら船舶はかなり迂回しないといけないなど)、3.水産・燃料などの資源確保、が続く理由だということだと思われます。ただ、2.3.の理由は、1の交渉を有利に展開するためにくっつけているようなものです。

○ロシアの国内事情~投資と返還~

 ロシアは石油や天然ガス資源の生産を積極的に拡大し、それを外交カードにしてきました。しかし埋蔵量に比べてあまりに生産を拡大させ過ぎているため、枯渇の時期も早いといわれています。過度に埋蔵資源に偏った経済運営をしているために、よりハイテクなどの産業にシフトしていくことが政権のテーゼになっています。そうした理由も相俟って、ロシアは積極的に海外からの投資を呼び込むことに躍起になっています。しかしながら日本からの投資はそれほど多くはない(全体の1%弱が日本からの投資)。橋本・エリツィン会談から始まって、日露間の貿易促進は何度となく行われていますが遅遅として進んでいません。

 日本としては、歴史上一度もロシア領土でなかった北方四島を戦後に無理やり実効支配しておいて、平和条約を結ぶこともなく、返すこともなく、今に至っているような旧東側の国、ということで対露不信が強い。強いから積極投資など進んでできるものではない。一方で、ロシア側にしてみれば、前述したとおり、何か外交上のカードに使えるだろうと思っており、ここ10年ほどは投資を条件に北方領土(2島だけ)を返してもいいかなと思っていたけど、どうやらこの国(日本)は全然そのつもりはないんだな、ということで膠着状態にあったというのが現状だと思っています。

○失敗に次ぐ失敗

 変化は日米間の関係が普天間交渉によって揺らいだところから始まっていました。失敗の予兆となる出来事です。民主党は普天間移設先を最低県外としていたため、政権交代直後にアメリカの日本担当官から不信をかっていた。そこをすばやく察知していたのはロシアでした。

 そして失敗のその1は、政権交代直後の前原国交大臣による「北方領土は不法占拠されている」という発言です。交渉中の案件に所掌外閣僚が横からぐさっとナイフをさしてきたようなもので、交渉担当の面目は丸つぶれです。(ただ、前原大臣が対露強行戦略の第一歩として発言されたのならば問題ではありませんが、その後は何ら強行的な戦略性は見受けられません)

 失敗その2は、メドベージェフ大統領が対抗措置として、北方領土に積極投資をして開発を進めるという発表をしたのですが、それに対して何らの措置をとらなかったこと。ここでとるべき措置は、官房長官の会見で「そうした発表がなされたが、【我が国】に対する投資を歓迎する」とすることで良かったのだと思っています。

 失敗その3は、ロシア連邦議会による対日対抗措置であった、9月2日を対日戦勝記念日として制定するという事件に、これまた何の反応も示さなかったことです。考えればすぐわかることで、9月2日とされたのではロシアの北方領土編入に正当性を与えてしまいかねない。ここは当然、議会で可決する前に強烈な反対運動を展開すべきでしたし、その時点で国際世論にも訴えていくべきでした。

 失敗その4は、尖閣問題発生直後に日本の外交力低下に確信をもった大統領が北方領土訪問を発言するのですが、それに対して、前原外務大臣が「来たら大変なことになる」との趣旨の発言をしたことです。外交上は、当然、先にも述べたように、「【我が国】への訪問を歓迎する」ということで、歯舞か色丹で首脳会談の提案をすればいい(択捉か国後だと、先方の面目が潰れすぎる)。
 失敗その5は、大統領の国後訪問後に前原大臣が在ロシア日本大使を呼び戻しているのですが、前述の「大変なこと」には全然なっていなくて、召還後にもロシア政府は全然問題ないっすよ、と言っています。やるなら「在京ロシア大使の退去」ではないでしょうか(これは国交断絶になりますが)。
 さらに・・・と続けるとまだ2つありますが、少し細かいので、あんた細かいの、と言われると困るのでやめておきます。

 何れにせよ、以上の5つの失敗をご覧になって気付かれると思いますが、それぞれ1つ1つは、それぞれが直ちに失敗というわけではありません。問題は、哲学理念が政権内にないのか、対処に一貫性がなく、議論されたものだとは到底思えないことにあります。

 中国やロシアは、ここ10年、経済発展を背景に帝国主義外交を展開しています。強行に押して押して、相手が強行にでてきたら、ようやく交渉に入る。それを考えると、日本は、自民とか民主とか言っている場合ではなくて(マスコミがこれを煽る)、日本と言う国の国民として、考えなければなりません。

 先日、町村信孝先生が来県されました。参議院の磯崎先生の主催する会に参加するためですが、外交について、外務大臣の顔を潰さないように内密にアドバイスをしに行かれたそうです。結果は完全に無視だったそうです。もう少しゆとりを持って欲しいものだと思います(自民党内には、○○大臣経験者会議なるものがあって、そこで過去の経験が蓄積されていくのだと思いますが、政権が交代するような時代、こういう経験を何らかの形でストックする知恵を持たないといけないなと思ったりしています)。

人気と横暴と政治

河村たかしさんが大暴れしているようですが、私はあのやりかたは本当の政治ではないと思います。

しかし、議会と首長の関係をもう一度考え直さなければならない時期にきているのではないかとも思っています。

このことは、いつかは書いてみたいと思います。

尖閣諸島

■尖閣諸島問題

○想像力の欠如

外交はともすれば想像力の勝負だと思っています。そして、尖閣問題は、現在の為政者が、これほど中国が強硬な態度に出るとは想像していなかった、ということだと思います(していれば突然釈放はしません)。残念でなりません。そしてとにかく腹立たしく思っています。

この事件は多くの問題を含んでいると思いますので、今回はこのことを書いてみたいと思います。少し長くなりそうですが、是非お付き合いください。

さて、尖閣諸島は、ご存知のように近海の埋蔵天然資源をめぐって中国や台湾がその領有権を主張しておりました。日本は歴史的に、そして外交上の当然の自国の領土ですから、領土問題が生じていることも認めておりません。

ちなみに、領土問題という言葉はある種の外交上の専門用語のようなもので、外交をあまり知らなければ、蓮舫大臣のように「領土問題だ」と発言してしまい、慌てて後で「我が国固有のもの」と修正せざるを得なくなります。政治家であり閣僚でもあるわけですから、外交のこうした基本くらいは知っておいて欲しいものです。

さて、こうした背景があれば、当然逮捕送検という日本の政府の対応は妥当ですが、一方でこうした日本政府の行為に断固として中国が反対してくるのは目に見えています。なぜなら反対しなければ中国のこれまでの主張を中国自身が否定することになるからです。しかも中国は現在、これまでの反日的な教育によって、不毛なナショナリズムが高揚しやすい環境にあります。この中国人のナショナリズムのエネルギが中国政府自身に向いてくることも考えられます。だから中国政府としては日本政府に対して大きな反発をせざるを得ません。

であれば日本政府は次の手を絶対に考えていなければいけません。私は自民党員ではありますが、前原がんばれ、と思っていました。前原外務大臣は、逮捕送検の直後、法にのっとって粛々と処理していく旨、コメントを発していました。従って次の手は当然出してくるものだと思っていました。結局何もありませんでした。

次の手は、絶対に国際世論への訴えかけであるべきだと思います。たとえば盧溝橋事件で勃発した支那事変後、蒋介石夫人・宋美麗がアメリカ各地を廻って「中国はかわいそうな国だ、日本はひどい国だ」とやった。アメリカ議会で演説した初めての民間人としても有名です。そしてその後の国際世論は、アメリカによって形成されていきました。

現在、アメリカだけに訴えても国際世論の形成にはいたりませんが、撮影したとされるビデオを公表し、領土問題はさておき、体当たりをしてきた中国漁船(中国国旗を出していたか甚だ疑問ですが=公海上でも船籍を明示しない船舶は停止検査できる)を見て、各国一般庶民も巻き込んで考えていただくというものです。

さらに、各国の駐在大使に対して、国際世論を形成する努力をせよなる大臣通達をだしても良かったのではないかと思います。それが政治主導だと思います。確かにアメリカに対する交渉をした形跡は見えますが、外交官を使っていない。世論形成できるだけの一般大衆への訴えかけを全くやっていない。もっとも皮肉を言えば、今の為政者は政治主導の名の下に、役人(外交官)の言うことは聞かないことに決めているのですから、しょうがないのかもしれません。

次にこの政治主導について考えたいと思います。

○政治主導の名が廃る

釈放について、官邸は検察の判断だと主張しています。「わしらは知らん」ということでしょうか。一方、検察は「政治的理由」を明言しています。検察が政治的理由を前面に出していいのでしょうか。法治国家の名が泣きます。議会制民主主義が死にます。また、官邸が、困ったことは役人がやった、というのでは、何のために政治をしているのか分からなくなります。

もし最終的に釈放と判断するなら、日本政府として、こうこうでどうだったから釈放したと明言しないと、付け入られるだけです。実際に釈放後に賠償と謝罪を要求されています。

具体的には、釈放の理由を官房長官が発表する。内容は、1.漁船が故意に衝突してきたことは極めて遺憾。2.尖閣は日本の固有の領土である。3.武力紛争を回避するために大きな政治判断した。4.今後も不法操業は逮捕する。5.継続して発生する場合は、しかるべき対応をする。6.海保巡視艇の損害賠償を請求する。と、このくらいは政治が言わなければ話になりません。

政権交代によって一体日本がどこまで譲れてどこからが譲れない線なのか、新政権として明確に外交メッセージを出していかないといけないはずですし、特にここ2年で国際政治環境が大きく変っていますので、中国にとっては試している部分も大きくあります。はっきりと毅然とした態度で、「これ以上来るとまずいですよ」という線を示さなければなりません。

次にそもそもの領土問題について考えたいと思います。

○領土問題に格上げ?

簡単に言えば、日本の主張は、「もともとわしらのもんやし、それでみんなも納得したやんか」、という「無主地の先占」と、「ほんじゃそういうことで日本のものでええですな。」という、戦前戦後の諸外国との外交による確認を根拠にしています。中国の主張は、「わしの国のこの文書に釣魚島と書かれておるがな」という歴史文章と、「大陸棚としてみれば、釣魚島は中国大陸とつながっとるがな」という、大陸棚条約を根拠にしたものです。

中国の主張のうち、前者は外国に発信されたものではなく、全く国際法上正当ではありません。後者についても、国際法上、当事国の同意による境界策定が求められているわけで、一方的に策定しているのは不当と言わざるを得ません。つまり、「やから」に近い。

今回、政治が船長を釈放した上で検察の判断として逃げてしまいましたが、逃げたことが大きな政治メッセージとして発されました。中国からすれば、押して押して押し捲れば、もうすぐ日本は領土問題だと認めるだろう、ということです。そうなる前に、正しい外交メッセージを発していかなければなりません。

○国際政治環境の変化

日本の相対的地位の低下が、中国に付け入られる隙になったのは間違いありません。地位低下の主要因は米国との関係です。米国からみれば、1.普天間などの問題により米韓関係の方が日米関係よりも優先するようになっている、2.中東以外の火種を抱えたくない、3.国内政治経済が何よりも優先している、ことを考えれば、何でもいいから問題を起こされたくないということ。端的に言えば、アメリカから見れば、尖閣なんてちっぽけな島ごときで、大きな争いはしてくれるな、ということです。

アメリカは兎に角、安保上危険な可能性のある中国をアメリカの安全保障体制にいかにして組み入れるかに心血を注いでいる時期です。

とすれば、釈放に至ったのは、アメリカから、「尖閣は日米安保の範囲内と言ってあげるから、事態を早急に解決して頂戴」、との提案があったものと考えるのが妥当です。「へいへい」とのって「釈放」して、「役人のせい」にしてしまった人の顔が見てみたいとはこのことです。

今回の事件で、普天間に続いてアメリカから突き放される可能性が益々高くなりました。日本は外交上の大きな「へた」をうってしまったわけです。

ちなみに「尖閣諸島は日米安保の対象範囲」という言質は、すでに過去に確認済みのこと。釈放をこの言質と引き換えに実行したのであれば、これも想像力の欠如です。

○想像力を豊かにして次なる展開を考える

中国の国内情勢を考えれば、尖閣の実力支配も考えられます(こんなことも現政権には想像して欲しいです)。上に書いた理由で、アメリカは牽制のために空母部隊やイージスを近海に派遣はするでしょうが、武力衝突には絶対に介入しないはずです。その状態で中国が尖閣に居座ったとします。そこまできたら、日本は武力で奪還することはできません。日本は空騒ぎするしかないのです。

だからこそ、上記に示したように、官邸自らメッセージを発出すべきでしたし、今でも遅くはありません。もう一度書きます。

1.漁船が故意に衝突してきたことは極めて遺憾。2.尖閣は日本の固有の領土である。3.釈放は武力紛争を回避するためになした大きな政治判断である。4.今後も不法操業は逮捕する。5.継続して発生する場合は、しかるべき対応をする。6.海保巡視艇の損害賠償を請求する。

無易由言

四国新聞によると、岡田外相(結構好きな部類の方ですが)が、普天間移設問題で米海兵隊が新しい飛行経路を提案してきた問題で、「それは自民党政権時代の密約みたいなものだ」という趣旨の発言をしたそうです。さらに、「米政府がそれでいいならその方向で進めればいい」との趣旨の発言もあったようです。

全ての人が完全に納得いく案ではないけれども、何とか理解される案に苦労してたどり着いたものを、密約だと悪事のように喧伝し、沖縄の意見も聞かずに公言するというのは、あまりに勇み足としか言えません。

岡田外相ではだめだとは思いませんが、大臣の言葉の重みはもう少し考えるべきではないかと思います。

政治的意図があるなら別ですが、無易由言という言葉もあるとおり、言葉は政治の命であり、政治は日本そのものです。自民とか民主とかの枠を超えて、日本丸のために日々戦って欲しいものだなと思った一日でした。

金融危機:自由化から規制強化へ

~例えばガソリン価格が乱高下しては困るので~

 堅い話が続いて恐縮ですが、ギリシャ発のユーロ危機の話をしたいと思います。

 直近で言えば、ユーロは下げ止まったかに見えていますが、強まっていた金融市場のリスク回避姿勢が一旦和らいだだけで、実体経済とは全く関係なく、今後どのような動きになるのかは非常に微妙です。

 このギリシャ発ユーロ危機は、どうして起きたか、ですが、背景にはEUの域内各国の財政調整の失敗と競争力格差と言う構造的問題があり、「あ~ユーロがドイツマルクのように強い通貨になると思ってたのに」、という失望感は非常に根強いと思います。

 すこし国際的な動きを追ってみたいと思います。

 これまで中国は、地政学的な理由もあり、また、ドルに対するリスクヘッジのため、また本質的には欧州貿易取引のため、ユーロ保有比率を高めてきました。更に言えば、アジア圏では、世界の中で唯一経済をリードしているアセアン諸国(特に主要5カ国)で部品を作り、中国で組み立て、欧州に売る、という流れができており、アメリカを牽制するアジア圏にとって取引通貨をユーロにしておく(投資する)のは大きなメリットがありました。

 しかし、ここにきて、アセアン主要5カ国や中国などの新興国は、ユーロ投資に慎重になっているという観測が広がっています。外貨準備世界一の中国がユーロ保有の政策比率を変更するとか、クウェート投資庁がユーロへの投資を減らす、などという憶測が報じられ、市場に緊張が走ったりしました。両国は、事実ではないと否定しましたが、火のないところに煙はたたないわけですから、市場もいらいらが募ります。

 一方、欧州では、投機売りを牽制しようと、ドイツが単独で(EUの誰にも相談することなく)国債の空売り規制を発表。すると、規制を嫌う市場から反発をうけ、逆にユーロ下落。諸外国から猛反発を受け、最終的には各国連携で規制に動き出したりしています。

 そしてさらに、欧州では、本質的な問題である各国の財政問題について、一致して緊縮財政に向かっています。先のG20で世界同時不況を受けて財政出動の方向に向かっていたのに(日本以外は)、また逆戻りで、おそらく景気は悪化の方向に向かうことになると思います。

 アメリカは自国の防衛で手一杯です。

 更に言えば、北朝鮮の韓国哨戒艦に対する魚雷攻撃と、その認定公表により、金融市場が反応したことはご存知のことと思います。地政学リスクです。軍事衝突の可能性が高いとの観測、特に、関係国の同意状況にもよりますが、来週にでも安保理に提起しようという勢いですから、市場マインドは緊張する他ありません。結果、アジア関連株が大きく下げました。

 つまるところ、総じて言えば、大混乱です。見通しも立ちません。しかし、EUの金融機能がこれほどまでに弱いものかと思った人も少なくないのではないでしょうか。昔、アジア通貨危機の際、チェンマイイニシアティブと言って、アジア防衛策をアジアでとろうという機運が高まり、実際に発効。現在、ASEAN+3の枠組みで名目900億ドルほど準備があります。こうした対応策は、EUにはなかったのか、あっても発動しなかったのか、私はしりませんが、混乱しているのは間違いありません。

 しかし、仮に今回、EUにチェンマイイニシアティブのような対応策があったとしても、本質的には投機筋の管理規制が必要だと思います。アメリカ発の金融危機で、アメリカも金融規制強化の方向に動いています。欧州もしかりです。過度の規制強化には賛成できませんが、過度の投機は規制してしかるべきと考えます。(昔、洞爺湖サミット前後、原油価格が投機マネーのせいで高騰し、国民生活に多大な悪影響を及ぼしましたが、当時の議長であった福田総理が洞爺湖サミットの主要テーマを環境から金融規制に切り替えていれば、多少は収まったのにと残念に思ったことを思い出します。)

 問題は、日本が全くその動きに同期していないことです。なぜかと言えば、日本は過度の投機対象にはされていないからです。なぜかといえば、市場が不透明だからというのです(リーマンショックのとき、中国政府系ファンドがアメリカの金融機関を助けましたが、そのとき日本人記者が日本の政府系ファンドを検討したか訪ねたところ、金融機関の人が、日本の政府系ファンドは透明性で中国に劣ると明言していたのが非常に新鮮であり、驚かされました。)

 しかし、悠長なことは言ってられません。FTAの網の目が張り巡らされ(米韓・中韓も進行中で日本は取り残されぎみだが)、経済交流が活発になれば、より市場の流れは複雑になることが考えられます。遅くならないうちに金融市場から親しまれる規制の導入を急がなければなりません。その際、国際協調が体制なのは言うまでもありません。こうした過度な投機を牽制することは、ひいては、国民生活に密接に関連する石油価格の安定にも繋がるはずだと信じています。

すいません、また、長くなりました。