中国とアメリカ

 とうとうGDPで中国に抜かれるときが迫ってきました。2020年にはアメリカも抜いて一位になる可能性もあります。日本は橋本政権のときから、ず~っとGDP500兆円強で全然変っていませんが、一方で、中国は10%近い成長を何年も続ければ当然5倍も6倍もなります。それはそれとして、これを歓迎するか脅威と見るか。

 まず国際情勢を考えるに、日米同盟を揺るがす行動は断固阻止しなければなりません。大戦前、なぜ日本が孤立したのか。それはアメリカの策もあって日英同盟が崩れたことが大きな要因です(日米英仏の4カ国同盟という意味不明なものになった)。当時の米国にとっては、日英関係の破談によって自国の安全の確保と米英関係の連携強化という点で重要だったはずです。当時の日本にとっては、日米の緊張が高まっただけです。

 全く当時の状況になぞらえることが正しいとは言いませんが、英を米と置き換え、米を中と、そして軍事を経済に置き換えると、似たような構造になります。

 付け加えるならば、彼の宇宙人は米国と「対等な関係」を築くとおっしゃっていますが、本当に対等なら、米国に対する第三国の攻撃があった際、日本は参戦するのでしょうか?この宇宙人的対等は決して米国から見たら対等ではないはずです。

 さらに付け加えると、以前も書きましたが、日米同盟大切と言いながら友愛精神的東アジア共同体では困ります。当面の日本としての東アジア共同体構想は、EPA/FTAなど経済分野で、ASEAN諸国の対中国カウンターバランスとして日本が機能するような方向で(つまり中国よ好き勝手はさせないぞ的方向で)出発しなければなりません。それを、いきなり安全保障も含めたような、皆で安全安心仲良くしましょう的な発言は全くナンセンスですし、むしろ中国に利するだけになります。(ちなみに、安全保障など政治に近い分野は、東アジア諸国の異質性を考えると、共同体は直には困難であり、むしろARF(アセアン地域フォーラム)などの緩やかな関係で囲い込むことが妥当だと考えています。)

 オバマさんの一般教書演説で日本が一言も取り上げられませんでした。これは強烈なメッセージではないでしょうか。さらに韓国とのFTAを推進することが取り上げられております。先に指摘したように、日本孤立の始まりを予感させるものではありませんか。

 一方で、リーマンショックで世界経済は大混乱ですが、まだましなのは中国の強い需要あるからなのも事実です。従って、中国の需要を政治が押えてしまう結果にはしてはいけません。

 日米同盟を強く堅持し、東アジア圏で中国の経済活動を牽制しながら、アメリカとの関係の中で、中国に世界経済需要の一翼を担ってもらう、という方向が唯一の解だと考えます。

政治とカネと予算委員会

 小沢さんの問題で連日マスコミが大騒ぎしております。国会でも大騒ぎです。しかし、こういう政治とカネの問題に、予算委員会の審議時間が費やされるのは、私は是としません。確かに不正やその疑惑は、大問題ですし、政治の運営にも関わってくる問題です。疑念が出てくれば当の本人と所属団体は説明責任を果たさなければなりません。当然所属政党内で議論して結論を出すべきですし、他党はそう促すべきです。

 しかし予算をあつかう予算委員会でオラオラと鬼の首を取ったように責め立ててもしょうがないのではないかと思っています。政治は携わるもの全員が自らの襟を正さなければなりません。権力を握るとルールを自ら作れるようになります。ルールを自在にできれば理屈があっても適いません。非理法権天という言葉が示すように、それがリアリズムです。従って、権力者は常に自らの襟を正さなければなりません。ノーブレスオブリージュの精神が必要です。

政権交代と二大政党制と議院内閣制

政権交代は日本にとってよかった部分も多々ありますが、大きく考えさせられます。

【二大政党制と政府の連続性】
 第一に、二大政党制の実現です。何はともあれ、与党民主党は大政党になりました。従って、一歩、望ましい体制に近づいたと言えます。しかし、政権が変るたびに大きく政策がころころ変ってしまっていいものでしょうか。日本政府としては、仮に政権が変ったとしても、大きく変えてはならないところも絶対にあると信じます。(もちろん議会は、全く反対の立場から政党間闘争をするわけですから、第一党になれば議会としての政策を大きく転換していくことはむしろ当然のことと思います。)

 例えば国家の根幹となる制度設計に関わる問題です。今後、政権が変るたびに年金制度が変ったり、介護制度が変ったりすれば、だれが加入しようと思うのでしょうか。また、実際の事務はそのたびに変更しなければなりません。これこそ壮大な無駄遣いではないでしょうか。有名になった八ツ場ダムですが、仮に次の選挙で自民が勝ったとして、また建設計画を復活すると言い出したら、この究極のムダをどう考えればいいのでしょうか。

 外交案件もしかりです。普天間は白紙と言ってみたり、県外移設が前提と言ってみたり、引っ込めたり。政権が変わっても、日本人なのですから、慎重にならなければいけない問題は、特に外交案件の場合、多いと思います。

 アメリカの場合、二大政党制ですが、政党によって政府が大きく振り回されることはありません。大統領制だからであって、独立しているからです。ある種ここに成熟した二大政党制の姿が見えます。

 日本の場合は、議院内閣制ですから、政権が直接政党の力に左右されますので、議院内閣制の元での二大政党制で、政府の連続性をどのように担保していくかが今後の大きな大きな問題であると感じます。

【政治主導と地方分権】
 第二に政治主導です。良かれ悪しかれ、政府と政権与党の関係を見直し、大臣が副大臣と政務官を決定し、省庁がポリティカルアポインティー(政治任用者)のみの意思決定で動くのは、まさに政治主導でしょう。行政の無駄遣い撲滅には最大限活躍してもらいたいと思っております。

 しかし現在の政治主導は、他人の意見を聞かずに意思決定を単独でしているという意味では、独断専行ともとれます。専門的見地から助言しているとはいえ役人の言うことを聞かないというならまだしも、選挙を経て地方を代表している知事・市長の言うことも全く聞いていないように見えます。

 「俺の言うことを聞け」では、完全に中央集権に逆行と言われてもしょうがないような気がします。企業や業種団体などは全く陳情の仕方もないようです。先日議員会館に立ち寄ったところ、多くの議員事務所がもぬけの殻でした。この時期の議員会館は税制や予算などで多くの人でごった返す時期だと思うのですが、今期は民主党は陳情・要望を受けないので当然かもしれません。

 政治は、目で見て、耳で聞いて、鼻で感じて、口で熱く訴えかける。そのうち、耳を全く使っていないのは大きな問題だと感じます。十分に種々の皆様の意見を聞いて、それでご自身で判断されればいいのだと思いますが・・・。

 いずれにせよ、政治主導と地方分権などという別々の課題の整合性をどのようにつけるかが今後の課題だと感じております。

ドバイショックと為替とドル機軸通貨

ドバイショックで為替が大きく影響を受けています。

単純に言えば、

1.ドバイのバブルが弾け、そこに最も投資されていたユーロが暴落。
2.アメリカは、暫くFRBが低金利政策を続けそうだとの観測(大元はFOMC(連邦公開市場委員会))が流れたことと、9月頃に日米の金利が逆転したことから、ドル売りが続き、さらにドルキャリートレードが拍車を掛けたため、急激なドルの暴落。

の2点から、円が3市場の中で相対的に強くなっているということだと思います。

もともと、現政府の莫大な国債発行示唆によって金利は上昇しつつあるので、以前書いたように、長期金利は上昇する圧力を受けています。すると、これも以前書いたように、更に円高に拍車がかかる可能性があります。

これについて、第一点目として、景気という観点から申し上げると、急激な為替変動は望ましくないからと、為替市場に日本単独で介入したらいいという関係者がいます。これは大反対。ここ10年、単独介入で意味があったことは殆どないからです。やはり、十分内需を拡大して、景気を底上げするしかないと思っています。

第二点目として、これはもっと深刻ですが、アメリカの機軸通貨体制は崩壊したのかどうか、という点です。そもそも、いわゆる双子の赤字を抱えたままドルが維持できているのは機軸通貨だからですが、ドバイの例もあるように、世界各国が、ユーロ建て、円建てを採用しつつあります。実際にアメリカが無視されつつあります。本当に崩壊ということになると、一気に崩壊することになりますので、日本などもその波に飲み込まれてしまいます。

こうした観点からは、先進国首脳会談・中央銀行総裁会議などでは、通貨の安定などをもっと真剣に話し合う時期に来ているのではないかと思います。

むだ?

新政府のもと、予算の適正配分と執行が成されているかを確認するための事業仕分けが行われ、先般完了したようです。

税金が、各省庁ごとにどのような事業に使われているのか、を浮き彫りにするという意味では非常に意味のあることですし、非常に悲観的に言っても、マスコミが事業内容を取り上げているということには、絶対に意味があったものだと理解しております。

しかし、問題はその内容です。究極的に言えば、ムダとはなんぞや、ということです。

特に分かりやすい例を挙げれば、科学技術の分野(例えばスパコン)での拙速な事業仕分けによる問題です。特に基礎研究と言えばご理解いただけると思いますが、研究などという分野は「むだ」と言えば究極の「むだ」です。しかし、むだを出しているから、そのむだの中から、ピリッと光る成果が時々でてくるのです。

また、外交安全保障上でも驚くべき判断が下されています。例えば、PKO訓練センターの建設。これは箱物と言われればまさにその通りですが、実はPKO訓練センターはアジア圏にはありません。安全保障上の国際協力という観点から言えば、まさにハブを担えるようなセンターの建設なのです。これは個人的には東アジア共同体や、地域ブロック化、あるいは種々の外交交渉上必ず有益なものになるはずです。これを、単に「箱物」だから、「コンクリート」だからと切って捨てていたのでは、到底戦略などはでてくるはずがありません。

立花隆氏が、東京大学での講演のなかで、「日本を潰す気か」と痛烈に批判したのは、全く同感です。素人が素人感覚でムダかムダでないかを肌感覚で判断するのは、極めて危険であると思います。多数種々ご議論いただいた上で判断いただきたいものです。

アジア通貨基金とアジア外交

97年にアジア金融危機がおこった際、残念だったのが日本が助けてあげられなかったことではないでしょうか。隣の家が燃えていたけど水を貸し出さなかったから自分の家も焦げてしまった。そこまで言わないでも、近所の人が自治会を作って互助していれば焼けたり焦げたりした家が少なかったはずです。当時は、海を渡った隣の自治会(欧米)からおカネを借りて、その代わり妙な条件(緊縮財政)を付されて困り果てた上に、隣の自治会に対するアレルギが増えたというようなものです。

アジアで自治会を作りましょうというのが、その後にできたチェンマイイニシアティヴ。今回、与謝野さんがASEAN+3会議に出席し、ASEAN+3諸国とともにアジア通貨危機が発生した場合の外貨融資額を1200億ドルに増額するとの発表がありました。

昨年10月には、同ASEAN+3首脳会談で、チェンマイイニシアティヴをアップグレードしたアジア通貨基金を今年6月までに創設することが概ね決められました(ASEAN+3独自に監視機構も作りましょうという話も決まっています)。

アジアの国際政治を考えると、前回のニュースで少し触れましたが、日本があまりしゃしゃりでると、中国から不審がられ、日中があまり仲良くしすぎるとASEANから不審がられる(ASEANにとって日本は中国とのカウンタバランス)、アジアでかたまり過ぎると欧米から嫌われる(IMFとのからみ)、という状況のなか、アジア通貨基金が創設されるというのは、結構画期的だと私は感じています。

と言うのも、東アジア共同体構想を考えれば、アジア通貨基金と言うのは基本中の基本だと感じるからです。そして金融部門はアジア開発銀行を筆頭に、アジアで日本がイニシアティヴを取れる分野だからです。

一方で、ASEANとしては、中国と日本を微妙な緊張の上において置き、上手く資金を調達してやろうという考えもできなくはないと思っています。あまり深く考える必要もないかもしれませんが、「うまくしてやられない」ように、アジアの相互発展を考え、粛々と冷静にアジア外交を進めていくべきです。

お城村

5月3~4日にかけて我が地元の丸亀市内でお城祭りが行われました。そして、今年は縁があり、お城村スタッフとして参加することになりましたので、スタッフ側からみたお城村となりました。全国的に有名なお祭りになればいいな、あるいはしていかないとなと思っております。

キッシンジャーと北朝鮮

キッシンジャー(ニクソン・フォード大統領に仕えた安保担当大統領補佐官・国務長官でノーベル賞受賞者)と聞くと「瓶の蓋」を思い出してしまいます。「日米安保をなくせば日本が軍国主義に走る」という論のことですが、個人的には瓶の蓋も、取ったら中身がでてくる場合と、逆に中身を詰める場合とありますから、一概にそんなことは言えないと思っています・・・。ただ、瓶の蓋と言われ様がなんだろうが、これが日本の外交上最も重要な柱だと確信はしております。

前置きが長くなりましたが、そのキッシンジャーさんが来日し首相と会談をしたとのこと。首相は6カ国協議が再開できればいいなぁと、陰からの支援を求めたようです。それはどうでもいいのですが、以前どこかで指摘しましたが、ミサイル事件で北朝鮮は6カ国協議への参加という外交カードを持ちました。このカードを何のために切ろうか、北朝鮮のおじさんは一生懸命考えていることでしょう。

馬鹿馬鹿しい話ですが、騒音おばさんやゴミおばさんをその解決を目的に自治会にお誘いしたとして、彼女達が自治会に入ってやるから自治会費10年無料並びに年間10万生活支援してよ、などと吹っかけてくるような話があれば、絶対にNoと言う必要があります。もちろん6カ国協議は非常に重要かつ意味のあるフレームワークですが、これを開かないと核や拉致が解決されないわけでもないので、安易な譲歩によって無理にこの協議にひっぱりだすことはない筈です。

首相や外相あるいは外交担当者がちゃんと考えてくれることを切に願う限りです。

斎賀富美子さんの思い出

とても明るく冗談の好きな知的で笑顔が素敵な女性でした。斎賀さんが国連代表部にいらっしゃったときに、一度だけ夕食を共にする機会がありました。5~6人のグループでしたが、積極的に知的な会話を楽しんでいるようでした。

丸高の先輩ということもあり、私の憧れ的な存在でした。

大学を卒業して直後の95年のころ、なぜか国際法に興味を持ち、山本草ニの国際法などを買ってきては読み耽っていました。漠然と国際関係や安全保障に興味を持ち始めていた時代です。そのころの最大の疑問の一つが国際司法裁判所。なぜこれほど権限が弱いのかということでした。

国際刑事裁判所を設立するべきだというムーヴメントはその当時はすでにあったと記憶しています。是非これはつくるべきじゃないかと私も思っていました。そして、2003年の春、当時購読していた新聞に、国際刑事裁判所がハーグに設置されたという、ほんとうに小さな小さなベタ記事が掲載されていたのを見て、しびれる思いがしたのと同時に、これほど歴史的な瞬間がなぜこれほど小さい扱いなのかマスコミの感覚を疑ったのをまだ記憶しています。

雑賀さんが、その国際刑事裁判所の判事になられたときは(日本人として初めての快挙)、丸亀のご実家の近くに居を構えている人間としても、何となく誇らしい気分でした。

ただただ残念です。ご冥福をお祈り申し上げます。

日韓防衛相経験者会議

韓国の李国防相が今週後半に来日し、日韓防衛交流の促進を包括的な文章の形で確認することになりました。これ、小生にとって結構感慨深いんです。が、一般的な内容ではないので、ご関心の向きはご覧くださいと言う程度です。悪しからず。

さて、誤解を恐れずに言えば、小泉政権のときは日米関係は良好でしたが、日韓・日中は散々であったことは皆様もご存知の通りだと思います。実務にもかなり影響がでていた時代でした。例えば、首脳会談。何も無くても定期的にあっておくべきだと考えていますが、実現もままならなかった時代でした(トップ同士、お互いに顔が見えるかどうかだけでもかなり外交上違う。外交の失敗は疑心暗鬼からくるものも結構ある)。

当時政府間交流はどのレベルでも少し休憩時期でした。例えば、小さい話で言えば、中国の軍楽隊を招致して、国内の種々のイベントで演奏してもらうことを企画し、受け入れ準備も整備、後は来るだけとなっていても、小泉さんがちょっと発言しただけで、「止めた」となっていた時期です。

防衛庁での任期が終わったとき、一議員秘書だけれども、その立場で日中・日韓関係の改善に一役買いたいと思っておりました。なぜかというのを一言で言えば東アジア共同体の基礎工事ということになりますが、そんな中、仲の良い韓国大使館の方と話をしていて、ある構想がどちらからと言うことも無く持ち上がりました。元国防相会議を設置しようではないか、ということです。

爾来、半年越しで何度か打ち合わせを重ね、ついに2007年11月、日韓安保フォーラムとして実現できました。先方は、チョウ・ソンテ元国防相、チュン・ホヨン元国防相のほか、退役軍人や安保専門家で構成、日本側は我々とディフェンスリサーチセンターさんでした。

定期的に実現したいと思っているのですが、不況の折、資金面での都合がつかず、2回目の実現ができていませんが、さめないうちに是非継続したいと思っております。いずれにせよ、そういうことがあり、今回の防衛交流の文書調印の話は小生にとって感慨深いものがあるのです。

チョウ・ソンテ韓国元国防相(中)と。

ユウ前国防相と