我が国造船業再生のための緊急提言

トランプ政権との間で関税交渉が進む中、急浮上した話題が造船でした。ただ、アメリカのために何かするという方向には違和感を禁じえませんでした。そもそもチャンスにしなければならないと。そうした中で、党経済安保推進本部の事務局長を務める中曽根康隆代議士が党で本格的に議論をするべきだと主張。小林鷹之本部長の決断で海運造船対策特別委員会(石田真敏会長)と合同で緊急提言を出すこととなり、提言をまとめ(私は経済安保本部の幹事長を務めています)、本日総理に手交しました。

かつて日本は造船大国でしたが、景気変動の影響を受けやすい業種であるため、不景気になるたびにアセットを手放してきた結果、中韓勢に押されています。ではアメリカは何で困っているのか。日本と同様ですが日本より深刻なのが建造能力の衰退です。ご存じの通り、世界の船舶建造シェアは圧倒的に中国が握っており、韓国と日本がそれに続いています。中国の建造能力は、アメリカの400倍と指摘する意見もあります。

確かに先月訪米した際にも、何名かの政府やシンクタンク幹部から同様の指摘がありました。有事を見据えると、船舶建造の中国依存度を低下させなければならないと。ならばアメリカの調達先多様化は日本の需要増につながります。であれば、我が国の建造能力を、この機に抜本的に強化することは、まずは日本の安全保障を強化することになりますし、戦略的不可欠性にも繋がりえますから経済安全保障の強化にもつながり、加えて日本経済の根源的問題である供給力強化という経済対策にもなりますので、誠に理にかなったことです。結果的に造船クラスターを有する地方活力の創造にもつながる。

従って目的は、安全保障・経済安全保障・経済政策。ただ、それほど簡単ではありません。それは、あらゆる産業にも言えることですが、投資不足とヒト不足。今回の提言では、官民で1兆円規模の投資となるよう基金の創設を謳ったうえで、設備投資支援、金融支援のほか、人材育成ハブの創設を提言しています。設備は必ずしも国内のみを対象としているわけではなく、アセアンを中心に人材協力が可能なところに拠点を作り、同志国の修繕ドッグとしていくことも重要です。また軍民共用もポイントの一つとなります。

今秋までにロードマップを示すように政府に求めていますので、そのころまでには具体的措置も含めて戦略全体を皆様に共有できるよう努めてまいります。

我が国造船業再生のための緊急提言

日本経済新聞:「国立造船所」建設を検討 政府・自民、造船業復活へテコ入れ

メディアマッチポンプ

新幹線でお馴染みの雑誌Wedgeに興味深い論稿が掲載されていました。詳しくは下記をご覧頂ければと思いますが、震撼させられると同時に大いに賛同できる論旨です。大まかに言えば、東京新聞が、葛飾区発行広報誌に使われたイラストに対して市民から戦争を想起させるとの抗議が複数届いている、と報じたことを巡り、実際には大して話題にもなっていないことを、メディアがマッチポンプのように社会問題化させているのではないか、ということを問題視した論稿です。

「戦争を想起させる」と報じた東京新聞「こち亀」イラストの葛飾区広報紙への抗議は大多数の「民意」だったのか?メディアが作る社会問題というもう一つの脅威、察知し対応していくためには

「社会問題を取材したのではなく、自ら社会問題にしようとしたのではないかと思えてしまう」。政治に身を置いていると、毎日とは言いませんが、確かにそうした事例だと思わざるを得ないことに接する機会が多いのは事実です。

論稿の著者のことは私は存じ上げませんが、過去の記事を見ると、メディアの在り方に注目していることが分かります。曰く、例えば原発処理水も、汚染を印象付ける報道を各社が繰り返し、その結果、巨大な社会問題と化して、外交課題に発展し、莫大な社会コストを払ったことは、ご存じの通りです。加えてこのケースは、論点が「汚染」「危険性」から徐々に「人々の不安」「合意形成の不備」などにシフトしていったと指摘していて、見方によれば、注目が集まりさえすれば徹底的に吸い尽くす、社会問題化によるマネタイズ、若しくは政治的煽動と思えなくもありません。

考えてみればSNSも、コンテンツの質よりも注目度が収益化されるアテンションエコノミーですが、そのルーツは既に既存メディアでも見られるということであって、違いは収益化しているのが既存メディアか一般ユーザかの違いであることが分かります。だからこそ、既存メディアは収益構造をSNSに奪われないために、SNS政策に注目しているということなのだと理解しています。

既存メディアは「質」を追求すべきなはずです。そもそもメディアは、政府との関係では、政府を監視すべきは当然で、そのため記者が政府に対して常に疑問を持つのは重要なのですが、疑問のまま事実確認をせず、その事実確認の代わりに「声が上がっている」「不安が殺到している」「署名が集まっている」と他者の声を代表せんと言わんばかりに「疑問」だけを提起するのは簡単で、こういう結果を生みやすい。

例えば「〇政策には〇万筆の反対署名が集まっている」というような記事を見かけることがあります。政策に対する「疑問」だけが印象に残るはずです。しかし〇万筆というのはエビデンスですが、〇政策の反対すべき事実確認ではありません。一方でこれに反論を試みますと、そもそも主要紙が引用する署名サイトのアカウントは中国やロシアなどの外国人アカウントが多いと言われています。どうでしょうか。反論の骨子が目立つはずです。これは私が事実耳にすることですが、事実確認はしていません。「言われる」だけです。簡単に空中戦になり、壮大な社会コストが発生します。

他者引用するなということではありませんし、社会問題化するなということでもありません。問題の核心は、他者引用が極めて簡単であるがゆえに、社会問題化することが簡単にできてしまい、その動機がマネタイズや政治的煽動なら全くもって忌避すべきことではないでしょうか。社会問題化をするなら事実確認が必ず必要だということです。さらに問題は、こうした事実確認なき社会問題化の結果として生じる回復のための社会コストは、結果的に国民が負担することになることです。そして、この国民が払った社会コストはメディアに回収されているというメカニズムになります。

そもそもSNSの時代、偽情報(偽と分からない流言飛語の類)がネット空間に飛び交い、ネット依存が高い人にとっては特に、フィルターバブルやエコーチェンバー現象によって、何が真実なのか見えにくくなっています。偽情報は民主主義の根幹さえ揺るがしかねない問題です。であれば既存メディアは、国民が参照して情報健康度を維持できるようコンテンツの「質」を徹底追求すべきですし、そうした社会的要請を十分に認識した上でコンテンツ提供には大いなる自覚と責任が求められるのだと思います。

憲法に自衛隊を明記せよ

憲法審査会に属しています。審査会としては既に議論を尽くしているはずなのですが、遅々として進展が見られないことに苛立ちを感じながらも、本日は「憲法と現実の乖離」というテーマに沿って、憲法9条と自衛隊の関係を取り上げました。発言内容は以下の通りです。

1 はじめに
  本日のテーマである「憲法と現実の乖離」に関しては、私も、憲法9条と自衛隊の関係を取り上げたいと思います。
  現行憲法9条2項では、「戦力の不保持」「交戦権の否認」が明確に規定されていますが、現実には、我が国は、世界でも有数の規模・能力を誇る自衛隊を保有しています。これが「憲法と現実の乖離」の最たるものであることは、私たち自民党だけではなく、多くの政党、そして国民の共通認識ではないでしょうか。
  私は、かつて防衛大臣政務官を務め、我が国を取り巻く安全保障環境が急激に悪化する中で、国民の生命・財産を守るために、24時間、365日、一時の空白を作ることもなく激務に従事している自衛隊の皆さんの姿を、実地に見聞きしました。このような経験を踏まえても、何としても、憲法9条と自衛隊の存在との乖離を解消しなければならないと考えます。
  そこで、2つの観点から意見を申し上げます。

2 「国民を守る」という発想の欠如
  一つ目は、日本国憲法は、占領下という独立と主権を失い、武装解除がなされて国防を担う実力組織を持たない状態で制定されたため、主権国家の最も根幹的な役割である、いかなるときにも「国民を守り抜く」という「国防規定」を欠いているということです。その意味で、現行憲法には最も根幹に当たる規定が欠落していると言わざるを得ません。
  本来であれば、GHQが引き揚げ、主権を回復した1952年に、憲法を改正し、「誰が、どのような手段で国を守るのか」を明確にしておくべきでしたが、現在に至るまで、放置されたままです。

3 シビリアンコントロールの明記
  二つ目は、国防を担う実力組織である自衛隊に対する政治家による統制、すなわちシビリアンコントロールが肝要であるということです。この点、私たち自民党が提案している条文イメージでは「内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする」という政府内の統制と、「自衛隊の行動は、国会の承認その他の統制に服する」という国会による民主的統制の両面から規定することとしています。
  諸外国の憲法においても、国防のための実力組織に対するシビリアンコントロールの規定は標準装備されていることから、「国防規定」と同様に、憲法に規定を設けるべき事項であることを申し上げて、私の発言といたします。

安心安全のための外国人政策を総理に手交

国外から多くの方々が入国されるようになりました。魅力ある国であるということは誇らしいものですが、ルールは守っていただかなければなりません。ところが日本の制度を悪用・誤用し、日本人の間で不公平感どころか不安が広がっています。

遅きに失した感はあるものの、そもそも日本の法制度は、社会のグローバル化を必ずしも前提としていないため、入国外国人の取扱いが制度面でも運用面で適切でない場合が散見され、国民の不公平感や不安に繋がっています。

これまで自民党の中で複数の関連調査会や作業部会で議論が重ねられ、制度や運用の改善を実現していますが、今般、外国人政策について、個別政策の枠組みを超えて、総合的・施策横断的に取り組み、政策の一体性・整合性を確保するために、小野寺五典政調会長を長とする特命委員会が設置され、その事務局として政策を取りまとめ、過日、第一次提言として総理に手交しました。

顕在化している諸問題への対処が提言の具体的な中身ですが、より重要なのは、外国人との共生という方向性を根本的に変える提言となっています。当たり前の話ですが、ルールを守らない外国人とは共生できないわけで、提言では前提となる秩序維持強化をすべての政策の基本的方針にするため、司令塔設置とともに取り組み方針策定を求めています。これにより数多ある関連政策はすべからくこの方針に従うことになります。

国民の安心と安全のための外国人政策 第一次提言―違法外国人ゼロを目指して―

(画像出典:ANN)

にわかに注目を集めるCDS

先に資金決済法案の衆院通過をご報告致しましたが、審議を行った財務金融委員会では、野党側からCDSと呼ばれる金融派生商品の言及が繰り返しあり、俄かに話題になりました。そこで今回はこのCDSについて触れておきたいと思います。端的に言えば、我が国は莫大な国債発行残高を抱えているわりにはCDSで見ると信用力はまだありそうだが、本当なのかという論点です。

というのも、選挙が近くなると各党から金出せ槍出せ目玉出せ的に財政出動を求める声が高くなりますが、CDSはそうした議論の過程ででてくるものです。すなわち国債の信用力はまだあるのだから、国債発行で財政を賄うべきとの論です。

まずCDSの本題に入る前に、私の違和感を共有しておきたいと思います。それは国会で声高に財政出動を求める声は、ほとんどが選挙対策だからなのか需要サイドへの手当です。もちろん家計部門に直接効果のある物価高対応は必要で、マクロで見た時も需要面の手当は一定妥当なので、全面否定つもりは毛頭ありませんが、日本は本質的には人不足や投資不足で生産力や供給力が絶対的に低下している中ですので、そうした供給制約下にある場合、財政の需要サイドへの手当は、消費が拡大し景気浮揚効果はあるとしても、インフレが加速すること、加えて消費されるべき消費財は供給制約下では国内で供給できないため、輸入が増加し富が海外に流出すること、となり、日本は今後ますます価値を生まない国になってしまわないか、すなわち未来永劫稼げない日本になりはしないか、ということです。

気合を入れて取り組むべきは、そうした供給力や生産力を財政を積極的に投じて民間投資も促すことで強化することだと思います。つまり、国債発行するか否かの前に、財政を正しい方向に投じる議論が決定的に欠けているように思います。短期的な人気取り政策は厳に慎むべきだと感じます。

■CDS「で」見るべきは当然だが正しくはCDS「も」見るべき

では本題です。CDSは政策判断の指標となりうるのか、と言う問いについては、なりえます、というのが答えです。ただ、「CDSで」と「CDSも」は決定的に異なり、CDSだけで政策判断は決してできないように思います。

CDSは30年ほど前にロンドンで開発された債務不履行リスクヘッジのための金融派生商品で、平たく言えば倒産リスク保険です。リーマンショックや欧州危機など金融リスクが高まるとにわかに注目される市場ですが、衆議院の財務金融委員会で俄かに話題になったのは、リスクが高まったからではなく、リスクが小さいのではないかと注目されました。

当然、各国の国債にもCDSが取引されています。ネットでググると以下のようなページがありました。これを見ると、日本のCDSは極めて低く、世界でもドイツに次ぐ2番目。確かに日本国債の信用度は抜群に高い。

https://jp.investing.com/rates-bonds/world-cds

いずれにせよCDSは市場が国債をどのように見ているかを測れる重要な指標であることは間違いありません。しかしあくまでリスクヘッジ市場であって1指標にすぎません。そもそもCDSは、元金不払い、返済条件の変更といった、狭義の債務不履行が起きるリスクを評価する指標です。財政状況が悪いかどうか、今後金利が上昇するかどうか、という広義の財政リスクを判断する指標ではありません。CDSが低くても、市場の信任が失われたら金利が急上昇したり、円安が進行したりするのは十分にありうる話です。加えて、そもそも当該市場の取引の薄さが問題です。取引額は指標の安定性と信頼性に繋がりますから重要ですが、1日平均1~2件の取引しかなく、総額も5千万ドル程度です。決定的に少ない。

考えてみれば日本国債はこれまでほとんどが日本人自身によって引き受けられていましたので、日本国債CDS市場にそれだけの需要と魅力がなかったということなのだと思います。リスクが本当に高まった時に相当の取引量がでてくれば信頼性の高い指標になるはずです。

例えばここ最近は急激に市場が動き出し、CDSだけを見るとリスクが高まったように見えます(以下の日経の解説が分かりやすいと思います)。しかし本当に信用リスクがどの程度なのかは、現時点ではこうした取引額の薄い指標だけで判断するよりも、総合的に判断するべきものなはずです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB095560Z00C25A4000000/

■日銀のテーパリング

現時点で私が注目しているのが日銀のテーパリング。少し遅くするべきではないかと思っています。というのも、日銀は保有する500兆円を超える国債を、今後毎年徐々に、例えば数兆円から何十兆円の規模で、市場に出していくと予想されていますが、引き受け手がどれほどいるのか。先日NHKで、投資家を一軒一軒訪れて国債を営業する財務省職員の涙ぐましい姿がドキュメンタリーで放送されていましたが、これまで国債が日本人によって引き受けられていたものが、仮に国内引き受け手の不足で、外国人投資家の引き受けが多くならざるを得ないのだとすると、これまでの国債リスクの質は大きく変わります。そうしたときにこそCDSは本格的に動くはずです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-21/SWKDY6T0G1KW00

■財政は大丈夫とか大丈夫じゃないとかではない

一方でドーマー条件という理屈も当該委員会で話題になりました。これは私も基本軸としている考え方ですが、前提条件を正確にとらえておく必要があり、絶対視は慎むべきではないかと思います。ドーマー条件とは、プライマリーバランスが均衡している下で、名目金利より名目成長率が上回れば債務残高対GDP比の発散は回避できるというものですが、そもそもプライマリーバランスが赤字です。さらに、交易条件の変化に伴うコストプッシュインフレ要因が強ければ、名目GDPは伸びるけれども、金利上昇は随分と遅れるはずなので、財政はコストプッシュインフレが続く限り安定傾向にあるという妙なことになってしまいます。また、そもそもドーマー条件は、国債発行の参考にするならばその引き受け手が無尽蔵にいることが前提となりますが、先ほども少し触れたように現時点では引き受け手の問題がありますから、これも総合的に考えるべきではないかと考えます。

財務金融委員会での質疑

本日、衆議院財務金融委員会において、資金決済法改正案に関する質疑を行い、可決されました。

この法改正は、昨今急増しているオンラインカジノの違法利用や、巧妙化する投資詐欺など、利用者の財産を脅かす深刻な社会問題に対処するための重要な一歩です。

近年、SNSやインターネットを通じて違法な送金手段や金融サービスが拡大し、法の目が届きにくい新たなリスクが浮き彫りになっています。こうした状況の中で、利用者を守り、健全な金融インフラを整備していくためには、時代に即した法整備が不可欠です。

今後も、実効性のある制度設計を進め、国民の皆さまが安心して金融サービスを利用できる環境づくりに努めてまいります。

科学技術イノベーション政策提言

(首相官邸での記者取材受け)

来年から始まる第7期科学技術イノベーション基本計画に向けた議論を重ねていますが、これに先立って直ちに実行すべき課題について提言を取りまとめ、過日総理に手交しました。

中小企業政策とともに日本の経済にとって極めて重要と思い、長らく取り組んでいるのが科学技術イノベーション政策です。10年前あたりから日本の科学技術力は国際比較で顕著に低下しており、渡海紀三郎先生から会長職を預かったからには、次期基本計画の実行期間中に確実に回復の道筋を示したいと思っています。

というのも、経済成長には、労働力と資本力と生産性が柱となりますが、労働力については、人口減少下でどの企業も人不足にあえいでいること、資本力については、資本力があっても投資は海外に向かっており国内投資が低調であることから、日本の成長は科学技術イノベーションにかかっていると考えるからです。

基礎研究力もさることながら、戦略領域への投資も必要です。そのためには戦略領域の設定とそのためのインテリジェンス能力の確立、そして意思決定ガバナンスの強化は避けて通れません。加えて戦略領域の設定には国際政治の動向も明確に認識にすべきであって、安全保障への対応は必須です。

自民党:令和8年度科学技術・イノベーション政策に関する決議および量子PT提言・フュージョンPT提言

宇宙・海洋開発特別委員会・宇宙総合戦略小委員会が提言を申し入れ

■小野寺五典政調会長に提言の事前説明

下請法改正・中小企業政策提言

私が小委員長を務めている中小企業金融小委員会の親会である中小企業政策調査会(伊藤達也会長)で、長らく議論してきた「下請法の改正案」が、去る5月16日に成立しました。施行は来年からです。現下の経済情勢の中で最も重要な要素は、構造的な価格転嫁の実現であり、地元では長らくその重要性を訴えて参りましたが、この下請法は価格転嫁を司る基本的な法律で、約20年ぶりの大改正となります。

今回の改正では、受託業者(いわゆる下請け)が委託業者(発注者)に対して、正々堂々と価格転嫁の要求・交渉ができるよう、交渉や説明ない価格設定を新たに禁止します。また、資金繰りの負担を受託業者に押し付ける「手形による代金支払」も禁止します。「でんさい」も期日支払日には全額を現金で払うようにします。対象も従業員300人超の企業も規制対象になります。一方で、「下請振興法」も改正されました。

一方で、同調査会で改めて中小企業政策の提言をとりまとめ(※1)総理に手交しました。私は中小企業金融のパートを担当。これに先立ち、今年3月に中小金融小委員会で中小企業向けの金融支援のパッケージを提案しま(※2)、実際に政府から政策パッケージを公表(※3)してもらったところでした。今回の提言はそれを踏まえての提言です。

※1)自民党:地域経済の好循環実現を 「働きたい人が働ける社会」へ「働き方改革」の再検討も提起ー中小企業・小規模事業者政策調査会が提言
(参考:自民党「経営者の社会保険料負担軽減を」 中小支援策を首相に提言 – 日本経済新聞

※2)自民党:再生・再チャレンジ支援の円滑化に向けた提言(中間整理)

※3)経済産業省:再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ

令和の米騒動

米価の爆上がりを何とかしてほしい、という声に対して、政府が出した答えが、備蓄米の放出でした。効果は今のところ見えていません。高騰が続く米価。今日はその米価について、見聞きしたことをお伝えしたいと思います。

■米価高騰

店頭で品薄になっている主食のコメ。値段は5kgで約4千円。少し前なら2千円強なので2倍です。家計には大打撃。この高騰は、直近の物価上昇とは全くことなるメカニズムで生じています。

報道もされていますので深入りはしませんが、まさに米騒動です。当初は一部の流通経路に支障が生じて一部の地域で店頭から消えたため、買い占めや買いだめが起きて市場が混乱し、全国的に品薄になって価格が高騰したものです。全国生産量は例年並み弱とのこと。生産量はほぼ同じなのに店頭にならばないから、「消えたコメ」と報道されることになりました。その量は約20万トン。全体の生産量が700万トン程度なので市場に影響を与える量です。

■本当に投機目的なのか

流通経路において、通常のルートではない卸業者が、農家から直接高い値段で買い付けて高値で売り抜ける手法がまかり通っているのではないか、と指摘されています。見たわけではないので不明ですが、少なくとも地元の農協には全く集荷されていませんでした。地元の農家さんにも聞いても、業者が買い付けに来たとの話が後を絶ちません。

ただ、全てが投機目的とは思えません。現在、農協の集荷シェアは5割程度と言われていますが、農協というある程度統計が取れる組織とは異なる卸ルートに新規参入が増えたため、流通経路が見えなくなっているように見えます。こうした新規参入を含む卸ルートは効率が悪く、目詰まりを起こしやすいはずです。

すなわち多様な流通ルートが自然とできあがり、複雑なルートになるので流通コストが上昇している、ということなのだと理解しています。投機というと誰かが貯めこんでいるように聞こえますが、サプライチェーンが無駄に長くなっている、という状況に見えます。

■コメの生産コスト

ほとんどの消費者は、農家がどの程度の労働力でどの程度の収益を得ているのか把握していません。大体において、「1反あたりどのくらいの量のコメがとれて」「どの程度の収入になっているのか」を全く気にすることもないでしょう。マスコミ報道でも、コメが高いことしか報道しませんから、国民が農家の現状を把握できるはずがありません。

農家は1反あたり7~8俵生産します。

店頭価格が5kg4千円と書きましたが、農家売り上げ(相対取引価格)は2千円程度です。1俵(60kg)に換算しますと、店頭価格は4万8千円、相対取引価格が2万4千円です。(なお、実勢価格はさらに上昇中です。また玄米を精米すると9割程度になります。)

すなわち農家さんは1反300坪でようやく20万円弱。2丁6千坪でようやく日本人平均年収に近くなります。それでも、生産コストとして「種苗、飼料、人件費、機械償却、乾燥等燃油」などが必要になります。米価が上がる前は1反10万円。1万2千坪つくってようやく平均年収です。これは資本家による大規模農地ならまだしも普通に考えたらとても過酷な労働です。

そもそも消費者が思うほど農家の現状は芳しくなく、コメが高いから安くせよ、というのは確かに消費者なら誰しもが思うことですが、例えば子育てしながら農業をしている方にしてみれば、とても残酷な言葉でもあるのです。

次に長期の推移を見てみたいと思います。
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/aitaikakaku.html

実は相対取引価格は倍になったとはいえ、その前の30年前に戻ったとも言えます。

■流通コストと流通見える化は必須

少なくとも不思議なのは、相対取引価格と店頭価格のギャップです。このギャップは流通コストですが、例えば少し前なら相対1万2千円→店頭2万4千円だったのが、現在は相対2万4千円→店頭4万8千円です。何かおかしいと思いませんか。流通コストも倍になっている。

そもそも米価上昇は、コメ市場の需給逼迫で発生しているものですが、なぜ流通コストが倍にならなければいけないのか。流通コストが商品と同額という商品は他の業界にはないと思います。アマゾンが聞いたらびっくりでしょう。物流コストや人件費コストの上昇も考えられますが、2倍は暴利と言えるでしょう。これでは農家は浮かばれません。ここに問題があるように思います。

私の勝手な想像ですが、先ほども触れましたように卸流通部門への新規参入も含めてサプライチェーンが長く広く薄く非効率になった結果とも言えます。少なくともこの流通を合理化した上で透明化しなければ、こうした問題はことあるごとに発生すると思います。

■コメの適正価格は

茶碗1杯6~70円と言われています。少し前は3~40円と言われました。消費者にとって適正価格ではなくなっているのだとしたら、もはや生産者は生産維持が困難となり、離農が続く結果、海外からコメを輸入せざるを得ないことになります。食糧安全保障とは全く正反対の方向となります。

昨年から農林省は、「合理的費用を考慮した価格形成について」と題して調査を開始しました。根拠法は「食料農業農村基本法」で、そこには「食料の合理的な価格の形成については、需給事情及び品質評価が適切に反映されつつ、食料の持続的な供給が行われるよう、農業者、食品産業の事業者、消費者その他の食料システム(食料の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することにより、全体として機能を発揮する一連の活動の総体をいう。以下同じ。)の関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない。」とあります。

適正な価格形成や合理的産業サプライチェーンになっているかどうかしっかりと評価していきたいと思います。

経済財政の基本的考え方

折に触れて経済財政の基本的な考え方を聞かれることがあり、今一度この場で触れておきたいと思います。主題は、物価高騰への対応と経済対策のアプローチです。

まず大原則としては経済成長を最優先するということです。当然ですが財政規律が政治目標になることはありえません。その上であるべき経済政策の方向としては、内需拡大と供給力や生産力の強化、それを通じた賃金上昇が急務という認識に立っています。

すなわち成長が財政を上回ることを目標とすべしです。まず必要なのは、成長への大胆投資です。経済成長は3要素、つまり労働・資本・全要素生産性で構成されますが、我が国は、人口減少で労働は減少、海外投資拡大で国内投資は減少、の傾向にあるので、必要なのは、全要素生産性、すなわち科学技術イノベーションに注力した上で、国内投資を拡大する必要があります。労働力減少と金利上昇(加えて言えば交易条件の悪化)が加わった困難を乗り越えての成長を目指さなければなりません。

加えて為替や供給網脆弱化によるここ数年の物価高騰に対しては、何よりも最大の武器となるのは、賃上げを伴う価格転嫁構造の実現です。まずは甲斐より始めよ。政府は公的事業者の元請けとして価格転嫁に応じるべきで、公定価格や政府関係事業等の政府調達は全て物価スライド(※)を導入すべきとの立場です。その上で特に中小企業の価格転嫁が実現できていない現状に対して下請法の改正を実現すべきとの認識です。

更に加えてトランプ政策の影響対策です。トランプ政策は、関税交渉・国内経済対策・国際秩序の3点を考える必要がありますが、国内経済対策に限って言えば、関税交渉の行方にもよりますが、自動車を筆頭に北米市場の需要減少の影響を受ける可能性のある業種があり、それによる雇用や賃金の下方圧力が加わります。従って、生産力強化と共に、内需拡大を目的とした時限的な減税も視野に入ります。経済対策の規模(※)は相当額用意すべきです。

もちろん今後は金利がある世界に入っていくことに加え、日銀がその保有する500兆円の国債を年間数十兆円づつ放出する予定であること、その国内民間引き受けキャパが100%ではないこと、従って海外引き受け量が徐々に拡大してしまうことを十分に念頭に置いた運営は必要なのだと思います。

※物価スライド)当然ですが物価上昇過程で増加する政府歳入増(税収増)に見合った歳出増を行わなければ、物価上昇で政府が民間から富を吸収する形となります。実際は他の政策経費として歳出を増やしていますから、必ずしも吸い上げているとは言い切れませんが、本来のあるべき姿ではなく、直接影響を受ける事業者にとっては全く予見性のない予算措置となっています。出すべきところにまずは出し、その上で政策的に必要な領域に投じるのが筋です。この点、今の政府の歳出ポリシーは結果が同じになったとしてもアプローチが基本的に間違っていると感じます。

※経済対策の規模)現下の物価上昇はコストプッシュ要因の比率が未だに高いと認識しています。従って、まずは交易条件の改善の努力(例えばデジタルサービス赤字の改善など)は当然として、経済対策の規模は基本的には交易条件の悪化分を財政投入すべきと考えています(10兆円程度か)。