再び最低賃金について

数年前から最低賃金の引上げを巡り党内で議論されてきましたが、引き上げに慎重な意見が太宗を占めるものでした。そしてそれは今でも変わっておらず、特にコロナ禍で疲弊する産業を抱える現状において、最低賃金の引き上げは極めて慎重であるべきです。

参考までに2年前に書き下ろした記事を引用します。

最低賃金について

先日、政府は早期に全国加重平均1000円とすることを目指す方針を表明しました。正直驚きでした。先の金融機関を使った感染拡大防止協力依頼と同じで、間違っていると言わざるを得ません。

党の中小企業小規模事業者政策調査会並びに雇用問題調査会は、政府に対して、事業者に寄り添った具体的かつ大胆な支援、国民への説明、を強く求めました。ただ、それはそれとしても、最低賃金で生産性を上げるという理屈が間違っている以上、素直に消化できるものではありません。少なくともコロナ禍においてやるべき政策に今は専念すべきなのだと思います。

月面産業ビジョン Planet6.0

直接宇宙とは関係ない民間企業も含め30社以上が結集し、近い将来に月面活動が盛んになることを見越して月面での産業を創出するため、日本全体でビジョンを共有しようと立ち上がったのが、月面産業ビジョン協議会です。Bloombergの報道のタイトルが面白く、「Sonyからカップヌードルまで」というもの。それだけ多様な会社が参画しています。産学政の団体ということで私も脇役で参画しておりました(メンバーは下記資料)。

爾来、数か月に亘り、大勢の参加者のもと(リモート)議論を重ね、過日、月面産業ビジョンとして発表させていただきました。併せて、井上担当大臣に提言書を申し入れました。ビジョン策定の主体は、あくまで参画されている企業群です。そこに最大のかつ過去に類を見ない画期的な価値があるのだと思います。

月面産業ビジョン

目指すビジョンは題してPlanet6.0。Society5.0の次のビジョンを意識したもので、Society5.0とは、私も党調査会PT事務局長として策定に参画した第5期科学技術基本計画で示された目指すべき社会のビジョン。すなわちサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)と定義されていますが、Planet6.0は地球を超えて他天体も包含する次世代のビジョンという非常に意欲的な名前としています。

ガガーリンが有人宇宙飛行を達成し、アポロ計画が発表されてから丁度60年が経ちました。そしてスペースシャトルが初めて打ち上げられて40年、国際宇宙ステーションから約20年が経ちました。

一方で、日本が、宇宙を科学探査のみならず産業や安全保障として捉えて宇宙基本法を制定してから13年が経ちます。この13年は宇宙空間にとって劇的な変化でした。

最近ではSpaceXのクルードラゴンが有名ですが、国際的に見て、宇宙開発利用が政府主導から民間主導に移った時代です。実際に、宇宙ベンチャーは世界で1000社以上に上り、リスクマネーは1兆円以上と言われ、市場規模は40兆円に達しており、明らかに100兆円市場が見えています。

日本でも、iSpace,Ale,AstroScaleなど、一昔前では考えられないくらいの資金調達を市場から実施している企業も多数あり、未確認ながら日本の宇宙ベンチャーは40社を超えると言われています。

政府や議会も民間の活動を後押しするルール作りを進めてきました。宇宙基本法以降、宇宙活動法や、最近では先に報告いたしました小林鷹之代議士と努力して成立させた宇宙資源法などです。

今こそ、もう一度、なぜ宇宙なのか、なぜ月面なのかを再確認し共有したいと思っています。それは、単に夢とか希望という、それはそれで絶対に必要な価値を超えて、ビジネスの可能性です。アルテミス計画は、その一つの官民結節点でしかなく、それを超えた将来ビジョンです。その一つが今回の月面産業ビジョンだと思います。

このビジョンを政府側にも共有頂き、本格的な宇宙利活用時代になることを目指していきたいと思います。

関連記事

https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2107/14/news060.html

https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-07-13/japan-lunar-council-urges-action-to-secure-lead-in-space-economy

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC08DVT0Y1A700C2000000/?unlock=1

https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00605214

コロナ水際対策

水際対策のオペレーションがかなり複雑で、分からない、とのご指摘を賜ります。確かに、変異株が出現するたびに、また各国の感染状況が変わるたびに、強化したり対象を変えたりしているので分かり難い。その上、政府のWEBの分かり難さは天下一品で、改善要望すれども虚しい。入国当事者であれば国別検索をすることで調べることは可能なのですが、全体像を把握することはまず不可能な構成になっています。

そこで、過去の政府の資料を参考に、現時点で最新の水際対策の全体像を掲載することにしました。いずれにせよ、引き続き、政府には厳格な運用を求めていきたいと思います。

(1)入国は、原則止めており、日本人と在留資格をもつ外国人だけに限定しています。
(2)変異株拡大などで懸念される特定国からの入国については、状況に応じて検査を強化するなど厳格な運用を行っています。
(3)全ての入国者は、出国72時間以内の検査と入国時の検査が求められ、さらに14日間の待機を求められます。
(4)このうち、懸念される特定国からの入国者については、自宅等ではなく検疫所が用意する宿泊施設で待機することが求められ、その国の感染拡大状況に応じて、入国後も検査を複数回求められます。

なお、外国の水際対策の資料を入手できましたので、参考までに以下に添付します。恐らくこれらの国のオペレーションも頻繁に変わることが予想されますので、あくまで参考程度にお考え下さい。



これを見ると、比較対象としている国だけで言えば、入国時も検査を求めているのは日本のほか、カナダとオーストラリア、中国だけで、それほど一般的ではないようです。また、指定施設での停留を求めるのも多くはありません。ただし、資料には載っていませんが、総じていえば、欧米は比較的甘く、アジア圏は比較的厳格な運用を行っているようです。

水際対策の強化に係る措置について(外務省)
水際対策に係る新たな措置について(厚生労働省)
水際対策強化措置に係る国・地域の指定について(要旨)(6月28日)(厚生労働省)

公正さとデジタル化

立憲民主党の枝野幸男代表による内閣不信任決議案の趣旨説明の内容が結構話題になっています。政策としての方向性の問題。立憲は旧民主から一貫して自民党の経済政策をトリクルダウン(会社が豊かになれば人が豊かになり社会が豊かになる)だと断罪し、人が豊かになれば社会が豊かになる、つまり、政府が個人に給付すれば、国民所得が増えるので消費が増え、会社も元気になるから社会も元気になると。

耳障りは良いのですが、森の中で一本の木を見るだけで政治が務まるなら、枝野代表は社会主義だ、と断罪すれば事足ります。しかし、我々はトリクルダウンを採用したこともないですし、社会保障をないがしろにしたこともない。現実の政策構成をご覧いただければ分かるのですが、両方の要素のバランスをとろうと努めています(このバランスが適正かどうかは別問題)。同期で経済政策に最も明るい(性格も)ナイスガイの小倉まさのぶ代議士も、自らのSNS記事の後半で、枝野代表の演説内容は、昔コンクリートから人へが間違いだと気づきコンクリートも人もになったことを想起させるとしています。

http://www.facebook.com/masanobu.ogura.9

そもそも既に30年前にこの手の論争に結論は出されていますし、国民はそうした無益な言い争いを見たいわけではないはずです。

そしてこの問題は、究極的に言えばどうやって再配分するのか、に行きつきます。財政をかけて中間層を厚くする方向はアメリカでも同じですし(というかもっと極端)、実は中国もそのことを意識しています(4億人の中間層)。もはや世界的潮流とも言えます。国力とは中間層の厚さであるとも言えます。そして中間層が厚くないと国力は豊かになりません。問題は、どうやって、というところです。

小倉代議士のページに、小黒一正法政大教授の論説が紹介されていますが、小黒教授は、再配分構造の日豪比較を通じて、日本の社会保障給付の非効率さを指摘しています。つまり、必要とする人に必要なだけ適切に効率よく給付できていない。

http://www.kazumasaoguro.com/20210528Nikkei.pdf

教授曰く、政府による家計への給付のうち低所得者層向けの割合は豪州41.5%、日本15.9%。家計の負担(税+保険)のうち低所得者層の割合は豪州0.8%、日本6%だそうです。単純に鵜呑みにすべきではありませんが、この推計が正しければ、財源が仮に1兆円あったら、豪州の場合は4150億円が低所得者層に向かうが、日本の場合は1590億円しか行かず、また、家計が払う税金や保険は、豪州の場合は低所得者層から80億円徴収しているのに対して、日本は600億円も徴収していることになります。日豪比較でみると、公平さが歪んでいるように見えます。

では、なぜこうなるのかというと、ちゃんと所得を補足できていないから。では、なぜ補足できていないかというと、反対が多いからということになります。英国や豪州では、公正な社会の実現のため、リアルタイムで所得の補足ができるシステムを運用しているのだとか。日本では国民の意識的な抵抗感も相まってデジタル化が進んでおらず、補足もできないから、公正な再配分に至らない。

もちろんこれだけではありませんが、大きな要素であることは間違いないと思っています。

因みに、枝野代表の演説が話題になっている理由は他にもあったりします。例えば、「税率5%への時限的な消費税減税を目指す」としながら「公約ではない」と明言したとか、その減税対象は影響を強く受けるところだとしているので対象範囲の限定は困難ではないか、とか、5%の支援であれば直接給付の方が政策効果は高いのではないか、などです。全否定はしませんが、アジ演説にしか見えないので、そもそも真面目に議論する必要もないかもしれません。、

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/755716/

宇宙資源法成立!

本日6月15日、宇宙資源法(宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案)が参議院本会議にて可決、成立しました。米国、ルクセンブルク、UAEに次いで世界で4番目となる宇宙資源に関する法律となります。この法律は、昨年2月初旬から同僚小林鷹之代議士と一から構想を練り、法案を起草し、多くの審議プロセスを経て、同僚議員(特に党国会対策委員会や衆議院内閣委員会関係者)や国会関係者(職員スタッフ)のご厚情を賜り、成立に漕ぎ着けたものです。我々に真剣に向き合って頂いた先輩議員の心意気に人間として熱いものを感じました。

この間は、本当に紆余曲折と苦労の連続でした。過密な国会スケジュールの中でどのように審議時間を確保できるのかが最大の問題なのですが、何度も無理だと宣告を受け、何度も心が折れそうになりました。それでも前に進もう!と小林代議士と互いに励ましあい、我がまま承知で先輩諸氏に掛け合い、辛うじて閉会ぎりぎりに間に合ったものです。内容への想いが強いだけに、先輩諸氏への感謝と成立の達成感は一入です。もちろん法律といえども法律で価値が格段に向上するわけではありません。これからが本番だという思いを新たにしております。

内容は、既にご紹介しておりますが、簡単に言えば、宇宙資源を開発し採掘採取した民間事業者に所有権を与える法律です。内容上の困難は、国際法上のルールが定まっていないことにあります。従って、同法では国際法や国際約束との整合性に最大の重きを置いています。

国際法では天体の領有は禁じられていますが、資源についての規定はありません。2015年前後に米国が宇宙資源の所有権を規定する国内法を制定した当時は、直接的な批判が一部の国から出されました。しかし、例えば国際宇宙法学会は、2015年に明確に宇宙資源の所有権は認めうるとの立場を鮮明にしているほか宇宙資源に関する国際検討会議(ハーグ宇宙資源ガバナンスワーキンググループ)でも、現行国際法と整合的な形であれば各国の法整備により所有権は認めうるとの立場で議論が進んでおり、現在では直接的に批判的な意見は国連でも出されていません。そして今月、まさに国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)法律小委員会で宇宙資源に関する国際ルール制定に向けた議論が始まっています。

こうした国際場裏での議論の動向を注視しつつ、民間による宇宙開発利用が更に発展することを願い、そのために更なる努力を傾注したいと思います。また、本日成立した宇宙資源法を土台に宇宙資源に関する国際ルール作りを日本が主導的に担えるようになると考えています。

法律案作成に当たっては、有識者である青木節子先生、小塚荘一郎先生、水島淳先生をはじめ、多くの関係者から貴重な意見を頂きました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

国産ワクチン遅れとインテリジェンス

コロナでなぜ国産開発に遅れたのか、もそうなのですが、結局、自省も込めて言えば、ワクチン開発は早くて2~3年かかる、というのが常識とされていて、他国の状況を把握することなく、開発着手も極めてのんびりとした雰囲気のなかで進んでいったのが本当のところだと思います。もちろん、ワクチンや治療薬の開発は政治の議題に上るのですが、国際社会にどれだけお金を拠出している、という話が政府の回答の中心的なものでしたし(例えば国際的官民連携パートナーシップCEPI)、国内開発支援についても、その額から見ても気合の入ったものではなかったのだと思います。すべて自省を込めた話です。

そしてその後のファイザーによるワクチン開発成功は大きな喜びであると同時に衝撃でした。1年経っていないのですから。ふたを開けてみれば、mRNAという日本では全く主流ではない最先端の開発方法。私も専門家ではないので正確ではないかもしれませんが、コロナウイルスを遺伝子解析してデータ化し、悪影響を及ぼす部分を改変して伝送、データから試験製造する。本当のウイルスを加工するわけではなく、データ上で加工するため、開発も早く、安全だといいます。政府も議会もそういうやり方があることが話題になることはありませんでした。

ワクチン敗戦と言いますが、恐らく情報収集能力の欠如によるところがかなり大きいのだと思います。創薬力世界最先端のアメリカの動向を収集できなかったのか、mRNAとは言いませんが、不活化ワクチンなど日本がやってきたやり方以外の方法に目を向ける情報は取れなかったのか。悔やまれて仕方ありません。そしてこの反省を骨の髄まで自らに沁み込ませなければならないのだと思います。つまり、ワクチンに限らず、全ての危機管理は、情報収集能力の強さで勝負が決まっていくことが多いはずです。すなわち、見える化への努力です。

戦時中、日本は情報を軽視したことが敗戦の原因の一つだと言われます。戦後生まれの私らは、ミッドウェー海戦敗北は南雲中将の判断ミスであったと思わされていますが、戦後の米軍資料からは戦力で言えば米側が勝ったのは奇跡に近いことが分かります。すなわち、情報戦で負けたことはほぼ間違いない事実です(解読されていた)。結局、過信か諦めがあると情報は軽視される、ということにつきます。ワクチンで言えば、日本は研究開発力を過信していたのではないとすると、2~3年という諦めであったのではないか。

もちろん経験済の事がらに対する備えは日本は強い。災害であれば、日本は幾多の困難を乗り越え、その情報収集能力と対処能力は、恐らく世界一になっているのだと思います。事実、政府内で働いていた際に、緊急参集として発災後1時間で会議をやると、既にきれいに整理されたアリトアラユル情報が提示されていることに驚かされました。電力や水道や地方自治体機能に始まり、コンビニや携帯サービスの状況などです。問題は、経験してないことに日本は滅法弱いことです。東日本大震災の際の原発事故もしかりです。議会に身を置いて痛感するのは、起きていない事柄に対して全力を傾注して備えを図っているのは、安全保障分野のみであることです。

いずれにせよ、国家の情報収集機能の強化は、今後の多難な時代を乗り切るためには、避けて通れません。インテリジェンス機能の強化を叫ぶと、少し前の時代ならば、旧軍時代の復活だとイデオロギーを振りかざす方々が出てきますが、これは大きな間違いです。戦前、と言っても2つの時代に分けなければなりませんが、特にその後半の戦争に突入していく雰囲気を作った時代では、国家のための国民という発想であった。当然ですが、今は国民のための国家です。そして国民と国家はそもそも不可分の存在ですから、必要な機関は同じになります。ただ、根底に流れる哲学は真反対であって決定的に異なる。従って、意識も運用も制度も異なってきます。結果的に、情報機関は戦前とは全く異なるものになります。

現在、日本政府は、外務・防衛や警察・公安のほか、経産・金融・財務・海保など、様々な情報を内閣官房内閣情報調査室(通称内調)に集約し、総合分析を行った上で、内閣情報会議や合同情報会議などの会議体に集約し、官邸首脳に伝達する仕組みになっています。しかし十分とは言い難い。常に危機に直面している国家は情報収集に一番力を注ぐのは世界共通ですが、日本は戦後日米同盟に胡坐をかいてきたため危機意識が欠如しているのだとも言えます。こうした事情で、これまで何度かインテリジェンス機能の議論が与野党を超えて議論される機会が何度かありましたが、結局実現には至っていません。令和の時代は尚更です。米国とタメを張るくらいの力をもった国が国際秩序の挑戦者として実在することを我々人類は経験したことがない。少なくとも、現状の機能強化は図るべきなのです。

そして情報収集は情報保全にも必要な機能です。例えば、多額の国民の血税を投入して大学等で最先端の研究が行われていますが、簡単に他国に情報が渡されていると疑われても仕方がないケースが多い。情報保全とはきわめて厄介なもので、情報コミュニティ―やサークルにいる人間か若しくはその存在意義を理解している人間は別として、それ以外の人間は保全すべき情報か否かを区別すること自体にも疎いのが普通です。

インスタントコーヒーで使われるフリーズドライ製法がバイオ兵器製造に使われるとか、カーボンシャフトのゴルフクラブの製法がロケット技術に使われるとか、はたまた潜水艦火災事故が最高度の機密であったりすることを、直観的に理解する人は多くはありません。一番厄介なのが、意図せず最高レベルの情報を意識せずに扱っている人たちであったりします。

こうしたことにまで目くばせしなければならない時代になったことを残念に思いつつ、しかしながらそれだからこそ、本格的にインテリジェンス機能強化の議論を進めていかねばならないのだと思っています。

国産ワクチンと日本の創薬力強化

凡そ4か月に亘り、医薬品産業の在り方議論を、党の創薬力PT(プロジェクトチーム)で行ってきたのですが、先日ようやく提言書を取りまとめてご了承を頂き、過日、大臣に申し入れに参りました。コロナによって昨夏あたりから厚生関係に関与する機会が増えておりましたが、創薬力に関しては改めてワクチン敗戦と言われる中で自身の関心も高く、事務局長として全力で取り組んで参りました。関与頂いた行政や業界や有識者の皆様には心から感謝申し上げます。

議論の入口の視点は2つ。1つは、創薬力が危機的な状況にあり、その国際競争力も含めて強化していかなければならないという認識のもと、政府の医薬品産業ビジョンの改訂を含め、党の考えを示す運びとなったこと。もう1つが、先に触れたワクチン敗戦。この2つを軸に、議論を始めたものです。そして提言の出口の視点も2つ。すなわち、1つは医薬品産業エコシステム(資金等の好循環)を確立することと、もう1つは医薬安全保障(いつ何時どんな感染症や災害がやってきても必要な医薬品を供給できる体制の構築)です。

入口の第1の視点について。国内市場規模凡そ10兆円と言われる医薬品産業ですが、創薬力が失われつつあり危機的な状況にあるということが関係者の間で共有されつつあります。もちろん、殊更危機感をあおるつもりはなく、現在でも世界有数の創薬可能国の一角を占めていますが、ここ最近の社会保障費抑制政策により、製薬業界にとって死活問題となる研究開発に充当する資金が国際比較すると相対的に低下、それに伴って創薬力と国際競争力も低下傾向が鮮明になってきています。

当然、国がとってきた方針が問題になります。薬は言うまでもなく、国民にとっては安価で良質なものが安定供給され、必要な時に手に入る状況にあることが望ましい。しかしそれは産業がなりたってこその話であって、産業は適正な利益があってこそ初めて新しい良質な薬を研究開発できる。なければ医療機関も良質な医療を提供できないはずです。しかし、こうした産業の本質を軽視した政策運用が行われており、創薬力が低下していることになります。従って、産業政策を主要政策として位置付ける運用する必要が本質的課題の一つです。

一方で業界側も覚悟が求められることになるのだと思います。コロナ後に海外の製薬メーカー幹部が、私に語った言葉が忘れられません。趣旨は、コロナという社会課題に対峙するために無条件で全力を尽くす、我々がやらなければ誰がやる、支援があるかないかは関係ないというもの。もちろん、資本力も市場も技術力も巨大で実際に国家支援体制もあるため言えることだと思いますが、相当な気迫を感じました。これが言える産業と市場と国家体制を構築しなければなりません。産業界も一つになって、目指すべき方向を示していくべきです。

もちろん、産業界だけが良くなっても、国や医療機関、そして当然国民も十分なメリットを享受できなければうまくいきません。そうしたステークホルダー間の好循環、いわばエコシステムとも言うべき構図が確立してなければうまくいきません。解決には、横たわる多岐にわたる課題を見える化し共有し、相互理解と譲歩により改善していかなければなりません。医薬品産業エコシステムの構築は最大の課題となります。

入口の第2の視点について。危機においては国は主導的な役割を担わなければならないはずです。が、コロナ対処においては残念ながら、平時と変わらぬ待ち姿勢であった。申請主義と言いますが、平時においては企業が申請をしてきてから国は動き始めるのが普通です。コロナという緊急時でも同じであったことは何よりも悔やまれます。そもそも、ワクチンを含む医薬品に関して、医薬安全保障とも言うべき危機管理政策が整備されていなかったことが最大の問題です。

そういう状況下で、提言では、何よりも、上に述べた医薬品産業エコシステム構築と、医薬安全保障の確立と、その実効性担保のため、政府に司令塔設置を求めています。健康医療戦略推進本部の主任務である研究開発を拡張し、産業政策や危機管理政策も主任務とするような組織をイメージしています。当然、危機管理上の対処のための司令塔も求めています。これは具体的に現在ワクチンTFとして機能しはじめました。また、AMEDも産業政策や危機管理政策に立脚した形で機能強化を図るべきだとしています。

国民の皆様になるほどと思っていただけるような環境にしていくべく、今後さらにフォローアップを実施していきたいと思います。参考まで、以下に政府に申し入れた提言書を添付いたします。

社会保障制度調査会「創薬力の強化育成に関するPT」提言「医薬品産業エコシステムと医薬安全保障の確立」令和3年5月13日

イスラエルとハマス

中東でのイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの武力衝突が激化、近年で最も深刻な武力衝突にいたっており、大きな懸念をもっています。即時の武力の停止を求めたいと思います。

直接の端緒は、東エルサレムでのパレスチナ人とイスラエル警察の衝突。4月中旬から始まったラマダンの集会を治安維持の理由で阻止するためにイスラエル警察がバリケードを設置して封鎖。緊張が高まっていた中で、東エルサレムで暮らすパレスチナ人の立ち退きを求めるユダヤ人の民事訴訟の勝訴判決で、旧市街各地で散発的に衝突が拡大。この状況に、イスラム武装組織ハマスが、ロケット弾による攻撃を示唆して警告しはじめ、実際に実行。それに対する自衛措置として、イスラエル側がハマスの拠点をピンポイント攻撃を開始し、範囲を拡大。この事態によって、イスラエル国内でも住民同士の衝突が激化しています。

東エルサレムはご存じの通り宗教上の困難を内包するイスラエルが実効支配する地域で、国際法上はイスラエルによって違法に占拠された地とされています。パレスチナから見れば、名目上首都と位置付けているものの不法に奪取され、民事訴訟を起こされ、退去を命じられたことになります。日本で言えば浅野内匠頭だったのかもしれません。極めて複雑な地域で、軽々に断罪することは困難ですが、しかしそうだとしても、少なくとも平和裏に解決することが望まれますし、対抗措置としての民衆に向けたロケット弾攻撃というのは、事前警告の有無にかかわらず、日本人には全く理解できない事です。即時停止を求めたいと思います。

ロイター通信社は、ハマスのロケット弾攻撃は、イスラエル国内政局の混乱に乗じ、アッバス議長を窮地に追いやるためであった可能性を指摘しています。パレスチナ自治政府は、ファタハ(政党)のアッバスを大統領としておりますが、議会はガザ地区を実効支配する勢力であるハマスが過半を占めており、連立しつつも緊張関係にあります。こうした背景から、民事訴訟をきっかけにロケット弾攻撃という過激な行動に至ったという可能性は否定できないのだと思います。しかし一方で、そうだとしても均衡性を大きく逸脱する反撃には同意できるものではありません。イスラエルにも攻撃の停止を求めたいと思います。

周辺地区に暮らす日本人から状況を知らせるメッセージが届いています。住民目線でみた目の前で起きていることと報道がかなり異なると。いちいちはここでは挙げませんが、遠い国で起きている関係ないこととして見過ごすべきではなく、少なくともちまたに拡散される情報をうのみにすることなく、歴史的背景や政治関係を十分に把握し理解することが重要なのだと思います。一刻も早い事態収束を願いつつ、邦人の安全確保を最優先事項とし、秩序の安定に向けてもできることを模索していきたいと思います。

土地の利用制限

安全保障上重要な施設や国境離島など、その機能を阻害するような土地利用を制限するための法律、重要土地等調査法案の法案審議に入りました。思えば5~6年前に党に設置されていた「安全保障と土地法制に関する特命委員会」で立法化を目指して議論していた時代とは隔世の感があります。当時は政府に賛同者が殆どなく、行政からはできない理由が並べられ、その後に辛うじて重要施設周辺の調査は行われるようになったものの、規制に至ることはありませんでした。今回の法案は、思った以上の内容で大きな前進であると認識しています。

ただもちろん、この法案が成立したからといって直ちにバラ色になるということはありません。投資促進とのバランスや抜け穴突破抑止もこれから運用で注視していかなければなりません。少しでも正しい方向に進むことが大切だと思っています。

(背景)
私が議員になる前、日本はスパイ天国だ、と言っていた知人がいました。曰く、通常他国には安全保障条項という例外規定が様々な法律にあって、安全保障上の理由によって権利が制限されることがあるのが普通なのに日本には殆どないのだと。土地もそうで、基地の真横であっても堂々と状況観察ができる。一時はこの問題が大きく報道された時期もありました。これも性善説をとっている憲法の平和主義の産物で、私権制限を極めて嫌う日本独特のものです。しかし悪意にはしかるべき手立てを講じておくのが国家というものです。(土地だけではなく考え得る必要な措置は講じておくべきだとも思います)。

(立法議論の歴史)
もともと2010年、自民党が下野していた時代、高市早苗代議士や新藤義孝代議士など複数の閣僚経験代議士をコアメンバーとする有志の先輩方が発起したもので(そう考えると私が参加したのはごく一部)、当初から10年以上に及ぶ長期にわたって主張を続けてこられた佐藤正久先生や山下貴司代議士など関係幹部の先生方には心から感謝とご慰労を申し上げたく思います。

当初の困難は、専らと言っていいほど立法事実がない、ということでした。つまり、なぜその法律が必要なのか、に答えられる客観的な社会的・経済的・科学的事実が必要だということであって、単に○○の恐れがある、というだけでは法律は作れないとされています。

(立法事実との闘い)
しかしですよ。一般論はそれでいいのですが、全ての事柄が事後対処的でいいのか、というのは甚だ疑問なのです。大きな事故や災害などが起きて初めて法律が強化されたりします。皆さんもそうした報道に接したことがあると思います。起きてしまってから行動するという政治には耐えられない。何も災害や事故などのリスクだけではありません。イノベーションなども、新しいテクノロジーが生まれて事業化しようとしても扱う法律がない場合、会社がないから困ってる人もいない、だから立法事実がないとされてしまいます。まさに鶏と卵の話です。今回、本法律案が議題に上ったのは国際環境の変化と共に経済安全保障の必要性の高まりがあるのだと思います。しかし、立法事実という考え方をこの際、整理しておくべきなのだと思います。

(基本的な考え方)
念のためですが、法案審議はこれからですので、以下の記載内容は審議過程で変わることもあります。また審議に影響が出ない範囲での記述ということもご理解賜ればと思います。その上で、この法案の基本的考え方ですが、重要なことは、いたずらに規制することが正しいわけではなく、健全な投資を呼び込むことはむしろ歓迎すべきであって、邪な考えの土地取得こそが厳しく規制されるべきだということです。今回の法案も、根柢の流れる哲学がそこにあります。

(対象区域など)
その上で、安全保障上の観点から、日本人だろうが外国人だろうが、重要施設や国境離島などの機能を阻害するような土地などの利用を制限しようとするものです。ただ、具体的にどの土地が対象になるのか予見性をある程度確保しておかなければ民間活動に影響がでますので、対象区域を事前に2種類指定しておきます。注視区域と特別注視区域です。

前者は例えば自衛隊の施設や海上保安庁施設または重要インフラ、後者はそのうち司令部機能など特に重要性の高いものです。重要インフラというのは例えば発電や鉄道や放送や空港など国民保護法で想定されるような生活関連施設が考え得るのだと思います。今後政令で具体化されることになるのだと思います。そして区域とは具体的にはそうした重要施設から概ね1km以内というのが目安になります。もちろん、これは十羽一絡げに決まるものではなく経済活動とのバランスに配慮して適切に決められるべきところです。

また以前メディアでも話題になった水源地や領事館などはそれ自体が対象施設とはされていませんので対象区域になっている場合に対象となる可能性があるということです。それらは別の法律で担保されることになります。

(調査)
対象地区の土地の所有状況や利用状況の把握をしてないと何も始まりませんので、まずは国による調査です。どんな人がどこにどういう目的でどのくらいの期間所有していて普段何をやっているのかなどです。ここもどこまで調査するのかなど様々な論点があるので今後注視していきたいと思います。少なくとも土地だけに限らず調査能力の向上は必須なのだと思います。

その上で、今、実は国は個人個人を管理把握することはまったくしていませんので、不動産登記簿や住民基本台帳など、それぞれの省庁が所管しそれぞれ別々の目的で存在している公簿も使いながら状況調査を行います。場合によっては報告徴収を罰則付きで求めます。罰則は例えば国土調査法並びのものになろうかと思います。一方で国に立ち入り調査権限は付与されていません。この部分は要件を厳格化しつつ一部権限を付与することを今後検討していくべきだと思います。なお、調査は当然ですが必要に応じて複数回でも行われることが予定されています。

(利用制限)
調査も重要ですが利用制限をどのようにするのかがミソになります。調査に基づいて機能阻害になると判断されたもの、若しくは明らかにその恐れがあると判断されたものについては、まずは他の関連法に基づいて制限できないか検討します。例えば低潮線保全法違反や農地法違反などです。関連法規制がなければ、利用中止の勧告を出し、応諾がない場合は罰則付きの命令となります。罰則は消防法の構造違反並びになろうかと思います。例えば電波妨害とかライフライン供給の阻害、あるいはそもそも施設機能に支障をきたす構造物が設置されていることも要因になるのだと思います。

ただ、利用制限というと私権制限ですから、国への買い入れ請求ができるなど、補償的措置も講じられています。なお、国の介入について、本来事柄の重要性に鑑みて応諾義務も検討すべきとは思いますが、現在は盛り込まれていません。応諾義務を課すと強制収用という極めて強い規制になりますが、現在の日本の強制収用は公共工事の例で明らかなように途轍もない時間を要することになります。従ってまずは根本的に収用の考え方を整理しておく必要があるのだと思います。

(事前届出)
重要注視区域の場合、特に重要なので、一定の面積以上の土地の売買については、売買双方に事前届け出の義務を罰則付きで求めることになります。罰則は国土利用計画法並びになろうかと思います。一定の面積は後日決まりますが概ね200㎡が想定されています。届け出内容は、氏名住所土地所在や面積と利用の目的などになると思います。その届け出に基づき必要であれば国は追加調査を行って、更に必要であれば売買契約の間に割って入ることもあります。その際、国が直接買い取ることも想定されます。なお、事前届け出ということですので、土地取引の事業者にとって事務手続きが煩雑にならないよう配慮すべきところです。

(その他取得制限は?)
安全保障上重要ならば取得制限をかけるべきではないのかとも思いますが、要件明記が困難であることから運用で注視し必要ならば今後措置を講じることになります。重要なことは、何が起きているかをまずは炙り出すことです。

(その他機能阻害とは?)
機能阻害という行為の中身ですが、ここは特に今後注視していくべきところです。現在の法案条文上は下記のとおりですが、具体的行為のあてはめをどのようにするのか、運用の問題を注視していきたいと思います。特に国境離島の機能とは何かなども含め具体的にしていくべきなのだと思います。

8条1「内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用者が当該土地等を重要施設の施設機能又は国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供し、又は供する明らかなおそれがあると認めるときは、土地等利用状況審議会の意見を聴いて、当該土地等の利用者に対し、当該土地等の当該行為の用に供しないことその他必要な措置をとるべき旨を勧告することができる」

8条2「内閣総理大臣は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該者に対して、当該措置をとるべきことを命ずることができる」。

(おわりに)
長い議論の歴史の結果に生み出された法案です。以前はWTO内外無差別原則に反するなどの反論も聞かれたのですが(この法案は日本人だろうが外国人だろうが行為を対象としているので無差別原則準拠)、今思えば何だったのかと忸怩たる思いはあります。経済行為を阻害するようなことでは全くないので、早期に成立することを祈ります。一方で、上で述べた通り運用面で今後明らかにしていくべきことが多々ありますので、注視していきたいと思います。

フリードマンとサステナブルファイナンス

■はじめにーミルトン・フリードマンとROE経営

今では本当だったのかどうかも確かめようもないのですが、2001年ごろ米カリフォルニア大学バークレー校の研究機関に在籍していた折、たまたま通りがかったキャンパス内の建物の入り口に「ミルトン・フリードマン講演」の看板があり、入り口に立っていたオジサンに「フリードマンってあの有名なフリードマンか」と尋ねたら、なんと「彼がそうだ」と隣の老人を指さし、大興奮したことを未だによく覚えています。

今考えると、2001年頃だと90歳近くであったはずで、果たして大学なんかで講演などしてたのか甚だ疑問に思うのですが、マクロ経済に興味を持ち始めた工学系研究者であった当時の私にとって、フリードマンというのは偉大な名前であり、ケイジアンから経済学パラダイムを変えた男として記憶していました。今思えば単に「ジョージワシントン記念講座」的な看板だったのでしょう。単なる笑い話にしてますが(否、未だに半分くらいは信じている)、おかげでIS-LM分析などを懸命に勉強しました。

さてこのフリードマン。ご存じの通りマネタリズムの巨匠で、それまで支配的であったケイジアンによる有効需要の原理を徹底的に批判し、経済政策は通貨供給量だけ管理すればよいとしました。つまり新自由主義で、20世紀終盤に一世を風靡します。私が門外漢のマクロ経済学に興味を持ったのもこうしたダイナミックな歴史事情があったからに他なりません。もちろん世界的構造不況を経験した現代の我々としては、両方、つまり有効需要の原理とフリードマン的な要素の一部を引き継いでいるのだと思います。

■ROE経営からSDGs経営へ

ただ、そうした従来の経済学の流れとは異なる変化が社会にもたらされています。いわゆるサステナビリティ経営、社会の持続可能性を中心的に考える経営のことです。SDGsやESG投資がもてはやされていますが、日本では近江商人の三方良しの精神に通じるものがあります。このサステナビリティの考えは、コロナ禍によって爆発的に加速しています。

私としてはこの流れは隔世の感があります。というのも5年ほど前から、地方創生の一環として、ソーシャルベンチャーなどの民間による社会課題解決の取り組みこそが地方を救うとの思いで政策立案に励んできたからです。すなわち、地方創生という看板政策はあるものの、財政制約のなかで山積する社会課題を行政のみが解決に乗り出しても土台限界はあるわけで、むしろ民間が社会課題解決を事業として率先して目指していける社会を作るべきだと思い始めていました。そしてそのためには、ソーシャルベンチャーが資金を獲得して運営できなければならず、そのためにこそ行政は理解されうる環境を作るべきですし、そうしたソーシャルベンチャーは他の企業よりもガバナンスやビジネスモデルの透明性をより明確に示すべきだと考え始めていました。まさに、今の言葉で言えばサステナブルファイナンスによるSDGs経営です。

つまり、コロナ禍が炙り出したのは、行き過ぎた新自由主義やROE経営の修正であって、歴史的転換時期なのだと思います。例えば前出フリードマンは、企業にとっての公益とは利潤を最大化することだと喝破していますが、現在世界最大の資産運用会社であるブロックロックのCEOは、会社の目的は利益より社会貢献だと喝破しています。ROE経営からSDGs経営への転換であって、いわば資本主義の変容です。特にコロナ禍にあって人類の前に立ちふさがる巨大な社会課題を前に、もはや税のみに頼るよりも社会全体として立ち向かうべきときが来ているのだと実感します。

■サステナブル経営の基本軸-情報開示

20世紀後半と異なり現代の投資は、企業にとっての価値創造のための資金調達ではなく、株主にとっての企業利益を回収する手段だ、との趣旨の話を聞いたことがあります。成熟社会における企業の在り方を問う話で、イノベーションを信望している私としては簡単に許容できる考えではありませんが、少なくとも行き過ぎた株主還元を修正していくには、サステナビリティ経営は好循環を生む可能性のある手段だと思います。株主と労働組合から挟み撃ちにされるような経営から脱却すべきです。

ではどうするのか。例えば危機管理会社法制という考え方があるのだそうです。コロナなどあらゆる危機に対処し従業員などステークホルダーを守るために企業は内部留保を一定程度持つべきだとの考え方の下、法的義務化も含めて検討した時代があったのだとか。金融セクターの自己資本比率規制のようなものでしょうか。確かにコロナ禍以前は、大企業に積みあがった内部留保が特に共産党から大批判に晒されましたが、結果的には積みあがっていたために耐性が高かったと言われています。しかし、さすがに内部留保の法的義務化はやりすぎなのだと思います。

むしろ情報開示による投資家インセンティブの醸成が正しい方向なのだと思います。行政がムーブメントを起こすという意味で言えば、企業がとるべき行動指針、あるべき情報開示の方向性だけを示す、という方向です。先の例で言えば、内部留保が不透明で無目的に積みあがっていることも健全ではありませんが、積みあがっていることだけをもって不健全だと見做すのはもっと不健全です。であれば何をしようとしているのか社会や株主が理解できるように開示が進められるべきなのだと思います。投資の流れを直接規制する方向は、資本主義のもつエネルギーを削ぐ議論になってしまいます。

重要なことは、利潤を最大化し超過利益を全てを株主に還元するという流れを、社会の持続可能性に徐々に転換していくことです。そのサステナビリティのために、企業がどのような体制で、何を目的に、どのようなやり方で、どういう時間軸の戦略で行動しているのかを透明化し、投資が健全な形で集まることです。開示分類は、ソーシャルベンチャーの議論の経験から言えば、間違いなくガバナンス、ビジネスモデル、リスク、経営戦略の4点の開示です(GBRS)。

■何をもってサステナブルなのか-非財務情報

ただ問題は開示内容で、何がサステナブルなのか、何が持続可能性なのか、何が社会課題解決型なのか、の定義付けであって投資判断にあたって最も困難な非財務情報です。同じことを地方創生の社会的事業・ソーシャルベンチャー支援策でも議論をしていました。持続可能性を高める活動は千差万別で統一基準を作りにくい。しかし諸外国は先行しています。EUでは、EUタクソノミーというサステナブル活動の分類基準をまとめましたし、G20も金融安定理事会(FSB)に同趣旨の企業向け情報開示ルールの策定を要請し、TCFDというタクソノミーが公表されています。いずれも当初のターゲットは脱炭素です。中身は、基本的には前出のとおりガバナンス、ビジネスモデル、リスク、経営戦略などについて、短期から中長期までの評価指標や進捗の開示を企業に求めています。

■開示ルールの絶対評価と相対評価

タクソノミーは企業にとっても投資家にとっても大変大きなインパクトになります。日本でも早晩導入すべきものです。ただ、これらは一部の関係者が集まって決めたものであって、こうした絶対評価基準というのは、不断の努力による修正作業が必要になってくるはずです。なぜならば社会課題は複雑多様であって、絶対評価基準が未来永劫不変なはずはありません。

であれば絶対評価基準とともに市場で決まる相対評価基準も併せて必要になってくるはずです。また、現在様々な団体が様々なタクソノミーを公表しており、人によっては統一を求めています。統一するのは一見合理的に見えますが、硬直化の恐れもあるのだと思います。私自身は、様々なタクソノミーや企業独自の情報開示があって、それらを含めてマーケットが判断し、その結果を様々なタクソノミーが吸収し、全体評価も市場で決まっていくような、ある種有機的で動的な柔軟な、絶対評価と相対評価のコンビネーションの仕組みが望ましいのだと思います。

■今後やるべきこと

いずれにせよ、まずは整えるべきは、カーボンプライシングを始めとしたサステナブル規制、サステナブル企業や金融機関の行動指針やタクソノミー、そしてサステナブルファイナンスの環境整備であることは間違いありません。特に非財務情報の開示をどのように行うのか、絶対基準であるタクソノミーを制定すべきなのか、金融政策ツールとしての可能性はどのようなものか、またサステナブルファイナンスのリスク把握やモニタリングや規制はどのように行うべきか、検討すべき課題は盛沢山です。少なくとも今までのように環境問題は大切だと声高に叫ぶだけでは、世の中は1mmも動きません。

現在、党内の財務金融部会でサステナブルファイナンスの議論が始まり、本日3回目の会議に出席しました。第一回は、1月28日「サステナブルファイナンスに関する国際的動向」として日本総合研究所理事の足立英一郎様から、第二回は2月5日「サステナブルファイナンスの諸課題」として国際金融情報センター理事長の玉木林太郎様より(約20年ぶりにお目にかかりました)、第三回目は、2月15日「サステナビリティ課題に関する投資家の期待、企業の非財務情報開示について」としてニッセイアセットマネジメントの井口譲二様とブロックロックの江良明嗣様よりご講和を頂きました。

私自身、特にこのファイナンス部門で議論に参加して参りたいと思っております。