白洲次郎と解散権

 
もうこれで5度目くらいかもしれないが、白洲次郎の「プリンシプルのない日本」を再度読み返し、改めて憂鬱になる。憂鬱になったついでに、文体は白洲ばりにして気を紛らわすことにした。不快に思われる御仁もいらっしゃると思う。その向きは今日は付き合わぬこと。と思いましたが、書きにくいのでいつもの文体に戻します。

で、なぜ憂鬱になるのかですが、白洲の時代は戦後直後の1950年前後。そのころから政治や政党といったものがほとんど変わっていないのではないか、選挙制度はずいぶん変わってきたけれども、なんだかこの60年間、なんの進歩もしていないのではないかと感じたりします。否、今の政治が60年前と一致するというだけで、途中は違ったのかもしれません。いずれにせよ、改めて読み直すたびに、とても60年前に書かれたエッセーだとは思えない内容になっています。

政治の浄化、というか、政治の信頼を取り戻すためには、立候補しようと思う人自身の気概と志、などの素質の問題になってくるのは当然として、やはり政体やら政党システムなどといったものも、今一度根源に立ち返って見直す必要があるのだと思います。その意味では憲法も真剣に見つめなおさなければなりません。

というかすでに国会では、改憲のための憲法調査を熱心にやっています。国民世論も議論に参加しているように見えます(改憲支持率が徐々に高くなっています)。10年前と比べると、国民世論調査結果は隔世の感があります。

私は改憲論者です。改憲をしてふつうの国にしなければならないと思っています。理系的に言えば、現状は局所最適です。少しずれたところは今よりも悪い。でも、大所最適はどこかにある。それを改憲して見つけなければならないし、それを恐れてはいけないと思っています(わかり難い例えですいません)。ですから、憲法については、9条をはじめいろいろと申し上げたいことはたくさんありますが、今日は白洲の憲法のプリンシプルについて書いてみたいと思っています。

白洲の憲法に対する考えは、「押し付け翻訳憲法」と指摘している一文字でわかります。「まさかと思う人は米文の憲法原案の前文を見て御覧なさい。日本人が日本の憲法で「我々日本人は云々」とやり始めるでしょうか。」と言っています。そして、白洲の憲法に関する指摘はもっぱら政体のありかたです。その内容は政治嫌いの白洲らしい発想ですなのですが、それはさておき、一番勉強になるのが、解散権についてです。

もともと解散権は、内閣不信任が可決されたときか信任案が否決されたときのみを想定して憲法は作られています(いわゆる69条解散)。つまり、いわゆる天皇の国事行為としての解散(今は乱発されている、いわゆる7条解散)は当時は無かった。吉田茂首相がGHQに確認したところ、7条解散はできないと伝えられた。さもありなんです。

現在は、いわゆる7条解散がほとんどで、解散のときは議長が「7条により解散する」と明言するにいたっていますが、当時、白洲は(吉田も)、内閣が解散権を持たないのはおかしいではないか、7条解散はあるべきだ、と指摘しています。後に、主権回復後の昭和27年に同じく吉田首相によりはじめて7条解散が実施されています。

もともとの憲法精神は、69条だけのはず。69条を実施するにあたって行為を天皇が行うことを担保したのが7条だということだと思います。それが27年から解釈が変った。

内閣が持つ解散権は、それこそ強大な権力であって、議会対策の最大の武器ではありますが、実は私は小泉解散のあたりから、当初の精神に戻したほうがいいのではないかと思っていました。余りに解散を乱発すると議会は選挙ばかりに目が行き、正常な政策論争などしなくなる、というのが趣旨でした。白洲の考えは、ダメ議会は何度でも解散してやるという、というものだと思います。しかし、ダメ内閣だったらどうなのだろう?解散をちらつかせるだけで解散しないとなると、ずっと居座ってしまう。いろいろと考えさせられる問題です。
 

災害復興について〜やっぱりおかしい

 
Vini, Vidi, Vici(来た、見た、勝った)という言葉が残っています。タバコのフィリップモリスのパッケージをよく見るとその商標にも使われていることが分かります。古代ローマのカエサルがポントス軍相手に戦ったゼラの戦いで、元老院に行った報告の言葉です。俺がやったら簡単じゃないか、という嫌味たっぷりユーモアたっぷりの言葉ですが、今、日本の閣僚について、外国が、「失言、謝罪、辞任」(Gaffe,
Apology, Resignation)と言う言葉で世界に発信してくれています。考えればなんとこれが繰り返されて来たか。ただただ虚しくなるばかりです。

2次補正予算が閣議決定されました。既存政策の見直しで2兆円の財源を確保し、放射線被害の健康調査や被災地の債務者救済などに充当されるとのことで、半分近くは予備費として自由を確保しているとのことです。それはそれとして結構なことですが、1次補正の際に2次は確実に大規模の予算を組んで早急で確実な復興を目指すと明言されていたのに残念です。本来は、震災復旧復興財源は、バラマキ系見直しは当然だとして、他の政策とは完全に切り離して国債を正々堂々と発行し(できれっば無利子無税)、償還は次年度以降に景気と負担を考慮しながら増税で賄うのが筋。でないと、デフレ環境にある中、それこそおカネがますます回らなくなり、日本が溶けてなくなります。

被災地でせっかく仮設住宅を沢山たてたのに入居を拒否する方が大勢いらっしゃるようです。さもありなん、入ったら補償がなくなるとのこと。さらに、義援金給付が滞っているとのこと。住民台帳不備のもと二重払いなどが発生したら不公平だからということなのだと思いますが、これこそ、二重取りしたのが発覚したら後に10倍返してもらうことにして政治が責任を持つからばんと出そうという勢いでなければ話が進まない。そもそも財源を明確にしないから、けちけち路線を歩まなけれならなくなるわけで、だからこそ予算という枠制度を我々は持っているのにと思うとただただ残念です。

早急に大規模な3次補正を組むべきです。

ついでに申し上げれば組織論。本日の予算委員会で石破政調会長もおっしゃられていましたが、そもそも組織とは、リーダーが最終的に責任をとってくれるから組織は動ける。リーダーの役割は極限すれば責任をとるだけでもいい。華は現場にもたせる。例えば尖閣問題しかり浜岡原発しかり諫早湾問題しかり、よかれと思ってやっていらっしゃることだとは思いますが、俺がやったというリーダーシップを意識しすぎて現場や周囲と議論をせず、政治判断の結果が吉とでれば俺がやった、凶とでれば現場がやった、半々だとだんまりを決め込むでは、組織は絶対に動かないと思うのですが、皆様はどうお考えになりますか。

アジア・ASEAN・アメリカ・・・日本

最近のアジアを中心とした国際地政学的な動きは、周辺諸国のみならず主要国に緊張を生んでいます。

日本で言えば、皆様ご存知の通り東シナ海・尖閣・ガス田あるいは沖の鳥島で中国と、竹島で韓国と、そして北方領土でロシアと問題を抱えています。ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾、中国は、南シナ海、南沙諸島で領有権争いをしています。

国際地政学的に問題が複雑化しそうなのは、後者のASEAN諸国を中心とした南沙問題です。

以前もこの場で指摘したことがありますが、ASEAN諸国と中国は経済的にも政治的にも切っても切れない関係にあり、だからこそASEAN諸国としては中国との距離感を慎重にはかっている(下記参照)。もう少し単刀直入に言えば、中国は大切だけど、余りのさばらしたくない。そこで、先にも指摘したように、ASEAN諸国にとって日本は中国とのバランスをとる上で非常に重要な国となっていました。

アジア通貨基金とアジア外交

 

その背景には日米同盟がアジアの安全保障上最も重要なコネクションであることがありました。強いものを仲間にしたいのはどの世界も同じで、日本はアジアのなかで、米国との安保関係があるというだけで、安保分野でアジアのハブとして機能していました。

日本の政権交代は、実はアジアを取り巻く安保の分野では激震に等しかったといえるのかもしれません。アメリカは、あからさまに米韓関係を重視しはじめ、ついで中国との首脳クラス会談は月1ペースで計画しています。日本の外交防衛担当閣僚会議が2年ぶりに開かれたのとは断然の違いがあります。

そして・・・。今までASEAN諸国は、日本単独はもちろんのこと、ASEAN+3(日中韓)やASEAN+6(日中韓印豪ニュージーランド)、あるいはASEAN地域フォーラム(ARF)などといった日本やアメリカが関与したアジア圏の地域連携の枠組みで中国とのバランスをとろうとしていましたが、これも日米関係の冷却にともなって、変化してきています。

というのも、ここ最近、ASEAN諸国が米国との軍事協同訓練を活発に行うようになっています。フィリピンは、現在1200人規模で海軍合同軍事演習を実施中です。ベトナムも7月に交流の予定がある。報道ベースでは、シンガポールも今年中に合同演習を行うとのこと。これらは基本的に冒頭申し上げた、中国に対する牽制のための措置ですが、日本のアジア圏での安保ハブ機能は、明らかに消失したと考えてもいいのかもしれません(最初からなかったとも言えますが)。

もちろん、日米合同軍事訓練も行っています。昨年末の演習は、日中間の緊張もあり、米韓訓練の6倍の規模、非常に大規模のものでした。米国自身も単独の演習の日本海・黄海などで行っています(中国から大きな文句の声がでた)。それだけ、アメリカとしては、アジアをグリップしておきたいのと同時に、アジアで紛争を起こされたくない、ということだと思います。

日米安保体制を強化しなければなりません。

そして、ASEAN諸国、アジア全体を安定化していかなければなりません。日米安保とは、日本とアメリカ、あるいは日本の安全だけの話ではないということを理解しなければなりません。

その上で申し上げれば、対米追従批判を展開される向きがあります。なぜアメリカにNoと言えないのだ、ということなのですが、Noとは言ってよくても日米安保は強化しておくべきは、上に述べたとおりです。

ただ、未来永劫このままでいいということではない。

基本は自分の国は自分で守るという体制をつくる努力をしなければなりません。神は自らを救う者を救う、です。しかし、愚直にやろうとすると経費や政治的に膨大なコストがかかります。ただ、考えようによっては、日本としては、うまくやる方法がある。あまり長くなりすぎるので今回はこの辺でやめておきますが、このあたりのことは、いつか書こうと思っています。

いずれにせよ、日本は、取り巻く安保環境を、既存の国際枠組みをたくみに駆使して、大海原を悠々と生きていかねばなりません。

政治と行政と地域と企業による若者就職サポート

先月、雇用環境について、完全失業者の固定化とその対策、香川モデルの話をしたかと思います。

地域若者サポートステーション

一言で申し上げれば、政治や行政が、地域で活動するNPOとタイアップして、地元の企業の協力を経て、若者の失業固定化を防ぐ対策です。香川県では、さぬき若者サポーステーションが担っています。

来週月曜日(7月4日)9時から、名物かまど瀬戸大橋店洋菓子工場(坂出市西大浜北3−4−43)で、この制度初めてのジョブトレが始まります。

雇用環境の改善のためには、経済自体の活性化とともに、こうした活動を地域全体で盛り上げていかなければなりません。

世界の特許事情と科学技術政策

世界の特許事務を司るWIPOという組織があります。そこが毎年、特許出願件数を発表していますが、その発表を受けて、今年はいよいよ中国に抜かれる年だという報道が為されています。

http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2011/article_0004.html

え?中国?もともと研究職であった私も特許を何本か出願したことがありますが、そのたかだか6〜7年前においても、中国の特許などというのは無きに等しい、とるに足らない時代でした。当時日本や米国に較べると、中国の特許は1〜2桁少なかったのを記憶しています。

ただ、私がその時代によく申し上げていたのは、中国をなめてはいけない、ということでした。出願国別に見れば確かに少ないのですが、出願人国籍別で見れば、中国という顔が上位に現れる。

中国の優秀な人材は米国の一流大学に留学し、Ph.D(博士)をとった後、高給を約束されて一流企業に就職し、そこで研究活動を通じて特許を出す。中国人が特許を出してもアメリカの発明になりますから、あまり騒がれない。ただ、データをよくよく分析すると、アメリカの一流企業の特許のうち、中国人が出願しているケースが非常に多くありました。

さもありなん。私がアメリカのとある大学の研究所に在籍していたとき、韓国や中国からの留学生の大半は30歳前後で年棒10万ドルを約束されて一流企業に勤める。BMWを乗り回し、TシャツとGパンでカリフォルニアの青い空の下、好きな研究をやって給料を貰う。特許ノルマを課せられなくても、特許は出るなと思ったことがあります。そして、彼らにいつ国に帰るのかと質問すると、決まって現地の生活環境がよくなったら、と言っていたのを記憶しています。

つまり、中国による特許出願件数の向上はなるべくしてなった。欧米の技術を学び、欧米の企業でその企業のために働き、そして本国に帰って花を咲かせる。何も悪いことではない。日本だってしていることです。

ここで問題にしたいのは、中国脅威を批判するのではなく、それを糧に日本はがんばらなければならない、ということです。

最近、中国の高速鉄道用車両に関する多数の特許について、日本の川重が技術供与したのにひどいじゃないか、という報道が多くあります。私は非常に違和感があります。技術の世界はそれほど単純なものではありません。ジタバタするな、とマスコミさんに言いたい。おそらく川崎重工さんも同じ意見だと思います。

1.近年の中国や韓国の技術力は5年前とは全く異なる。日本や欧米の真似だと馬鹿には全くできない状況になりつつある。

2.アッセンブル製品では韓国中国に押されているが、未だ基礎技術では日米欧が抑えているので、中国韓国はまだまだと言っていたら、5年後には日本はない。

3.ルックコリア、ルックチャイナなどと言われる時代が日本に到来することになるのかもしれない。そのくらいの覚悟で科学技術政策を強力に推し進めなければならない。

とうことで科学技術政策ここから本題。

民主・自民の話じゃなくて、国の科学技術政策の問題は以下にあると思っています。

1.科学技術予算の使われ方。

科学技術予算に極度の損益評価を求めてはいけません。そもそも設けられるほどに直ぐに結果がでるならば、民間企業が開発を進めています。

そして、そのほとんどは、技術というよりは、人材発掘と人材育成に充当されるということを認識すべきです。カネをつっこんだからといって、鉄腕アトムがポッとできる、というわけではなく、御茶ノ水博士がたくさん育つ、と考えるべきです。ですから、評価は、そういう優秀な人間が何人育つかを評価対象に入れるべきであると考えます。

2.科学技術政策の指揮命令系統の確立

表面的には、首相が議長を務める、総合科学技術会議が、日本の科学技術政策の方向を決める組織です。ところがこれがイマイチ機能しない。

この会議の構成員は、学識経験者や産業界から募っています。法律的には、小泉政権のときに有名になった、経済財政諮問会議と同じで、内閣府設置法を根拠としています。内容のよしあしは別として、これらの組織は、法律上、小泉・竹中時代のような強い権能を発揮することが可能な組織です。鳩山政権発足で、経済財政諮問会議はその機能を停止させられましたが、いずれにせよ、総合科学技術会議はそうした強力なリーダシップを、省庁横断で実行できる組織です。

つまり、現行法制を変更せずとも政治がリーダシップを簡単に発揮できる体系がすでにあるわけで、それを有効に活用しなければなりません。

以上、長々と書きましたが、福島の原発問題で、日本のエネルギ政策は、否が応でも変更を余儀なくされるのは間違いありません。政治的に(選挙的に)ふらふらとするのではなく、現時点で現実的な方向を示していくことが必要です。まさに、政治は、情熱と理性と愛情です。

農産品の輸出目標先送り?

農産物の輸出目標が先送りされるとの報道がありました(読売27日)。

農業の将来は輸出にあり、と基本的には思っています。品目にもよりますが、例えばコメ。

基本的に1合食べる人が突然2合食べるようにはなりません。むしろ減っています(私はコメ派)。しかも生産能力で言えば自給率100%。それどころか農家保護のため価格調整のために減反を行ってきました。やろうと思えば150%くらい行くのかもしれません。

通常の産業であれば、生産能力があれば海外展開を検討しますが、売れるわけがないと考えたのでしょう、過去の輸出額を見る限り、日本は海外展開を検討した形跡もありません。もちろん、過去には具体的な対象先がなかった。ですが、今は中国がある。中国には、日本の平均所得以上の人口が1割。つまり1億人。日本と同じ市場があるとも言える。ということで、最近盛り上がっているのが農産品の輸出です。

現在農産品の輸出額は、最近少し頑張って0.5兆円。5年以内に2倍の1兆円にしようというのが政府の方向性でした(閣議決定)。この部分は大賛成でした。が・・・、原発の影響で先行きが不透明になり、この目標値を先送りすることになりました。大変残念ですがやむをえないのかもしれません。

農業を取り巻く環境は日に日に厳しくなっております。品種は数十年前からみれば格段に向上、生産量も断然に現在の方が多いのですが、農業人口の激減と担い手不足が焦眉の急を告ぐ課題であると言えます。その背景は一言で言えば農業者の収益力の低下。農産物の生産額GDP比は確か1.3%ですが、農業者就労人口は2.5%。これは他の産業に較べて労働生産率が半分ということでしょうか。

ただ、それでも日米英仏独で比較すると、生産額GDP比はフランスの1.8%に次いで2位(3位:米1.1%、4位:独0.9%、5位:英0.8%)。人口比も1位(2位:仏2.2%、3位:米1.8%、4位:独1.7%、5位:英1.5%)。

ですから、日本の農業は衰退産業だ、全然ダメだ、という感覚は一旦捨て去った方がいいのかもしれません。日本の農産物は、うまい。品質的には、一部を除いては、絶対に国際競争力があると断言できます。であれば、海外に売っていく努力はしなければなりません。

現在、農協に貿易実務を担える人材、あるいは部門はありません。将来、20XX年、近所の農協の若き職員が、「ちょっと明日から中国に2〜3日出張に言ってくるわ」と言って、「1億の商談まとめてきたで」などという会話が成り立つような夢を見ています。例えばJETROなどと協調するなど、やろうと思えばできることはあると思います。

TPPの議論は、まさに、going nowhereです。TPPは貿易という観点からは必要ですが、貿易に必要なのはTPPではなくて、FTA/EPAです。日本国内の諸環境を築いていない状態で、アメリカの戦略に同調する形での参加など、必要があるのでしょうか。通常のバイのFTA/EPAを強力に推進すべきではないでしょうか。面倒だから一気にTPPで挽回しようというのは、少し浅はかであると感じます。

そもそもTPPはアメリカのアジア戦略です。一気にTPPで輸出産業を振興しようというものですが、日本のTPPは基本的に対韓国戦略です。であるならば、TPPで大枠の貿易交渉を行うよりも、バイのFTA/EPA交渉をしたほうが、メリットは最大化・最適化できるはずです。

そして駄文長文ついでに申し上げれば、現行の戸別所得補償は、もっと良い施策にすぐにでも変更すべきだと思っています。何故か。所得保障はEUでも実施されていますが、あくまで面積基準での補償です。とにかく頑張ってつくると補償される。ところが、日本の現行制度の場合、基本的には赤字がでたら補填するという補償。頑張らなくても補償される。似非農家が増えるかもしれません。供給は更に増大。結果として農産物の下落。(必ずしもそのためではありませんが)自民党が指摘してきたとおりに推移しています。以前に書いたように、政府による補償制度は、あくまで対象者の自尊心を大切にしなければうまくいきません。

ついでに勢いで申し上げれば、TPPに参加して生産調整を維持しながら赤字補填戸別所得補償をするというのは、政治的には可能かもしれませんが、論理的には破綻しています。

TPPではなく自由度の高いEPA/FTAで農業貿易と輸出産業を最適設計し、生産調整で何千億も使うのならかつてEUで行ったように輸出補償の意味合いで給付し、生産者補助としての戸別所得補償を行ったほうが理に適っていませんでしょうか。

驚く事実があります。中国にコメを輸出したいと考えた人がいたとします。どうやるか。下記の農水省のページをご覧ください。

http://www.maff.go.jp/j/soushoku/boueki/kome_yusyutu/china.html

つまり、とある処理をしなければならないのですが、それは中国が認可した唯一の施設(神奈川県の全農)でしかできないのです!じゃ、香川から輸出するのに、一旦神奈川に運んで処理して中国に送れと・・・。ここは中国にやられてしまっています。外務省はがんばらなければなりません。

かなり雑文になりましたが、いずれにせよ、農業政策は、我が祖国の大地を守る農業、という観点で見なければなりません。パッチワークもそろそろほどほどにしないければならないのではないかと思っています。

宇宙アサガオ

少し前ですが、大変お世話になっている知人(子供達に夢を届ける仕事をされている方)から、大変貴重な宇宙アサガオの種を頂きました。宇宙アサガオとは、2010年に山崎宇宙飛行士とともにスペースシャトル機内の無重力環境で保管したアサガオの種のことで、通常の種と放射線照射環境の種を比較することが目的の実験でした。

http://edu.jaxa.jp/seeds/

観察実験は、普通の小学校などの生徒さん達ボランティアによって実施されたのが特徴的で、子供達に夢を与えることが私は最大の成果だと思っています。

現在手元にあるのは、その2世代目のアサガオで、地元の保育園などにお分けさせていただいた後に余った1つを、当方事務所でHさんが育てています。

連日、将来が暗くなるような話題ばかりで、レディーガガしか世を救えない状態です。それでも、一歩一歩前に進めたい。少なくとも、子供達の世代には、夢や希望を与えたい、そう思っています。

経験に対する敬意。そして政党政治の行方。

神聖ローマ帝国の流れをくむドイツ帝国の初代宰相ビスマルクは、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、という有名な言葉を残しています。愚者の経験とは自分の経験であり、賢者の歴史とは社会の経験、つまり、人類の経験であり、組織の経験です。そして今の日本の政治は、明らかに後者の経験に対する敬意が失われています。

政治評論家の田勢康弘さん曰く、今の民主党は国連に似ている、と。大国も小国も一票。若手議員が経験豊かなベテラン政治家を老害と切り捨て、地位に対する畏れもなく、地位獲得への打算ばかりだと。打算ばかりだとは思いませんが、経験に対する敬意については同感です。

なおもこのことは、派閥を崩壊に導いた小泉首相以降の自民党にも見られる光景で、民主党だけを批判するつもりはありません。政治全般が政治経験に対する敬意に欠けているという印象を持っています。

それもそのはず、政治を為すためには、背反する利害を調整し、関係者を口説き説得し、酒を飲み交わし、議論し、罵倒され、嫌味を言われてあしらわれ、手を回したり回されたりしながら、苦労に苦労を重ね、それでも国のため地域のため、努力しなければならないものです。私のような下級武士付き人(秘書)でも、寝れない日々を送ることもあります。

しかし、こうした苦労は間違いなく政治交渉に役立つものです。だからこそ、そうした苦労は、経験として社会なり組織として蓄積する必要があります。そして社会や組織に蓄積された経験を学ばなければなりません。

もちろん、学んだからと言ってそのまま実行する必要はありません。若さは、事を前に進めるエネルギーに必要なものです。ただ、その「前」と思っていた方向が正しいのかどうかまさに歴史に学ぶ姿勢を大事にしなければなりません。

そうした意味では、執行部は若い人が就き、経験豊な相談役を必ず配すことが組織運営には大切であると思っています。

もうひとつ。派閥政治について。

派閥政治には、悪い点が2あります。小泉政治後の現在は機能していませんが、それはポスト争いと権力闘争です。ポスト争いとは、派閥に入って親分に気に入られなければ仕事ができるポストを貰えない。猫なで声で親分に近づく人がポストを得られる。適材適所とは程遠い人選が行われる。どこの世界でも同じだと思います。金。私腹を肥やそうと思わなくても残念ながら金はある程度かかる。苦労して献金を募る。政治活動するために議員になったのに、若手は集金力がないため、活動資金集めで苦労する。何のために議員になったかわからない。しかし、派閥に入れば、派閥の言うことを聞けば、融通してくれるとしたら、なびいてしまう。これが悲しい自民党の昔の派閥政治の実態で、小泉政権はこれを是正しようとし、現在では派閥はほとんど機能していません。

しかし、以上のことを裏を返して読み直してみたいと思います。塩野七生さんがおっしゃっていたことですが、昔の自民党の時代には、派閥の領袖クラスの話し合い(闘争)で、総理が決まっていた。その闘争の過程では、総理にしてあげる条件として、主要な政策課題が領袖クラス(政党)から提示されていました。つまり、これこれこうした問題を解決するのであれば、総理にしたげますよ、しかし、成し遂げたら総理を辞めなさい、と。竹下総理の消費税。大平総理の日中関係。個人に理念や哲学があろうとかなろうと、器だろうがなかろうが、少なくとも政党としての理念があれば、国家のための課題をこうした形で一つ一つ実現できていました。平時の場合に限って言えば、合理的な運営になっていたと言えます。

そして金。若手の頬を札束で叩くようなやり方という表現は、裏を返せば若手の育成ともとれる。若手は不要な金策に時間を取られなくてすみ、政治運営と政策課題を派閥の勉強会で会得していく。人材育成と人材プールを政党として行っているということにもなります。

もちろん、悪い点を正当化するつもりは全くありません。政治の浄化のためには、裏面の趣旨である政治理念の実行と人材育成を伸ばしつつ、表面である悪い点を払拭する制度を創造しなければなりません。今だ良いアイディアはありませんが、この裏面の2つを無くしては、政党政治に未来はありません。いっそのこと、大連立をしたほうがましだと考えます。

地域若者サポートステーション

小生の地元丸亀市の駅前で、若者の就職支援のための、ITスキルアップ無料講座をされている団体があります。NPOさぬき若者サポートステーションです。

http://www.e-dome.co.jp/saposute/wakamonoup.htm

IT関係だけではなく、若年層に就業の相談や支援を行ってもいます(厚労省支援事業)。

http://www.e-dome.co.jp/saposute/

雇用環境は非常に厳しいものがありますが、今回、完全失業者の固定化とその対策について触れてみたいと思います。香川では、若者に働く楽しさをお届けするため、結構手厚い事業を行っており、香川モデルとして改めてここにご紹介するものです。

総務省の1〜3月期の労働力調査が発表されました。大災害があり一概に言えないかもしれませんが、日本の雇用環境の現状が明確に現れているような気がします。

まず、正規雇用者は4904万人で53万人も減少。非正規は1739万人と103万人増加。そのうちパート・アルバイトが1189万人と84万人増加しています。一方で注目すべきは、完全失業者。全体295万人で21万人減少していますが、3ヶ月以上の失業者は15万人増加しているのにたいして、そのうち1年以上の完全失業者は逆に9万人増加しています。

つまり。いろいろ読み取れますが、一言で言えば、働きたくても働けない人が固定化しつつある、ということです。そして、それは若年層と高齢層に多い。

ちなみに、少子高齢化=労働力人口減少による経済力の衰退を避けるために、海外から労働力を調達しなければならない、という議論がありますが、そうした議論の前に、この完全失業者の議論をしなければなりません。300万人近くの労働力があるのです。そして、固定化しているのは、何らかの原因があるはずです。何とか個人のスキルアップは図らなければならなりません。

政治や行政でこの問題に取り組むにあたり、最大の問題は、必要とされている人まで手が届かないことです。幸い、ハローワークという絶好の機関があるので、サポートするためにはそこを通じた事業が考えられます。先の仕分けで廃止になったが復活したジョブカード制がこの典型です。

そのほかとして、まさに冒頭ご紹介申し上げた「地域若者サポートステーション事業」(通称サポステ)(厚労省支援事業)が挙げられます。NPOなどの事業者に国が依頼し、専門家に就職に向けた支援をしてもらうものです。度重なる仕分けにも関わらず何とか生き延びてきた事業の一つです。

固定化している若年層に、相談・指導・支援の場を提供するものですが、丸亀の団体は、今般新たに同じく厚労省支援事業で、そうした若者にきてもらうのではなく、出向いていって相談・指導・支援を行う、アウトリーチ事業にも取り組まれています。

こうした活動は本当に大変な労力を要しますが、固定化をさけるには絶対に必要な努力です。今後、香川県独自の成果のでるモデルを推進していき、全国発信できればと密かに思っています。