価格転嫁と日銀

(中小企業庁HPより)

いわゆる派閥パーティ問題で、国政は当面混乱が続くものと思われます。折に触れて申し上げておりますが、このような政治不信を巻き起こす問題は2度と起こしてはならないのであり、襟を正すなどの精神論ではなくて、2度と起こせない制度を整備していかなければなりません。全部公開で解決する問題では全くなく、むしろ監査人の監査実効性を担保する方向に制度を改正すべきであると考えています。

このことはまた触れたいと思いますが、国政混乱が予想されるなかで大変気になるのが経済の行方です。何度も触れていますが、来年は日本にとって本当に正念場、30年間続いたデフレを脱却できるかどうかの最大のチャンスです。ただ中小企業・小規模事業者の経営者の方々とお話しすると、チャンスであるというのがあまり伝わっていないように感じます。

この国の存亡は価格転嫁にかかっている

一言で言えば、これまでの30年間、日本人は価格や値段というものは上げてはいけない、という神話にとりつかれていたように思います。ただ販売価格を上げなければ絶対にGDPは伸びません。販売価格を上げなければ絶対に賃金は上がりません。

「資材費が上がって、燃油代も上がった。その上、賃上げなんて政府はどうかしている。」と憤る方も未だに多いと思います。転嫁はそもそも無理と思っている場合と、転嫁の発想がそもそもない場合で大半を占めるように思います。

堂々と「我が社は物価高でも価格据え置き」という会社も時々お見受けします。それは、従業員賃金を安く押さえつけているか、もしくは下請けに皺寄せを押し付けているか、のどちらかです。

理由は簡単で、「競合他社に負ける」「取引してくれなくなる」、と考えるからです。しかし、その競合他社も苦しいはずです。

少し考えれば分かることですが、元請けが下請けからの転嫁要望に積極的に応じること、各企業は原材料や人件費を適正に販売価格に転嫁すること、この2つが各業界・各企業で適切に実施されれば、最終消費財の上昇を上回る賃金上昇が達成でき、生産者も消費者も両者満足する社会になるはずです。

なぜ最大のチャンスなのかは単純です。現下のコストプッシュインフレで価格を上げざるを得なくなっている局面にあるからです。価格を上げてはいけないという考えが神話だと実感してもらえるからです。30年間も転嫁したことがなければ、転嫁することすら思いつかないのかもしれません。元請けは転嫁の要望を受け入れる機会もなかったのかもしれません。しかし、確かに転嫁ができる環境にあるし、すべき環境であって、しなければならない環境でもあります。

価格転嫁促進に関する取組

前置きが長くなりました。長らく党中小企業政策調査会にて転嫁促進を中小企業庁や公正取引委員会、内閣官房などと議論してきました。基本的には、賃上げ促進税制とともに、独禁法や下請け法に基づく調査、公表、指導を実施していますが、今般、労務費に関する価格交渉の環境整備を行うため、その行動指針が示されました。適切な転嫁に応じない元請けがあれば、独禁法に違反する可能性があるということを周知徹底することも狙いです。

現在の転嫁率は、原材料価格8割、燃油等5割、労務費3割。10割転嫁を目指しています。

価格転嫁と日銀

価格転嫁が社会をよくする話を書きましたが、前提はあります。供給に対して需要が十分にあること、労働需要が十分にあることです。現在、デフレギャップが改善されてきたといいますが、需要が多いわけではなく供給が不足しているからであるように思います。従って、需要喚起も重要ですが、供給側の政策を打ち出すべき時期です。実際、補正予算では、供給サイドの政策が多くなりました。一方で、労働市場はそもそも人口減少によって人手不足なので、有効求人倍数も十分に高い。

ここで少し気になっているのが金融政策です。そもそも物価が上昇しているのは欧米との金利差による為替変動が主要因ですが、日銀は為替も睨みながら市場への悪影響を考慮してイールドカーブコントロール政策を徐々に縮減しつつあるように見えます。一方で、アメリカはインフレ鈍化が続いていることから来年早々にも利下げするとの観測が広がっています。そのことから、為替も徐々に正常化しているものと思います。

先ほどの転嫁を促進する上で、最も重要なのが労働市場をタイトにしておくこと。人口減少局面とは言え、金融緩和は当面続けなければ賃上げ環境にとってマイナスになるはずです。難しいかじ取りが求め続けられている日銀ですが、何とか踏ん張っていただければと思っています。

訂正のお詫びとご報告

政治とカネの問題が大きく取りざたされており、特に派閥パーティを巡り、自民党全体に厳しい目が向けられています。私自身は無派閥であり、派閥との資金の収支関係はありませんが、改めて自らの収支総点検を例年以上に徹底致しましたところ、誠に残念ながら、記載漏れにより過去の収支報告書に誤りがあることが判明致しました。裏金やキックバックなど、総収入が実際と異なる未記載とは全く違う内容ですが、訂正申告することとなりましたので、ご報告申し上げます。

まず初めに、これまでも催し物の会費収入は当然全額記載しておりますので、全体の収支に変更は一切ございません。一方で、その収入申告とは別途、納付額が20万円を超える団体があれば申告しなければならないところ、ご参加頂いた方のうち20名様が、それぞれご自身の負担ではなく、同一の団体の負担でお越し頂いていること(令和3年の40万円)、更に欠席された方の分は寄付としていること(令和4年の20万円)が分かり、結果的に記載漏れとなっておりました。原因は弊所と当該団体の会費負担についての認識共有不足による弊所の誤認でした。今回初めて実施した他団体の公表資料の調査や聞き取りの結果、判明致しました。

初当選から11年、2度目の収支報告書の修正となってしまいました。私共にとりましては痛恨の極みであり、透明性の重要性に鑑みますと、極めて重大な事案と認識致しております。現在、透明性を担保すべく、法定監査人(第三者)に最終確認をして頂いているところです。なお、繰り返しになりますが、受領した金額は全額、収支報告に計上されておりますので、全体の収支に変更は一円たりともございません。また、20万円を超える納付がある団体は他になく、この1件の他に同様のミスはありませんでした。事務的な準備が整い次第、直ちに修正申告の手続きを行い、後日この場でその結果を改めてご報告申し上げます。(25日に申告致しました。)

政治の拠り所は国民の信頼であって、政治資金を含めた透明性は最も重要な要素ですので、毎年収支報告の作成には細心の注意を払って参りましたし、また毎年一回は過去の収支報告の総点検を行っておりますが、改めて、今後、二度とこのような事態が生じぬよう、催し物にご賛同賜った方への確認を徹底するのは当然として、公開情報を含めて仔細に確認することとし、更には弊所内で必ずダブルチェックをするなど、万全の再発防止策を講じて参ります。皆様方には心からお詫び申し上げる次第です。

大野敬太郎

日本学術会議の行方

我が国の科学者の代表機関である日本学術会議が先日の9日、臨時総会を開き、声明を発出しました。読売新聞は、おどろおどろしい見出し「学術会議、法人化案容認せず」と報道していましたので、おや?と思ったのですが、後で調べて見ると、当該新聞記者が記者会見に臨んだ会長に何度もしつこく容認するか否かを詰め寄り、ついに根負けした会長が「容認しない」と発言。結局、見出しを取るための質問だったのではないかと思います。

声明:日本学術会議のより良い役割発揮に向けた基本的考え方

ご存じのように、日本学術会議は政府の機関ですが、様々な問題が指摘されており、改革の案が度々提案されてきましたが、そうした提案がでてくるたびに、日本学術会議は「独立性が侵害される」との声明を繰り返し出していました。どんな案も独立が侵害されると仰るので、「では独立したら」、ということになりました。流石に独立案に「独立性が侵害される」という声明は出てこないと思っていたので、冒頭の記事は違和感を感じたという次第でした。主観ですが、実は共産党の赤旗新聞でも読売よりは少しマイルドであったし、他社はより中立に報道していたように思います。

この声明は、基本的に政府の独立案に沿ったものに見えますが、その上で指摘5点を意訳すると(正確には上記本文をご覧ください)、1.法人化するとしても組織のルールは自分らで決めさせてくれ、2.人事は自分らで決めさせてくれ、3.政府への勧告は引き続きさせてくれ、4.財政的な安定性は担保してくれ、5.本当は国の機関の方がいいのでは、ということだと思います。

この声明発出に先だった臨時総会では、様々な意見がでていましたが、反対意見としては、学術会議が民間資金を得ると良くてロビー活動、悪くて紐づけ政治献金になるとか(海外機関を非難しているのだろうか)、立法事実がない(政府がやることだからお気に召さないのだろうか)、などの意見があったほかは、比較的中立な意見が目立っているように思います。例えば、譲れる線と譲れない線を考えるべき、日本の学術にとって合意した方がいいかどうかを考えるべき、自らがどう改革するかという案を持ちながら改革案を受け入れるかどうかを議論すべき、第三の案を自らが具体的に示すべき、政府主導ではなく科学者がイニシアティブをとった議論であるべき、などです。その他は、ガバナンス、財政基盤、そして任命問題の指摘があったと聞いています。

いずれにせよ、この声明の後に、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会では、以下の議論がありました。

第8回日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会資料「これまでの論点整理(未定稿)」

「国の機関のままでの改革には制度面でも財源面でも限界が感じられるため、学術会議が諸外国並みのダイバーシティを制度的にも担保し、求められる機能を十分に発揮するためには、国とは別の法人格を有する組織になることが望ましい。法人化により、活動の拡大強化と、それを支える財政基盤の多様化や事務局体制の充実についての可能性が広がる一方で、国の組織でなくなることから生じる具体的な制度上のデメリットは、これまでの議論の中で確認されていない。」

政府及び日本学術会議が、共に日本の学術のため、そして社会のため、何が必要なのかの共通認識をもって、改革を断行して頂くことを切に願います。(因みに私は、中国やロシアと同じ政府の機関で維持するよりも、民主国家標準の独立機関とすべきと強く思っています。)

防衛装備品の海外移転

今国会、最も活動時間を割いてきたことの1つに「防衛装備品の海外移転」の議論があります。昨年末に初改定された国の安全保障の基本方針である国家安全保障戦略で掲げられたものですが、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出に繋がる政策であるという確信をもって議論に参加して参りました。

本題に入る前に私の考え方を示しておきたいと思います。国家が安全保障上、外国に何を移転すべきか、あるいは移転せざるべきかは、憲法や国際法や紛争当事国であるか否かは当然の前提として、一般的にはその時の我が国を含む国際情勢、装備品の性質や生産状況、相手国のニーズによって決まるはずで、個別ケースに基づいて厳格な審査が行われて当然であると考えています。例えば既に移転が認められている掃海目的の装備品移転でも、場合によっては我が国の安全保障上望ましくない事態が生じる場合もあり得ます。一方で、移転が禁じられている「地雷処理」でも、移転しないことによって我が国に深刻な安全保障上の危機を及ぼす場合もあります。従って、事前に一律に絞ることほど不合理なことはありません。

実はこれまでは自縛が過ぎて単純な移転も進まないのが現状でした。防衛装備品の移転は「外為法」で管理するのですが、外為法を拘束しているのが「防衛装備品移転三原則」であり、それはいいのですが、その三原則には「運用指針」という途轍もなく強力な制限がかかっているために、実質的に移転できないようになっていました。

驚くことに、防弾チョッキやヘルメット、通信機材や施設整備機材など、殺傷性や破壊性がなく周辺国から関心が寄せられているものでも、移転は認められてきませんでした。それは、運用指針に示されている移転ができる場合というのが、相手国の使用目的が救難・輸送・警戒・監視・掃海である場合の他、国際共同開発、特別の法律がある場合に限られていたためです。現状の国際秩序に鑑みれば、周辺国が装備品を欲しているにもかかわらず、そして日本が生産能力があるにもかかわらず、自衛隊が使うようなものを外に出すことになるイメージは嫌だ、巻き込まれるから嫌だ、という理屈は全く通らないはずです。

むしろ移転を戦略的に進めることで日本にとって望ましい安全保障環境を創出すること、すなわち装備品の移転をすることで仲間づくりをする、そのことで地域の安定を生み出し、周辺国とともに仲間で安全かつ安心な環境を作るべきです。危なそうなものは出さないという理屈は、結果的に危なくなる状況を作り出すはずです。危なそうなもののイメージは嫌だというのは、自分のイメージを守っているだけで、国民を真に守ることには繋がらないはずです。

加えて安全保障の裾野が例えば高性能半導体などにも広がっている現状において、半導体を出す相手によっては秩序が劣化する場合も向上する場合もあるため、個別に審査することとなっていて、一律禁止はしていません。現時点で「自衛隊ヘルメット」は全面的に禁止され、「AI兵器に使える半導体」は移転が可能というのは、到底論理的ではありません。自衛隊「的」なものがダメというのは不合理です。であれば、見た目のイメージではなく、その物品・役務の移転が持つ意味合いを厳格審査するべきは当然なのです。

もちろん何でも移転を認めるべきではないことは当然です。例えば紛争を助長することに繋がる移転は認めるべきではないし、国際法に違反する国への移転も禁じられるべきです。そもそも三原則には紛争当事国や国際法に違反したり国連決議に違反する国には移転しないことが既に謳われており、三原則の骨格は維持することが既に決まっておりますので、移転はされません。また現に戦闘が行われている地域への自衛隊による移転は憲法の制約からできないことになっています。

今年4月25日、小野寺五典先生を座長とする自公の関係議員約10名からなる実務者会議(以下、ワーキングチーム(WT))が設置され、爾来、合計23回にも及ぶ議論を重ね、昨日、ようやく自公で合意、与党案の提言を纏めることができました。ただ、既に報道にあるとおり、一部の議題については結論を得ることができず、来年に持ち越されることとなりました。

議題は主に5つ。1つ目は、我が国と安全保障上の協力関係にある国との国際共同開発・共同生産品の移転。2つ目は、ライセンス供与で生産している装備品のライセンス元国への移転と更に元国から第三国への移転。3つ目は、いわゆる5類型。4つ目は、部品の移転。5つ目が三原則本体の前文及び後文です。内容は既に報道されているので割愛しますが、結論を得ることができなかったのは、1番目の一部と3番目です。

1つ目の共同生産品については、昨年から話題に上っている日英伊による戦闘機の国際共同開発が念頭にあります。例えば、共同開発した正に同じものをイギリスは第三国に移転できるけど日本はダメというのは不合理ですし、イギリスが第三国に移転した場合に日本の部品がその第三国に移転できないのも不合理です。完成品について、公明党が難色を示し議論が来年に持ち越されました。既に国際合意があり、英伊からも国際的なプレッシャがかかっている中で、放置すれば我が国の国益に大きな穴があく、即ち我が国に望ましい安全保障環境を創出できない、と認識しており、直近最大の課題であり、早急に結論を出す必要があると認識しています。

3つ目のいわゆる5類型については、最も問題意識を持っていた課題で、多くの識者が指摘するものです。現時点で自公の考え方の隔たりが大きいのは事実です。イメージを優先するのか、国民の安心安全を前提に考えるべきなのか、自明のことであろうかとは思いますので、来年以降引き続き議論を続けていきたいと思います。

臨時国会と政治不信

本日、55日間の臨時国会が閉会しましたが、会期末は派閥のパーティを巡る政治とカネの問題が大きくクローズアップされ、派閥パーティの売り上げの一部について意図的に記載隠しが行われていたのではないかとの報道があり、大勢の閣僚や党幹部が任期途中に交代せざるを得ない事態となりました。政治の信頼を根底から覆すことになったのは誠に残念かつ遺憾でなりません。同時に、私自身は派閥には属していないため、情報が乏しく全貌が把握しにくいのは事実ですが、与党の一端を担う者として、また取り沙汰された議員全員を知っている者として、正直、大変なショックであるとともに、国民の皆様にお詫びする以外に言葉が見つかりません。

ただ、謝って済むわけではないのは当然です。私自身、政治資金は全て収支報告書に記載しておりますし、収支報告の誤りは常に注意し、見つければ自ら修正を行うことを旨としておりますが(過去に1度、外部からの指摘で修正を余儀なくされました)、もはや襟を正すという精神論では、政治の信頼回復など到底できるわけありません。信頼される仕組みを作らなければならないのだと思います。今般の事案で岸田総理は政治資金規正法改正について記者から問われ、改正の議論はありうると答えています。仕組みの一つであろうと思いますし、私も同感です。

需要サイドから供給サイドの経済政策へ

■今必要な政策は何か

所得税減税が取りざたされています。岸田総理は「経済・経済・経済」と言いましたが、立憲さんは「給付・給付・給付」と言い、国民さんは「賃上げ・賃上げ・賃上げ」と言いました。折に触れて申し上げていますように、現下の物価上昇は、円安等による生産コストの上昇によるものです(コストプッシュインフレ)。そしてコストプッシュインフレに対峙するための最大の政策は、賃上げであることは間違いありませんが、賃上げするのは企業であって、ただでさえ生産コスト上昇で体力が削がれている企業が賃上げまでするには、結局のところ、生産コスト上昇と賃金上昇を企業が売値に転嫁できる構造を作らなければできません。

つまり、コストプッシュインフレに対する最大の政策は、価格転嫁の促進ということになります。元請けが積極的に転嫁に応じてもえる環境作りが必要になります。しかしこれまで30年間、デフレという名のコストカット経済に慣れた商慣行のなかで、十分かつ適切な転嫁構造を作ることはそれほど容易ではなく、地域の中小企業では転嫁が十分に浸透していません。全ての業種、全てのサプライチェーンで、積極的かつ適切な価格転嫁構造を作る必要があります。

■転嫁構造には2つある

その上で言えば、転嫁構造には2つのルートがあるはずです。1つは、生産・流通・販売を通じた通常の民間ルートの転嫁構造で、賃上げによって最終消費財の上昇分をカバーしようとするものです。ただ、忘れがちなのがもう1つの政府ルートです。最終消費者が行政のものです。行政が調達コストを抑えたままであるのは、このルートでいう最終元請けが転嫁に応じていないということに等しい。であるならば、政府は民間に転嫁や賃上げを働きかけながら、自らは転嫁に応じていないということになります。もちろん、現実には建設業などではスライド制といって物価に柔軟に対応できる調達の仕組みを導入していますし、公定価格もそれなりには柔軟化しています。しかし、こうした転嫁構造で見ていないので、本来目標とする物価や賃金上昇率に設定すべき公定価格が、未だ後追い設定になっています。時限的な措置として、物価上昇に見合った公定価格等の物価先取り設定を行うような、コストプッシュ下に限定した転嫁構造促進を主眼に置いた財政運用をすべきです。賃上げは、賃上げと言うだけでは実現せず、産業構造全般の構造変化を促さなければならないので、こうした政府歳出主導の転嫁促進も必要です。

■でも財源は?

一般論から入りますと、国家の財政は物価に対して基本的にはニュートラルにすべきです。物価が上がると自動的に政府税収は増えますが、公共発注や年金介護医療薬価などの公定価格なども物価に応じて上げなければ、税収上振れ分だけ政府は得をすることになります。物価で政府は得してはいけないということでもあります。そこで目下議論中の所得税減税についてですが、本来公定価格等に反映し転嫁を促すべき税収増分を、別ルートの所得税減税分の財源にも使おうというものです。ここは議論の1つのポイントになろうかと思います。

■需要サイド政策から供給サイドの政策への転換が必要

もう1つは、マクロ運用です。現在、デフレギャップが相当改善しています。統計にもよりますが、プラスに転じているデータもあります。また企業にとっては人不足という構造的な問題もあります。従って、需要サイド政策から供給サイドの政策に転換していくべきタイミングです。需要サイドを単に底上げすると、更なる物価高になって跳ね返ってくる可能性もあります。もちろん需要サイドの政策でも、価格転嫁の後押しとなる政策はしっかりと打っていくべきですが、来年にかけて本格的な産業政策や生産性向上などの供給サイドの政策が必要になります。それが賃上げを作り上げることに繋がるはずです。ここが2つ目の議論のポイントになろうかと思います。

■海外への所得流出を補う政策を

加えて少し論点を変えると、マクロの観点で言えば、円安によって日本は富を海外に流出しているはずです。ご存じの通り、現在の日本は貿易赤字を所得収支の黒字で補っていますが、キャッシュフローの観点で見るのはそれほど簡単ではありません。しかし、最低5兆円程度の流出とみていいのではないかと思います(30兆円との試算あり)。この流出を政府はカバーしていませんので、民間がこの損を被っています。産業が転嫁を進めないと産業が被ることになり、産業が賃上げしないと消費者が被ることになります。したがって、このギャップ分の分析を精緻化して供給サイドの政策を打つことが一つの答えになるのだと思います。

非国家主体と国際法

■非国家主体に対する自衛権行使の正当性について

先日テレビを見ていると、ハマスのイスラエルに対するテロ攻撃について、ハマスが非国家主体であるから国際法は適用されず、従って自衛権行使の正当性はないとする主張を滔々とされる方がいらっしゃったので、念のため非国家主体に対する国際法の適用について書き記しておきたいと思います。なお、恐らくこの方は、イスラエルが仮に大規模地上戦を行ったら甚大な被害が発生するとの人道的懸念から、自衛権自体を否定したいようですが、自衛権自体と自衛権行使は別の話であって混同すべきではなく、訴求すべきは、自衛権を有するとしても、例えば人道を無視した自衛権行使は国際法違反であり正当性は失われる、というところです。

自衛権自体は、国際法上の武力攻撃があると認めうるのか、すなわちその主体が国家若しくは国家に準じる組織による国外からの相当の烈度の攻撃に該当するのかということ、そして自衛権行使については、必要性と均衡性、すなわち武力行使以外に自衛の手段がないのか、武力行使は武力攻撃と均衡がとれているか、という点が主だったポイントだと思います。

国際法の適用は法人格を有する国家であって、非国家主体には直ちに適用されないのは事実です。それはよく知られているように、国連憲章も自衛権の法理も、武力攻撃が可能な主体が国家であることを前提に構成されたものですし、ジュネーブ条約のような戦時国際法も国家同士の戦争を前提としたからで、例えばテロリストによる国家への武力攻撃は想定されていなかったからに他なりません。

しかし、国際法の発展の歴史を踏まえる必要があります。例えば911事件の際、非国家主体と武力攻撃や自衛権の行使について、法学者の間で相当な議論があり、非国家主体による攻撃の本質は犯罪ではあるものの、その規模や様態が国家がなすような軍事攻撃に匹敵するような場合は、それを戦争行為とみなして、自衛権の法理にあてはめることは解釈の幅の問題として全く不可能ではないとするのが主流です。

この考え方は、ニカラグア事件における国際司法裁判所判決でも、示されています。それは、非国家主体が行う間接的武力行使については、伝統的な侵略の定義に規定する重大性を有する武力行為を他国に対して実行する武装部隊、集団、不正規兵または傭兵の国による派遣若しくは国の為の派遣又はこのような行為に対する国の実質的関与の場合は、武力攻撃に相当するとされています。なお、この判決ではこの事件のみを拘束するとしていますが、その後の国際法の発展に大きな影響を与えた者であることは間違いありません。

いずれにせよ、そもそもパレスチナのガザ地区は、国家ではないにせよハマスという武装勢力によるガザ地区全域と言う広範な実効支配の事実がある地域ですから、ハマスの攻撃が武力攻撃に該当するかどうかという観点では、国家機関類似の実体によるものであるとして該当しうると言えますし、そもそもハマスに実質的関与をしている国があるのも事実ですから、上記の考え方に沿えば武力行使に相当し、自衛権が否定されるとまでは凡そ言えません。

なお、前稿にも書きましたが、自衛権を仮に行使するとしても、国際ルールを逸脱する行動には反対です。

ハマスのテロと国際法

■これはパレスチナ問題ではなくテロ

パレスチナ・ガザ地区を実効支配するイスラム武装勢力ハマスが、イスラエルに対して過去とは次元の異なる大規模かつ残虐な攻撃を行って1週間以上が経過しました。これは明らかにテロであって、国際法上糾弾すべき問題です。確かに古代ローマの時代から続く深く罪深い歴史が影を落としているのは事実ですが、我々現代に生きる人間としては、紛争予防に関する知恵を蓄積してきたわけで、その知恵というのが、完ぺきではないにせよ、国際法、国際ルールに基づく秩序を基軸にするということです。そして今、我々が見せられているのは、パレスチナ問題ではなく、国際テロです。国際法違反。

ロケット砲攻撃も、ブルドーザやパラグライダーを使った越境攻撃も、イスラエル市民を人質にするのも、全て国際法違反です。ハマスによる秘密裏に周到に準備された非道なテロに対しては、最大の非難をすべきであり、イスラエルの自衛権は否定できません。(国際法上、非国家主体による国際テロは武力行使と見做し得るため、自衛権を認めうる。国連憲章、国連決議、テロ関連条約、ジュネーブ諸条約、国際司法裁判所判例)。

■イスラエルの自衛権の範囲に注目

ただ問題は、自衛権と言えども、国際法的に、ガザ地区の一般市民の犠牲が拡大してはいけないという点です(もちろん人道的にもです)。すなわち自衛権行使の国際法上の要件とされる必要性と均衡性をどう考えるのかです。必要性は明白ですが均衡性はどうなのかというところは注視する必要があります。イスラエル側も、ハマスの軍事施設などのみを攻撃対象とするとしていますので、これは国際法上認められるでしょう。しかし、一般市民と混在しているハマスの施設が明確に分かるのか、ハマス戦闘員と一般市民の区別がつくのか、という点は、イスラエル側は必ず覚悟しなければならない問題です。逆に言えば、ハマスはそこを理解して、ガザ市民を防衛するという名目で、民間施設内に軍事関係者が駐屯しているわけで、罪深いのだと思います。

現時点で、当初イスラエル側が予告したガザ地区への大規模地上戦は始まっていません。過去の経験から言えば、間違いなくイスラエルは大規模な報復を行うことになります。このとき仮にイスラエルが国際法を逸脱するような、すなわち均衡性要件を満たさないような大規模地上戦をやれば、国際法違反の国同士の泥縄な戦いになり、世界から見放されるはずです。さらに言えば、国際法というルールの話だけではなく、国際政治的にもハマスを支援しているイランは黙ってはいないはずです。そうなるとアメリカも黙ってはいない。イスラエルとの関係が改善に向かっていた湾岸諸国も態度は硬化せざるをえなくなる。そうなれば、前段の様相が現実のものとなってしまったら余計に、中東でのG7のプレゼンスは決定的に弱くなる。グローバルサウスとか言っている場合ではなくなるような負の連鎖は、可能性としては否定できない状況です。

■議連声明

以上の理由で、10月11日、超党派日本イスラエル議員連盟の事務局長を預かる身として、急遽、会長の中谷元先生と相談して会議を設定、イスラエル駐日大使に現状報告を求めました。そして、事前に起草したハマスのテロ攻撃に対する非難声明を議論。採決を行い声明を直ちに発出することになりました。同時に、それまでの政府のメッセージの的が微妙にずれていたので、外務省に対して是正を強く求めました。

■(参考)全く余談ながら歴史的背景について

良く知られているように、パレスチナ問題は宗教問題がからんでいます。世界の3大宗教であるユダヤ教・キリスト教・イスラム教のルーツは同じなので、それぞれの聖地が重なっても不思議ではなく、それがエルサレムであり、同地区のかかえる難しさのルーツになっています。そしてより複雑なのは、紀元前からパレスチナの地を古代ローマが支配するようになり、紀元2世紀ころには、ユダヤ教徒(ユダヤ人)が離散(ディアスポラ)させられた事です。

爾来、ユダヤ人にとって祖国再建が夢となり、19世紀のころの国家再建運動(シオニズム)に繋がります。そして一次大戦に突入すると、覇権国イギリスが、シオニズムを利用し、ユダヤ人に国家建設を約束(バルフォア宣言)するのですが、実はその裏側でアラブ人にも国家建設を約束(フセイン・マクマホン協定)し、更にはフランスにも中東分割統治を持ち掛けます(サイクス・ピコ協定)。これが有名な三枚舌外交です。ここから悲劇の顕在化が始まります。

二次大戦のころ、ナチスの台頭でユダヤ人迫害が頂点を極め(ホロコースト)、戦後、国連総会でユダヤ人への同情もあり、パレスチナの地をユダヤ(イスラエル)とアラブ(パレスチナ=ガザ+ヨルダン川西岸)で分割し、聖地エルサレムは国際管理下に置こうという決議(パレスチナ分割決議)が採択され、翌年にイスラエル建国を迎えることになるのですが、それまではアラブ人が住んでいたためアラブが歓迎するはずもなく、累次の中東戦争を引き起こすことになります。これが現状のパレスチナ問題の原型となります。

国際約束となった分割案も、中東戦争が進展するに従って、有効に維持されなくようになります。イスラエルが国際的に認められた以外の地に入植するようになり、一方で、パレスチナ解放を目論んでパレスチナ解放戦線(PLO)という組織ができたりで、緊張は続きました。そして湾岸戦争を経て、イスラエル・ラビン首相とPLO・アラファト議長の間で相互承認に向けた話し合い、その後にパレスチナ暫定自治に関する宣言が調印されました(オスロ合意)。

ただ、状況が安定したわけではなく、イスラエル側もラビン首相の動きに反発する右派によってラビン首相は暗殺され、右派政権が樹立。一方、パレスチナ側も、反融和のイスラム組織ハマスが台頭、選挙を経てハマス政権が樹立されます。ただ、パレスチナ自治政府とハマスの折り合いは悪く、結果的にハマスがガザ地区を実効支配するようになり、一方でパレスチナのもう1つの勢力であるファタハがヨルダン川西岸地区を統治するようになって、現在に至ります。

こうした事情で、パレスチナは全く一枚岩ではなく、パレスチナ自治政府とはむしろ対立しているように見えますが、イスラエルとの関係では協働歩調に見えます。一方、近年はイスラエルとアラブ諸国との関係も徐々に改善に向かっていました。2020年にはUAEに続いて、バーレーン、スーダン、モロッコがイスラエルとの間で国交正常化の合意を発表しました。いわゆるアブラハム合意と呼ばれるものです。そしていよいよサウジアラビアとの間でも協議が進んでいるときに発生したのが、今回のハマスによるテロでした。

ForumK開催

第11回目となりました地元ForumKを開催頂きましたところ、多くの方にご参会を賜りました。この場をお借りし心からお厚く御礼申し上げます。

当会は、本来新年互例会の意味合いを込めて例年年初に開催しておりましたが、コロナ感染症拡大により繰り返し延期を余儀なくされ、時期が秋にずれ込んでいました。そこで数年かけて段階的に開催時期を早めるべく、今年は7月開催を予定しておりましたが、私どもの個人的な都合により誠に勝手ながら再度延期となり、結果的に9月開催となったものです。皆様には大変ご迷惑をおかけ致しましたこと、改めてお詫び申し上げます。

現在、党務として経済安全保障推進本部、安全保障調査会、科学技術イノベーション戦略調査会、社会保障制度調査会、中小企業政策調査会、知的財産戦略調査会などの役員を務め約1年が経ちました。

この間の最大の山場は、昨年末に改定された国家安全保障戦略でした。改訂に関与した者として、今後もその実効性を担保するために努力を傾注して参りたいと思います。目下の課題は、経済安全保障上のセキュリティー・クリアランス制度の整備、サイバー防御態勢の整備、インテリジェンス能力向上、また防衛装備品移転に関する指針の改定などです。

一方で、人口減少による人不足と、ウクライナ戦争やコロナに端を発するコストプッシュインフレに対応するため、中小企業や農業・水産業などの一次産業を中心として産業構造改革に注力して参りました。最大の対策は、産業界が資材燃油高騰によるコスト上昇と人件費上昇を売値に転嫁することです。適切な構造的価格転嫁こそが日本経済の安定成長に繋がるとの確信からです。当然、防災需要のインフラ整備を計画的に整備し需要を底上げすることも必須です。加えて社会的課題解決事業の推進とデジタル化推進は、地方創生の中心的課題だと認識し、地方目線の政策立案を進めております。

その他、資源が無い日本が豊かさを勝ち取るためには科学技術イノベーション力を強化する以外にないとの思いから、初当選以来この分野に関与しておりますが、ここ3年では特に創薬力の強化と、大学の知財改革に努めております。

改めて皆様に感謝をし、ご期待にお応えできているか常に自問しながら、いかなる困難にぶち当たろうと、前向きに政治活動に邁進して参りたいと存じます。最後になりましたが、皆様の益々のご健康とご活躍を心からご祈念申し上げます。

故大野功統儀お別れの会について

先般は、亡父、大野功統儀逝去に際し、皆様方にはお心のこもったご厚志を賜り、誠に有難く厚く御礼申し上げます。皆様の御陰をもちまして、この程無事に49日の法要並びに下記にてご案内申し上げておりました「お別れの会」を、滞りなく相営みましたことをご報告申し上げます。ご多忙中にもかかわらず、お運び頂きました皆様には心から感謝申し上げます。皆様から賜りました温かいお気持ちは、父にも必ずや届いたことと存じます。改めまして、親族一同、心より厚く御礼申し上げますとともに、今後とも変わらぬご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。

遺族代表 大野敬太郎

=============

故大野功統儀「お別れの会」を下記の通り執り行うことといたしましたので、ここに謹んでご案内申し上げます。

【香川県会場】

日時 令和5年8月27日(日曜日)
   10時半  開式
   11時メド 指名献花
   12時メド 一般献花

場所 オークラホテル丸亀2階 鳳凰の間
   香川県丸亀市富士見町3-3-50
   電話 0877-23-2222

実行委員長 衆議院議員 甘利明
主   催 自由民主党
       同 香川3区支部
      大野家
      喪主 大野敬太郎

なお、一般献花は13時過ぎ頃までを予定しております。どなた様も平服にてお越しくださいますようお願い申し上げます。開式直後は大変込み合うことが予想されますので、お急ぎの方は12時以降のご来場をお勧めいたします。

【東京会場】

日時 令和5年9月6日(水曜日)
   10時半 開式(献花)

場所 ホテルニューオータニ東京
   ザ・メイン宴会場階 芙蓉西の間
   東京都千代田区紀尾井町4-1
   電話 03-3265-1111

なお、どなた様も平服にてお越しくださいますようお願い申し上げます。