4期目の挑戦ー衆院総選挙

ワクチン接種が始まった今春以降、前総理の総裁ご勇退、開かれた政治を求めた党風一新の会、総裁選と岸田政権の誕生、それにともなった副大臣就任。あわただしい政局の流れの一方で、コロナ経済対策、感染症拡大防止対策、国産ワクチン開発体制確立、そして経済安全保障と官民共創による地方創生、更には外交防衛と言った分野の政策に全力で取り組んでまいりました。

そして先日、衆議院が解散され、3期9年に亘る議員活動に一旦の終止符を打ち、これまでの活動を振り返りつつ、原点を見つめなおし、改めて公示の日を迎えた本日、4期目に向けて、国政を担う覚悟を新たに致しました。

振り返れば、初当選以来、政策一本やりで活動して参りました。この間、党や政権の運営について有権者の皆さまから様々なご意見を拝聴しました。その間の経験の結論は、どんな優れた政策でも、政治が国民意識から乖離し、信頼を失ったら、いかなる政策も実行はできないということです。依然として一部残る旧態依然とした党の運営を近代化し、理解してもらえる政治、できれば納得いただける運営を目指し、具体的には党ガバナンスコードの整備に貢献していきたいと思います。

ただ、政治は中身です。何をやるかという政策の目標、それをどうやるかという政策実行手段、更にはどうやり続けるのかという政策の継続性や政策効果が政治に課せられた課題です。コロナ感染拡大が始まった1年半前から続くコロナ対応で、目の当たりにした国家の脆弱性は私にとってかなりの衝撃でした。感染症以外の危機事態も含めて、何があっても安心安全な暮らしをお届けしたい。そのための万全の危機管理体制構築を是非やり遂げたい。過去1年に亘り党内で議論してきた政策目的を今こそ実装したい、そうした思いで今朝を迎えております。

更にはコロナ感染拡大防止策、すなわち人流抑制政策で、甚大な影響を受ける業種もあり、未だにその苦難は続いています。最大の課題は将来が見通せない事です。社会情勢分析を精緻化し、本当に必要とされる方に十分な支援をお届けしなければなりません。ワクチン接種証明やPCR検査陰性証明なども積極的に利活用し、今までとは異なる将来が見通せる経済政策を打ち出していかねばなりません。一方で、感染拡大防止自体については、人流抑制一本やりから脱却し、国の権限強化を通じて、医療提供体制やワクチン含む治療薬開発体制の整備を進めていかねばなりません。

地方では、米価が下落し農家の生活が脅かされています。魚価も低迷し漁師も苦難に直面しております。建築資材の一部は急騰しています。地方が直面する社会課題は複雑多様化しています。地方創生は、国が定めるような全国一律の政策では、地域によって異なる社会課題を解決することは困難です。また財政難にあえぐ地方自治体に全てを財政的に頼ることも現実的ではありません。まさに官民共創による、SDGs資金も積極活用した取り組みがなくてはなりません。

国政政治も不安定です。まずは外交力によって国際秩序を安定化する努力をするべきです。その上で、外交力を担保する抑止力と対処力をバランスよく向上させる取り組みは必須です。

まだまだ多くの課題が残されたこの日本。生まれ変わってもまた日本がいいと全員に思っていただける国にしていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

【善然庵閑話シリーズ】サイバーカスケード

毎度のことながら、総選挙を前にしてメディアからアンケート調査が山のようにくるのですが、今日はそれについて触れたいと思います。過去にも一度触れました。今回は少し深掘りします。

思想と言うものは、どの方向に向かおうとラディカルに先鋭化する力を内在しているものなので、本来はそれ自身が虚構であることを良く知ったうえで吸収すべきものなのだ、と、かつて司馬遼太郎は喝破しました。(司馬史観は間違いだとか指摘する人もいますが、私がファンになったのは、そういうことよりも、思想の本質的力を理解していた人だと思ったからに他なりません)。

なぜ先鋭化するかと言えば、普通は思想自体は小難しく伝搬しにくいものですが、思想がラディカルに行き過ぎると、分かりやすい結論だけが独り歩きしやすいからです。親鸞が天才だと言われたのは、南無阿弥陀仏を唱えるだけで極楽浄土に導かれると単純化したからです。最近で言えば、種苗法がありました。とある影響力のあるアーティストが、巷で反対意見があることを紹介したことをきっかけに、ネット上で反対論が渦巻き、野党も中身を知っていながらその反対運動に便乗、成立は見送られました。見当違いも甚だしいということは、その次の国会で大した野党の反対もなく簡単に成立していることから分かります。

特にネットの時代、短文投稿サイトや、選挙に向けた既存メディアによる政治家に問う二択アンケートなど、政治家が思っていることを、単純化し記号化して伝えるのは、忙しい現代人にとっては手っ取り早くて分かりやすいのだと思いますが、思想を伝えるどころか誤解を生み先鋭化し、そのエネルギーは大きなうねりとなることもある。

少し前にサイバーカスケードという言葉がプチブレークしましたが、総裁選でもその力を見せつけられました。サイバー空間で同種の結論を共有する者同士が強く結合することで、次第に先鋭化し過激化し、異なる意見を一切排除するようになることです。ネットに書き込んでいるご本人達は、殆ど意識はしていないのだそうですが、受け取った人間もしくは第三者として見た人間は、ある種の恐怖感を感じるようになります。

ただその傾向は昔からあった。社会学者の筒井清忠先生の「戦後日本のポピュリズム」などに詳しいのですが、戦前と一括りにして歴史教育を受けると戦前が全く見えなくなる。筒井先生は、当時の新聞や世論や議会がどのような雰囲気であったのかを緻密に調査されていますが、それを読むと戦前昭和と言っても完全に2つにわけることができる。そして現代が戦前前期と重なるところが非常に多いということに気づきます。

丸山真男も司馬遼太郎も表面的には二値化(半か長か)表現をして時流に乗ったのかもしれません。平たく言えば極論を言ってウケた。しかしそれはご当人たちが時流に乗ることを意図したものではなかったはずです。特にサイバーという極めて伝搬性の高い媒体を手にした我々現代人は、意図しない方向に強烈に先鋭化していく可能性を十分に意識しなければならないのだと思います。

例えば選択的夫婦別姓。もし内閣府の調査に私が応えたのだとするならば、一番近いのは下記の記事で言うところのソフト反対派です。つまり仕事上困ることがないように結婚前の苗字も使えるようにするのは構わないのではないか、ということです。でも、マスコミ選挙アンケートでは「反対」と「賛成」しかない。二値化された世界に無理やり当てはめれば先鋭化するのは当然の成り行きです。それは昭和前期の世界と本質的には何ら変わらないものです。

diamond.jp/articles/-/274832?page=2
survey.gov-online.go.jp/h29/h29-kazoku/gairyaku.pdf

政治と言う生身の人間のことを扱う世界で、二値化された結論だけをもって中身の議論を飛ばし対立だけにエネルギーが向かう傾向に大いなる疑問を持っています。二択アンケートは世相を先鋭化させることを企画者には認識してもらいたいと思っています。

経済安全保障等担当内閣府副大臣を拝命しました。

岸田内閣の発足に伴い、経済安全保障や防災等を担当する内閣府副大臣を拝命いたしました。小林鷹之大臣と二之湯智大臣を小寺政務官と共にお支えし、何があっても安心安全をお届けできる体制の構築に緊張感をもって取り組んでい参りたいと思います。

担務は、小林大臣の下では経済安全保障のほか、宇宙、科学イノベーション、健康医療など、そして二之湯大臣の下では防災、海洋政策、国土強靭化、領土問題などです。いずれも内閣府らしく、他省庁などと連携し政策を進めて参りたいと思います。

小林大臣所掌分野

経済安全保障は、着任以前から党新国際秩序創造戦略本部(岸田文雄本部長ー現総理及び甘利明座長ー現幹事長)において、小林鷹之事務局長(当時)(現大臣)の下、事務局次長として戦略策定に向けた議論を相当な時間をかけて行ってまいりました。小林大臣の熱意に大きく心を動かされたものです。極めて新しい概念の担務であり、困難は予想されますが、改めて政府の一員として引き続き小林大臣をお支えしつつ、国の安全安心を経済面から構築していく仕事にやりがいを感じています。

宇宙も、小林大臣とともに、着任前から取り組んでおりました。特に感慨深いのは、共に取り組んだ宇宙資源法の制定です。党宇宙海洋開発特別委員会(河村建夫委員長)で、私は同委員会の事務局長並びに宇宙法制化検討PT幹事長として、小林大臣は当時、この法制化PTの座長として、相当な熱意をもって法案成立に駆け回りました。これから、政府として施行を見届けますが、そのほか、現行の宇宙基本計画並びに工程表を確実に実行して参りたいと思います。

科学技術イノベーションは、初当選当初から党科学技術イノベーション戦略調査会で渡海紀三郎会長の下、日本の将来の富の源泉を確保すべく取り組んで参った分野です。ここでも、小林大臣とは日本学術会議等の在り方を含め、日本の国益に資する政策の議論を長らく行ってきたものです。

健康医療戦略については、昨年から蔓延する新型コロナウイルス感染症と対峙するために取り組んできたものに関連する分野です。国産ワクチンや治療薬などの開発製造について、あるべき国家体制を党社会保障制度調査会創薬力強化育成PT事務局長として取り組んで参りました。また医療提供やワクチン配布の合理的効果的なオペレーションの提言を、それぞれ党コロナ対策本部PT事務局長として取り組んでまりました。実は、この分野でも、小林大臣は党コロナ対策本部ガバナンス小委員会で感染症に対する万全の国家体制を確立するための議論を事務局長として進めて、大いに刺激を受けたものです。

二之湯大臣所掌分野

防災については、防衛大臣政務官在任中に得た現場での経験を最大限生かして、二之湯大臣をお支えして参りたいと思います。課題は、防災デジタル化と対処の迅速化や合理化を政策面で確立すること。それに加え、防災上の発災シナリオは経済安保戦略上のリスクシナリオの一部に入るはずであり、両者がシームレスに接続できるよう俯瞰的に取り組んで参りたいと思います。

国土強靭化については、防災という政策の概念が、近年多発する自然災害に対して、被災後にどのように国民の安心安全を担保するのかに着目したものであるとすれば、災害が発生しても被災しない、あるいは被害を最小限に食い止めるための主にハード面での政策だと理解できます。ただでさえ老朽化の進むインフラですので、前菅政権で有難いことに確立していただいた5か年計画の着実な実施に努めて参りたいと思います。

領土主権対策については、北方領土は北方対策本部と連携しつ、また竹島や尖閣についても、我が国の立場を内外に発信するなど啓発活動に注力して参りたいと思います。その他、海洋政策、有人国境離島、重要土地法、国際的マネーロンダリング防止のためのFATF勧告を踏まえた国内法整備、など、担務は広く全て重要課題でありますが、全てを一つ一つを深掘りすることは困難かとは思いますが、全力で取り組んで行きたいと思います。

最後になりましたが、こうした重要事項に取り組める機会をお与えいただきました地元の皆様に最大の感謝を申し上げたいと思います。

ミサイル阻止力

北朝鮮が新型のミサイル開発を進めており地域の不安を増長しています。こうした背景もあり、先に行われた総裁選では、安全保障分野の特にミサイル防衛に関する考え方が注目されました。

その一つがミサイル阻止力です。ん?聞いたことないぞ、と思われるかもしれませんが、総裁選で話題になった言葉は、敵基地攻撃能力です。ミサイル阻止力と「ほぼ」同義です。

この能力を保有すべきか否かの議論は非常に重要なのですが、本来であればそれと同時に、なんで必要なのか、の議論が深まるべきです。しかし時間が限られた総裁選なのでそこまで深まらず、巷で誤解が生まれているように思います。。

そこで、「なんで」を私なりに解説し、思いを書き残したいと思います。なお、私はミサイル阻止力は保有すべきだと考えています。つまり、政府はこれまでもそうした能力を保有することは禁止されてはいないが保有しないとしてきました。これを改めて保有するとするべきだという意味です。

(定義:ミサイル阻止力と敵基地攻撃能力と先制攻撃)

まず、「ほぼ」同義と書いた理由ですが、敵基地攻撃能力の定義が定かではないためです。マスコミの論調を見聞きすると、国際法上も、日本の法体系上も、保有も行使もできない範疇の能力が含まれた概念に見えます。少なくとも誤解を生んでいる。

一方でミサイル阻止力と言った時には、党で昨年提言したもので、「憲法の範囲内で、国際法を遵守しつつ、専守防衛の考え方の下、相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力」のことです。

そして「性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有しないなど、自衛のための必要最小限度のものに限るとの従来からの方針を維持」することを敢えて付記したものです。

(現状認識:アメリカはいつ何時でも守ってくれるのか)

必要だと判断するに至った状況認識について触れます。主に2つです。

1つは技術力。高度化でやたらと様々な装備品が登場し困っているということです。弾道ミサイルであれば従来の放物線を描いて飛んでくるものは迎撃できる可能性がかなり高いのですが、ふらふらと変則軌道を描いて飛んでくるものなどは簡単ではない。そして経空脅威はミサイルだけではありません。

もう1つは国際安保環境の劣化です。日米同盟全体で考えてみても常時持続的に日本全体を防護するには課題が残っていることです。すなわち、アメリカはいつでも守ってくれるのか、ということもありますが、アメリカは日本をいつでも十分に守れる力を未来永劫持ち続けられるのか、というのも重要な視点になります。

そもそもの日米同盟の役割分担は日本が盾(タテ)、アメリカが鉾(ホコ)が基本なので、アメリカに頑張ってもらえばいいんじゃないの、ミサイル阻止力は日本には要らないんじゃないの、と考える方もいらっしゃいます。しかし鉾が無限に強いのが前提の他力本願の論です。阿弥陀仏に失礼ですが。

(目的:先制攻撃?撃たさないこと?)

相手領域内で阻止する、となると、先制攻撃じゃないの、と思われる方もいますが、それがそもそもの誤解の本丸です。先制攻撃は国際法上も日本の法律上も行使できません。

専守防衛の自衛権の範囲内ですから、相手が撃ってきたときしか使えない。問題は、相手がまさに撃とうとしていて、もし撃たれたら大被害になるような場合です。撃とうとしている状態のことを専門的には武力攻撃の着手と言います。(※)

着手の認定はその時々の情勢によるので一般化は困難です。従って、実際には相手が一発何かをしでかしてから行使するのが分かりやすい。しかし法理論上は撃たれる前でも場合によっては撃てるぞとなっていて、そうしておかないと抑止が働かない。そして実際に相手にとっては一発撃ったら撃ち返されることが分かっているので抑止に繋がるという理屈になっています。

目的はあくまで撃たさないことです。その為に、日米全体で抑止力を高めなければなりません。その有力な結論がミサイル阻止力ということになります。なお、専門家による抑止力の概念整理に、懲罰的抑止と拒否的抑止があり、これらのどちらに該当するのかを問われることがありますが、定義や考えは既に述べた通りで、この概念整理に当てはめる必要は必ずしもないと考えています。

なお、私は能力保有の整理が必要だという立場ですが、具体的にどのようなアセットが必要なのか、またそのアセットに応じてどのような機能や体制が必要なのかは別問題です。

過去の記事を参考に添付しておきます。

日米同盟とミサイル阻止力
ポストINF条約と日本の役割
必要最小限度の自衛力/グレーゾーン事態対処の問題点

(※)少し専門的になりますが、ミサイル阻止力は専守防衛の自衛権の一つです。自衛権は、防衛出動が下令された場合だけ行使可能なものです。その防衛出動は武力攻撃があったと認定された場合にのみ下令されます。そしてその武力攻撃には着手が含まれます。従って、先制攻撃はできませんが相手領域内での阻止は法的には可能とというのが政府の一貫した立場です。

コロナ感染状況

ワクチンの普及で一時はコロナ克服が期待されていましたが、ワクチンの効果は感染力の強いデルタ株に打ち消された感は否めません。ただ、感染者数が増えても重篤化する割合は決定的に下がっています。現時点では、感染者数も落ち着きを取り戻しつつあり、今後のワクチンの更なる普及も見込まれているため、克服は再度期待できるものと思いますが、一方で、変異株出現の頻度は極めて高く、いつ強力な変異株が蔓延するとも限らないため、予断を許さない状況は続いています。

これまでの感染状況の傾向を振り返っておきたいと思います。敢えてデータだけ示します。データは全国のデータ(人流のみ東京新宿駅)で全て政府のオープンデータを参照しました。

本来、こうしたデータに経済関係の状況、すなわち、規模別・地域別・業種別の商店等の取引関係に関するデータをマッシュアップして分析することが望ましいはずです。現在、それを可能とする取り組みを進めています。

また、今後に備え、治療薬・ワクチンの開発と供給を急ぎつつ、病床確保に向けた具体的権限強化をしていかなければならないのだと感じています。


図1.感染者数(青)に対する要入院者数(赤)


図2.感染者数(青)に対する重症者数(赤)


図3.感染者数(青)に対する死亡者数(赤)


図4.実効再生産数


図5.感染者数(青)とワクチン接種率(1回目・2回目)(赤)


図6.感染者数(青)と人流(赤)


図7.感染者数(青)と病床使用率(赤)


図8.感染者数(青)とPCR検査陽性率(赤)


図9.感染者数(青)と感染経路不明者割合(赤)


図10.感染者数(青)と日経平均株価(赤)


図11.感染者数(青)と労働賃金(赤)


図12.感染者数(青)と企業DI(最新でプラス群)(赤)


図13.感染者数(青)と企業DI(最新でマイナス群)(赤)


図14.感染者数(青)と企業倒産件数(赤)


図15.感染者数(青)と雇用調整助成金支給決定件数(赤)

総裁選:政策論争と党改革

いよいよ明日、自民党総裁選が告示されます。これから本格的な政策論争が始まります。どなたが次期総理にふさわしいか。党員の皆さまには特に注目頂き思う方に投票を、また党員以外の皆さまも政策を聞いて日本のあるべき姿を共に考えられる機会になればと思います。現在4人が立候補されています。岸田文雄さん、河野太郎さん、高市早苗さん、野田聖子さんです。今回の総裁選では、私は岸田文雄さんに日本の未来を託すことに決めました。

それに先立って、書き記しておきたいと思います。前回も書きましたが、約1か月前、総裁選の実施時期を巡ってかなり分かり難い政局となりました。初当選以来、これまで厳しい政局となることは幾度かありましたが、それらとは決定的に質の異なるものでした。ズバリ言えば、有権者や党員の皆さまに対して、説明ができたかどうかです。過去の政局は、全てとは言いませんが、自分なりの理解をし、中身の説明をし、自分の意見を述べることができた。今回は、全くできなかった。

それまで菅総理は仕事では最善を尽くして確実に結果を出してました。しかし、この総裁選や解散時期をめぐった政局については、メディアは揃って四方八方からダメ出し。政治は完全に国民の信頼を失っていました。この状態で、もし、菅総理が総裁選に出たとして派閥談合で再任されたら、間違いなく皆さんは国民不在だと感じたと思います。

菅総理がだめだということではなくて、我々政治がだめだと思われたところがだめなので、そういう場合は、組織の透明性とガバナンスがモノを言うはずです。等身大の政治の姿を皆さんの前に晒して評価いただく。これが信頼回復の最大の手段になるはずです。そのためには、派閥一任の解消と開かれた総裁選を求めることが必要だった。本来、自浄作用としてこうしたことが自然に起こるのが望ましい。しかし、起きなかったことに危機感を感じたからこそ自らの手で実行した。それが福田達夫さんであり党風一新の会でした。

ここを起点にして中堅若手で党改革を訴える「党風一新の会」ができたことは既に前回書きました。打ち出したのが、今回の総裁選では派閥一任を解消して自由投票とし、国民や党員の皆さまと一緒に考え国を形作れるよう、開かれた総裁選にすることです。ところが残念だったのがレッテル貼り。この会を、特定の候補者を支持するための会だとか、選挙基盤が弱くて派閥領袖に従ったという理由だけでは選挙を戦えないから自由にしろと言っている圧力団体だとか。この薄っぺらいレッテル貼りには私は耐えれない。

そもそもこの会は何を目指しているのか。派閥一任回避と自由投票を求めたのは目的ではありません。まして、特定の候補者を支持するための母体でもなく(もしそうだったら新しい派閥ができただけで我々の主張と根本的に矛盾する)、派閥の存在自体を直ちに否定しているわけでもなく(否定するのであれば新たな根本的ガバナンス体制を直ちに構築すべき)、主目的は、一時の党勢凋落という事態に陥ったのは党のガバナンスが脆弱なことが原因だという認識の下、党改革とその先の国会改革、そして統治機構改革と、それを通じた「政治は国民のもの」という原点を目指しているものです。

国民からの密室長老政治というレッテル(実態は少し違います)に対する不信感と実態のギャップを埋めるための行動をとったもので、我々が本質的に目指しているのは、国民の意識をしっかり掴み、やるべき行動を生み出す自浄作用の仕組みです。すなわち個別の状況を把握し、やるべき行動を提示し実行する仕組みです。オカシイと思われないよう常に自己チェックができる体制や制度などのメカニズム、仮にオカシイと思われるなら分析し評価し改善するという行動につなげていく仕組みです。これが我々の言うガバナンスであって、それを通じて、党運営を近代化し、政治や自民党と国民や党員の距離を近づけ、前向きな政策論議が巷で行われるような土壌を築くべきだ、という視点に立っています。

では具体的にガバナンス強化とは何を言っているのか。

第一に、意思決定過程の透明化と原則主義の強化です。一言で言えば説明責任。冒頭書きましたが、難しい政局でも説明可能にしていかねばなりません。そして少なくとも事前に原則を打ち立てておき、それに従えないか逸脱するようなことが生じたら必ず説明する、というのが私の言う原則主義です。政治は信頼が根本だと考えています。政策は対立する可能性はありますが、なぜそういう結論になったのかを説明すれば、納得は頂けはしないかもしれないけど理解はしていただけるはずで、それが信頼に繋がっていくのだと思います。人事も資金も原則主義を強化すべきです。岸田さんは、党ガバナンスコードを主張しました。まさに原則主義の考え方です。

第二に、パブリックリレーション(PR)戦略です。PRというと、何となくアピールに聞こえるかもしれませんが、本来的な意味では、国民との関係(リレーション)をどのように構築するかという戦略です。大切なのが、国民からのフィードバックをどのように取り入れて対話(コミュニケーション)するかです。これには2つの方向があります。ネガティブな事象を扱う場合とポジティブな事象を扱う場合です。前者の典型例が緊急事態の際のリスクコミュニケーションです。その為には、リスクをマネージメントする機能が不可欠です。後者は、アジテーションや扇動にならないような仕組みをどのように構築するかです。そして両者に共通で必要なのが、インテリジェンス機能です。PR戦略部門が描く戦略に基づいて必要な情報を権限を持って収集できる体制が必須です。単に各部署から上がってくる情報を垂れ流す、平べったいPRにならないようにすることです(政府の広報担当部局はほとんどがこの類です)。国民や党員の意見を収集し党運営にフィードバックし政治の運営を改善していく。先に書いた党風一新の会の一歩目の部分です。

第三に、正統性と正当性の明確な役割分担に認識です。正統性とは民主的に皆で決めたという正しさで、政治が担います。正当性はとは、学術的若しくは論理的な正しさで、主に学者や行政などが担います。社会問題が複雑多様化しているため、政治判断だけでも、あるいは学術的・論理的正しさだけでも判断が付かない問題が多くなっており、EBPM(根拠に基づいた政策立案)と言われるように両者を融合させて政策を運用していく重要性が益々高まっています。しかし、その両者の役割分担を明確に意識しなければ、安定的運用は不可能です。例えば、学術界の中でも意見が割れるような複雑な問題の場合、学術界も民意に流されたりすることもあるはずです。また、行政組織も、大臣という政治家の上司がいるのでどうしても大臣の意向を尊重することになります。その境目と役割を相互に明確に認識するためのツールを準備しなければなりません。

第四に、意思決定における演繹性と帰納性の担保です。小難しく書きましたが、要は国民の意見を吸い上げてボトムアップで政策を実行することもあれば、国家戦略上の観点から総理総裁がトップダウンで政策を実行することもある。一方で、時間軸の中で、将来のある時点での理想的な国の在り方を定めて現在実行すべき政策を立案することもあれば、現時点での直面する課題を解決するために政策を立案することもある。いわば空間軸と時間軸のなかで、どのように政策を組み立てていくのかという基本的な概念を国民の皆様と共有しておかなければならないのだと思います。その中で、地方組織の在り方や国家戦略の在り方が定まってくるのだと思います。

第五に、政調の政治的機能強化です。政調は政策を作っていればよいわけではなく、政策の位置づけを俯瞰的に見て実行していかねばならず、その為には政治力を強化していく必要があります。これまで政調会長の属人的能力でカバーされてきましたが、それを補うために制度として担保していくべきです。例えば国会対策委員会と連携して議員立法審議優先権を獲得し、政府がやらないのであれば立法府として与党が議員立法を成立させやすい環境を整えること、税制や予算の社会的インパクト・財源を総合的かつ精緻に分析・評価・立案ができるインテリジェンスを併せた機能、その為に必要な情報にアクセスする権限とクリアランス制度、などが考えられます。

第六に、派閥の機能です。前述しましたが、無派閥である私が言うのも変ですが、現時点においては、派閥は党ガバナンス上、一定の役割を担っていると認識しています。政治はまとめるのが仕事ですので、300人も国会議員がいてそれぞれがバラバラな意見を言い続けていたら纏まりません。引き出しに間仕切りがあるように、ある程度のグルーピングは自然なことだと思います。逆に言えば、総理にしたいと思う人の周りに人は集まっていくのが人間の本質ですし自然なことです。また情と理のバランスをここで取ることを否定すれば情のない政治になります。問題の本質は、派閥の運用が説明不可能なときです。とにかく俺の言うことを聞け的な運用は、政局安定期は問題ありませんが、不安定期には混乱に陥りやすい。従って、派閥の運用も、派閥ガバナンスコード的な原則主義が必要なのだと思います。一方で、未来永劫このままでいくべきなのかは別問題です。それを超える高いレベルのガバナンスが得られるのであれば、移行することも選択肢だと思います。問題はそれがどのようなものかを見つけられていない事です。

第七に、政府(官邸)と与党(自民党)との役割分担です。安倍政権で官邸機能が強化されたのは皆様もご存じの通りだと思います。これは絶対的に正しい方向ですが8合目に到達できたところなのであと2合昇らなければなりません。国家ガバナンスの更なる強化です。ここはまた深い議論があるので別稿に譲りますが、一方で、自民党の役割が低下しすぎた。単純に党の役割を強化すると、多様な意見が噴出し、いわゆる決められない政治や非合理な政治になりかねない。そうならないためにも、党ガバナンス強化を前提として、党の機能や権限の強化が必要になってきます。

追伸(9月21日)

党風一新の会による総裁候補者との意見交換会を実施しました。まずは事務段取りを完璧にこなし、当日は見事な司会進行を務めた同期、田畑さんに心から感謝とエールを送りたいと思います。

今、政治が直ちになすべきは経済対策を含むコロナ対応などの政策ですが、それらは既に他の公開討論会で議論され深掘りされているため、この会では政策については敢えて触れず、むしろ政策を実行するやり方や仕組みを中心に議論いたしました。まさに党改革や国会改革(本質的には統治機構改革)です。

https://www.news24.jp/articles/2021/09/21/04943136.html

https://www.youtube.com/watch?v=mmwuW40gQSU

菅総理の辞任と中堅若手の会による令和型自民党の実現

(菅総理辞任と1週間の政局混乱)
菅総理が任期をもって退任することを表明しました。報道にもあったように、政局の動きが激しい1週間でしたが、その責任をおとりになったということなのだと思います。コロナ禍の政権運営は大変であったと思いますし、本当に休み無しの状況だったのだと思います。まだ任期まで少しありますが、心からご慰労申し上げたいと思います。

(総裁選)
一方で、国民の皆さまはコロナ禍で苦労も忍耐も限界に達しているわけで、そのことを我々政治がちゃんと理解し、やるべき方向を示さなければなりません。このゴタゴタ劇について、殆どの国民の皆さまは、呆れに近いものであったのだと感じます。中身のないまま政治家だけの政治をやって突き進んでいたのでは、たんなる能天気です。だからこそ、ちゃんと中身を議論してリーダーを決めて大方針を出すために行うのが総裁選であって、開かれた総裁選を行わなければなりません。

(中堅・若手の会)
ドタバタ劇の間、報道にも取り上げられていたように、福田達夫代議士が言い出しっぺの中堅若手10数人で、断続的に会合を開き、党のガバナンス改革を骨格として、あるべき総裁選の姿などをメディアを通じて訴えてきました。理解を超える政局の動きであったためです。繰り返しますが我々の思いの中心は、国民に開かれた政治です。では開かれたとは何か。その必要条件は説明責任であり納得のいく説明です(十分条件ではありません)。例えば、総裁選前に人事を断行するとか、総裁選前に解散するとか、納得できる説明もなく行先不明の場所に突き進めば、混乱しか残りません。我々が、総裁選前に人事を行う理由の説明を求めたのも、派閥の縛りからの解放を求めたのも、ガバナンスのためであり、開かれた政治のためです。

(党の新しい胎動)
連日のようにリモートで中堅若手の意見交換会を実施しております。下記の報道リンクは、メンバー中核の山下たかしさんに対する取材の様子です。山下たかし代議士もSNSで触れているように、昔は政治家と言えば料亭やホテルで会合、今や一言声かければどこにいてもリモート接続。新しい時代の政治の姿です。景色が変われば意識も変わる、とメンバーの小林ふみあき代議士も常々言ってますが、まさに新しい政治の胎動を感じています。

(残念な報道)
ただ、残念なのが、メディアの取材の目線。何かにつけて、「選挙基盤の弱い」「中堅若手」が「浮足立って」「派閥の縛りから解放を求めている」などと、我々の意識とは程遠いレッテルを張っていることです。というか、恐らくそういう固定観念で取材している。正直、メディアの目線こそが旧態依然としているように見えます。同グループ内で議論されている内容は全く違う視点に立つもので、自民党のガバナンスを強化しないと、国民から信頼されなくなり、もって正しい政策も実行できなくなり、日本が機能しなくなることが問題だと言っているのです(昔ありましたよね)。参加議員全員が、自己保身など全く感じない発言を続けている議論であることを、私でよければ証明します。いい仲間ですよ、この世代の議員は、本当に。(念のためですが、若いから良いと言うものではありません)。そろそろこれをきっかけに、党の体質を令和型に切り替えていきたいと真剣に思っています。

デルタ株の猛威

デルタ株が猛威を振るっています。まずは対応に当たられる地方自治体、関係行政や医療機関の皆様に心からご慰労を申し上げます。全国各地に緊急事態宣言やまん延防止措置が発令され、県境を跨ぐ移動の自粛が求められていますので、私も東京との往来は控え、必要な東京の会議はリモートで対応しています。

コロナ対応に関しては、昨年より自民党内に様々な会議が設置され連日のように議論を重ねてきました。筆頭格の新型コロナウイルス感染症対策本部、そのもとにワクチンPT(プロジェクトチーム)、危機管理オペレーションPT、情報戦略システムPT、また関連して社会保障制度調査会に創薬力強化PTなどです。そして私自身、何本かの提言を事務局長として取りまとめ、政府に提言して参りました。

そうした提言は、政府に採用され実行されているものもありますし、残念ながらスルーされているものもありますが、採用されたものでも、功を奏したものと、全く効果がなかったものもあり、非常に忸怩たる思いが致しております。コロナ以外の重要な仕事もあるわけですが、それでもコロナ対策には相当な時間をかけてきました。それでも政治は結果ですので、コロナに打ち勝ったという結果を残せていない以上、政治は無策だという批判は甘んじて受けなければらないのだろうと思っています。

(緊急事態下の権限強化)
先般、更なる感染拡大と医療逼迫の現状を前に、全国知事会が、ロックダウン並みの強い強制力行使や、ワクチン接種証明書の利活用などを提言しました。行使すべきかどうかは経済状況を精緻に勘案する必要があるとしても、私自身は感染症のみならずあらゆる緊急事態時における行政権限強化は必要だと痛感しています。国産ワクチンが出遅れたのも、もとをただせば政府の権限がなかったからに他なりませんし、人口当たりの病床数が世界一多く感染者も国際的には多くはないのに医療崩壊が叫ばれる理由も、もとを正せば民間医療機関に行政権限が及ばないからに他なりません。このことは後程深掘りしたいと思います。

(デルタ株の猛威)
デルタ株の感染力は通常の2~3倍だと言われます。この数値は深刻です。通常株の基本再生産数は1.4程度だと言われていましたので、3倍だとすると4.2にもなります。例えば東京の人流はコロナ前に比べ恒常的に5割になっていますので、通常株の場合、感染力は1.4×0.5=0.7<1なので、基本的には感染収束がベースラインとなります。更にワクチン接種が進んでいたので大きな期待が持たれました。一方で、デルタ株の4.2の場合、半分でも2.1ですから、更に人流を半分にしても1.05で感染拡大傾向。1回目の緊急事態宣言を出した直後の状態の8割抑制でも1を少し切る程度ですから、効果は大きなものではありません。現在ワクチン接種が半分に迫っていますので、人流を半分に抑えたものと同等の効果になるとすれば、ほぼ再生産数が1程度の状態になっているのだと思います。結局のところ、ワクチン接種の期待はあったけども現時点ではデルタ株感染力によって相殺されたことになります。ただ、ワクチン接種がこのまま進めば、必ず1以下になるのだと思います。人流抑制については、後程更に深掘りしたいと思います。

(ワクチン接種の推進と政府コロナ対策運用目的の明確化)
少なくともワクチン接種を着実に進めることが最大の効果であることは間違いありません。今後、若年層への接種が進展すると、確実に接種率は下がります。従って、若年層に理解が得られるよう積極的に働きかけるとともに、奨励策なりを打っていくべきとだと考えています。一方で、従前からの主張なのですが、政府のコロナ対策の主目標が何なのかをより明確にすべきではないかと思います。すなわち、人流を抑制したいのか、重症者や死亡者を無くしたいのか、それとも感染を抑制したいのか。政府はどれも最大限務めるとしていますが、コロナウイルスの知見は相当集まっているので、ここで整理をした方がよいはずです。私は重症者と死亡者を出さないことを明確に掲げるべきであると思っています。

(ワクチン供給量)
なお、一時、ワクチンの供給が滞っていて各自治体に届かないという指摘を受けることがありました。現時点でも比較的人口規模の大きな自治体では予約が取れずに困っているという声を聴きます。前者については、国から市中には十分な量が供給されていました。結局、自治体や医療機関によって、接種スピードの違いがあったり、特に2回目の接種に必要な量の確保を待たずに接種に踏み切る方針をとったり、また単に必要量以上に確保しようと考えたりなどで、供給量に地域的偏在が生じたという現象でした。早いところは早いという実感と合致します。国は接種効率を上げるために地域の要望に応じて供給をしているからですが、接種地域格差を完全解消し平等原則を取れば接種率は落ちるため必ずしも悪い方針ではありませんが、接種効率と平等のバランスを多少は考慮し調整する必要があるはずです。現時点では多少考慮されているようです。

(類型指定変更)
加えて昨年より党でも多くの議論があった点が、感染症法上の2類から5類への指定変更です。コロナは現在2類というのは極めて深刻な感染症に分類されています。もちろん運用は柔軟化されていますが、医療機関や保健所など法律に基づいた作業義務が重く、システム崩壊するので、5類に落とすべきだという論です。私も少なくとも区分変更はすべきだと考えていますが、単純5類では権限を弱めてしまうので、コロナの知見も集まっていることもあり、新設類型を上記の目的に絞って新設し、現場負担軽減と行政権限行使による医療提供体制の合理化を図るべきだと考えています。

(日本の医療機関)
先ほど医療機関の確保について触れましたがここで深掘りしたいと思います。日本医師会は、国際的に病床が多くて感染者が少ないのに医療提供体制が十分でないことに対する見解を発表しています。欧米は公的機関が多いので行政権限が及び合理的に提供体制を組めると言われます(未確認)が、一方で、日本は8割が民間病院で行政権限が殆ど及びません。メディアで様々なセンモンカが様々なことに言及しますが、結論はコロナ患者受け入れ要請に応じて頂ける民間病院が圧倒的に少ないということになります。理由は様々です。感染症法上の対応ができない、多額の協力金があっても経営の見通しが立たない、他疾患対応のバランスを取る上で受け入れ困難、スタッフから理解が得られない、医師自らその意思がないというのもあります。

メディアではコロナ対応に当たられる医師やスタッフの窮状を目にしますが、受け入れていない医療機関は、通常業務+クラスター等感染予防ということになります。大変さは違う。受け入れていない医院がけしからんという意味ではなく、そもそも医師法で医師には応招義務が課せられており、正当な理由がなければ診療拒否できないことになっているので、正当な理由というのはあるはずです。なので原則主義を適用し、受け入れるか、若しくは受け入れられない理由を開示する、程度の努力義務は考えうるのだと思います。ただこれには反対も多いでしょう。それ以上にやるべきは、合理的なオペレーションです。実体験からすれば、受け入れていない医師でも、協力する準備はできているというのが殆どです。従って、野戦病院と巷では言われているように、専門の病院を丸ごと借り上げるか、市民体育館なり市民会館なりを利活用して、輪番で対応いただく方が、より現実的なはずです。ここは要請ではなく命令にすべきです。命令というと、嫌がる方も多いと思いますが、政府がすべてに責任を持つということになります。

(人流について)
人員が足りないのではないかという指摘もメディアでされます。病床数で見ると、病院全体の稼働率は8割、救急対応が1割、残り1割と言われていますので、余裕があるように見えます。もちろんこれはマクロの数値であって個別病院にはあてはまりませんし、日本は病床は多くても医師はそれほど多くはありません。通常の疾患であれば、この残り1割でも対応可能なはずですが(できないのであれば不要な病床を抱えていることになります)、指定感染症対応では確かに容易ではないと思います。ただ、医師によって余力に大きな差があるのも事実ですので、不可能ではないのだと思っています。

先ほど人流抑制について触れましたがここで深掘りしたいと思います。先ほど東京の人流は恒常的にコロナ前の5割程度に落ちていることを申し上げました。緊急事態宣言では更に1~2割下がるのですが、徐々に元に戻り1カ月程度で5割に戻ります。この5割を仮に岩盤層と言うことにしますと、岩盤層は通勤通学者によるものです。実はオリンピックや夏休みによる人流の影響はこの岩盤層に比べると数%と非常に微々たるものです。逆に言えばこの岩盤層に切り込むと経済的に多大なインパクトが生じるということだと思いますが、医療への負荷を軽減することを目的に必要なことだと考えています。例えば公共交通機関への努力義務を法律で課して利用者にワクチン接種証明書の提示を求めるなどが考えられるはずです。ワクチンを打ちたくても打てない人がいるのに差別が生じるなどの意見もありますが、危険にさらさないことが目的です。

地方移住のススメー介護事業とSDGs

介護施設に勤務する方からメッセージを頂きました。コロナ禍前からの人不足に加え、労働環境は厳しく、疲弊しているとのこと。介護現場の労働環境の改善に向けて努力して参りたいと思います。直ちには、既に流れはできていますがコロナ対応助成事業の拡充、そして賃金(介護報酬)。加えて、テクノロジー利活用による労力軽減、そして究極的に言えば人材。ただ、構造的な問題に切り込まなければ本質的な解決にはなりません。

人口減少問題を消滅可能性都市としてセンセーショナルに世に問うた増田寛也さんが、以前、東京に住むご年配層の地方移住について提言したところ、地方自治体から大きな反対の声があがったことがあります。その理由は、ご年配層の介護医療サービスに関わる負担を地方に押し付けるな、というもの。

介護現場の方々にとっても、担い手が少ないなかで、これ以上利用者であるご年配層が増えていけば、益々疲弊するのではないか、と思うのだと思います。しかし私は、この増田さんの考えは構造的には正しいと思っていました。簡単に言えば、地方移住を進めれば、地方の負担も下がるのではないか、というものです。その理由は何か。

東京は高齢者人口が激増しています。東京は若者の街のイメージがありますが、そもそも人口規模が大きく、当然ご年配層の人数も多い。それに加えて、若年層が毎年東京に流入しそのまま東京に住み着くため、ご年配層は年々益々増え、というか爆増しています。すなわち、既に介護リソースは限界に達しており、新しい施設が所狭しとひしめき合っています。しかし、そのコストは誰が払うのか。利用者もさることながら、税金も投じることになります。

国費であれば東京と何の関係もない地方在住者も払うことになります。国から見れば、東京に施設を新造しご年配を受け入れる場合よりも地方に受け入れる方が遥かに負担は少なくなります。すなわち国民の負担が減るはずです。そして地方から見れば、ご年配層を受け入れるよりも、多くの負担を地方に関係ない東京の新造介護施設に払うことになるのだと思います。ここは、まだデータを確認していませんので、いずれか推計してご報告したいと思います。

ついでに言えば、雇用面の利点もあります。介護事業を行うには若手の担い手が必須です。東京ばかりに介護施設が新造されると、担い手である若者は地方から吸い上げられます。逆に、地方に高齢者が増えると、それに伴って介護事業者の雇用が増えます。また、さらについでですが、消費面の利点もあります。単純に地方移住が進むと地方の人口は増え消費は拡大します。その消費は新たな雇用を生みます。介護事業者のサプライチェーン(というとドライに聞こえるかもしれませんが)が豊かになります。

もちろんご年配層の地方移住促進こそが地方創生だなどと言うつもりは毛頭ありません。本質的には若者の地方移住促進こそが地方創生の主要な政策です。また、東京在住のご年配層に無理やり地方に移住しろという話でもありません。個人の意思が前提です。しかし、どの世代でも東京在住の人の半数は地方移住を望んでいます。ではなぜ望むのに移住しないのかというと、雇用、移動、社会の3つの課題に直面するからです。そのため、政府や地方でそれらの指標化を行って、改善の目標を立て、達成に向けて様々な事業を実施しています。

コロナ禍で地方移住が人気を集めていることはご存じのとおりです。豊かな第二の人生を送る環境という意味で、豊かな地方の介護事業を作っていくことは必要だと思っています。そしてそこには温かさを求めたい。

もちろん既存の地域包括ケアという考え方は本筋として捉えた上での話です。単に施設を作ればいいとか在宅ケアを推進すればいいということではなく、担い手を補助する温かい担い手が第二の職として元気で活躍できる環境、利用者が知人と集い、生きがいを持ってそれぞれが仲間で共に何かに取り組め、支えあえる環境を作っていきたいと思っています。

その為には、介護事業が他の事業者と協業し新しい価値を作ることが必要です。農福連携という方向もあるでしょう。香川県は農福連携分野では全国に先駆けた取り組みを行っています。保育所との連携もあるでしょう。介護保育農業の連携事業を行って成功している事例もあります。あるいは全く異なる分野の事業者との連携もあるかもしれません。その為には多少の保険制度や規制の改正も必要な場合も出てきますが、国としてそうした事業を育成すべく助成事業を拡充すべきです。しかし補助金だけを出し続ける事業は、ほとんどの場合、持続しません。ではどうするのか。

少し難しい話になりますが、持続可能社会とかSDGsという言葉がちまたにあふれています。素晴らしいことですが、重要なことはマネーフローを生むことです。実際に、持続可能社会に資する事業に出資したいと考える事業者なりファンドなりがかなり増えてきました。社会を良くしたいということがもちろん主だった理由だと思いたいですが、持続可能な事業を行わなければ出資を受けられない事業者が増えつつあり、その為に仕方がなく持続可能社会に資する事業を行う必要がでてきたということが背景にあって、新たなマネーフローを生んでいるとも言えます。すなわち、例えば農福商連携などに対する資金環境も今後ますます良くなっていくものと思います。

ではどのような事業がそうした出資対象になりうるのか。細かい話になりますが、そうしたSDGs事業の活動内容の投資家に向けた開示ルールの標準化が必要になるのだと思います。だんだん難しい話になってきて恐縮ですが、投資家にとって良いSDGs活動をやっている事業者に投資したいと思う一方、SDGs事業は多様なため、評価が難しい。

先日、SusLabというSDGsの標準化というか物差しを作ろうと取り組んでいらっしゃる若いベンチャー企業家と意見交換をしました。とても素晴らしい取り組みです。こうした取り組みが進むことで、社会がより豊かになるのだと思います。我々は、こうした事業者が活躍できる環境を作っていきたいと思います。

https://suslab.net/

再び最低賃金について

数年前から最低賃金の引上げを巡り党内で議論されてきましたが、引き上げに慎重な意見が太宗を占めるものでした。そしてそれは今でも変わっておらず、特にコロナ禍で疲弊する産業を抱える現状において、最低賃金の引き上げは極めて慎重であるべきです。

参考までに2年前に書き下ろした記事を引用します。

最低賃金について

先日、政府は早期に全国加重平均1000円とすることを目指す方針を表明しました。正直驚きでした。先の金融機関を使った感染拡大防止協力依頼と同じで、間違っていると言わざるを得ません。

党の中小企業小規模事業者政策調査会並びに雇用問題調査会は、政府に対して、事業者に寄り添った具体的かつ大胆な支援、国民への説明、を強く求めました。ただ、それはそれとしても、最低賃金で生産性を上げるという理屈が間違っている以上、素直に消化できるものではありません。少なくともコロナ禍においてやるべき政策に今は専念すべきなのだと思います。